名もなき毒

著者 :
  • 幻冬舎
3.53
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本棚登録 : 3752
レビュー : 668
  • Amazon.co.jp ・本 (489ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784344012141

作品紹介・あらすじ

どこにいたって、怖いものや汚いものには遭遇する。それが生きることだ。財閥企業で社内報を編集する杉村三郎は、トラブルを起こした女性アシスタントの身上調査のため、私立探偵・北見のもとを訪れる。そこで出会ったのは、連続無差別毒殺事件で祖父を亡くしたという女子高生だった。

感想・レビュー・書評

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  • 「ペテロの葬列」を観ていて、前作を振り返りたくなった。たぶん再読。「誰か」→「名もなき毒」→「ペテロの葬列」で、今多コンチェルン娘婿 杉村三郎シリーズなんだね。

    宮部さんの作品は図書館でも人気があり過ぎて、読むまでにタイムラグが生じてしまい、未読と既読が把握しきれずに混乱しがち。
    人が死んだり、後味の悪いミステリはあまり所有したくないから買わないんだよね。

    紙パック飲料に青酸カリが注入され、連続無差別殺人事件が起こり、古屋老人が死亡。謎を追う孫娘の美知香。

    編纂室アルバイトの原田いずみは酷いトラブルメーカーで、杉村は彼女を解雇したことで恨みを買ってしまう。

    青酸カリという毒、土壌汚染という毒。嘘や誹謗中傷という毒、悪意という毒。人間だけが持つ毒の手に負えなさ。伝染する悪。

    あぁ、こういうお話だったな。「誰か」も完全に忘却の彼方なので、図書館にあれば読みたい。

  • 杉村三郎シリーズ第2部。
    第3弾「ペテロの葬列」を続けて読みたいため、再読!
    約8年前に読んだはずなのに、その時の印象をすっかり忘れていた。これも歳のせいか?(笑)
    「究極の権力は、人を殺すことだ」P260
    「犯罪を起こすのは、たいていの場合、怒っている人間です。・・・」P339
    こんな片句に、ドストエフスキーの「罪と罰」を想起してしまった。

    改めて題名の意味を考える。青酸カリや、土壌汚染ばかりが「毒」ではない。人間の営み自体が「毒」になる。作者はそう訴える。
    そして、その「毒」を際立たせ、対比させるため、生活が満たされていて幸福で、アットホームなマイホームパパである主人公を登場させた。
    読み進めながら、やりきれない思いにもなるが、その一方でさわやかな気持ちにしてくれる脇役が、ゴンちゃんであり、高校生コンビかも。
    終盤はサスペンスフルな展開になり、一気に読ませる。最後は、次回作に気を持たせるような終わり方であり、続いて「ペテロの葬列」を手に取りたくなる。
    とにかく、宮部みゆきは稀代のストーリーテラーである。

  • 第41回(2007年) 吉川英治文学賞受賞作。
    隙間時間に途切れ々に読んだのですが、ぐいぐいと引き込まれる内容に 宮部さんの読みやすい文面、流石の人気作家だと感心させられた。
    この世には、「毒」がたくさんある。原田いずみの存在は、怖すぎたが、主人公 杉村三郎の周囲の良き人々に救われた思いがした。

  • きっと周囲にもいる。
    毒は等しく人間の中に。

  • 青酸カリ、シックハウス、土壌汚染などの人体に直接作用する毒と、人の心に潜む怒りや嫉妬といった悪意による精神的な意味での毒の両方が盛り込まれ、毒だらけです。
    毒物混入連続事件が起こります。それとは別に大手企業の広報室でトラブルを起こし解雇したアルバイトが暴走します。二つの事件が同時に主人公に関わってきます。絡まり具合が上手いです。
    「誰か」の続編らしいけど、「誰か」は印象が薄くあまり覚えてないですが、こちらは印象強いです。原田いずみの毒は強烈です。出会いたくない人種。ここまで極端なのはなかなかいないと思うけど、似たような軽い毒を持ってる人は身近にもいるなと思います。結婚式の場面は辛かったけど、嘘だとハッキリする場面があったのが救いです。
    前作同様、杉村さんはあまり好きになれないな。周りの登場人物のほうが素敵でした。

  • 連続して起こった青酸カリによる殺人事件。それと同時に、杉村が勤める編集部でも一人の女性アルバイトによる事件が勃発する。杉村はその女性について調査した経験のある北見という人物を訪ねるが、先客がいた。その先客は青酸カリ殺人事件の被害者の孫だった。そのことから、杉村はその事件により深くかかわっていくこととなる。


