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本 ・本 (252ページ) / ISBN・EAN: 9784344011786
感想・レビュー・書評
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・論理の重要性
アートの本場であるアメリカの姿勢は〈謎解きゲーム〉。快感に溺れてる富裕層の目を見開かせるような新しい概念の創造が求められている。そこで論理が重要になる。歴史の文脈の理解と提示、自分の好きの根拠の究明、それを他国の言葉に翻訳すること、敵地の論理の分析。これらがあってこそ独創的な個人のアイデンティティというものが評価される。つまり作品の美的な受容は理論的な理解の上に成り立つ。
・金とアート
アートは人間がすることだからまずもって金がいる。金は最強のコミュニケーションツールであり、芸術家の最後の壁。これが目的になってはいけないが、手段としてなければ評価を引き寄せられない。なぜなら現代美術は概念の遊びでありコミュニケーションなので、同じコミュニケーションである金銭がものをいうから。
・アーティストの心得
歴史を学べ。自分の好きを徹底的に究明しろ。その好きを歴史に接続すれば自分が作りたいものが自ずと見えてくる。そして凡人はひたすら努力しろ、宮崎駿のように。あとは集団を作ってパトロンを獲得しろ。パトロンから独立した孤高の芸術家像は近代に特有のもので、より広範な歴史的文脈からすればパトロン+集団制作が定石。
・天才はマティスのみ
本文で真の天才として示されているのはマティス。彼は芸術家が自由になるプロセスを表現しているとされる。逆にピカソなんかは腕力で描いてるから人間の限界を示しているとされる。ここら辺は感性的な説明しかなかったが、深掘りできたら面白そう。
・セクシュアルな存在としての花
『侍女の物語』で「花は植物の性器だ」と言われていたことを思い出す。村上は大学受験予備校での模写でそのことに思い至り、それがあの特徴的な花のキャラクターの誕生に繋がったそうだ。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
ブックカバーは必須だけど読みやすい。違和感のある点も勉強になる点も多くて面白かった。
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難しい本だ。
村上隆が言いたいことは非常によくわかるし、説得力もある。
難しいのは、村上隆がこの本でたくさんの隠し事をしているという点だ。
アートが欧米では歴史的文脈に基づいた一種の商品であり、
アーティストとして評価されるということは、
そうした文脈と市場を把握した上で、
ルールに則った(そのルールを如何に奇麗に壊し、新しいルールを提案するか含めた)作品を作る事だ。
という主張は非常に説得力に富んだ、面白い視点だと思う。
また、そうした視点を欠き、市場原理とかけ離れながら、
大学という安全な空間でぬくぬくと身内受けだけでやっていける日本の芸術界に対する厳しい批判も、多大な有効性を持っているだろう。
こうした身も蓋もなく、なおかつ面白い議論は僕も大好きだ。
一方で、村上隆はこの本でたくさんの隠し事をしている。
まず第一に、じゃあ日本人アーティストはどうすればいいの?という疑問に関する具体的な答えは無い。
世界のアート市場の現状を把握しろ。という言葉はある。
でも、それをどのように行えばいいのか?という具体的な答えはない。
端々に村上の体験に基づいた提言はあるが、それらは必ずしもまとまり体系だってはおらず、
世界のアート市場の現状を把握するメソッドに落とし込むヒントとしてこの本を読む読者にゆだねられている。
本書が難しい書だと感じた点のひとつがここにある。
第二に、本書はあまりにもアート作品を商品として論じすぎているように感じられる。
後半、マティスを賞賛するあたりの文章では、村上隆自身もアートにただの商品以上の価値を感じていることが伺えるが、
商取引における額面以上に、美術作品に関する"価値"を論じることは、
村上隆自身も有効な論述を構築できず、誤摩化したのではないか。という印象を感じる。
本書はアートに関して語った本のなかでも、誰にでもわかる言葉で語った相当にわかりやすい本である点で希有な物であり、
現代において疾駆する芸術家が、自らの内に抱いた矛盾すらも内包し、読者に突きつけた、相当に面白い本であるのは確かだと思う。 -
自伝的な作品で、
怒りを表現
という感じ。あんまり面白くなかった。 -
芸術の世界は研究にも通ずるように思う。
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2025年5月16日、東大卒デザイナーの松井勇樹(まつい・ゆうき)さんからインスタグラムの通知がきて、ストーリーズでYouTube動画の告知があった。その動画が下記ので、「在学中に読んで 人生が動いた本を紹介してます(本 羽)」ってコメント付いてた。
【おすすめ本】年間100冊読むデザイナーがお すすめする本5選!
