最後の家族

  • 幻冬舎 (2001年10月1日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (324ページ) / ISBN・EAN: 9784344001213

感想・レビュー・書評

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  • 倒産寸前の会社でもがく父。
    家族を思いながらも、大工と付き合う母。
    部屋にこもり、両親に怒りをぶつける息子は隣のDVを目撃する。
    親のルールを破る娘。

    章ごとに変わる4人の視点で進む、ゆっくり壊れていく家族の物語。

    後書きに書かれた次の
    作者あとがきが最後にドスンと印象に残る。

    “この小説は、救う・救われるという人間関係を疑うところから出発している。誰かを救うことで自分も救われる、というような常識がこの社会に蔓延しているが、その弊害は大きい。そういった考え方は自立を阻害する場合がある。”

  • さすが、村上龍だ。
    そう思った。一気読みした。
    4人家族の物語。
    引きこもりの長男と両親、そしてその妹。

    家族とは。幸せとは。
    家族のカタチは、家族の数だけある。それぞれに違うのだ、とわかっていながらも、
    家族とはこうあるもの、という固定概念に、いかにがんじがらめにされているか、気付かされる。
    そしてその固定概念が、家族を構成している「人」を不幸にさせていることは、往々にしてあるな、と感じた。

    ただ、作中にDVされている女性が登場するが、救いのないまま、物語は終わってしまう。
    あとがきで著者が書いている。
    この小説は救う、救われるという人間関係を疑うところから出発している、と。
    それが書きたかったのだ、と理解は出来るが、やはり、作品の中で、解決の糸口をほんの少しでも、出現させて欲しかったと思う。


    それはそうと、父、母、兄、妹、それぞれに異性の気になる人がいて、それがちょっと生きる原動力っぽいところが、いかにも村上龍らしくて、好きだ。
    人間ってそうでなくちゃ、って思うのは、やっぱり世代かな。

  • 人間関係に恐怖を感じる、引きこもりの息子。
    リストラされそうだけど家族に言えない父親。
    家族に内緒で若い男と会っている母親。
    大学進学よりも海外へ行きたい娘。

    家族4人の視点から見る2001年の秋冬。
    言えない気持ちがみんなある。

    -----------------------------------------

    弁護士の先生がかっこよかった。

    救いたいと思うのは、その相手を対等に見ていないということ。
    見下しているということ。
    救うことで自分も救われようとしているということ。
    気づかないうちに、相手に依存しているということ。
    相手を支配したいと思っているということ。
    その気持ちが暴力を生む。

    家にだって外の世界にだって問題があって、生きていくのが辛い。
    だからって誰かに依存していくのは自分のためにも、相手のためにもならない。だからって引きこもってるわけにもいかない。生活にはお金が必要。
    自立こそが親しい相手を救う手段。

    お父さんとお母さんは子どものことも考えなくちゃいけないから大変。
    つらい時期をそれぞれが乗り越える家族の話。

  • 実は初村上龍作品。

    リストラにあいそうな父、外で若い男性と密会を続ける母、引きこもりの兄、進路を決めかねている妹。
    バラバラだった家族がそれぞれの生きる道を見つけて自立していくストーリー。
    ちょっと出来すぎなラストは違和感がしたけれど、描写はとても細やかで読みやすかった。
    特に父親の切羽詰った日々の描き方は息苦しさを感じるほど。
    家族を背負って働いてるお父さん(お母さん)には感謝しないとね。。

  • 2011年最後の一冊。

    昔、村上龍の『5分後の世界』を読むのを途中で止めたことがある(滅多に断念しない)ので、村上龍は『面白さがよく分からない作家』と自分の中で偏見を作ってしまっていた。
    ただやっぱり、村上春樹の隣の本棚にあるので意識はしていたので、たまたま手にとって1ページ開いて『これなら読めそう』と思ったのが、この作品。
    ひきこもりとかの題材ってどーも惹かれてしまう。


