半島を出よ (下)

著者 :
  • 幻冬舎
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レビュー : 234
  • Amazon.co.jp ・本 (496ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784344007604

感想・レビュー・書評

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  • 先ずは長かったなあという印象。ただ、最近の北朝鮮の状況を見ていると、妙にリアルに感じてしまいました。日本政府は、何もできないんだろうなあ、アメリカは絶対に助けてはくれないだろうな。日本の経済が本当の意味で崩壊したら、日本の世界での位置は、どうなるんでしょうと考えてしまいました。

  • 村上龍氏の大作「半島を出よ」の下巻です。今(2016.1)から10年以上も前に書かれた作品ですが、この様な事件が起きたらどうなるかについて、考えさせられた小説でした。

    福岡ドームのプロ野球開幕戦で観客を拘束した状態で、その近くのホテルを接収して、市長に独立宣言をさせる、必要なお金は、不正蓄財をしていた人々を逮捕して彼らから拠出させる、よく考えられたストーリーでした。

    飛行機でやってきた先発部隊に続いて、船でやってくる10万人以上の人が上陸したらどうなるかと、ハラハラしながら下巻を読み進めました。意外な展開で、日本は難を逃れることができた、というのも面白かったです。

    この様な異常な状態で活躍する人は、歴史の例を見る通り、いわゆる「正規」では無い人達のようですね。これがパラダイム変換というものでしょうか、これから不透明な時代を生きていく私達にとっても参考になる小説だと思いました。

    以下は気になったポイントです。

    ・趣味に必要なのは、時間的・経済的・精神的余裕である(p63)

    ・住民票コードを納税者番号に転用、さらに民間利用が認められた後は、もう歯止めが利かなかった。税金の申告、証券取引、年金の一元化、健康保険や生命保険業務、銀行の名寄せ、仮名口座開設防止等、問題は、様々な個人情報がブドウの房のように住民票コードという11桁の番号の下にぶら下がっていること(p89)

    ・他の人からの助言に頼ってしまうと、自分で考えなくなる。まず最初に自分で考える。(p145)

    ・鳥の腸管は、インフルエンザにとって理想的な生息場所で、あっという間に増殖して糞とともに次の宿主に移る。そうやって新しい世代のインフルエンザウィルスは他の鳥が泳いでいる水に溶け込み、感染していない水鳥がその水を飲んで新しい宿主になる(p221)

    ・ニューヨークのテロが当時のブッシュ政権の自作自演だったという陰謀説の中心にあったのが、V字型成形爆破線、であった。プロの発破屋たちは、このことを話さなくなった(p251)

    ・超高層ビルの場合、軽量鉄骨の開発で、90年代位から中高層部分に鉄筋コンクリートを使うことは殆どなくなった。(p253)

    ・ボツリヌス菌の毒素は最も強い、青酸カリの約一千万倍、1グラムあれば1700万人を殺せる。ヤドクガエルの毒は青酸カリの5000倍の強さで、コブラやサリン、ウミヘビ、VXガス、ふぐ毒よりも強いが、中南米のジャングルから離れると、その毒は消えてしまう(p260)

    ・脳には脳関門というバリアがあって、変な化合物は通さない仕組みになっているが、覚醒剤と麻薬はらくらく通る。窒素を含んだアルカロイドという有機化合物で、脳内物質である、アドレナリン、セロトニン、アセチルコリンもアルカロイドなので。皮膚がはがれた傷口からの侵入が楽だろう(p311)

    ・儒教では、自殺は魏びしく禁止されている(p341)

    ・12万人の本隊を攻撃すれば本当に液化天然ガス基地はテロ攻撃を受けるのかという問いは一切なく、液化天然ガス基地がテロ攻撃を受けるので、高麗遠征軍(先発隊500人)を攻撃できない、という論理のすりかえを行った(p442)

    2016年1月9日作成

  • 村上龍の最高傑作。

    凡庸な日常にいる凡庸な人間が、凡庸を破壊する出来事に遭遇する。その対応もまた凡庸だ。そこに、凡庸を突き破る傑出した非凡が登場する・・・
    上記テーゼは「希望の国のエクソダス」と通底しているように思われる。

    福岡ドームの中にいる私は、どうするだろうか。傍観を決め込むだろう。
    だって、どうせ抵抗しても失敗する確率のほうが遥かに高いし、責任をとりたくないもの。リターンが少ない気もする。どうせ誰かがやってくれるだろう。

    イシハラグループに憧れる自分もいる。

  • 長かった。。。今まで国家、警察、軍隊など国をあげて片付けようとして実現できなかったことを、「世間からずれてる」イシハラグループがたった数人でやっつけしまうという。。。ある意味、村上龍氏の日本に対する皮肉が込められとるんかな。

    我が街、福岡の百道地区がめちゃくちゃになっとるやん!w

  • 上下巻を読み終えた。キャッチコピーに村上文学というような表現があったが、エンターテイメント小説に近いかな、という気もした。
     北朝鮮の「反乱軍」が福岡市を急襲し占領統治する、という大胆な設定とストーリー展開で、ポリティカルフィクションと割切って読むべきかもしれない。

