- 幻冬舎 (2005年2月24日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (272ページ) / ISBN・EAN: 9784344007413
感想・レビュー・書評
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この作品は、しをんさんの根本にあるものをはっきりと写し出している。、
「人はどんな状況においても、言葉を媒介にだれかとつながっていたいと願うものである」ということだ。
登場する7人の男女は,メールはパソコンに文章を打つ、記録媒体に音声を記録させる、カウンセリングを受ける、警察の聴取を受ける、といった方法で、自分がしてきたこと、自分がそのとき感じたことを残そうとする。
それぞれが淡々と、思いを語る。愛、犯罪など、穏やかでないものばかりが語られるけれど、その語り口調が綺麗で、どんどん引き込まれていった。
もしも自分が死ぬとしたら、やはり私たちは残したいと願うだろう。知っていて欲しいと祈るだろう。自分が存在していたことを。
たとえ自分の存在が、誰かを傷つけていたのだとしても、それでもやはり、私たちは、自分の存在を残したいと願うだろう。
早く死ぬ家系に生まれたかもしれないモモちゃんが、地球に隕石がぶつかると言う危機に攻め立てられてもなお、「長生きしたい」という。長く生きることで、本当の自由を手に入れられるんじゃないかと思うんだ、と。
しかし、その願いはかなわず、木星行きのチケットは彼の手にはわたらない。語り手である「僕」はモモちゃんにチケットを渡さず、一人宇宙空間をさまよいながら、ディスクにモモちゃんとの思い出を記録する。
一人で、誰もいない、気の遠くなるような孤独の中生きる「僕」を想像すると、すうっと、寒くなっていく気がした。
つながっていたい。つながっていたい。
強く、そう、思った。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
独白による回顧録。
語り伝えたい身の上話。
それぞれ冒頭にある昔話のあらすじがモチーフになっているような、教訓になっているような、不思議な味わいがありました。
途中から、あと3ヶ月で隕石が地球がぶつかって…という世界の終わりが迫り来る話でつながってくのだけど、これももう生き延びた人たちの思い出話なのね、と思うとちょっと怖い。
確かにいろんな方のレビューにもでてきた「終末のフール」ぽいが、こっちの方が「今は昔」のおはなしだけに暗い雰囲気が漂ってる。
八犬伝と空き巣の「ロケットの思い出」がいちばん好きかな。
「ディスタンス」は少女は本気なのに、ロリコンが気持ち悪くておもしろかった。 -
「かぐや姫」「桃太郎」「浦島太郎」など、
昔話を今風にアレンジした短編集。
そう書かれてなかったら、まったくわからないほどだけど。
むかしと言いながらも、内容は先行くSF作品。
本当に宇宙に行けるのだろうか。。。
それぞれの短編がリンクしてます。
でも1作品だけ、リンクしてるのかわからなかったけど。 -
昔話をモチーフにした7話からなる短編集。
* * * * *
最初はわかりませんでした。各話が根っこの部分でつながっていることが。
だから、この作品の本当の面白さに気づいたのは、キーワードが明示される「たどりつくまで」からでした。まったく無警戒でした。
全話を通して漂う、少し退廃的で気怠げな空気。極限状態を迎えるとき、人間は……。
いや、なかなか……。 -
久しぶりにしをんさんを読みました。この人は本当に天才じゃないかと思います。一読すると冒頭の昔話と結び付かないような気がするのに、読んでいくにつれてちゃんとその昔話になっている。しかも短編集だけどリンクしている。滅亡する地球。選ばれた人が乗るロケット。彼が語る昔の事はディスクに載って銀河を漂う。たどり着く先はどこの誰の所なんだろう。むかしむかし…こんな事があって、こんな人がいました。私たちが今耳にする昔の物語のように。とはいえ、モモちゃん、宇田さんは若干やりすぎ。
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かぐや姫や桃太郎という昔話の構成を借りて、現代あるいは未来に「むかしばなし」が生まれるとしたら……という凝った構成。それが、ただの実験で終わらず、ちゃんと作品に消化されてるのが気持ちいい。連作短編としての必然性というか、徐々に全体像が明らかになるところもうまい。カバーは白地にスミ1色なのに、めくると4色の写真があらわれるという、錦の褌のような凝った装丁がカッコイイ。