    最後のほうを読んでて気づいたのは、前半は章が変わっても同じ出来事を描写していて家族みんながみんな変に寄り掛かってて息苦しそうなイメージだったのに対し、後半は章ごとにそれぞれの人の行動とかも独立していて、それが良い距離感を維持していて生きやすそうに感じた。
    なんていうか、前半は以前本で読んだ枝が絡みあってうまく成長できずにいる植木を思い出させた。


    家族って必ずしも一緒にいることが幸せとは限りませんしね。

  • 彼の作品に珍しく、あまり読んでいて辛くなく、痛くなく、終わり方もさわやかな作品。読後感すっきり系。

  •  引きこもりを克服する家族。結末が見事にまとまりすぎだけど物語なのでそれで良し。でも、母親の不倫まで綺麗事にしちゃうのはちょっと出来すぎクンのような気がする。

  • 龍氏の作品は結構読んできたけど、こんなのも書けたのね、という事に純粋に感動(笑)龍氏の中ではかなりの異色作ではありますが、核心を突いた歯切れのいい文章は健在。 心理だ性格だ環境だって人間なんだかんだありますが、万人絶対思う事は「幸せになりたい」って事で、幸せな時には、それがいつか崩落してしまうかもなんて事は思ってもみない事で。そういえば、私の未来の幸せって想像も出来ないよなぁ……でも、幸せの形って一つじゃないんだよなって事をひしひしと感じます。家族への労わりや、感謝を考えれる良い切欠となりそうな良い作品です。

  • 誰かを救うなんてことはできない。それでもと思ってしまうのは甘いんだろうか。自分のことを自分で決めるってすごく勇気がいることだと私も思います。決断を下さずにすんでほっとしてしまう瞬間っていっぱいあります。もう少し強くなりたい。

  • 久々に読んだ龍ちゃん。引きこもりあり、リストラあり、DVありの物語。母の昭子が強い。家族だけでなく、周りの人達に助けられ、強くなったのだろう。特に延江の存在は正直羨ましい。「親しい人の自立はその近くにいる人を救う。一人で生きていけるようになること。それだけが誰か親しい人を結果的に救う」秀樹にとって、それはまさしく母、昭子だったのだ。
    私は自立しているか、子どもを自立させられるようにできるか、突き詰められた。

  • 残酷な幸福。

  • 引きこもりの息子、母、父、妹 それぞれの目線で物語が展開して行く

    後半に出て来る弁護士さんの言葉が心に刺さる
    「女性を救いたいというのは、DVの第一歩」
    「救われたことがない。自分でそうおもっている人は、あなたみたいに、正直になれない」
    「親しい人の自立は、その近くにいる人を救う」

    自分が母なので母の視点で読んでしまうが、昭子が自立した事で秀樹が救われて良かった

    父、秀吉はあまり好きではないが、解雇が決まってから何とか家や学費を残したいと頑張っている姿が可哀想で見ていられない
    早く家族に打ち明けて楽になって欲しいと思う

    子供達が家を出た後の喪失感、凄く良くわかる
    「喪失感は、離れていった大切な人間の記憶を、心のどの場所に仕舞っておくかを決めるために必要」
    と言う言葉が心に残った

    秀吉も会社が順調だったら、知美の大学に行かず結婚もしない相手とイタリアに行くなんて許せなかっただろうと思うし、結果皆んな良い方に進んで良かった
    ただ、カウアイ島への不倫旅行の部分は必要だったかは疑問(笑)

  • これからおれはどうすればいいんだ。
    自分に聞いた。
    答えは明らかだった。
    一人で生きていけるようになることだ。
    それだけが、誰か親しい人を結果的に救うんです。

    引きこもりの長男、秀樹は結局ユキを救えなかったが、弁護士を目指すために専門学校へ。

    智美は近藤とイタリアへ。

    昭子は延江とハワイへ。
    でも離婚したり再婚したりはない。

    秀吉は解雇され、コーヒーの喫茶店へ。

    母が自立していく姿がかっこよかった。

  • なんだか過去に読んだことあるような気がするのだけど,ブクログに書いてなかったのでこの機に。

    お父さんお母さん,引きこもりの20代男子,女子高生の家族それぞれの視点でお話が進んでゆく。

    ヒキー男子だけでなく,お父さんは旧態依然とした終身雇用前提の会社のしくみから。
    おかあさんは家族に奉仕することのみを前提とした専業主婦ライフから。
    女子高生は広く浅い友人関係ととりあえず大学という事なかれ主義から。
    それぞれから自立してそれぞれの道を歩き出すという話です。

