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本 ・本 (296ページ) / ISBN・EAN: 9784344018495
感想・レビュー・書評
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JALの経営の盛衰や衰退期の問題点が良く分かる本だが、日本の航空業界の歴史についても勉強になった。
ゼロ戦に象徴される日本の航空技術は、第二次世界大戦が終焉を迎えるまで、世界のトップ水準を誇っていたが、その軍事技術を民間に取り入れ、一九二八(昭和三)年、「日本航空輸送株式会社」(旧日航)が設立された。旧日航の飛行機が、中国大陸にある日本の租界を結ぶ路線を飛んでいたのだ。旧日航設立から三年後の三一年、関東軍が満州に「満州航空株式会社」を創設。傘下のグループ企業として「国際航空」を設立し、ベルリン路線を就航させた。戦時中の日本は、旧日航と満州航空を駆使し、北東アジアを中心とする航空ネットワークを形成。日中戦争勃発後の三八年、満州航空傘下の国際航空と旧日航が合併し、国策会社「大日本航空株式会社」がスタート。終戦により、いったんその機能が絶たれた。
終戦後、GHQがすべての航空機の運航を禁じた。これにより、かつて海外に五〇カ所以上あった大日本航空海外拠点が消滅。日本に残っていた八九の機体は破壊され、満州航空の自旅客機製造工場も解体。終戦直後は航空の空白期間となったが、GHQの政策が朝鮮戦争により一転。一九五一年八月一日に国内資本の航空事業が許可され、民間企業として日本航空(JAL)が設立された。だが、旅客一号機は、航空管制から運航にいたるまですべて米国任せでの再開。しばらくは事実上の米国支配がつづく。
JALの一号機は、フィリピン航空から借りたDC-3「金星号」だ。招待客を乗せて三日間、東京上空に浮かんだのが初フライト。そこから次に旅客機として運航するのが、米ノースウエスト航空からチャーターした「もく星号」。この「もく星号」が遭難。御巣鷹山よりももっと前の話だ。
2010年頃の経営破綻における政治的な内部抗争よりも、それ以前の歴史に興味が向いた本だった。勿論、ドロドロした至近(と言っても15年前か)の騒動の話も面白い。
航空機の技術と調達は未だに米国依存。航空自由化とオープンスカイ政策により、米国系航空会社の日本市場へのアクセスが拡大。安全基準・運航規則は米国主導による。JALの経営において米国が悪いとは言わないが、米国の影響はいまだ無視できない。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
『魚は頭から腐る』と言われるが、
まさに JALの60年の歴史は、
アタマが 腐り続けた ことだった。
丹念に インタビューし、実名で 書かれているところに
好感が持てる。JALの本当にあるべき姿とは?
何のために JALが、存在し、そこでなぜ働くのか?
そのことが 痛いほどわかる。
経営者の資質、経営判断、失敗を覆い隠そうとして
さらに 負の遺産を積み上げていく。
『沈まぬ太陽』のなかでの 石坂浩二は、すばらしい役割をしたが、
ここでの カネボウの伊藤淳二は、ちょっと、情けない。
労使協調路線をとり、『機長組合』をみとめ、団交権さえも認めた。
ストライキを恐れるあまりの 労働組合への弱腰。
為替損、燃料の先物買い。
政治家との癒着と便宜。国交省の能力のなさ。
銀行の バンカーとしての矜持のなさ。
沢山の戦犯が 存在しているのだね。
『親方日の丸』の安易さ。
自民党政権が 民主党政権に変わることで、
やっと 日本航空は 倒産することができた。
とにかく、真正面に立ち向かわず、権力闘争に明け暮れてしまう。
本当に、これだけの様々な 問題が あって、倒産したのは
必然的であるが、JALが 短期間で 再建し、
現在は どんな問題を抱えているのか?
この著者の視点で 『腐った翼』その後 を書いてほしいなぁ。 -
一昨年に購入し1度読んだが、ふともう一度読んでみたくなり手にとった。
JALという国策会社において経営陣は派閥争いに奔走しながら、一方で組合問題や隠れ赤字のような重要な問題からは目をそむけ、そこに政治が我田引水を目的にJALの資産を食いつぶそうとしていく、その流れを書いている。
いろんなことを書いているが、基本的には経営者をはじめとした役員が自分のことではなく、会社のため、ひいては顧客の為の経営判断をしっかり行うことがまったくできていないことにつきる。
経営の内容や決算数値、航路別の収支等具体的な経営指標はほとんど書かれておらず、経営者を始めたとした「人」の面だけクローズアップしており、かつ、かなり各人に対し人間的な批判をしながら書いているので、これがJAL問題のすべてだとは思ったら間違うと思う。
しかし、経営者とは・・という意味では非常に勉強になった。 -
JALの倒産は、「翼は腐っていた」という第10章のタイトルに尽きると思う。
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2015/6/24読了。
前半戦、歴代社長&役員の説明がきつかった…
中盤からは対外的な話も多くて飲み込みやすかった。
これを読むまでにJALは苦しい会社という程度の認識しかなかったけど、JALには乗りたくないな、という気持ちになった。
国も国民も見限って潰れたほうがみんなの為にいいと思う。 -
JALの再生に、向けて銀行団が支援をしているが、国際化競争、LCCが増えていることから、再生は難しい。お役人達が無料及び半額券を使い乗務していたり、地方の空港を作ったから飛行機を飛ばせとか経営がメチャクチャであった。
そのことをふまえてもいずれ、淘汰される会社だと思う。 -
沈まぬ太陽の後も沈み続けるJAL。
最近の報道ではこれまでで最もうまく行った再建と言われているが、この本を読む限りそう簡単に体質が変わるとは思えない。ググってもリストラの効果や、不採算路線からの撤退の効果がイマイチわからない。
何だかスッキリしないのです。 -
ザ・ノンフィクション。2010年に読んだ本の中で、3本の指に入る程の衝撃本でした。
超大企業・元国営企業ならではの派閥抗争、放漫経営等々。
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