「逆」読書法 読まなくていい本を、読まずにすます方法

  • ひらく (1997年4月30日発売)
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本 ・本 / ISBN・EAN: 9784341190019

感想・レビュー・書評

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    読書でも、役に立つかどうかは他人が決めることではなく、本人が決めることです。 そして、読書でも何でも、みんながやっていることをやったのでは、ふつうのことし できません。人がやらないようなことをしてみます。本なら、人が読まないような、話 にもならないような本を読んだほうが、役に立たないようでいて、あとになって役に立 人がやらないようなことをやれば、まったくムダになる危険もありますが、もしも役に 立つときはものすごく大きな力になってくれるものです。

    同じようなことは明治以降にもあります。たとえば、ヨーロッパ帰りの人が、さかんに レディファーストを持ち上げたとき、多くの日本人は感心しましたが、大正時代になると、 な家では男が我がもの顔に振舞っているから、外に出たときだけ女性を、 ているようなふりをしているんだ」と考える人が出現してきます。また、ワシントンが桜 の木を切ったことを告白したエピソードを、「あれほどワシントンが正直ものだとほめら れるのは、アメリカには正直な人間が少ないからに違いない」という人もでてきました。 これらは一種のユーモアと考えることもできますが、その根底にあるのは批判精神です。 どんなことも表面に見えていることだけで評価し、受け入れてはいけないということにつ ながります。「役に立つ」本を読んでも仕方がない、「役に立たない」本こそがじつは役に 立つという逆読書術も、基本精神はいっしょです。「この本は役に立つ」といわれたとき に、「はい、そうですか」とそのまま受け入れるのではなく、「ほんとうにそうか」と考え る逆読書術の精神があれば、ものごとの本質が見えてくるようになるのです。

    どんなものでも鵜呑みにしてはいけません。それは本も えば、電力会社の人が書いた本には、電力会社にとって不利になるようなこと ていないはずです。パソコンの本なら、パソコンの短所、パソコンが売れな なことは書かれていません。 した書き手のポジション、スタンスを考えず、書かれている内容をすべ 受け取ってしまうことは危険です。 本を読むときには、そうした著者のポジションやスタンスを考慮に入れたうえで読んで いく必要があるのです。割り引いて読めばいいのです。パソコンをほめてある本なら、 「精いっぱいほめてこの程度か」と思えばいいことになります。 ちょっと、ひねくれた読み方のようにも思えるかもしれませんが、こうした裏を見よう とする読み方、常識を疑ってかかるような読み方をすれば、けっこうおもしろく本が読め るし、思わぬプラスもあるものです。

    教育は、家庭でもできるし、やるべきだし、自分自身でもでことを忘れた議論になることでしょう。

    孔子や釈迦のどこが偉いとタンカをきってみると、 読書がおもしろくなる

    本を読む場合も、はじめから終わりまで読んで、わかったつもりになっているかもしれ ませんが、じつは勘合貿易のように、著者の教養や知識という,割符"に読者の理解力と いう"割符"を合わせて、それがぴったりと合った部分だけが伝わるのです。されない読み方す。ですから、こちらの教養の程度が低ければ、その程度で理解できることしか伝わりませ ん。力がつけば、理解できる部分も大きくなります。逆にいえば、もし読者の力が上がれ ば、著者が気がついていないところまでわかることでしょう。


    何もかも書いてある本は、 何にも伝わらない

    人から送られてきた本も、 思いもかけなかった自分の世界を開くきっかけになる

    本を読んだときに、習慣にしておくといいのが、一冊読み終わったら、この本は何がい いたかったのか考えることです。本を閉じて、表紙を見ながら、「著者はこの本を書くま えにどんなことが胸につかえていて、書き終わって何がすっきりしたんだろう」と考えて みることです。


    テレビは速報性はあっても、時間に制約があるので伝わってくる情報量はひじ いのです。テレビでコメントをしてくれという依頼があっても、られる時間は二〇秒とか三〇秒です。これではコメントする側も一面的なこと、ありきた りのことしかいえません。その結果、テレビ人間は複数の問題を考えられないだけでなく、 一つの問題を一面的にしか考えられなくなります。


    複眼的なものの見方、多用な価値観を持ちたいと思ったら、やはり活字を読む以外にあ りません。テレビは放送されるのを待っていなければならないから、いつも受動的で、選 択をしたり、飛ばして見たりすることができませんが、活字なら飛ばし読みができるから、 たくさんの情報を短時間で得ることができます。 単眼的人間から脱出し、複眼的なものの見方ができるようにするために、私が勧めるの は、あるテーマに興味を持ったら、それに関連した本を十冊買ってきて読むというやり方 です。


