野菜ソムリエの美味しい経営学 (幻冬舎セレクト)

著者 :
  • 幻冬舎
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  • Amazon.co.jp ・本 (219ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784344008588

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  • 商社で働いていた著者が、このままでは日本の農業は危ないと感じて、商社をやめて、野菜の流通のビジネスに乗り出し、2001年8月に日本ベジタブル&フルーツマイスター協会を立ち上げ、「野菜ソムリエ」の資格制度を作り出した。
    日本の農業者は、経営感覚がなく、販売の努力もせず、プロダクト戦略を持たないと指摘する。
    青果物のプロ、流通業者や種子業者は、「種子の情報、栽培情報、価格変動、産地の生育情報」という商品情報が持っている。実際には、「規格が揃っている。見た目がいい。日持ちがいい。」ということにポイントを置いている。しかし、生活者は、「どういう食べ方が美味しいのか?科学的な根拠に裏付けられた栄養価はどうか?安全性がどうか?」を知りたがっている。
    生産者、物流者、小売の人たちの視点と生活者の欲している情報とズレがある。そういうところから、野菜ソムリエの仕組みを作ることで、共通の価値観を形成できるのではないかと考えた。
    そのソムリエになる人は、多くは主婦などの個人で、生産者や物流者ではなかった。
    現在ソムリエの資格を持っているのは、55000人というから、社会的な影響力がありそうな感じである。その資格を取るためには、講師は、管理栄養士、調理師、青果物流業者、カラーコーディネーター、種子・育種の専門家であり、幅広く野菜に関わる人である。
    そういうことで、ソムリエは、ヘルシーな食生活、料理の食材や見せ方、食べ方のヴァリエーションなどへの食の提案、生活提案、そして売り場の提案ができるようになるという。
    スーパーの大量生産、大量消費の中で、農産物は規格化されて、野菜に関する情報発信がなくなったと指摘する。食文化、調理方法、旬の情報、野菜の栄養情報などをもっとファッショナブルに的確に生活者に届けることが重要だという。
    地産地消、ローカルフード、地元食などが日本独自のスローフードであり、多様性を継続するために必要な取り組みをする必要があるという。
    この本を読みながら、世界でも珍しい野菜ソムリエの資格を作り上げたことは面白いと思った。その講義内容がもっとオープンになればいいと思う。
    美味しい経営学という表題は、資格ビジネスは美味しいという風に読めた。

  • 逗子図書館にアリ

  • TVで直営店(野菜ソムリエのいる店 Ef)を紹介していた。野菜ソムリエと呼ばれる人が対面販売で特徴や美味しい調理方法を説明しながら野菜を薦めていた。興味を持って本書を見つけ、読んだ。
    筆者は商社マン時代に有機農産物を取り扱うセクションを立ち上げ、日本の農産物の実情に触れ、強い危機感とビジネスチャンスを見出し独立する。
    消費者向けの青果物の多くがスーパーに販売チャネルを移し、見た目や日持ち、他たちや大きさが揃っていることなどが重視され、消費者が本当に知りたいおいしさや栄養価、安全性などは軽視される傾向になり、その情報も伝えられなくなてしまった。従来の八百屋も知識や情報があり、対面販売でそういった情報を伝えられるにもかかわらず、それをうまく伝えるコミュニケーション能力に書いている。そこで、フルーツ&ベジタブルマイスター協会を設立し、資格制度を制定して、成果物の情報を持つ人材の育成を目指した。「ラグジュアリー」商品に当たる、京野菜などのブランド野菜は主に高級レストランや料亭に出荷され、生産量も僅か。その他の多くが「コモディティ」商品として一律に安価で流通しているが、地方にはその生産量少なさや、おいしさ、特徴などのアピールが足りないためにまだ知られていない「スペシャリティ」となり得る野菜が多く存在することに注目し、「地野菜」として直営店Efで積極的に販売している。ここでは取り扱いアイテム数を通常のスーパーの300に対し、60前後まで絞り、メニュー提案などでうまく対応し、品切れ等のチャンスロスに対しても寛容な態度を取り、在庫ロスを抑えて収益アップを図っている。
    最後に、日本の農業に対して広域大規模法人の設立により、生産者個人では困難なリスク回避と他産業では当たり前のマーケティングアプローチができるプロフェッショナルの導入を低減している。

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