後悔と真実の色

著者 :
  • 幻冬舎
3.60
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  • Amazon.co.jp ・本 (509ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784344017382

作品紹介・あらすじ

あの強固な呪縛から、いつか解き放たれたかった。若い女性を襲い、死体から人指し指を切り取る連続殺人魔「指蒐集家」が社会を震撼させている。警察は、ネットでの殺人予告、殺害の実況中継など犯人の不気味なパフォーマンスに翻弄され、足がかりさえ見えない。その状況下、捜査一課のエース、西條輝司はある出来事を機に窮地に立たされていた-。これは罠なのか?被害者たちにつながりはあるのか?犯人の狙いは何か?緻密な構成で不器用に生きる男たちを活写する傑作長編。

感想・レビュー・書評

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  •  なんとも哀しい物語。読んでいて長く感じたのは、事件が矢継ぎ早に起こらないからではなく、事件に関わる人物を丁寧に描いているからだとわかる。

     事件が起こる。女性のめった刺しの遺体が発見される。ただ、その遺体は指が切り取られていた。
     事件にあたったのは捜査一課のエース、西條。西條とコンビを組むのは交番勤務の大崎。西條を目の敵にしている機捜の綿引。他、個性豊かな9係の面々。
     そして第二の事件。同じく若い女性を狙ったもので、やはり指が切り取られていた。やがて犯人は警察組織をあざ笑うかのように『指蒐集家』としてネットで犯行予告を行った。西條は犯人を捕まえることができるのか・・・。

     この物語は、事件やそのトリックも素晴らしいが、その人物描写にこそ読み応えがある。絶対的なエースである西條にしても人間的に弱い部分があったり、勝手に西條を目の敵にしている綿引にしても、どうしてそうなったのかを丁寧に描きこんでいる。また、脇役にしてもそうだ。人間の暗闇であったり、卑しい部分であったりを見事に描いている。

     それにしても哀しい物語だった。事件を解決しても虚しさだけが残る。そして、一番虚しかったのは、読んだのを忘れて再読してしまったこと(T_T)
     でも、『宿命と真実の炎』を読む前にしっかりと人物像を頭に叩き込めて良かった(笑)

     

  • 約3年ぶりの貫井作品。デビュー当初から「症候群」3部作までは、かなりはまっていたのだけど、報われないラストに飽きてしまい、しばらく遠ざかっていた。
    都内で若い女性ばかりを狙った連続殺人事件が発生。その被害者は全員、指を切り取られると言う残忍さ。犯人は警察を嘲うかのように、掲示板で犯行予告などを重ねるが、なかなか犯人にたどり着かないうちに、被害者は4人に…普通だと、こういう展開は「警察VS犯人」をメインに描かれるのだろうけど、この作品は特捜に加わった捜査一課の九係の3人と、主人公の西條と敵対する機捜の警察官1人の4人の目線からの話が交互に綴られる。事件とは関係ない個人的な内容が多く、なかなか進展しない捜査に若干イライラ…しかも、結構、早い段階で犯人が分かってしまう。
    でも、ラストまで読むと、最新作への期待が高まり、ちょっと騙された気分で、相変わらず複雑な読後感。

  • 揶揄の意味合いが込められつつも、"名探偵"と渾名される捜査一課のエース刑事・西條輝司と、ネット上で"指蒐集家"と呼ばれる、被害者の指を切り取る、女性ばかりを狙った連続殺人鬼の闘いが描かれます。
    「慟哭」、「空白の叫び」に続いての貫井作品三作目でしたが、どうも読んでて既視感がと思ったら、主人公の設定が「慟哭」の主人公・佐伯とそっくりなんですよね。
    頭はキレるが、仲間と群れずにむしろ孤立気味な捜査一課の若手エースで、家庭生活はうまくいっていないどころか、ほぼ破綻状態で愛人がいる。その愛人のことがバレて、世間や警察組織からバッシングをうけ窮地に陥る。
    ここまで似通ってると、ともすれば興醒めしそうなものですが、時に大胆な「劇場型」の犯行を起こしながらも、容易に尻尾をつかませない狡猾で不気味な"指蒐集家"との息詰まる攻防が、ページをめくる手を止めさせてくれません。
    後味スッキリとまではいかないものの、これまで読んだ作品の中では、比較的心穏やかに読み終えられた方かも知れません。
    なんと続編があるそうで、次はその「宿命と真実の炎」に挑みます。

