ディスカスの飼い方

著者 :
  • 幻冬舎
3.17
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本棚登録 : 243
レビュー : 62
  • Amazon.co.jp ・本 (292ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784344016149

作品紹介・あらすじ

ディスカスを知ることで、世界の全てと繋がろうとした涼一。だが、恋人の由真は、彼の元を去って行った-。『パイロットフィッシュ』から7年。再び、著者が人生をかけた美しいモチーフを通して贈る、至高の長編恋愛小説。

感想・レビュー・書評

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  • 読んでみようと思ったのは、文章の書き出しが印象的だったから。でも、最後まで、聖地くんの正体は分からないままだった。この少年の存在は、主人公が嫌悪していたマジックの象徴のようにも感じたし、だから、主人公はマジックに救われているとも思った。結局、稚魚を(あるいは希望を)スピーカルで守ったみたいに。

    これはディスカスという熱帯魚と、その飼育と、失った恋人と記憶と道筋の物語。こんなふうにディスカスの飼育というモチーフと、由真さんとの恋愛というモチーフのふたつをちゃんとそれぞれに書いているのがすごいなあと思った。

    大崎さんの著作を読むのは初めてだったけど、なんとなく春樹と似ているような雰囲気を感じた。春樹ほどぐるぐるした文章ではないから、大崎さんの方がより読みやすいかもしれない。

  • 熱帯魚の王様で、飼育がとても難しい魚ディスカスの飼い方について。

    主人公はひたすらにディスカスの飼育にのめりこんでいく。(その前はふわふわオムライスの作り方に没頭していた)
    ちょっと変わっているといえるかもしれない。そしてとても不器用。

    難しい難しいディスカスの飼い方を習得することで、他の何かに応用できないかと考える。それが恋愛だったりするのだけど。

    それもひとつの方法だと思うけど、正面切って対峙しないと永遠に分からないこともあるのじゃないかと思ったよ。

  • ほんと、予想以上に、ディスカスの飼い方について。
    ディスカスのブリーディングのついでに主人公の人生が描かれていると言ってもいいんじゃないかと。
    でもそういう主人公だから、それでいい。
    淡々とした文を読んでいると、水の匂いと泡の音を感じるような気分になる。
    大崎善生の小説の中でもとくに気に入っている。

  • せつない物語を書かせたら大崎先生の右に出る者はいないでしょう。特に、この方の書く物語は、アジアンタム、パイロットフィッシュなどいつも素敵なモチーフがテーマになっていて、独特な世界観を作り出します。
    今回はディスカスという買うのが難しい観賞用熱帯魚。表紙は海好き魚好きの私のハートを鷲掴みにしました。鮮やかなブルーの体表は目にまぶしいです。
    実を言うとディスカスという魚の存在をこの本を読んで始めて知りました。その色や柄のバリエーションもとても豊富で、読み終わってすぐ近所の熱帯魚ショップにどんな魚か見に行きました。本当に魚?と思うくらいに目映い魚でした。生きた宝石ですね。(値段的にも)
    肝心のストーリーは主人公のディスカス飼育への情熱をひたすら熱く書いてあります。てか、これって恋愛小説なのかな?
    どちらかというと飼育方法の教本のような感じ。でもその飼育にかけた情熱に、読者もついつい熱くなってしまう、そんな本です。
    でも最後のあのオチはやっぱりせつなかったなぁ。淋しいなぁ。

  • アマゾンに棲む「熱帯魚の王様」ディスカスに魅せられた高島は,
    恋人を失いながら,ディスカスの繁殖を通じて世界の何かを知ろうとする。

    熱帯魚の飼育方法というか,水の管理方法が詳細に描かれる。
    著者が元「将棋世界」編集長と知り,妙に納得。
    将棋もそういう世界なんだろう。

  • ディスカスを飼うというものすごくマニアックな地平から、世界につながろうとする。そこに静謐さを感じる。一人静かに海の底へと潜っていくような。
    ディスカスを飼うことが出来たら、他の何かも分かるようになるかもしれない。一般的にはこれは恋愛小説と分類されてしまうのだろうけれど、私はむしろこれは哲学小説だと思う。ハイコ・ブレハの右足首の話、アルテミア・サリナの話、そういうものにこそ、ひきつけられる。ディスカスの飼育を通して、由真を愛していたと気付くのも、分かった「他の何か」の一つ。由真との恋愛を超えた、宇宙とか世界とか、もっと大きなことがここには書かれている。
    分かったこともあれば、分からないままのこともある。それでも、分かろうと努力すること、ディスカスをうまく飼えるようになること、そこから世界はもっと広がるはずなのだ。