https://youtu.be/dpNwkeZyWT4?si=VjkvD7kOKQ4ApXUk
・自分の中に毒を持て
・0秒思考
・海辺のカフカ
・アルケミスト
・芸術起業論 -
ストーリーを持ったマーケティング
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2024/16
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現代アートの売り方について著者の考えとどのように実践してきたかが書かれている。
芸術は文脈や作者のアイデンティティとの関連を説明できなくては物体に過ぎない。
村上隆についてはオタクカルチャー的作品を作る人、くらいの認識しか無かったので知らない側面を知ることができた。
実は日本画出身だとか36歳まで貧乏していたとか
表紙が著者の顔写真のドアップなので部屋に置いておくと存在感がある… -
我が座右の書です。
私は本書を読んで、美術制作を始めたようなものです。
美術に興味がある方は必読でしょう。 -
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著者は芸術家であり商売人であることがわかった。市場で評価される作品を作るために、欧米のアートの評価基準を知り、歴史を学んで文脈に沿って作品を制作している。ロジックを積み重ね、マーケティング的な視点を持っている。また、若手アーティストの育成もしており、仕組みづくりも行なっている。日本の有名アーティストの中でいち早くNFTに目をつけ実験していることも納得できる。
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正しいし、ヒカルとコラボする論理もわかった。
だけど、やっぱりYouTuberと同じ属性な感じというか自分とは相容れない存在だと思う。オタクではあるけども。 -
日本人が知らない芸術の一面を詳しく説明した本
芸術家として世界的に活躍したい人に役立つことが書かれている、もちろん美大生や絵が好きな人にも面白い
新鮮な視点だったのと、経験に基づいていて信頼できる内容だと思ったため高評価
ただ、村上隆さんは2020年時点では少し昔の社会を生きていると感じた
今はオタクの文化も広がりネットも広がったので違う考え方もできると思い、星4
時代背景を考えながら読むと良いと思う -
本作の方は、以下の点で興味深い。
1.芸術家村上隆がどのように生まれたかが分かる。
具体的に言えば、どのようなコンプレックスを持っているのか。
2.「リトルボーイ」という文脈
戦後日本の社会的な文脈の位置づけをここまでクリアーにした人は他にいない。
感動。 -
09.8.8 石井さんブログ
■超おすすめ本■:シナリオを創り上げる「芸術起業論」村上隆 【書評by多読書評ブロガー】
テーマ:書評:哲学・思想・科学
多読書評ブロガーの石井です。
1億円の値がついたフィギアなどのポップアートで有名な村上隆さんというアーティストの書いた芸術論です。
最近芸術家に絡むプロデュース論や教育論などの本を読み漁ってきましたが、本書は白眉です。
書き上げるのには、4年の歳月を必要としたということ。「言葉」で芸術の価値を高めるべきだという哲学の元、同時にその内訳を披露しながら自らのセルフブランディングを高めるという緻密に計算された熱い本です。
芸術というと「独創性」だとか「オリジナリティ」という「つきぬけた」ところに目が行きがちですが、作品の価値を高めていくためのシナリオ作成、チームによる作業など全てが、「買い手」側の心にどう突き刺さるかということをきちんと計算して構成していることが分かります。
芸術起業論
チームで価値とシナリオを作っていくプロセスや、ゼロから新しい発想を生みだす際の思考の原点などの舞台裏を赤裸々にかつシンプルに解き明かしてくれています。
■価値・ブランドの源泉は「観念」や「概念」
「芸術作品の価値は言葉で高められるべき」
「現代美術の評価の基準は、概念の創造」
■チームで作品の価値を作る
「画商やアドバイザーや、プレーヤーやオークションハウスや美術館の人に、作家作品の成否を相談し、シナリオを作って作品の価値を高めていくのは当然の手順」
「分業制をとることで、一人ではできないほどの精度でものを作れるようになりました。」
手仕事に追われないから、創造性を発揮することができるようになるといい、これを現代における商品つくりの可能性を高めるやり方の鉄則としています。
■建築家・デザイナーの仕事
創造性の象徴として取り上げられることの多いデザイナーや建築家などの仕事を見ても、実は色々とアイデアを絞ったり、設計の実務をしているのはアシスタントの人たちです。彼らの創造性をどう引き出していくかということの「手助け」したり、「方向性」を提示し、「最終判断」をすることが「主」の仕事です。
■マネジメントに集中した人間が勝つ
村上氏も世界に通用する方法について話す際も、「マネジメントに集中していく人間が勝つ」という、意外と悲しい結論になると評しています。
■文脈を創り上げる
歴史と紐付けて作品を語る(=シナリオを組み立てる)ことの重要性を再三指摘してます。
「世界で唯一の自分を発見し、その確信を歴史と相対化させつつ、発表すること」
これが世界共通のルールだと述べられています。
芸術の表現をしようとするときには、製作の背景や動機や設定が緻密に必要になるとのことです。
■唯一の自分を発見する方法
この唯一の自分を発見していく作業というのはどうすれば良いのでしょうか。
「自分の惹かれているものを紐解いていくこと」
・好きな作品の歴史を研究していくこと。
好きな歴史自体を深堀りしていくことも薦められています。
■ゼロからものを考えるとき
ゼロから新しいことを発想していくときの要点として、
「最近どういう楽しいことがあったか?」
「最近どういう悲しいことがあったか?」
とあります。全てはその人自身の感情から生まれてくるものなのだということでしょうか。
最近ストーリーテリングの研究をしたり、「人が変わる瞬間」等のワールドカフェを通じて、「全ての源泉は自分の中にあり、どれだけ自分を掘り下げて理解できているかどうかが、その人の成長」だと感じています。
【多読書評ブロガー超いちおし本】
1作品1億円の値がついたフィギアなどのポップアートで有名な村上隆さんですが、とにかく分かりやすい物言いで「人の心を動かす」作品の作り方について非常に丁寧に書かれている本です。
ブランディングやストーリーテリングに興味分野が在る方は必読です。 -
これはいい本。生き方を考えさせてくれる。
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2000年ごろは欧米では知的な仕掛けなどを楽しむのが芸術に対する基本姿勢だった。→素材などではなく、観念や概念の部分。
主観、客観の考え方。
文章に気を配る。
リアルなコミュニケーションに重点を置いた芸術。
技術は追いつけてしまう。考え方や思想を作品に詰める。
思いなどを歴史などのストーリーに乗せて伝える必要性。
ピラミッド構造の組織→自分の役割に集中できる環境作りは大事。
訳のわからないものを論理的に語ろうとするのが批評家。
興味→その歴史を学ぶ→興味があるかの検証
このプロセスが大事。
敗戦により国家という根幹が日本からは抜け落ちている可能性。
作品により人の考えは生き残る。
絵を描くことで目の前のものを残す訓練ができる。
芸術にマネーはとても必要。
著者プロフィール
村上隆の作品