  • 内容は貫井作品らしい深い話ですが、連続女性猟奇殺人事件の捜査にのりだしたエリート刑事の西條を中心とした人間ドラマ的な話でもあり、それぞれ不器用な生き方しかできない刑事達の悲哀的な話でもあります。
    ネットを駆使した自己顕示欲の強い犯人と、犯人に翻弄されっぱなしの刑事達の無念さがリアルで、やがて自己顕示欲がエスカレートしすぎて犯人が自ら墓穴を掘ってしまうところが面白かったですね。
    でも、私はわりと序盤で犯人の目星はたっていて、それは見事に的中していたのは爽快でしたが、犯行のキッカケまでは見抜くことができませんでした。(まだまだ浅いですね・・・)

  • 自分の思う正義と他人の思う正義は必ずしも一致しない。
    自分の意志を尊重し、『真面目に』職務を全うすることで、ほかの誰かの反感を買うことに繋がることもある。
    これは警察組織だけではなく社会全体に言えること。
    明日から私は何を信じてどう生きれば良いのか、そんなことを自問したくなる本だった。
    好き。

  • 厳しいな~。
    主人公は最後、どうしたんだろう?と気になる。
    希望を言えば、なんとか自分らしく生きていってほしいものだが。
    人はとにかく真面目に一生懸命すればいいわけではなく、人の輪の中で生かされていることをわきまえて、感謝の気持ちを伝えることを忘れないようにしたいと思う。
    気持ちって、自分の気持ちでも、本当に意味でちゃんとわかるというのは難しいし、まして、それを相手に伝えるというのは本当に難しい。
    けれども、やる前から諦めていてもどうしようもないから。

  • 力強い文章で一気に読めるが、最もツラいラストが待っている。

  • 「指蒐集家」という連続猟奇事件犯に、「ボーンコレクター」などのライム•シリーズのような緻密さと重厚さを期待したのだが、正直、期待はずれ。あまりにも犯人が簡単にわかりすぎだし、主人公のもてキャラぶりや男女の愛憎も薄っぺらく、刑事同士の嫉妬や足の引っ張りあいも中途半端。山本周五郎賞受賞作としても寂しい内容だった。

  • なんか、書き方が思わせぶりなので、随所で、犯人はこの人じゃないのかって思ったけど、最初からそこだけは否定するように作ってあったから、ずっと確かに無理だよねっと思ってたのに。

    主人公の転落度合いが急降下なのが、少し無理があるような。

  • 西条が人生から転落する様は、読んでいてつらかった。ただし、エリート警察官がすぐにホームレスになるとか、犯人の殺人動機はそれでいいのかなどツッコミどころも満載の面はある。長い小説だが、組織の在り方など考えさせられるものあり、読み終わった後の虚脱感が尋常ではなかった。

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著者プロフィール

1968年、東京都生まれ。早稲田大学商学部卒。93年、第4回鮎川哲也賞の最終候補となった『慟哭』でデビュー。2010年『乱反射』で第63回日本推理作家協会賞受賞、『後悔と真実の色』で第23回山本周五郎賞受賞。「症候群」シリーズ、『プリズム』『愚行録』『微笑む人』『宿命と真実の炎』『罪と祈り』『悪の芽』『邯鄲の島遥かなり(上)(中)(下)』『紙の梟 ハーシュソサエティ』『追憶のかけら 現代語版』など多数の著書がある。

「2022年 『罪と祈り』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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