昔はおれと同い年だった田中さんとの友情 (ブルーバトンブックス)

著者 :
  • 小峰書店
4.16
  • (36)
  • (27)
  • (17)
  • (3)
  • (0)
本棚登録 : 316
感想 : 45
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (182ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784338308052

作品紹介・あらすじ

拓人は、仲間の宇太佳、忍といっしょにスケボーするのが大好きな小学6年の男子。
ところが、いつも遊んでいた公園がスケボー禁止になり途方に暮れることに。
あきらめきれない三人は、スケボーができるとっておきの場所を見つける。
そして、そこで出会った田中さんというおじいさんとの交流がはじまるのだが……。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • なんて爽やかな話だろう。
    小学6年の拓人、忍、宇太佳の3人と85歳の田中さんとの友情物語。
    お祖父ちゃんでも親戚の叔父さんでもない大人、70才以上の年齢差を越えて友だちになれたことが素晴らしい。

    タイトルが絶妙だ。
    拓人たちは、田中さんが小学6の時に、この場所で起きた戦争の体験を知る。
    「おれと同い年だった田中さん」
    その時、田中さんを身近に引き寄せ、自分のこととして共感できたのだろう。
    戦争の話から始まる学校での出来事がなくても、友情の物語として十分に良い話だと思うが、それは必然だったのだろう。タイトルからもわかる。
    ラストがなんともいい。

  • 私が読んでいる子供新聞の物語コーナーに載っていて、手元に本として残しておきたかったので母が買ってくれた。
    エピソードは紹介するとすごいネタバレになるので紹介しないけれど、絶対に絶対に絶対に読んでほしい。面白いし、時にはめっちゃムカつく野郎が出てくるし、時にはめっちゃ吹き出す出来事もある。だからこそ読む手がゆっくりになる。普段は物語の細かいところ普通に余裕で吹っ飛ばしていく私だけど、今回は細かいところまでじっくり読みたいと思えた。
    素敵な物語に出会えました。

  • ラストがっ。ラストで鳥肌が立ちました。
     衝撃的とかそういうことではなくて。
     ああ、この人はわかってる。そんなラストで。他には考えられないくらいにこれしかないラストでした。
     主な題材として、戦争体験が用いられてはいますが、これはもう本当に友情の物語です。
     ああ、そうだった。友情の根っこってこういうものだと思い出します。誰かとつながるってこんな気持ちだったって、あらためて言葉にして認識するような気持ちになります。
     読んでよかった。
     時間が流れて、戦争の話はなんだかまるで道徳のお話みたいで、感情が動く物語にはなりづらくなってきたような気がしていました。「こんなふうに感じるべきです」みたいな圧がなんとなく感じられて敬遠したくなるというか。
     でも、この本は、違います。
     だって友情の物語だから。

  • ★5.0 
    とにかく文句なしに大好き!85歳の田中さんは勿論、三重奏な少年たちが本当に優しくて、読みながらニコニコしてしまう。そして、コーラ噴出からの鼻血ティッシュで爆笑させておきながら、子ども時代の田中さんが体験した戦争でしんみり切なくさせる。その緩急の付け方が見事で、笑ったり泣いたりと良い意味で大変だった。が、何よりも、ラストの幸せな寂しさが堪らない。拓人が中学生になったら、田中さんとの交流はほとんど途絶えると思う。それでも、田中さんと過ごした時は決して色褪せない。懐かしさとほろ苦さの余韻が素晴らしい。

  • 本屋でたまたま手にとって、家に帰ってから無我夢中であっというまに読了。こんな良い本、久しぶりに出会いました。

    ある出来事がきっかけとなり、主人公の拓人くん、忍くん、宇太佳くんが田中さんと交流していく物語なのですが、全体を通して優しい雰囲気が流れているのに、どこか切ない、胸がぎゅっとしてしまうのは、私が四十路に差し掛かっているからかもしれません(読みなが大泣きしました汗)
    小学校6年生というちょうど思春期の入口で、本人達もまだ持て余してしまうような心の動きや、男女差のイライラ、また大人の身勝手な言動など、大人の私が読んでもその気持ちにとても共感してしまいました。

    高学年の読書感想文用として本屋に並んでいましたが、大人が読んでも読みごたえはあります。お子さんと一緒に読むのも良いかと思います。とりあえず読書感想文は横に置いておいて、ぜひ読んでみて欲しい一冊です。

  • スケボー好き小6男子3人組と、神社の管理人として一人暮らしをしている田中さんとの交流。

    姉妹で育った私にはまぶしいような羨ましいような気もしましたが、6年生という子どもでも大人でもない微妙な時期の友達関係、家族関係が、さらっと書かれていて気持ち良かったです。

