太陽の季節

  • 幻冬舎 (2002年7月18日発売)
3.15
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本 ・本 (389ページ) / ISBN・EAN: 9784344002135

感想・レビュー・書評

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  • 表現の仕方やストーリー展開がかなり過激でありながらも、エネルギーの使い方がよくわかっていない若者をうまく表現した作品。

  • やっぱり面白い。
    「典型的な青春」がストレートに、嫌味なく、描かれている。
    ストーリーとしても、結末まで目を離せない展開が好き。

    他に収録されている「処刑の部屋」や「乾いた花」などなど、
    どれも古さは感じるにも関わらず、実に刺激的である。

    ちなみに、「青春」という概念そのものが古いのだから、
    「青春」しか描いていない作品が古く感じるのは当たり前のことで、
    まったくマイナス要素にはならない。
    着物を見て「ダサい」と言ったらおかしいのと同じだ。

    また暴力にも、何かしらふさわしい意味がついているところが、いい。
    肉体がどう壊れようと、確固たる意志がある勇姿には、かなりの説得力がある。

    青春をまるごと小説につめこみ、男と女の関係も面白く動く。
    そんな魅力がいっぱいの作品で、しかも読みやすい点もうれしかった。

  • 「太陽の季節」
    軽薄な若者たち。
    未熟で、刹那的で、責任ということを学ばずに体だけ大きくなった子供。
    そんな登場人物たちに見えた。
    親に金はあっても、育ちが悪かったんだな、と思ってしまった。
    竜哉たちの暴力性は、アウトローに対し今よりゆるかったであろう当時の社会を感じさせる。
    日本も、だいぶ変わった。
    竜哉の英子に対する征服欲・ゆがんだ甘えは、精神的暴力でしかない。
    DVをする男の心情は、こんな感じなのだろうな、と思いながら読んだ。
    面白い手触りの作品だと思った。
    愚かさと純粋さが絶妙に入り混じっていたように感じた。

    「処刑の部屋」
    怖くて痛くて、読んでいられない。
    椅子に縛られてリンチを受けているところで、断念。

    「完全な遊戯」
    ただただ、ひどい。
    残酷で身勝手な話でしかない。
    これも一つの人間の形なのだろう。
    教育やモラル、情緒を欠いた人間とは、実に恐ろしい。

    「ファンキー・ジャンプ」
    曲にのせるイメージで、奏者の心を描いていく。
    曲のタイトルと、巡っていく思考の間から、時々音楽が聞こえてくるかようにイメージできる瞬間もあった。
    しかし、随分荒々しい、曲調の変化に富んだ音楽であったろうと思える。
    芸術と狂気は、背中合わせなのだろうか?

    「乾いた花」
    冴子の美しさ・妖しさが瞼の裏に浮かぶような思いがする。
    若い冴子に魅かれる男の気持ちも、よく伝わってくる。
    冴子がいうように、この男がなんだかまともなように見える。
    より狂ったもの・冷たいもの・危ないものに引き寄せられていく冴子の姿に、悲壮感は一切ない。
    彼女の結末も自然に受け入れられ、逆に死ねてよかったかのように思えてしまう読後感が、不思議だ。

  •  政治家、特に都知事としてしか知らない。作家としての彼を知りたいと思って、借りてみた。私が生まれる三年前、戦後わずか十年の作品だ。戦争に抑圧された鬱積を一気に爆発させた人々。いや、戦前、戦中にも彼らはいたのかな。ここから、太陽族が生まれていったのか。

  • ずっと気になってた

    退廃的

    男が最悪、女が可哀想、な話

  • 戦後の荒廃と理不尽、社会の不信感により退廃的な若者たちがヒトを物質主義と考えるようになった
    今の日本はあれから変わってきているのか考えさせられた

  • 第1回文學界新人賞受賞作にして、第34回芥川賞受賞作。

    表題作の「太陽の季節」を含め、「処刑の部屋」、「完全な遊戯」、「乾いた花」とどれも退廃的な若者の姿が描かれている(「ファンキー・ジャンプ」は、内容がよく分からず途中で読み止めてしまったため不明)。

    表題作「太陽の季節」は津川竜哉と英子のboy meets girlだが、英子を玩具同然に扱うその関係は所謂純愛では当然ない。
    だが最後、竜哉の「スポーツマンとしての彼の妙な気取り」で死んでしまった英子に対して、「竜哉の一番好きだった、いくら叩いても壊れない玩具を永久に奪った」と感じる竜哉の心境には、英子への愛着が感じられる。もちろんそこには英子の人権を貴ぶ意識は微塵もないが、竜哉にとっては紛うことなく愛であったのではないだろうか。

