廃用身

著者 :
  • 幻冬舎
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本棚登録 : 351
レビュー : 94
  • Amazon.co.jp ・本 (323ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784344003408

作品紹介・あらすじ

「廃用身」とは、脳梗塞などの麻痺で動かなくなり、しかも回復の見込みのない手足のことをいう医学用語である。医師・漆原糾は、神戸で老人医療にあたっていた。心身ともに不自由な生活を送る老人たちと日々、接する彼は、"より良い介護とは何か"をいつも思い悩みながら、やがて画期的な療法「Aケア」を思いつく。漆原が医学的な効果を信じて老人患者に勧めるそれは、動かなくなった廃用身を切断(Amputation)するものだった。患者たちの同意を得て、つぎつぎに実践する漆原。が、やがてそれをマスコミがかぎつけ、当然、残酷でスキャンダラスな「老人虐待の大事件」と報道する。はたして漆原は悪魔なのか?それとも医療と老人と介護者に福音をもたらす奇跡の使者なのか?人間の誠実と残酷、理性と醜悪、情熱と逸脱を、迫真のリアリティで描き切った超問題作。

感想・レビュー・書評

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  • 打ちのめされた。

  • 乙定宏平という名前が出てくるまで、
    完全にノンフィクションだと思って読んでました。
    それくらいリアルで、読みやすく面白かったです。

  • ふー、面白かった。一日で一気に読破してまった。

    フィクションなんだけど、何だか混乱してしまった。
    (どこかの病院で行なわれていてもおかしくないような…)

    老人介護と日本の医療問題を考えると
    いつかAケアをする時代が、やってきてもおかしくないのでは…?と思った。
    同時に思ったのが臓器移植で、外国に比べて移植について
    割り切れない国日本では、前半(漆原)の治療内容では…破綻するのではないか…と思いつつ読み進めた。


    後半は編集部の矢倉氏のルポ。


    うーん、ミステリーなんだろうか。村上龍は「問題作」とコメントしている。


    私はこの本の内容を読んで、全く違うことが浮かんできた。
    この作品に散りばめられたワードを集めると…

    神戸、須磨、漆原(ウルシバラ)、怪文章とその文面、切断、鬼、Aケア、首、坂、サディズム…
    書き立てられる記事、マスコミの対応…

    これを読んでいると神戸のあの事件をベースに書いているのでは
    ないか…と勝手に思った。
    もしそうだとすると…恐ろしく問題作。

    サディズムを持つ人間が、もし医師になったとしたら…こういう事が起こるのかもしれない。

    あの時の日本中が異様な日々を送った事がよみがえった。
    後半のマスコミの情報操作とか…コワイな…。
    気持ちがグラグラして具合が悪くなりそうだった。何か薄ら寒ささえ感じた。



    『頭は わたしの 廃用身』で一気にゾーと鳥肌がたった。



    医師でこれがデビュー作とは思えない、すごい衝撃作品だな…と借りて良かったと思いました。
    わたしの中では久しぶりの「衝撃作」下手なミステリー作品よりこわい。

    参考文献の『患者よ、がんと闘うな』も読んでみよう。

  • 高齢者医療に携わる医師が、患者の苦痛と介護者の負担の軽減を目的に、麻痺した四肢(廃用身)を切断する治療を施す。
    患者や介護者は喜ぶ一方、切断に生理的嫌悪感を持つ世間からは非難を浴びる。

    フィクションだとわかって読んでいるのに、うっかりしてるとノンフィクションと錯覚してしまう。それ程までにリアル。
    医師の良心とは何か。遠からずやって来る介護崩壊に有効な手だてはあるのか。ショッキングで先進的な医療は人々に受け入れられるのか。
    という深刻なテーマを扱ってるのにどんどんページがすすみました。

    介護の当事者と、そうでない人々の間の大きな意識の違い。わが家も自宅介護をずっとしてたのですごく良くわかりました。

  • 読みながら何度も、これフィクションだよな?と確認してしまうほどのリアリティ溢れるお話でした。壊疽や麻痺によって動かなくなった身体の部分を廃用身というのも初めて知ったし、私自身は介護の経験がないのでいろいろと衝撃的な内容でしたが…介護する側される側、誰もがいつそうなるか分からないわけで、とても考えさせられました。これがデビュー作とは…という感心と、奥付が二つある手の込みようと…うん、面白かったです。

  • 廃用身(はいようしん) -脳梗塞などの麻痺で、回復の見込みがない動かない手足のこと

    老人デイケアを行うクリニックの医師が、廃用身を切断し取り去ってしまうことで障害者のQOL( quality of life)の向上を目指した。
    医療ジャーナリストがその「Aケア」(A=Amputation 切断)の存在を知り、取材していくうちに、医師に書籍化してAケアの存在の周知を勧める。

    この作品は、前半が医師によるAケアの有効性を示した原稿、後半は医療ジャーナリストがAケアを巡って起こったマスコミバッシングや事件を取材した編集部註で構成されている。

    もしかしたら、これはノンフィクションなのか?という錯覚を起こしつつ、最後まで読み進んでしまう。

    この作品に書かれていることは、全く想像もしないものだったけれど、実際に障害がある人に接してきた自分にとっては全否定できない部分がある。

    五体不満足でも五体が揃っていることが大切なのか?
    揃っている五体を障害があるからといって消し去ってしまっていいのか?

