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本 ・本 (272ページ) / ISBN・EAN: 9784344014596
感想・レビュー・書評
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たしか成毛オススメ本から、だった気がする。入手したのはもうずいぶん前で、長いこと積読かれてあった。とうとう着手した訳だけど、通読は無理でした。ザックリいうと、27人の科学者たちの履歴書なんだけど、正直、彼我の差が殆ど感じられん。数人読んだ時点で、全部に目を通す必然性に疑問を感じ、10人くらいでギブアップ。成功者の物語に対する興味の持てなさが、ここでも関与している可能性はアリ。
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27人の科学者の自分語りのコレクション。
彼らはどんな子ども時代を過ごしたのか?
どうして生涯の研究に関わるようになったのか?
実にユニーク、個性あふれる話の出てくる一方で、
共通のかたちのようなものも見えてくる。
私の感想としては、
無から有は生まれない、というか、
やっぱり科学者になるべくしてなっていったような
人が多いのかなぁ、と。
別に運命論なんて言ってるわけじゃない。
環境の影響が極めて大きいのでは、ということだ。
本書は2004年に原著が出ているが、
おおよそ取り上げられた科学者たちは1930~50年代生まれが多い。
50~70歳くらい。
とすると、その子ども時代は今のようにインターネットがあったわけではなく、
科学的情報へのアクセスには環境と運の要素が非常に大きかったのでは
ないかと推察する。
きっとたくさんの「科学者になれそうな」人はいたのだけれど、
不幸にして、か、幸運にして、か、分からないけれど、
出会いがなく、そっちの道に行かなかった人も多そうだ。
さて、本書で一番好きなのは、やっぱりスティーブン・ピンカー。
だって冒頭からして
「このエッセイをうのみにしないで欲しい。
僕を科学者の道に導いたとする、子ども時代に影響を受けた話など
信じてはいけない。」
ときたものだ(笑)。
でも、古い思い込み(特に脳と言語と思考について)を打破してきた
ピンカーにとってみれば、こう最初にクギを刺しておくのは
きわめて科学的に筋の通ったことだと思われる。
もうちょっと引用。
「人生におけるさまざまな選択に関して、僕たちはだれも選択した
理由を特定できる実験をしたわけではないから、本当の理由など
わからないということだ。」
「(一卵性双生児について)遺伝と環境はかなりの部分で同じだが、
結果は同一ではないので、それを考慮すると発達において
偶然が大きな役割を果たしているに違いない。」
「子ども時代の体験が現在の僕たちを形作ったのではなく、
もともとある自己が子ども時代の体験を形作っているのだ。」
うおっ。こういわれてしまうと、ついさっき、
上で環境どうちゃらと言っているが、「それ本当か?」とピンカーに
疑問を投げかけられているような気持だ(笑)。
「僕たちが子ども時代の影響を作り話にしてしまうのは、
自分たちの人生における因果関係の重要さに気がつかないから
だけではなく、物語ることへの欲求も潜んでいる。」
「自叙伝が真実を語っていないという理由は、もうひとつある。
だれでも自分をカッコよく見せたいということだ。」
「遺伝子と偶然のおかげで、生まれつき科学の道に必要不可欠な
才能と気質に恵まれた人がいる。たとえば、自然界への興味、
機械や数学に対する理解力、肉体的・社会的な娯楽よりも
知的なものを好む傾向、などだ。
そういう人は、普通の子ども時代を送る限り、現代科学が提供する
さまざまな好奇に直に触れられるだろうし、魅力的な教師たち、
活動、書物、クラブ、講座、仲間、趣味といったところに
引き寄せられもするだろう。
おわかりのように、僕は、自分たちを形成するうえで環境が重要ではない
と言っていない。ただ、この環境-文化や社会-は、ある集団の全員には
ほぼ等しくあるもので、僕たちは自分をその中で比較してみているに
すぎない。
だから、文化や社会といった環境は、どうして今の自分になったのかと語る中では
意味をなさないのだ。」
ズバズバ切ります、ピンカー。
天性のアカデミアが花開く場所へ行く、それはいろいろなルートはあれど。
そういうことか。
「僕は良い両親を引き当てたと思う。」
これは参った(笑)。
「学校教育が教育に占める割合はわずかだったが、僕はともかく科学を学んでいる。
家には本があったし、ニュースからの科学、特にマーキュリー、ジェミニ、
アポロといったアメリカの宇宙計画にはとりこになった。」
家の状況以外に、友人、ヘブライ語の学校での学び、日曜学校での論争、
などの影響があるかもしれないと彼は言う。
ピンカーも、そう、だから、先天的にアカデミアとの相性が良かった。
それがメインの学校で素晴らしいマッチングを起こすことはなかったけれど、
他のいろんなところで繋がり、花開き、歩んでいくことになった、と。
なんだろう、これを聞くと、学校というのは運であり、下手すると
個性を殺すだけのどうしようもない場所なんだなー、っていう以前からの
僕の漠然たる思いが再起された。
「個性」ってなんだろう。
よく、「常識を詰め込まないと、個性は出てこない。」という論を持ち出す人がいて、
僕も以前じつはそう思っていたのだけれど(古いパラダイムだ)、
遺伝と偶然から花開くものの大きさを正当に評価するならば、
常識の詰め込みなんてものは苦痛の種でしかなく、ねじまがってしまう要因にすら
なりえるだろうな、ってこと。
アカデミアな気質の子どもに、たとえば体育会系とか、
同質化の圧力とかを迫ってもダメなのだ。
だいたい、今日の学校なるものが、工業化社会の生産者&消費者に適した人間を
育てるための大がかりな装置であることから離脱できていないケースが多い以上、
科学者という創造的にのめり込んでいく仕事のベースを作っていくプロセスとしては
不適当だと言わざるを得ない。
まぁ、逆に言うと、まだ工業化社会の生産者&消費者モデルが生きている市場環境があるなら
目くじら立てて学校システムを批判しなくてもいいのだけれど。
科学者は、異端な発見を、人に分かる方法で説明できることが求められる。 -
色んな分野の研究者がいかにして今のポジションに行き着いたかという紹介。やっぱ自分が「おもしろい!」とか興味ある、ひかれることって大事だなと実感。「何でだろう?」という疑問は持ち続けていようと思った一冊。
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著者プロフィール
ふなとよし子の作品