    戦争体験の話、お年寄りの話に弱い私は、やっぱり途中から目をうるませながら読みましたが、ラストは予想外でもあり、確かに現実はこうだとも思わされました。

    「『…大人って、いろんなことを知っていて、きちんとしてて、間違えたことなんて言わないって思ってたけど、ぜんぜん違うんだな』
    宇太佳が言う。その通りだとおれも思った。親の言うことを聞け、先生の言う通りにしろ、とかよく言われるけど、それって本当なのか? それは絶対に正しくて、心から信じていいことなんだろうか。田中さんの悪口を言う大人になんて、絶対に従いたくない。」

    そう、大人が絶対に正しいってことなんてない。
    自分で善悪を考えて行動できるようにならなければ。

    高学年におすすめ。

  • 「拓人は、仲間の宇太佳、忍といっしょにスケボーするのが大好きな小学6年の男子。ところが、いつも遊んでいた公園がスケボー禁止になり途方に暮れることに。
    あきらめきれない三人は、スケボーができるとっておきの場所を見つける。そして、そこで出会った田中さんというおじいさんとの交流がはじまるのだが……。」

    小6,3人組、おじいさんとの出会いと交流、少し戦争の話 ということで『夏の庭』やんと思いながら読みはじめてしまった。のだけれど、田中おじいさんもよかったです。少年と老人との出会いと交流の話って、良いし、うらやましいな。
    ・スケボーはほんとやれる場所ないよね。家の近所でやられたら私も多分嫌やし。出来ないなら売るなよな!って叫ぶ三人のモヤモヤに同情した。若者の声を聞いて大人が場所づくりをすることって、大切で必要。
    ・第二次世界大戦終戦日に、熊谷をB29が攻撃した。余った爆弾を捨てていき、23人が亡くなった。→本当の話かな。各地であったのだろうか。調べてみよう。

    「田中さんといると、ちょっと前の自分に戻れるような気がするのだった。朝起きて学校に行って、友だちと遊んでご飯を食べて寝る。そんな当たり前のことを、何も考えずに楽しめた時、素直で明るくていい子だったおれ。今のおれは、少しややこしい。イライラしたり、後悔したり、ムカついたり。物事はそう簡単ではないのだということに気付いてしまった。何より、自分が自分をもてあましていて面倒くさいんだ。本当に。田中さんといると、まだまだ自分も捨てたものじゃないかも、と思える。」p71



  • 「今のおれは、少しややこしい。」11才の拓人は、2、3年前の自分とちがって、イライラしたり、後悔したり、自分を持て余したりするようになった。でも、田中さんといると、素直だった自分に戻れるような気がして……。85才の田中さんと、11才の拓人に芽生える友情に心安まるほのぼのとしたお話。

  • 戦争の話や介護の話が深すぎないので、重くなく読める。

  • 令和2年度の埼玉・夏休みすいせん図書、高学年向け。
    どこかでおすすめされていたので気になっていたし、9月に入ったので借りて読んだ。

    おれ・拓人と、忍と宇太佳(うたか)は、六年二組のしらけチーム。
    おれたちが花林神社の前の通りでスケボーの練習をしていると、神社の管理人のおじいさん・田中喜市さんが話しかけてきた。
    おれが田中さんにスケボーを貸すと、田中さんはころんで右手首を骨折してしまった。
    それから、おれたちは田中さんの手伝いをすることになった!

    いいお話でした。
    年をとってきたので、涙がぽろぽろ出てきます。
    会話文の言葉がほんとの話し言葉で乱れがちですが、そういう表面的なところはあまり関係ないのかもな、と思えました。
    物語のなかにある思いが大切で、このお話にはその思いが詰まっています。
    三重奏の三人は、それぞれの個性がきちんと描かれています。
    拓人はその中でいちばん普通で、でもとても心がやわらかく、物語の語り手になっています。
    85歳の田中さんもとてもすてきで、なぜそんなにも穏やかで優しいのかにも理由がありました。
    自分とは違う世代と触れ合う楽しみ、周りの人の違う面を知る驚きなど、人と関わることの良さがわかります。
    大人ですけども、日常も捨てたもんじゃないな、と思えました。
    早川世詩男さんという方の絵がいいなぁと思ったので、調べてみようと思います。
    『12歳』や『14歳の水平線』も読んでみたい、読みたい本がいっぱい!

全45件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

1970年神奈川県生まれ。2002年、第42回講談社児童文学新人賞を受賞した『十二歳』でデビュー。07年『しずかな日々』で第45回野間児童文芸賞、08年第23回坪田譲治文学賞、17年『明日の食卓』で第3回神奈川県本大賞、20年『昔はおれと同い年だった田中さんとの友情』で第69回小学館児童出版文化賞を受賞。『明日の食卓』は21年映画化。その他の著書に『消えてなくなっても』『純喫茶パオーン』『ぼくたちの答え』『さしすせその女たち』などがある。

「2021年 『つながりの蔵』 で使われていた紹介文から引用しています。」

椰月美智子の作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×