半島を出よ (上)

著者 :
  • 幻冬舎
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  • Amazon.co.jp ・本 (430ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784344007598

感想・レビュー・書評

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  • やっぱり面白いわ~。こういうの書くから村上龍を止められないんですよね。
    もうイシハラとかめちゃくちゃ気持ち悪くてこんなキャラクターを作ってしまえるところが本当すごい。

    なんか発売当初の感想が「何知ったかぶって語ってんの、ププ」みたいなレベルの低いこっぱずかしいものですが、まあいいか。どうせ誰に見られるでもなし。

    10.08.18 再読


    頭の悪い表現ですがここ10年、村上龍は実にイケてなかった。
    援助交際に乗っかったりサッカーに乗っかったり坂本龍一に乗っかったり引きこもりに乗っかったり。
    『乗っかる』事はマーケティングの結果であって村上龍はそれを実にエキサイティングに噛み砕いて作品を排出できる作家ではあったけれど、ここ10年、彼は実にイケてなかった。
    それはその期間の彼の作品群を見ても明らかであるし、実際の作品も「ビミョー」としか言いようの無い暗いだけだったり、説教臭かったり、読む気すら起こらないような作品が多かった。

    『コインロッカーベイビーズ』で味わう破壊衝動と高揚感
    『走れ!タカハシ』の軽いテンポ
    『コックサッカーブルース』で描かれる偏った性癖
    『初めての 夜二度目の夜 最後の夜』で感じる獲得と喪失

    これら過去の作品を中途半端になぞるだけの10年だったように思うのです。
    作品から感じるナルシズムと思い込みの激しさはどこへ行ってしまったんですか!?
    『13歳のハローワーク』が100万部売り上げたとしても私はそれを小説家である彼の評価に直結できないのです。「やっぱり、乗っかるところは乗ってきたな。」それが私の感想。

    しかし、『半島を出よ』は違った。
    やっぱり村上龍は乗っかった。
    でもこれは凄い。

    話は変わるのですが、日本でも特にメジャーな小説家と言えば、村上春樹・吉本ばなな・村上龍と言っても良いでしょう。この3人の作品に共通する事は一つ 『行って、帰ってくる話』 。これだけ。

    村上春樹は『行って、帰ってきた』後、周囲に上手く溶け込めない話。
    吉本ばななは『行って、帰ってきた』後、何だかんだで上手くやっていける話。
    村上龍は『行って、帰ってきた』後、なんてどうでもいい話。

    つまり、村上龍は『後』をどうにでも変化させて作品を出してきたのですね。 しかし『半島を出よ』はそもそも‘行って、帰ってくる話’ですらありませんでした。

    後編へ。

  • 面白い!アウトサイダーが良く考え抜かれた設定。北朝鮮って別にタブーじゃないんだよね。

  • 村上龍はえぐいけどおもしろかった。

  • ただ単に攻めてくるわけでなく、計画的に、そして「反乱軍」と名乗っているところに、
    そうか。その手があったか。とうならされた。

    とにかく、著者の想像力というか、
    妄想力や取材力に天晴れと言わざるを得ない。

    ありそうな話と言えば、ありそう。
    現状、起こってもおかしくないとは思う。

  • この人(村上龍)はすごい、と思った。描写はどぎついけど、どこか静かで、最後まで一気に読んだ。

  • 人間はこんな巨大な物語を紡ぎ出せるのか!と思ったのは村上春樹の『世界の終わりとハードボイルド・ワンダーランド』以来。

    村上龍の作品は5,6冊目かな?実は大学時代に購入したものの、途中で挫折して数年間放置されていました・・・今回やっと読了。読んでよかった。

    自分たちが気づいていないだけで、本当は強大な暴力や武力によって支配されている。月並みだけど、そういう大切なことって失ってからしかその大切さに気づかない。そして、気づいた時には「もう遅い」。何故そんな大事なことに気づかないかというと、自分たちがマジョリティであることに安心しきっているからなのかもしれない。

    村上龍は凄まじいリアリティで前半のページを埋め尽くしていく。眼前に退廃していく日本が見えてくる。実際にそういう世界が現れる。自分が所属する「マジョリティ日本」が経済的に腐敗し、挙句の果てに北朝鮮武装コマンドに占拠されるとき、「頑張れ、日本を守れ」と心のなかで叫ぶ自分に気付かされる。

    マイノリティであるがゆえに「暴力によって支配されている」ことを認識している集団だけが、その脅威に真っ向から立ち向かう爽快さが癖になる。

    内田樹先生が「日本人が国益を損なってでも守るべきものはひとつしかありません。それは日本です」とおっしゃったことを思い出し、政治家は日本を守ってくれるだろうか、と心配になった。

    すでにAmazonで『昭和歌謡大全集』『コインロッカー・ベイビーズ』を発注。楽しみだ!