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地球は滅亡してしまい、抽選で当たった(チケットを手に入れた)人だけが宇宙に飛び立ち、命を長らえることができる。
宇宙船に乗った人たちが、どのように地球で過ごしていたか、どのように「チケット」を手に入れたか、「むかしのはなし」を物語る人々の短篇集。
切ない話が多かった。三浦さんの作品はすべてそうだけど。
どこか残酷で、だけどファンタジーっぽい色も兼ね備えていて、切ない気持ちになった。
モモちゃん、サル。
出てくる人たちはみな、何かを地球に「おいてきてしまった」「捨ててきてしまった」と後悔しながら、先の見えない旅を続けている、迷子の子供のようだった。 -
昔話を現代に書き換えたとして作り出された、幾つかの物語。
最後の長編「懐かしき川べりの町の物語せよ」
桃太郎をもとにした現代のお話が、凶暴で正直で切なくて1番心に残った。
この先何かがあって地球が滅亡するとして、その時はぜひ、その事実を世界に発表しないで一瞬で滅びさせて欲しい。
助かる可能性のある偉い人たちがいるとしたら、表向き「厳正なる抽選」とかいわなくていいから、勝手にこっそり助かればいい。
それが1番平和。 -
昔話をベースにした作品集。でももとの昔話とのつながりがよくわからなかった。
全体的に地球に隕石が追突まで、ロケットで地球から脱出した後の話。
なんだか伊坂幸太郎さん『終末のフール』を思い出した。 -
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日本昔話が背景にあるのか、それでいてロケット脱出という起こることがあり、不思議と次次にページを読み進めた。
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ぐるっと廻って、竹取物語に戻るのね。
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あとがきが一番面白かった
いま昔話が生まれるとしたら…
現代の、少し悲しい日常を送る主人公たちの短編集
悲しいも、嬉しいも、淡々と記録されている
読む方も淡々と読む
でも一つの出来事をきっかけに、すべてのお話が繋がってゆく
今はいつか昔になる、どこかに住む誰かといつか繋がるのかもしれない
最後にはジワジワと自分の生活を俯瞰して見ていた -
それぞれの話が、少しずつリンクしていて、楽しく読めた。
ロケットは異界なんだな。
でも、後半は「また隕石か」と多少飽きがきた。
「ディスタンス」の鉄八も、27までしか生きられない設定にしてほしかったな。 -
理解するのは難しかったけれど、気になって一気に読みました。2度目、3度目に読んでやっと解るような本でした。
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2014-05-21読了。まあまあおもしろかった。
伊坂幸太郎「終末のフール」を彷彿とさせる話だった。
ラブレス・・・可もなく不可もなく。
ロケットの思い出・・・これが一番おもしろかった。なんとなく最近読んだばかりの高村薫「冷血」を思い出した。男二人が、押入って泥棒していく話。人は死なないけど。
ディスタンス・・・胸くそ。小児性愛者の犠牲者の話。子を持つ親になった今、この手の話が本当にいやになった。小説であっても読みたくない。
入り江は緑・・・ここでいっきにSF化。話自体はおもしろくないんだが、SF化したことによって、このあとどうなる?と引き込まれる。
たどりつくまで・・・この話の主人公はFTMだと思ったけど、今読み返してみたら、MTFなのだと分かった。体は男性だけれど、心は女性。とすると、タクシーに乗ってくる方の女性は、ディスタンスの主人公か?
花・・・可もなく不可もなく。
懐かしき川べりの町の物語せよ・・・・「登場人物の誰にも感情移入できない話がまた出てきたよ」と思いながら読んだ。アウトローな登場人物は苦手。ましてや、中高生なんて、ガキじゃん。もっと苦手。
あとがきを読んで、ようやく理解した。一つ一つは日本の昔話のパロディというか、本歌取りというか、昔話をモチーフに語り変えたものなのだそうだ。
ようやる。そこまでわかって、もう一度読み返すとおもしろいかもしれないけど、もう読み返さない。 -
地球に隕石衝突の危機が迫る時代の短編7作。書き下ろし。
・ラブレス
・ロケットの思い出
・ディスタンス
・入江は緑
・たどりつくまで
・花
・懐かしき川べりの街の物語せよ
・あとがき
人間は何のために生きる営みを継続するのか?
最後が見えた時、人間はどうするのか?
劇的ではなく、静かにうごめく人間の心理をうまく表現した作品だと思います。 -
ちょっとおどろおどろしくも引き込まれるファンタジー
著者プロフィール
三浦しをんの作品