  • ディスカスのブリーディングに熱中し、恋人との関係が壊れてしまう物語。

    特殊な恋愛の風景。

    といってしまえば早い話なのであるが、私の読み解きは少し違う。

    かすんでいるような恋愛を、ディスカスのブリーディングを通して、

    “掬い取る”恋愛小説と映ります。

    この物語が最初、ディスカスの飼育方法について、

    化学式まで持ってきて説明し始める。

    そこに軸である恋愛模様がかすんでしまうように見えなくもなかった。

    しかし、少しずつ恋愛とディスカスの飼育が絡みあってくる。

    それが見え始めるのが、ディスカスの交尾と由真という恋人とのセックスあたりから。

    溶け込んでゆく。その美しいセックス描写は何とも言えず胸をうちました。

    そして、かすみのような存在は由真という目立たない恋人に象徴されていますが、

    目立たない中に烙印のような意志も読み取れます。

    その意志をわれわれ読者は“掬う”のです。

    たとえ幻でもかすみでも。

    ですが、やはり序盤のディスカスの描写は読み飛ばしたくなってしまいました。

    それは、逆に意図なのかもしれませんが、私には、無駄が多いと感じました。

    とはいえ、恋愛小説のある意味、新しい境地であることも感じさせる

    意欲作であることは間違いのない事実です。

  • 好きな作家の一人。「9月の4分の1」を読んで同じような少し切なくも暖かいラブストーリーを読んでみようかと手に取ったが、ディスカスの飼い方の本じゃねーか。
    ディスカスのブリーダーである主人公がディスカスの繁殖を通して昔の彼女に想いを寄せる話。読み進めるうちにはまあこれも愛の形かと思わなくはないが。
    主人公のひた向きさには心動かされるところが無くはないが、年取ったかな。20代の頃に読んでいたらまた違った感動があったかも。
    読書後、YOUTUBEでディスカスの産卵、子育て動画は見てみた。ほうほう。

  • 熱帯魚『ディスカス』の飼育にはまっていく男の物語。
    一応、恋愛物だと思うのですが…そこは逆に期待しないで読んでもらいたいな~と感じました。

    ディスカスの飼い方そのものより…
    その工程、それが出来た時、のりこえた時、に重きを置いてるのかな?
    (うまく言葉に表現できません。)

    ジャケ買いならぬ、ジャケ借りです。
    (久々に図書館にいきました。)
    白とブルーが本当に綺麗。
    表紙の色が頭にあり、読んでいてもその場の綺麗な情景が見えるようでした。

  • “知らないことを知る感動。
    何かを知るということは、それ以前とは違う人間になっているということである。”
    この感動を求めて読書をしているので共感した。
    碁石が貝殻や宝石とかいう王侯貴族の娯楽の極みみたいな材料で出来ていて、3000万もするなんてことは知らなかったのでひとつ感動を得られた。碁石といえばガラスやプラスチックだろうとしか認識していなかったので。

    水槽、存在しない水、魚、不思議な少年、海底、貝殻の碁石、宇宙、知恵比べなどのワクワク材料に、別れた女への愚痴というゲロをぶちまけた料理に仕上がっていた。愛してるという建前の言い訳を何百ページも消費し延々と連ねている点には辟易した。
    生命・環境の維持や誕生という本来は神の領域を人間が水槽内で実行してみせるという試みや、わからないことを考える、答えより道筋が知りたい、水を媒介として世界は繋がっているなどの話は面白くてそちらをもっと深く読みたかったのだが。

    なんだって顔も記憶できないような人間と惰性で付き合っていたというしょーもない事実を水で薄めて長々と引っ張り続けたのか理解に苦しむ。
    恋人同士の会話は滑り倒したギャグのような寒々しさだし、なんだかんだ言って結婚するほどには愛してないからディスカス飼育に現実逃避したら水槽の中から松岡修造が飛び出してきたりとか、主人公は精神疾患でも患ってるのだろうか。
    そういえば元カノの顔がわからないなどとあまりにも主人公が連呼するのでそういう病気かと一瞬考えたが、何年も会ってない刈谷や少年の顔はしっかり覚えてて、やはり人間興味のないものに記憶力は発揮できないものなのだと再確認した。

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著者プロフィール

1957年、札幌市生まれ。大学卒業後、日本将棋連盟に入り、「将棋世界」編集長などを務める。2000年、『聖の青春』で新潮学芸賞、翌年、『将棋の子』で講談社ノンフィクション賞を受賞。さらには、初めての小説作品となる『パイロットフィッシュ』で吉川英治文学新人賞を受賞。

「2016年 『角川つばさ文庫版 聖の青春 病気と戦いながら将棋日本一をめざした少年』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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