- Amazon.co.jp ・本 (258ページ)
- / ISBN・EAN: 9784344016569
感想・レビュー・書評
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久々の島本理生。今回は、交通事故で恋人をなくす人の話。
「かけがえのないものを失ったけどもう遅い、でも生きている」を描くのが本当にうまい。人間の心の弱さや、揺れ動きが、スタンダードに伝わってくる。いたって普通の登場人物たちが、まるで自分の知人のようにすぐ近くで物語を進める。
高校の時からずっと付き合っている彼氏って、どんな存在なんだろう。数年しか付き合っていなくても、まるで運命共同体で、結婚することを疑わなくて、間違いなく明日も一緒にいると思えるんだろう。
冒頭で、交通事故に遭ってから「降ちゃん」が死ぬのは一瞬だ。
五十嵐さんは、影付きの不思議な加害者だ。全然、好きになれないのに、気づいたら惹かれてしまう怖さがある。
表題作は、なんだかすんなりわかりすぎてしまって、気が滅入る作品だった。
お気に入りなのは動物園の話。ずっと付き合っていた彼氏に新しい女の子ができてふられて、悲しみにくるまっている時に、年下の男の子と触れ合って、なんだ別れて良かったじゃん、って今後思えそう!という、希望がちらちら光って終わるから、好き。
島本理生やっぱりすごい。この人は、些細な出来事と少ない登場人物で、人の転機を果てしなく描いて行く素晴らしい作家だと思う。
ごちそうさまでした!詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
喪失と気づき。失ってからでは遅いけど、でも、失うからこそ得られるのだとも解釈できる。やっぱり何事も見方次第なのだ。
表題作「君が降る日」
これからもずっと一緒にいるはずだった降ちゃん。辛さも悲しさも怒りもすべて覆ってくれるくらいのしあわせに包まれていた日々。もう戻らない。もう帰れない。だけど、気づく。果たして自分が思い描いていた未来が、失ったと思っていた未来が、本当にその死のせいで叶わなくなったものであったのか、と。
「冬の動物園」
見えていなかったものが見えたとき、人は動き出せるのかもしれない。反対も然り。英会話スクールでの年下との出会いなんて素敵すぎる、なんて思ってしまったのは紛れもなく私です。
「野ばら」
最後の1ページ。もうほんとにそれだけ。いや、それだけではないんだけど、もうそこに息苦しくなるくらいのぜんぶが詰まってた。たったひとつ、それだけでいいのに。無知は、残酷なんだろうか。
『おまえは、俺の、なに』 -
《野ばら》の痛々しさが好き。
祐くんが佳乃に詩の話をするところは、彼なりの小さな告白だったんだろうな。
お互い大切でも、恋人っていう明確な関係がないと、ずっと一緒にいられないもどかしさ。 -
冬の動物園が好きでした。
五年も付き合った恋人と別れて初めて気づいたのは、二十四時間がどれほど長いかということだった。
今の私がまさにこれですね。
夜の時間を持て余し、休みの日も予定がなくなんとなく過ごすには長すぎて。
それがまた寂しい思いを募らせるのだ。
野ばらは読み終わった後にほろ苦さを感じた。
だけど友だちだからこそ終わらない関係でいられるとも考えられる。
恋人は別れたら他人になってしまう。
大学時代、一緒に授業を受けてテスト勉強をして、たくさんの時間を一緒に過ごした男の子から昨日急に電話がかかってきた。
その頃が懐かしくなるたわいもないものだけど、新しい生活と失恋で折れかけてる心を救ってくれた。
彼の存在に感謝しないといけない。 -
「君が降る日」
最初、恋人が死んだ話なのに、やけに淡々と薄い感じですすんでいくなぁ、と思ったが、しだいに引き込まれていった。引き込まれてから冒頭を読み返すとしっくりきた。これはナラタージュを読んだ時も同じ感覚を味わった。
ラストは淋しくて哀しくて切なかった。でも簡単に前に進むよりは、きちんと恋人の死を受け止めるためにくぐらないといけない数々の感情か丁寧に描かれていて良かった。他の作品もだけど島本さんのはラストがぐっと来る。
「冬の動物園」
楽しんで読めた。森谷くんのキャラが良い。女の子慣れしてる男子や、二股しちゃう彼氏の性格を描くのが上手いなぁと思った。
それにしても「君が降る日」でもそうだけど、登場するお母さんが良い人。
「野ばら」
せつない。なんてことなく進んでいく話だと思ったら。谷川俊太郎の詩から数行ラストまで、なぜか読んでて涙が出た。ほんとにせつない。
詩をさがして読みました。良かった。 -
野ばらを読んで、谷川俊太郎さんの「あなたはそこに」を即ググりました。
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ある日、突然恋人を事故で失ってしまう主人公。その事故を起こしてしまった友人との関係が描かれている。同じ痛みを持つもの同士、距離が近づいていく。単純に、怖いと思った。こんな風に突然いなくなってしまったら、どうしたらいいのだろう。どう前に進めばいいのだろう。そんな主人公の気持ちにやりきれなくなった。
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甘酸っぱすぎる!