    介護する側の負担や、介護虐待を問題視している点からも、この作品は、ただのフィクションではかたずけられない重い作品である。

  • 善と悪との違いとは何だろう。たった今まで社会的に、或いは相手から善しとされてきた行為が、見方や環境、立場、背景の違いによって、一変して悪とされてしまう儚さや怖さ。医療や介護における善と悪の危うい壁が決壊する様に、どんどん引き込まれていった。正義の鉈を振りかざして、司会者やコメンテーターがしたり顔で伝えるワイドショーや報道番組で扱う事件や事象も、きっとこんなカラクリだらけなのだろうと察する。自分はこれからどう老いて、最後どのような死に臨むのだろうか。

  • 高齢者の麻痺側の手足を切断する療法を編み出した医師の告白。
    デビュー作品。

    まえがき
    第一章 玄関にガス燈のあるクリニック
     「こんな足、切り落としてくれ」
     帰国したのに就職口がない
     『異人坂クリニック』誕生
    第二章 新しい老人医療を目指して
     当てにならない痴呆判定テスト
     「もう年だから」と言わないで
     老化防止の”かきくけこ”
     「新」老人安心医療
    第三章 隠された老人虐待
     老人の「死にたい」願望
     ありふれた老人虐待
     想像を絶する虐待の実態
     「虚弱老人」の恐怖
     ある特異な虐待の一例
    第四章 なぜ切断してはいけないのか
     苛酷な老人介護の実態
     シドニーパラリンピックでひらめいた”禁断の新療法”
     親からもらった大事な身体
     「廃用身」という苦痛からの解放
     何が切断を阻むのか
    第五章 第一例目の決断
     状況の悪化
     みんなの意見
     バリアフリーの豪邸
     「モグリ診療」での切断
     思いがけない申し出
    第六章 九十歳の切断決意
     カミングアウト「後悔はしていないんです」
     デイケア参加者の反応
     「わたしも、アレ、やってもらえませんかね」
     切断ではなく「Aケア」
    第七章 「Aケアカンファ」発足
     脚なしで歩く衝撃のパフォーマンス
     「緊急Aケア」-すべきかせざるべきか
     病状が悪化して楽になる老人介護
     「Aケア適応基準」と「Aケアカンファ」
     明るい候補者選び
    第八章 これは奇跡か
     一年目の実績
     廃用身除去すること以上の効果
     「Aケア」チームvs「廃用身」チーム
     きくゑさんが日付を言った
     『五体未完成』のメカニズム
    第九章 「Aケア」の未来
     勇気ある先駆者たち
     医療は科学ではなくサービス業
     身体のリストラ、グラン整形?-「Aケア」を広めるために
     「究極のAケア」
     超高齢社会の新しい処方せん
    ★編集部註-封印された「Aケア」とは何だったのか 矢倉俊太郎

    デイサービスを併設した異人坂クリニックで院長を務める漆原糾が、利用者のQOL向上のために考え出した療法は、麻痺した手足を切断する「Aケア」だった。

    不思議なことにAケアを行った患者たちは、苦痛から解放されたり、自立したり、認知症が改善したりと良いことづくめだったが、マスコミに「Aケア」のことが暴露され、社会的問題に。

    閉塞感に満ちた高齢者医療について鋭く切り込む。


    フィクションでありながら、老人医療にまともに向き合ってこなかった日本の現状に鋭くメスを入れます。

    医師ならではの作品。

  • 編集者のとこから、面白くなってきた。
    Aケアの利点も確かにあるとは思う。でも四肢全部とか、いや一本でも、自分なら決断できるか分からない。

  • 内容がリアルすぎて小説なのかドキュメンタリーなのかわからなくなってくる。
    自分も認知症の義母の介護に心が折れそうになったこと数知れず、虐待まではいかずとも登場する介護者の気持ちはよくわかる。
    このAケアは本人より介護者側の立場からは良策なのだろうが本人にとってどうなのか考えると複雑な気持ちになった。
    誰もが年を取る。認知症や体の不自由という問題が出てきたときの事を今から真剣に考えておく必要性を痛感した。

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著者プロフィール

大阪府生まれ。大阪大学医学部卒業。作家・医師。2003年、小説『廃用身』でデビュー。小説に、『破裂』『無痛』『悪意』『芥川症』『いつか、あなたも』『介護士K』、エッセイに『大学病院のウラは墓場』『日本人の死に時』など、医療分野を中心に執筆。

「2019年 『黒医』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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