    「処刑の部屋」は、克己の良治に対する失望と期待が、不確定性(良治が闘わなかったのは、腑抜けからくるものなのか、竹島のピストルのせいなのかという不確定性)を交えて描かれている点が面白かった。その後に壮絶なリンチが始まるが、これ以降はグロテスクな描写に圧倒されてしまった(のであまりちゃんと読み込めてないかもしれない)。

    「完全な遊戯」はとうとう殺したかと思わせる一作。
    精神疾患を抱えた女を犯し、女郎屋へ売り飛ばそうとした挙句に崖から落とすストーリーには共感も同情も全くできない。だが、「完全な遊戯」という題名にもあるように、これが男たちの間で100%遊戯であるという冷めた認識で統一されている。この点において、軽はずみで猟奇的な殺人が横行している現代で一読の価値があるように思える。

    「乾いた花」は個人的には一番好きな作品だった。
    村木は出所後の何も変わらぬ娑婆の生活に退屈を覚え、冴子は何不自由のない生活に退屈を覚えていて、その退屈を通じて二人はつながっていく。人には「何者かになりたい」という思いや「自分が世界をかき混ぜていく」という思いがあるものだが、彼らはその思いが大きすぎて飼い慣らせないのではないだろうか。晴らせぬ思いを抱えたまま生き生きと生きられずに腐りそうになるのを、大きな賭けで何とか防腐する。私にはその生き方がどこか愛おしく感じられた。
    冴子の言う「人間て、なんでもっとまともな方法で、本当に生きられないんだろ」が正しく彼らの渇きなのだ。

  • 著者が死去され、氏の枕言葉となる代表作の太陽の季節を読んでみたいと思い読んでみた。
    放埒な若者の生き様を辛辣、反抗的に描かれ60数年経っても輝きを失ってない様に感じた。
    文藝春秋今年1月号に氏の手記が掲載されていた。一橋大学の同級生西村という人に薦められ書いた原稿用紙100枚程の小説が受賞し、その同級生にいたく感謝を述べていた。その賞金で洗濯機を母に買い、母を洗濯の重労働から解放し母から心底感謝され親思いの一面が記されていた。
    ご冥福をお祈りいたします。

  • 賛否両論な作品だったというが,若々しさに対する賛同も反倫理に関する批判も,どちらも正当な評価とは言い難いと思う。

    人を殴ることがいかに楽しいかという,ある種当然なことを普通に書いている作品,以上のものではない。時間も金もあったところで退屈に殺される一方で,ああいった行動に出るのはむしろ健康的(だが幼い,これが青春か)に思える。

  • 一度に読むにはかなりきつい話ばかり。
    「完全な遊戯」
    女子高生コンクリ殺人を彷彿とさせるような話で、事件が起きる前から、石原は世の中の動きを予見していたのではないか、と言われているようだが、私としては、報道されない、あるいは発覚しないだけで当時からこういう事件はあっていて、石原は噂などでそれを耳にしてインスピレーションを得ていたのではないかと、ふと思った。
    「ファンキー・ジャンプ」
    さっぱり意味がわからず途中から村上龍を読んでいる錯覚に陥る(同氏の作品にもたまにこういうジャンキーなやつあるので)。
    「乾いた花」
    後味の悪い話ばかりで、もう読み進めるのが苦痛だったが、ラストのこの作品がとても良くて救われた。
    唯一女性を一個の人間として見ている男が主人公なのだ。
    結局どの登場人物もろくなことにはならないのだが、この本に収録されているとなにか爽やかささえ感じるのだから不思議。この話は手元に置いておきたいと思った。
    『―要するに私達には何かがかけているのだ。いや、それは当節の人間が多かれ少なかれ、そうなのかも知れない。私たちはただそれを急いで焦って埋めようとしただけだ。それ自体をまともでない、といえばいえもしようが。』

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著者プロフィール

1932年神戸市生まれ。一橋大学卒業。55年、大学在学中に執筆した「太陽の季節」により第1回文學界新人賞を受賞しデビュー。翌年同作で芥川賞受賞。『亀裂』『完全な遊戯』『死の博物誌』『青春とはなんだ』『刃鋼』『日本零年』『化石の森』『光より速きわれら』『生還』『わが人生の時の時』『弟』『天才』『火の島』『私の海の地図』『凶獣』など著書多数。作家活動の一方、68年に参議院議員に当選し政界へ。後に衆議院に移り環境庁長官、運輸大臣などを歴任。95年に議員辞職し、99年から2012年まで東京都知事在任。14年に政界引退。15年、旭日大綬章受章。2022年逝去。

「2022年 『湘南夫人』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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