作品紹介・あらすじ
いつの時代も現実は厳しい!でも相応しい自分を演じれば、そこは誰もが入れる天国になる。先の見えない五人の微妙な2LDK共同生活。
感想・レビュー・書評
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適度な距離感を保ちながら共同生活を続ける男女5人の、それぞれの目線から語られる数日間の話。二十代の若者の些細な日常を描いた読みやすそうな物語だと思い手に取ったが、読み始めて2日目に最後のページの最後の一行がたまたま目に入ってしまったために、わたしはある疑問を持ちながら先を読み急ぐ羽目になった。
途中から感じるある違和感のせいで、その言葉がだれのものだったのか気がつく。
都合のよい他人との心地よい関係なんて、この世に存在しない。そこにあるのは、無関心からくる残酷さだけだ。この本を読む自分自身もその一員となりながら、唐突に終わるこの話を読み終えて、わたしさえもが世界に取り残されたような気持ちになった。
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「ここでうまく暮らしていくには、ここに一番ぴったりと適応出来そうな自分を演じていくしかない」と相馬未来は言う
善意のみが入場可能な出入り自由な空間での5人の奇妙な共同生活ーー「 上辺だけの付き合い」 といえばそれまでだが、5人に限らず、社会生活ってこんな風に成り立っているんじゃないのかな
誰だって、立ち入って欲しくない部分を持っているもの、それを慮って敢えて踏み込まないのが大人の配慮だと思う
まあ、この話の最後の立ち入れない部分は、事が重大すぎて、これには当てはまらないだろうけれど・・・
最初に登場した杉本良介、まるで横道世之介だなと愛車「桃子」
のくだりもニヤニヤしながら読み進める
良介君には、なぜかしらひらがなの「ふ」の字がよく似合う
不安定のふ? 不機嫌のふ? ふぬけのふ? なんて、面白すぎる!
隣室に良介を客として送り込み潜入捜査させる場面や、玄関のチャイムの音に対して、4人がそれぞれの武器?を持って立ち向かう場面 サトルに大検対策の勉強をさせようとする場面など
軽妙な会話を楽しみつつ、遠い自分の大学生活を思い出したりしていた
なのに、なのに、最後は、ショックでした
4人もすべて知っていて、平常通り振舞っていたなんて
所々に伏線があると、どなたかのレビューにあったけど、そんなこと全く気付きもしなかった
それもショック!
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みんな5人でいる時の自分を演じてはいるのだけど、その関係にどこか癒されているのを感じます。人に深く踏み込んだり踏み込ませたりするには危ういと無意識に感じている爆弾みたいなものをそれぞれが抱えている、そんな人たちが気を許せるクッションのような空気が5人の部屋にはある。なんかそんな気がした…。異常…と言い切ってしまえない。私にはすごく惹かれるものがありました。
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「国宝」で吉田修一さんのファンになり、著者の山本周五郎賞受賞作「パレード」と芥川賞受賞作「パークライフ」を読んでみたが、どちらもイマイチ入り込めなかった。映画「怒り」は良かったので、もしかしたら映画を観たほうが心が動くのかも。著者の旅エッセイはとても好き。
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個性的な五人の共同生活をのぞいている感じがページをめくる勢いを掻き立てます。
ラストは意外すぎて。。。
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上司に勧められて読んでみたけど、まさかの大ドンデン返しに驚いた。色んな意味でもう一回読みたい。別の作品も読んでみたいと思えた。読み終わった後に小説の世界に取り残される感覚がある。コンディション良い時に読んでほしいな。
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不思議な5人の共同生活
最後伏線回収されてておもしろかった!
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吉田修一著『パレード』(幻冬舎)
2002.2発行
2017.3.11読了
第15回山本周五郎賞受賞作
ここでの共同生活は、求められる役割を演じることによって成立している。ここではシリアスな役割は求められない。それは、あたかもビデオテープに映像を上書きするように、善意で乱暴に上塗りされた空間。まるで真実味のない空間に居心地の良さを感じる彼らは、何が起きても共同生活の秩序を維持しようとする。もとをただせば、直輝の身勝手な理由から始まった共同生活だが、思惑とは裏腹に、変化は悉く裏切られ予定調和の現実から逃れられない。さながら直輝はチャット上の荒らしであり、テレビのザッピングであり、彼らにとって迷惑な存在なのだ。
社会生活を送っていると、場の空気を壊す人と遭遇することがある。私は同調を嫌うタイプなので、どちらかといえば壊す側かもしれないが、ムードに同調するのも嫌いなタイプ。要は友達が少ないタイプ(笑)。私に分かることは、場の空気で押し潰さんとする暗黙裡というものは恐ろしいということ。直輝とは別の狂気を感じる。
URL:https://id.ndl.go.jp/bib/000004323584
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5人の若者の奇妙な2LDK共同生活を描いたお話。
最後がなかなかに衝撃的。
著者プロフィール
1968年長崎県生まれ。法政大学経営学部卒業。1997年『最後の息子』で「文學界新人賞」を受賞し、デビュー。2002年『パーク・ライフ』で「芥川賞」を受賞。07年『悪人』で「毎日出版文化賞」、10年『横道世之介』で「柴田錬三郎」、19年『国宝』で「芸術選奨文部科学大臣賞」「中央公論文芸賞」を受賞する。その他著書に、『パレード』『悪人』『さよなら渓谷』『路』『怒り』『森は知っている』『太陽は動かない』『湖の女たち』等がある。
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