黄金の王白銀の王

著者 :
  • 幻冬舎
4.05
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  • Amazon.co.jp ・本 (410ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784344013988

作品紹介・あらすじ

百数十年にわたり、国の支配をかけて戦い続けてきた鳳穐一族と旺廈一族。生まれた時から「敵を殺したい」という欲求を植えつけられていた二人の王。だが、彼らは過去のしがらみを断ち切った。そして、争いのない平和な世の中を作りたいという思いを理解し、陰で協力し合う道を選んだ。しかし、それは想像以上に厳しいものだった…。敵に捕われの身となった王と、混乱する二つの国をなだめて統べる王。二人が思い描いた理想は、はたして実現することができるのか。

感想・レビュー・書評

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  • 久しぶりにがっつりファンタジーを読んだ気がする。
    ああやっぱりこういう世界観好きだなぁ、と実感しました。

    その昔、双子の王が王座を争って国を二分して以来、互いに憎しみ相手を滅ぼすことだけを目的にしてきた鳳穐(ほうしゅう)と旺廈(おうか)。
    終わりのない未来のない争いの果てに、国の王である鳳穐の頭領の穭(ひづち)が何年も幽閉されていた旺廈の頭領の薫衣(くのえ)に、争いを終わりにしようと説得します。
    そこから二人の長く険しく気の抜けない命がけの物語がはじまるのですが、いやぁほんとおもしろかった。
    やたら固有名詞が難しく、ここまで書くのも漢字変換にかなり手間取りましたが、世界観が大事ですからね、なんか普段まったくお目にかからない字面が雰囲気を作るのです。

    駆け引きや裏切りや懐柔やらで油断ならない状況で緻密に慎重になすべきことをなす穭と、名を捨て恥をさらしてそれに耐えなすべきことをなす薫衣に、祈るような気持ちになりました。
    穭と薫衣の友情を超える関係も熱いものがありますが、薫衣と稲積(にお)のロマンスがとても素敵です。
    このふたり初めての夜から素敵すぎてたまらない。
    もう、<常闇の穴>に行くことを止めるシーンは泣けて泣けて。
    なので、「なすべきことをなせ」という迪学(じゃくがく)の教えには沿わないのかもしれないけど、薫衣には生きて幸せになってほしかった。

    これって、続編とかないの?シリーズで読みたくなります。

  • 敵対する一族の長である二人が、平和のために、誰にも告げることなく協力し、共存へと繋いでいくお話。
    片方は被征服側の王として、一族の復讐と再興を期待されつつも、戦わない勇気を選ぶ。そのために腰抜けと侮蔑を受け忍従を強いられる。
    片方は征服側として奢ることなく、自分の妹を妻として差し出す。この夫婦に愛情が通うところなど、本当に心温まる。
    民族のプライドと平和のどちらを選ぶのか。現実を振り返るとなかなか難しいなあと思う。だからこそ宝物のような物語に惹かれるのかもしれない。

  • 1冊で完結する、壮大な物語。
    血で血を洗いつづける恨みの応酬を、年若い二人の王が水面下で手を組んで陰で協力しあい、お互い(の血族)を憎みあい殺し合うことが当然である世界を変えてゆこうと誓った。
    しかし、何代もの間に積み重なった怨恨はすでに習慣に近く、昇華するのは容易でない。
    自分たち一代ではおそらく実現できないであろうこと、
    だからこそ自身らがいなくなった後のことまでを瞠るかし、何事にも揺らがず、茨の道を往く薫衣(くのえ)の凛とした姿。
    私情を一切挟まず正しく国を統べるための礎を築き続ける穭(ひづち)。
    二人が同じ時代に生き人生を賭したからこそ為し得られたことは生半可なことではなく、その犠牲の上に訪れた平和の頑健さは疑うべくもない。

    (今の政治家たちにこの本を読んでもらいたい!)

    読み始めこそ、名前の漢字の難しさに辟易し、
    異世界ファンタジーの舞台に時折差し込まれる「現代で言えば」という言い回しに、少しばかり興を削がれてしまった感は否めないけれど、
    気づけば二人が思い描いた未来を私も観たい、という想いにページを繰る手が止まらなかった。

    血筋ゆえ、なかなか素直になれなかった薫衣と稲積(にお)夫婦の純愛ぶりと睦まじさは、厳しいばかりの現実に、少しだけのほっこり要素。
    でもそこは大事!

  • 読みたいな。

  • どっしりとして非常に読み応えのある作品。骨太です。

    国を治めるというのは、たぶんとても大変なこと。それに加え、今まで敵対していた二つの一族を一つにし、争いの無い国にしようという志を持った穭は、もちろん立派な王だと思います。しかし、その穭以上に心を惹き付けられたのが薫衣の存在。鳳穐一族には臆病者と嘲笑われ、旺廈一族には裏切り者と罵られながらも自らの「なすべきこと」をなそうとする薫衣は文句無しに格好良い。

    そして、そんな薫衣を陰でひっそりと支える妻・稲積の存在も良かったです。ラスト近く、お互いの気持ちを理解し合った二人は本当に微笑ましいほど、お似合いの夫婦でした。二人の生い立ちや立場、それに国のことを考えれば土台、無理な話なのだろうけれど、出来ることならもっとずっと長く、幸せに暮らして欲しかったなぁ…。

  • 翠の国は、遠い昔は同じ王の血筋でありながら今は「旺廈」と「鳳穐」の二つの流派に二分され、互いが憎み殺しあっては国力を衰えさせていた。これを憂えた現王の櫓は、敵対する旺廈の頭領・薫衣にある提案を持ち掛ける。
    壮大な異国の歴史書の一部を紐といたかのような語り口と内容だ。
    互いにいがみ合い屈託を抱える人心の描写はリアルで魅力的なんだけど、不思議なほど彼らの文化が具体的に浮かばず(衣食住など)ファンタジーとしての面白みの一つを失っていて残念だ。

  • ☆4と☆3でとても悩みました。
    「五常」より「克己復礼」の言葉が浮かぶ話であったように思います。
    ただ表題は二人の王とするのに、薫衣に寄って穭の負担をあまり感じれなかった気がします。
    ただ綺麗ごとに終わらない話がとても良かったです。

    個人的に装画は読後も合っているとは思わず、角川文庫のほうが合っていると思いました。

  • 何代にもわたる一族の争いを終えるために、二人の王が選んだ道は、考え得る限りもっとも過酷な道だった・・・

    一冊で終わらせるのがもったいないくらい骨太な話なのだが、これを何冊にもわたって書くとそれこそ一桁で終わるのか疑問である。

    大きな波がこれでもかというくらいあっさり終わる。

    面白いのは間違いない。

  • 面白かった。ボリュームも程よく、むしろもう少し詳細あってもよかったか。ヒヅチもクノエも魅力的でした。

  • 2人の王のそれぞれの苦悩と、並び立ち乗り越える苦難の話。とても面白かったが、全編にわたって辛い。苦しみ喘ぎながらそれをおして生きることの辛さ。そこにほんの少し差し込む、伴侶の温かさ。
    もっと若い時分に読みたかったな。
    あとは名前の漢字が読みづらく、そちらに意識が持っていかれがちで集中が乱れるのが読んでいて残念だった。

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著者プロフィール

1963年広島県生まれ。鳥取大学農学部卒業。91年に日本ファンタジーノベル大賞に応募した『リフレイン』が最終候補となり、作家デビュー。98年、『ヤンのいた島』で第10回日本ファンタジーノベル大賞優秀賞を受賞。骨太な人間ドラマで魅せるファンタジーや、日常生活のひだを的

「2013年 『ヤンのいた島』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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