    中立、中性を装った本より、 両極端な本を二冊読んだほうがいい


    中立、中性の立場で書かれた本はたしかにありますが、ほんとうに中立、中性というも のはまずありません。著者は中立、中性で書いているつもりでも、どちらかの立場に片寄 るものなのです。それに、なかには中立を装って、じつはどちらかの極端な主張を擁護し ているという本もあります。 中立、中性を装った本が恐いのは、そうした表面に表われていない、隠れた偏向を見破 るのがひじょうにむずかしいことです。そのために、ニュートラルだと思って読んでいる 方の主張に感化されてしまい、自分で気がつかずに偏った見方、意見を持 まうのです。 はっきりと立場を明確にした本なら、はじめからそれを意識して読むことができるから、 無用に感化されるという心配はありませんし、両方の主張を知ることによって、自分のオ リジナルな見方、考え方ができるようになります。

    主義主張は両極端のものがあるのが当たり前だし、それが健康な状態です。両極端のも のがあるから、両方を知ることでバランスがとれ、極端に走らずにすみます。自分の主張 へのものは認めない、そんな本はだすなというのでは、それは戦前の言論弾 で、それが通ったら不健康な状態になってしまいます。 を読んでそれから自分の意見を決める読書なら、こんな悲劇は起こりません

    「人の行く裏に道あり花の山」 これは、株取引の世界での格言ですが、人が株を売りたがるようなときに買ったり、逆 にみんなが買いたがるときに売るような、そんな相場を張ってこそ、儲けも手にはいると わけです。「麦わら帽子は冬に買え」ともいいますが、みんなと同じこと のは、無難ではあってもおもしろみに欠けます。もの、人いや、実益なんてことを度外視しても、裏道を歩いてみるだけでもおもしろ の知らないものを見たというだけでも十分ではありませんか。 銀座でも、表通りをひと通り見回したら、裏通りを歩いてみるのが「通」です。いろい ろな発見があります。

    人間というのは、意外とひねくれものです。 自動車が普及すると、ジョギングが流行ります。ワープロやパソコンで何でもきれいに 印刷できるようになると、お習字がまた注目されます。カラー写真がどこでも安く手軽に 撮れるようになると、今度はモノクロやセピア色の写真の人気が出てきます。ジェット機 てバりに谷けるようになると、船で行きたくなります。 洛暖房完備の時代になると、わざわざ雪山に出かけていきます。昔、冬は寒いというの が当たり前の時代は、寒い雪山へ行っても何の自慢にもなりませんでしたが、いま、わざ さ乗いところに行ってきたというと英雄扱いです。

    乱暴なことをいえば、小さいときに本好きにし損ねたなら、逆に二宮金次郎 うに「本を読んでいたらぶん殴る」くらいの荒療治のほうがいいでしょう。子どもは反抗 して本を読むはずです。本を読んでいたら、親の商売を手伝え、ご用聞きに行ってこい、 ものを配達してこい、とうるさくいえば、それこそ二宮金次郎みたいに、行き帰りに本を 読むかもしれませんよ。 書き手のほうも同じです。忙しい人ほどよく本を出します。

  • 正直に読書をするのではなく、斜に構えて読むことのよって自身の知的好奇心を刺激し、本当の知識を自分のものにするということが書かれている。しかし、ところどころに著者自身がとらわれているところが見受けられる。全体的には良い本。また中国古典を疑って読むのは面白い発想の転換だった。

  • ・読書とは著者の限界を探る作業。
    ・事実なのか解釈なのか見極める。
    ・中立的な本はない。
    そして、本は批判的に疑って読め、鵜呑みにするなと。
    なら、この本に書いてある内容も疑わなければならないが。

  • 単なるハウツー本かと思っていたら、意外と奥が深かった。

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著者プロフィール

1930年、兵庫県生まれ。三谷産業株式会社監査役。日本ラッド株式会社監査役。東京大学経済学部卒。日本長期信用銀行取締役、(社)ソフト化経済センター理事長を経て東京財団会長を務める。ソフト化・サービス化の時代をいち早く予見し、日本経済の名ナビゲーターとして活躍。未来予測の正確なことには定評がある。『いよいよ、日本の時代がやってきた!』 『日本人への遺言』(渡部昇一氏共著)『日本人への遺言partⅡ 「和の国のかたち」』(渡部昇一氏共著)『反核愚問』他多数有り。

「2018年 『「発想」の極意 人生80年の総括』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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