  • 地元の福岡が舞台になっていた。
    前から読みたかったが、舞台が福岡だとは知らなかった。
    馴染みのある地区が、どんどんと荒れ果てていくのを見るのは少しさびしいが、この後どのように展開していくのかという事に注視していきたい。

  • この本が2005年に書かれている事が驚くべきこと。
    日本は現在、確実に右傾化に向かっている。

    上巻では北朝鮮にかなりやられている。チクショーとストレスは溜まる!

  • 村上龍さんの長編小説です。

    印象に残った部分を引用します。

     一部例外を除けば、公開されている情報でたいていのことがわかる。特にアメリカや西ヨーロッパの情報は雑誌と新聞とインターネットでほとんど把握できる。スパイが命を賭けて敵国に潜入し重要機密を盗み出すというのは映画や小説の中のことで、その国の新聞と雑誌を正確に分析するだけで必要な情報の九十九パーセントを入手できると、多くの国も情報機関の新人用マニュアルの一ページ目に書いてある(P69)。

     それぞれ専門があるのだから知らないのはしょうがないが、詳しい人間に聞こうとしないのは大問題だった(P193)。

     イシハラのグループのみんなも同じだ。拳銃を持っている相手に拡声器で怒鳴りながら向かっていったりはしないし、そのあと急に態度を変えてバツを受ける囚人のように身動き一つしなくなるということもない。それは、ヤマダやモリや、イシハラのもとに集まる他の仲間たちは、小さいころからずっと今の福岡ドームの観客のような扱いを受けてきたからだ。支配が剥き出しになっている状況で生きてきたから、それに慣れているのだ。物心ついたときからいつも周囲に圧力をかけられ、指示に従わなければ罰を与えると脅され、お前は無力なのだと、恐怖と痛みと共に刷り込まれてきた。この世のすべての人はもともと暴力的な何かの人質なのだが、ほとんどの人はそれに気づかない。根本的にはすべての人間がもともと暴力で支配されているのだが、そのことがわからない。だから野球場で武装ゲリラに襲われ、支配される側に分類されて真実の世界に向かい合うと混乱して、考えるのをやめてしまう(P213)。

     ヤマダがいた施設でも暴力をふるう男の看護師がいて、誰か一人子どもが殴られると全員に緊張が伝わってすぐに支配を受け入れた。そういった無慈悲なムードはどこかにふいに発生したり、どこからか運ばれてくるわけではない。ただ目に見えないだけで普段もちゃんとそこにある。それは、加害者と被害者のほんのわずかなアクションとリアクションによって、まるで霧が晴れるように姿を現すのだ(P226)。

     山際は大勢のスタッフの前で木戸に何度も罵倒された。七十年近く生きてきた山際は、木戸のようなタイプを何人も見てきた。そういった連中は例外なく貧しい家庭に育ち、父親との関係が悪く、強いコンプレックスと権力欲を持っていた。学問や仕事において非常に努力するが、他人への過剰な気遣いがあり、そのカタルシスとして弱いものにむやみに威張るのだ。皮肉な話だが、日本政界の外からやってきたと言われる国際的なヒーローの若き内閣総理大臣は、日本的政治家の典型だったのだ(P272)。

  • 政治経済がおかしくなると日本国民が不幸せになるという基本を大学1年生の僕に認識させてくれた本。原点。大変ありがたい本。小説としても非常に面白い。引きつけられる。

著者プロフィール

一九五二年、長崎県佐世保市生まれ。 武蔵野美術大学中退。大学在学中の七六年に「限りなく透明に近いブルー」で群像新人文学賞、芥川賞を受賞。八一年に『コインロッカー・ベイビーズ』で野間文芸新人賞、九八年に『イン ザ・ミソスープ』で読売文学賞、二〇〇〇年に『共生虫』で谷崎潤一郎賞、〇五年に『半島を出よ』で野間文芸賞、毎日出版文化賞を受賞。経済トーク番組「カンブリア宮殿」(テレビ東京)のインタビュアーもつとめる。

「2020年 『すべての男は消耗品である。 最終巻』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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