     ただ北朝鮮の内情、軍事情報、建築技術、福岡市の地勢などに関する膨大な取材に基づいた緻密な描写は確かな読み応えを保証する。特に私は福岡市内に4年ほど在住していたので、作品の舞台は全て手に取るように風景が浮かんだ。福岡市民には格別の面白さを味わえるはずだ。さらに、西日本新聞社や、NHK福岡など、諸団体が架空の団体名でなく、実名で表現されるのも非常に小気味よかった。

     未読者の中には、他国の侵略者に対して立ちあがった少年達、という部分に愛国ナショナリズムがテーマなのか?と勘ぐる向きもあった。が、それは違っている。むしろ、国家やマジョリティの本質がいかにいい加減なものか、ということが、日本政府が事勿れ主義と無策で福岡切り離しに傾いていく設定等によって、浮き彫りにされていく。

     そして、私が強く印象に残ったのは、作者がティーンエイジャー達に寄せる強い共感と期待の心情である。少年達が、異端と暴力性と純粋性を体現しながら疾走し、クライマックスで爆発する。
     「コインロッカーベイビーズ」に充満していた暴力の匂い。そして「13歳のハローワーク」にも窺える、作者の若者達と未来への関心の高さ。本作でも、こうした一貫した作者の姿勢を改めて感じることができた。
     下巻のクライマックスで、少年達と高麗遠征軍とのゲリラ戦闘の描写は、読みながら自分のこめかみのあたりにきな臭い匂いを錯覚してしまう程の迫力であった。少年達のゲリラ戦の結末には、凄まじいカタルシスを味わうことが出来た。

     読後しばらく経った今も、少年達が戦う壮絶な場面が、脳裏に映像としてフラッシュバックしてしまう。そういう表現力はさすがである。
     思えば、暴力描写と物語のカタルシスを強烈に体感させるということでは、ある意味で文学体験に価するのかもしれない。

  • 上巻は登場人物覚えたりするので
    必死で内容があまり入ってこなくて
    退屈してしまったけど
    下巻は面白くて一気読みしてしまいました。
    イシハラグループのキャラ…
    なんでこんな強烈なキャラ達と
    展開をつくっていけるか…
    ほんとに最後の最後まで
    しっかり読ませていただきました。

  • 小説家も体を張って闘ってるんだ、と思った。村上龍という人を、この作品を読んで、いい人だな、と認識しました。
    ラストの方の、耳の出てくる描写はびっくらこいた。

  • 戦闘場面で心臓のバクバク感がはんぱ無かったです。本を読んでこんなにアドレナリンが出るものなのかと。手に汗握る興奮とはこういうことかも。

  • 2014.10.21読了。
    今年35冊目。

  • 上下通しての感想。すごかった!!なんて本当に安直な感想のように響いてしまうけど本当にすごかった!なにがすごいって圧倒的な情報量に裏付けられた設定と、緻密に計算された構想。覚えきれないほどたくさんの人物が登場し、それぞれの視点から語るのだがそのどれもが無駄でなく物語を構成する必須のピースになっている。高麗遠征軍側の人物と日本政府側の人物が語る部分が物語の多くを占め、それに対してイシハラ組の人物が語る部分が少ないのも村上龍の計算の内だと思った。
    善悪に悩み、自らがとる行動ひとつひとつに口実を見つけ、拠り所としたがる日本政府、そして本州の日本人。自らの中に絶対の善悪を持っていてその善の範囲であれば人を制圧することにすら何の躊躇いも持たない高麗遠征軍。そして善悪という概念を持たず「やりたいことをやる」、新種の人間とも言うべきイシハラ組。
    最初はグロテスクだ、と思いおそるおそる読んでいたもののだんだんそういったシーンに動じなくなり、イシハラの言葉に共感し、「何が怖いのか突き止めないと進めない、そうだよなぁ」とヒノの心理に頷き頷き、ついにはイシハラ組を応援してしまう。やがて、周囲と協力することなんてついぞなかった彼らのうちに生じる微妙な変化に感動させられたりもする。しがらみに囚われずそれぞれの信念で動く彼らが戦う姿やもたらす結果が本当に爽快で、残り少ないページを見て切なくなった。正しいか正しくないか、利益があるかないかなど大した問題ではないと言ったらそれこそ問題かもしれないけれど、そういうときもあるんだと痛感させられた。頭の中がもやもやする程悩み、人生の岐路のような状況に立たされたときイシハラの言葉を思い出すだろう。

    「それは、お前の自由だ。」

    読んでよかった〜!きっとまた読むでしょう!

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著者プロフィール

1952年長崎県生まれ。76年に『限りなく透明に近いブルー』(第75回芥川賞受賞)でデビュー。2003年には、514の職業を紹介した『13歳のハローワーク』が125万部を超えるベストセラーに。財政破綻した近未来日本を舞台にした『半島を出よ』(05年)では野間文芸賞を受賞。10年には『歌うクジラ』(毎日芸術賞)を電子書籍として刊行。 近著に『55歳からのハローライフ』、『オールドテロリスト』などがある。16年に『日本の伝統行事 Japanese Traditional Events』を刊行。

「2018年 『収録を終えて、こんなことを考えた』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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