    ドラマ化されていたので久しぶりに宮部みゆきを読もうと借りてきたのだが、以前読んだことがあったようでさまざまなところに見覚えがあった。

    名もなき毒、というタイトルは、人間が持つ毒のこと。嫌な感情、とでも呼ぶべきか。

    ほかの人のレビューを読んでみると、原田いずみにリアリティがないという人と「こういう人いる!」という感想を抱いた人と二通りいる。その理由は、実際にこういう人間に接したことがあるかないかの違いだろう。
    実際にこのような人間は存在する。自分を否定されることが極端に嫌いで、常に自分は正しいと思っており、自分が一番かわいそうだと思っている。そして、その人物の持つ毒は、周囲の人間をもむしばむ。

    ミステリとしては謎解きの要素があまりないことが気にかかる。しかし登場人物の人間関係もそれほど複雑でなく、今多コンツェルンという大企業に関してもさらりと描かれているのですらすらと読むことができる。

  • 主人公杉村は巨大企業集団の会長の嫁婿。その社内広報誌の編集に地味に地道に携わっています。

    その職場に台風の目となるアルバイト女性の起こすゴタゴタ。
    パック入り飲料に青酸カリを入れた連続殺人。

    どうしたことか、ちょっとしたきっかけで、
    杉村は事件にずるずると関わっていきます。

    化学的な毒、人の毒。体に物理的なダメージを与える毒、心を精神的に傷つける毒。
    この物語には、さまざまな毒が登場します。

    どこかで、ちょっと踏みちがえれば、ごく普通の人が加害者にも被害者にもなりそうです。

    この物語に取りあげられた、その紙一重の差のつくきっかけなんて、身の周りにいくらでもあります。

    重いテーマを、ふつうの人の暮らしのなかに描き、多くの小物語をひとつの物語に織り込み、緻密でありながら、自然。

    ガッツリ書かれているのに、ぐんぐんと読み進むことができました。

  • http://www.tbs.co.jp/namonakidoku/

    小泉孝太郎ほか

  • 無差別型殺人、不可解で強烈な悪意、土壌に潜む毒、人の心と身体を蝕む毒
    大筋は毒物混入無差別殺人事件が軸になるのだけれど、さまざまな毒、さまざまな事件が絡みあって話は進んでいく
    毒をもつ人間も世の中にはたくさんいるのだとあらためて感じた。
    この作品の中に登場する原田いずみもまさにその一人である嘘をつき自分を正当化しその嘘は毒となり相手を深く傷つける。
    家族も他人も、彼女に関わった人は全て彼女の毒にやられてしまう、原田いずみの自分勝手さ被害妄想には気分が悪くなった
    現代社会の問題、怖さが逆に感じられる内容になっていると思う。
    今社会問題になっているいじめにしても、人間のもつ「毒」の発露に一形態であり、非日常的なものであるべきものが異常な形で日常的なものなっているのではないか。

  • 心にとうぶん残りそうなお話し。

    「毒」というだけあって、
    青酸カリや土壌汚染の話しも絡んでるけど、
    1番伝えたかった事は人の内にある「毒」。

    この「毒」が1番恐ろしい。あらゆる事を起こしてしまうから。

    誰でも人は他人と自分を比較して生きていく生き物だけど、
    それを自分で解釈して理解して生きていかないといけない。

    自分ばかりツライ思いをして、なんであの人ばっかり幸せなんだ!
    って思う人は多いと思うけど、
    そう見える人にだって、悲しい思いは沢山ある。

    人は誰でも何かに「怒っている」。
    それをぶつけるか、ぶつけないか。
    他人を傷つけて言い訳が無い。
    傷つければ傷つけるほど、自分が苦しくなるのに。

    優しいだけじゃ生きていけない世の中が悲しい。

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著者プロフィール

宮部 みゆき(みやべ みゆき)
1960年、東京都生まれ。1987年に「我らが隣人の犯罪」でオール讀物推理小説新人賞を受賞し、デビュー。
1992年『龍は眠る』で日本推理作家協会賞、1999年には『理由』で直木賞、2002年『模倣犯』で司馬遼太郎賞、2007年『名もなき毒』で吉川英治文学賞など、数々の文学賞を受賞。
大沢オフィス所属。日本推理作家協会会員。日本SF作家クラブ会員。直木賞、日本SF大賞、小説すばる新人賞、河合隼雄物語賞など多くの文学賞で選考委員を務める。
『模倣犯』や『ブレイブ・ストーリー』など、多くの作品がドラマ化や映画化などメディア・ミックスされており、日本を代表するエンターテインメント作家として人気を博している。2018年10月、『宮部みゆき 全一冊』を刊行。

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