平等ゲーム

著者 :
  • 幻冬舎
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  • Amazon.co.jp ・本 (346ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784344015494

感想・レビュー・書評

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  • 瀬戸内海に浮かぶ小さな島、鷹の島。そこには独自の社会が築かれていた。「平等な社会」。社会格差も特権もなく、政治は全島民の投票によってのみ決まり、職は4年ごとに抽選で決められる。島民の収益は全て島に還元され、また全島民に平等に分配される。そこはユートピアと呼ばれ、移住希望者が後を絶たない。だが完全に平等な社会は本当に理想郷なのか、ただの幻想郷なのか――

    なかなか興味深いテーマに思わず食いついてしまった。「平等は無個性」という考えに共感。有史以来、完全に平等な社会など存在しなかったと思うんだけど、それはそれなりに理由があるのかもしれない。あとは本作の題名もまたひとつの答えを物語っているのかなって。「平等ゲーム」。所詮はゲーム、だと。

  • 「ーただ、スポットライトは当たってると思うよ。全員に。今もかおりさんに当たってる。自分では気付いてないだけだよ」
    ー芦田耕太郎


    平等=正義。とは限らない。

  • 島民は皆平等で、住居は家賃も光熱費もタダ。仕事は四年ごとの抽選で決まり、あらゆる事柄が投票により決定、ユートピアの実現とも言える鷹の島。

    島で生まれ育ち、そのシステムを完璧と信じきっている耕太郎は島に移住したがらない人々を訝しむが、そのユートピアにも賄賂が流通しているという実態を知り…。

    なかなか入り込めず、しっくり来ないのはそもそもこの理想郷に惹かれないからかな。格差があるからこそ頑張る原動力に変えていけるのだし。

    個性もなくして真っ平らの社会なんて魅力を感じない。「県庁の星」を読んだのはかなり前なのでぼんやりした記憶しかないが、あちらの方が面白かったような。「恋愛検定」はほっしゃん神様見たさに録画済みです。

  • (Amazonより引用)
    瀬戸内海に浮かぶ「鷹の島」。
    そこでは…島民1600人が、全員平等。
    現代社会の歪みを是正するために生まれた、究極の楽園。
    人々は、嫉妬や私欲にかられることなく、
    何不自由ない豊かな生活を約束されている。
    まさに、天国。の、はずだった―。



    競争社会に疲れた「理想郷」として生まれた「鷹の島」。
    仕事は4年おきに抽選で選ばれ仕事をこなし、
    生活するのに貨幣は必要なくなんでも
    “島のIDパスカード”があれば手に入れることのできる
    完全な「平等社会」が存在しているという設定。

    ただ、島なので居住可能な人口は限られており、
    島民が亡くなったり、島を離れる人がでた場合にだけ、
    “本土”から島での暮らしを希望する人に対し、
    「勧誘」を行うシステムになっている。
    主人公は4年おきの抽選で、「勧誘」の仕事に就く。

    素晴らしい島のシステム、「平等社会」しか知らない
    主人公は、島での暮らしを断る人はいないはずと信じて
    疑わない。
    一時は島での暮らしにあこがれていたはずの
    本土の生活に疲れた人々は必ずしも島での暮らしに
    うん、と言ってくれないのだ。

    なぜ?完璧な平等で不平・不満もないシステムだというのに。
    主人公は疑問を持つ。

    「競争社会」である本土の生活と
    「平等社会」である鷹の島の生活。
    この対比が面白い。

    完全平等を実現することへの矛盾もこの本で暗示している、
    ということに興味を持った。

    小説という設定上、極端かもしれないが
    なかなか現実的な説得力があるなと感じました。

  • 瀬戸内海にある誰もがみな平等という理念の
    理想郷「鷹の島」で生まれ育った青年が、一般社会に暮らす人々と関わっていくうちに少しずつ変わり成長していくお話。

    面白かった、宗教ではないけれど生活を共にする共同体での暮らし。ヤマギシの村を思い出し、少し比較したり重ねて考えたりしてみる。人が集まって暮らしていく限り、完璧に理想を求めるのは難しいんだな。

    ラストはちょっと「ん?」とは思うけど。それにところどころ「で、あの人はどうなった?」と思う登場人物も残っている、なので面白かったけどもうひといき!!

  • 富の再配分と投票決議で誰もが平等で均質に暮らせる島への移住説明を通して、平等の良し悪しを描いた物語。

    要は共産主義国家なのでは?と思うのだけど、島の価値感に疑いを持たずに生きてきた主人公の平坦な情緒や感受性には共感ができて、彼が外界と接することで成長する心理面や絵画への取り組み方がどこへ向かうのかが興味深く、けっきょく平等のための独裁という夢に行き着くのも皮肉に感じれて面白かった。

    窮屈はあるが生きるのには困らないというのは最低保障であって、それって日本では監視のゆるい監獄暮らしでは??と思うので、そこに魅力を感じれるかどうかは自分の状況次第というのが怖いところだなと感じた。

  • 平等、公平、正義。一つ一つのテーマに、個人的な生活レベルの視点から切り込んだ作品。大きなテーマを、小さな視点で扱い、感情移入させられる。壮大になり過ぎず、蔑ろにし過ぎず。所詮は愛すべき人間たちの織りなすゆるーい概念上の発想だから、平等も公正も正義もゆるい。それでも、清廉な道を歩みたい主人公が自分の島を、仕事を、卒業していく様はそんな経路を経て、少し汚れていく。腐敗というより、泥まみれになるような汚れ方。それってそんなに悪いもんじゃないなって思わせてくれる一冊。

  • 島の人全てが平等という設定が面白い。実際にはあり得ない非現実的なことだらけだけど、お話として面白い。何でもかんでも「平等じゃないと不公平!」と訴えるPT○のママたちに読ませたらどう感じるかな?

  • 島の生活をもっと読みたかったかな。

  • 魅力的であろう人物に描かれている船乗りが客に無理を言う物腰の低い迷惑な人

    コテコテの関西弁の人物が言葉で悩むのも、他の地方の登場人物達同様標準語で喋れば良いのでは?と共感出来ず(作者は関西の人だけは方言を直せないと思い込んでいるの?)

    作者がこう受け取って欲しいと書いてあるのは分かってもなかなか素直にはそう読めませんでした

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著者プロフィール

一九六五年東京都生まれ。大妻女子大学卒業後、会社員、フリーライターを経て、二〇〇三年『死日記』で「作家への道!」優秀賞を受賞し、デビュー。著書に『県庁の星』『嫌な女』『ハタラクオトメ』『頼むから、ほっといてくれ』『残された人が編む物語』『息をつめて』など。

「2023年 『じゃない方の渡辺』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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