    もっと救いようのない話かと思ったら,思いのほかゆるーいハッピーエンドだった。かといって全部が100点の正解ではないんだと思う。でもそれはそれで,それぞれがした選択の上に成り立っているわけで。常識だからとか世間体がとかで流されたんじゃない,自分の意思であり決定が真ん中にあるのが大事なんだろうな。

  • 私は自立ができない。
    わかっていて、苦しくて、あがいてあがいて、それでも毎日はすぎていく。

    「親しい人の自立は、その近くに居る人を救うんです。一人で生きていけるようになること。それだけが、誰か親しい人を結果的に救うんです」
    じわーっと残るなぁ。ほかにも残しておきたい言葉がいっぱい。自分に向き合う本。

  • ある家族の話。
    父 : 秀吉 母 : 昭子 長男 : 秀樹 長女 : 知美 の4人家族。
    引きこもりの秀樹、その秀樹を治そうとする昭子、家族はいつも一緒に食事をするべきだと思っている秀吉、大学進学を控え自分が何がしたいかを悩みながらも家族を見ている知美。
    時系列によって重なりながらそれぞれの視点で物語がすすんでいく。同じ事をそれぞれがその時間を語り継ぐのだが、それぞれの視点や心の動きがそれぞれから同じ時間をなぞるので、家族の葛藤やすれ違いなど、様々な人間模様が浮かび上がってくる。
    家族であり、それぞれを思いやったり不満を持ったりするのだが、それぞれが自立することによってこの家族がそれぞれに旅立っていく。
    結末は読んでいただきたい。

  • They can't make me quit
    対等な人間関係に、救いたいという欲求はない。

    「誰かを救うことで、自分も救われる弊害は大きい。」小説のセリフではなく、著者のあとがきに記されていました。

    自分が救われたいために、誰かを救おうと思ったことはありません。まして、誰かを救えるほど大層な人間ではありません。誰かと繋がっていたいとも思いません。自分が生きていくのに精一杯です。

    でも、生きていくには誰かと繋がっていなくてはなりません。真の自立とは何たるかを考えます。

  • 最後の家族 - bookworm's digest
    http://tacbook.hatenablog.com/entry/2014/09/28/153430

  • 読み始めて辛くて読むのをやめようかと思った。今まで読んだ本の中に、こんな思いをした本があっただろうか。
    家族そろってする食事は一番大事という父、秀吉。家族とは、という父親の理想のの形を強要される家族。
    引きこもりの秀樹、高校卒業後の進路を考える由香、母、父。それぞれが自分の道は自分で決断するようになる。家族でも依存せず自立することが大事。それが1番の幸せであり救いになる。
    小説とはいえハッピーエンドで終わってよかった。

  • 久しぶりに読んだ村上作品。
    とても興味深く、あっという間に読了。

    私は母親なので、母の立場で読んでしまっていたので、ちょっと、最後の昭子には、納得できなかったかも。
    年下の不倫相手?恋人?と、旅行してしまったんだ…という気分だった。
    でも、それが、彼女の自立だったのかも。

    最後は形はバラバラになったけど、以前よりちゃんとした家族になったかのような内山家。
    ある意味のハッピーエンドで良かったです。

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著者プロフィール

一九五二年、長崎県佐世保市生まれ。 武蔵野美術大学中退。大学在学中の七六年に「限りなく透明に近いブルー」で群像新人文学賞、芥川賞を受賞。八一年に『コインロッカー・ベイビーズ』で野間文芸新人賞、九八年に『イン ザ・ミソスープ』で読売文学賞、二〇〇〇年に『共生虫』で谷崎潤一郎賞、〇五年に『半島を出よ』で野間文芸賞、毎日出版文化賞を受賞。経済トーク番組「カンブリア宮殿」(テレビ東京)のインタビュアーもつとめる。

「2020年 『すべての男は消耗品である。 最終巻』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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