- Amazon.co.jp ・本 (267ページ)
- / ISBN・EAN: 9784344007413
感想・レビュー・書評
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この作品は、しをんさんの根本にあるものをはっきりと写し出している。、
「人はどんな状況においても、言葉を媒介にだれかとつながっていたいと願うものである」ということだ。
登場する7人の男女は,メールはパソコンに文章を打つ、記録媒体に音声を記録させる、カウンセリングを受ける、警察の聴取を受ける、といった方法で、自分がしてきたこと、自分がそのとき感じたことを残そうとする。
それぞれが淡々と、思いを語る。愛、犯罪など、穏やかでないものばかりが語られるけれど、その語り口調が綺麗で、どんどん引き込まれていった。
もしも自分が死ぬとしたら、やはり私たちは残したいと願うだろう。知っていて欲しいと祈るだろう。自分が存在していたことを。
たとえ自分の存在が、誰かを傷つけていたのだとしても、それでもやはり、私たちは、自分の存在を残したいと願うだろう。
早く死ぬ家系に生まれたかもしれないモモちゃんが、地球に隕石がぶつかると言う危機に攻め立てられてもなお、「長生きしたい」という。長く生きることで、本当の自由を手に入れられるんじゃないかと思うんだ、と。
しかし、その願いはかなわず、木星行きのチケットは彼の手にはわたらない。語り手である「僕」はモモちゃんにチケットを渡さず、一人宇宙空間をさまよいながら、ディスクにモモちゃんとの思い出を記録する。
一人で、誰もいない、気の遠くなるような孤独の中生きる「僕」を想像すると、すうっと、寒くなっていく気がした。
つながっていたい。つながっていたい。
強く、そう、思った。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
独白による回顧録。
語り伝えたい身の上話。
それぞれ冒頭にある昔話のあらすじがモチーフになっているような、教訓になっているような、不思議な味わいがありました。
途中から、あと3ヶ月で隕石が地球がぶつかって…という世界の終わりが迫り来る話でつながってくのだけど、これももう生き延びた人たちの思い出話なのね、と思うとちょっと怖い。
確かにいろんな方のレビューにもでてきた「終末のフール」ぽいが、こっちの方が「今は昔」のおはなしだけに暗い雰囲気が漂ってる。
八犬伝と空き巣の「ロケットの思い出」がいちばん好きかな。
「ディスタンス」は少女は本気なのに、ロリコンが気持ち悪くておもしろかった。 -
「かぐや姫」「桃太郎」「浦島太郎」など、
昔話を今風にアレンジした短編集。
そう書かれてなかったら、まったくわからないほどだけど。
むかしと言いながらも、内容は先行くSF作品。
本当に宇宙に行けるのだろうか。。。
それぞれの短編がリンクしてます。
でも1作品だけ、リンクしてるのかわからなかったけど。 -
昔話をモチーフにした7話からなる短編集。
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最初はわかりませんでした。各話が根っこの部分でつながっていることが。
だから、この作品の本当の面白さに気づいたのは、キーワードが明示される「たどりつくまで」からでした。まったく無警戒でした。
全話を通して漂う、少し退廃的で気怠げな空気。極限状態を迎えるとき、人間は……。
いや、なかなか……。 -
久しぶりにしをんさんを読みました。この人は本当に天才じゃないかと思います。一読すると冒頭の昔話と結び付かないような気がするのに、読んでいくにつれてちゃんとその昔話になっている。しかも短編集だけどリンクしている。滅亡する地球。選ばれた人が乗るロケット。彼が語る昔の事はディスクに載って銀河を漂う。たどり着く先はどこの誰の所なんだろう。むかしむかし…こんな事があって、こんな人がいました。私たちが今耳にする昔の物語のように。とはいえ、モモちゃん、宇田さんは若干やりすぎ。
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かぐや姫や桃太郎という昔話の構成を借りて、現代あるいは未来に「むかしばなし」が生まれるとしたら……という凝った構成。それが、ただの実験で終わらず、ちゃんと作品に消化されてるのが気持ちいい。連作短編としての必然性というか、徐々に全体像が明らかになるところもうまい。カバーは白地にスミ1色なのに、めくると4色の写真があらわれるという、錦の褌のような凝った装丁がカッコイイ。
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地球は滅亡してしまい、抽選で当たった(チケットを手に入れた)人だけが宇宙に飛び立ち、命を長らえることができる。
宇宙船に乗った人たちが、どのように地球で過ごしていたか、どのように「チケット」を手に入れたか、「むかしのはなし」を物語る人々の短篇集。
切ない話が多かった。三浦さんの作品はすべてそうだけど。
どこか残酷で、だけどファンタジーっぽい色も兼ね備えていて、切ない気持ちになった。
モモちゃん、サル。
出てくる人たちはみな、何かを地球に「おいてきてしまった」「捨ててきてしまった」と後悔しながら、先の見えない旅を続けている、迷子の子供のようだった。 -
日本昔話が背景にあるのか、それでいてロケット脱出という起こることがあり、不思議と次次にページを読み進めた。