密偵

著者 :
  • 幻冬舎
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感想 : 27
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  • Amazon.co.jp ・本 (357ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784344018518

作品紹介・あらすじ

時は明治19年春。政府の密偵・桐生征二は、上司である警部・藤田五郎から、反政府組織である民権派を内偵していた仲間が殺されたことを知らされる。しかも、仲間の遺したダイイングメッセージには、孝明天皇がさる高貴な人物によって毒殺されたという証拠が、思想犯や重罪人を収容する北海道の監獄に存在すると記されていた。桐生は藤田の命を受け、囚人として監獄に潜り込むが、そこにはすでに、民権派の連中が先回りをしていた…。天皇暗殺を裏づける証拠とはいったい何か。民権派VS政府。その熾烈な争奪戦は予想だにしない結末を迎える-。

感想・レビュー・書評

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  • 明治政府を転覆させかねない、孝明天皇毒殺の証拠品が、北海道の監獄にあるかもしれない。
    民権派の危険人物を特定し、計画を阻止するべく、桐生征二は監獄に潜入するが……。

    思想犯や重犯罪者がおり、囚徒が死ねば口減らしになる、と政府に考えられている、監獄。
    北海道という、厳しい自然と相まって、その過酷さが際立つ。

    誰が民権派で、誰が裏切者かわからないままの、密偵行為。

    自由民権運動と、弾圧しようとする政府。
    薩長と、負け組出身の者たち。

    精神的に過酷で、立場が入り乱れるため、やや複雑。

    元新選組がちらほら出てきて、高度な戦闘シーンも多かった。

    つかみどころのない上司の藤田と、主人公の関係性がよかった。

  • 藤田警部と杉村の対決シーンに大興奮しちゃいました!
    桐生もいいキャラクターですよね。
    この上司と部下コンビでシリーズ化希望!!

  • 面白かった! 新撰組三部作より、好き。
    気持ちよくさくさく読め、読後感も良かったです。
    残酷なシーンも多くはあるけれど。

    新撰組三部作で感じたようなBL色はなかったけれど、藤田(斎藤)と、桐生(主人公)の関係が良かった。
    信頼関係があるようなないような・・・桐生は藤田に遊ばれつつ、翻弄されつつ、でも、やっぱり最後は信頼があったのかな。
    藤田はかっこよかった。飄々としてこなれた感じ?
    こういう上司・部下像ってどこかで読んだような気もするけど、はて?どこだったかな?

    藤田(斎藤)と、杉村(永倉)がやり合うところは圧巻でした。
    このシーンのためだけに読んでも惜しくはない感じ。

    なかなか、新撰組ファンなら必読の一冊でした。

  • いやいや、久しぶりに眉根を寄せて息をつめて入り込んで読んだ一冊。桐生と藤田に惚れますよ(*´Д`)・・・舞台は徳川の世から明治へと時代が変わり二十年たったころ。元桑名藩士の桐生は命を受け密偵として北の果ての監獄にもぐりこみ、孝明天皇崩御に隠された噂の真相を探りながらも、政府に揺さぶりをかけようとする計画の阻止を命がけで行う。しかして、その真相は。証拠の品は。裏切り者はだれ?ただ徳川幕府がたおれ、明治天皇が擁立されたんじゃなかった。その間の年表の事柄のひとつひとつに多くの血が流れた。鹿鳴館の舞踏会の裏で、民は更に搾取され飢えで死んでいく。そんな混沌の上で近代国家になったことを改めて知る。また、「かごめかごめ」の歌が事件のキーを握る。意味を初めて知った。籠の中の鳥とは。鶴と亀とは。後ろの正面とは。そしてこの歌に続きがあった。秋山香乃さん読んだの初めて。他も読んでみたい。ぜひ。

  • 明治が舞台。19年ごろ。
    斉藤一の部下である男が明治政府転覆計画に関わる重大な証拠を反政府の人間に奪われないように暗躍する話…。と書くとやや見も蓋もないが、まあ、政府の密偵の話ですね。
    時期としては『獅子の棲む国』のさらに10年ほどあとの話になるみたい。『獅子~』のときはまだ密偵にスカウトされたばっかりだった斉藤はここでは密偵を束ねる警部補になってます。北海道の空知刑務所や京都、日光東照宮などでひそかに、派手に暴れまわっています。
    ミステリーとも言えるような話で、この話の主軸ともいえる「転覆の証拠」の場所をめぐって密偵と反政府が謎を解きあう。その証拠と、幕末の京都で行われた「伊東甲子太郎暗殺」の事件が絡まっているのが面白い。新撰組内だけのつぶしあいではない、とする解釈(というかここでの設定か)は意外に納得できるし、上手くできている。意外と早い段階で出てくるので書くが、その証拠は孝明天皇の崩御に関わるもので、それが何なのか、斉藤一がどう関わっていたのか伊東甲子太郎の事件とどうつながっているのか。

    ただ連続でこの作家の作品を読んだせいか、すこし疲れた…

  • 主役じゃないけど藤田警部が大活躍。秋山さんが描く斎藤はずっと間諜ですねー。というか秋山香乃作・斎藤さんのまさに柳に風な飄々とした感じが好きすぎる。若かろうが歳取ろうがとにかく喰えない男・斎藤。そして不死身呼ばわり。

    しかし今作一番衝撃的だったのが永倉改め杉村さん。快活に笑いながら人斬りまくってるがすんげー怖いんですけども。

  • “斉藤一”時代のものだと思ってたんで、読み始めてびっくり。まぁ、勝手に思い込んでただけなので自業自得なんですけどね。
    時代物としては読みやすい文章で、感情移入しやすく、おもしろい。かごめ歌らへんはもうちょいひねりがあってもよかったかなぁとは思うけど、ひょうひょうとした斉藤一改め藤田五郎はやっぱ好きです。

  • かごめうたで謎ときあたりはありきたりかなぁと思わずにいられませんが、明治で天皇暗殺を絡めて北海道という舞台設定は萌えますね(笑)一ちゃんも新ぱっつあんも、島田さんも他いろいろ登場して楽しかったー。秋山さんは一ちゃんを間者にすること多いですね。ひょうひょうとしている一ちゃんが想像できて笑えます。ええ、大丸でたくさん肌着を買ったとかね(爆)

  • 映像なら理解できたかもしれない。私には難解でした。

  • (陰の)主役は斉藤一。維新後、揺れ動く社会(「蟹工船」もこのころが時代設定なんだろうか)や価値観の中で、生き続けた彼の矜持について、思いをはせる。「生き抜く」ということに重きを置いていた、彼に。この人の作品を読むと、矜持、ということをしみじみと考えさせられる頻度が高い。

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著者プロフィール

1968年福岡県生まれ。活水女子短大卒業。2002年『歳三往きてまた』でデビュー。2017年『龍が哭く河井継之助』で第6回野村胡堂文学賞受賞。柳生新陰流居合道四段。主な著作に『伊庭八郎凍土に奔る』『密偵』『獺祭り白狐騒動始末記』などがある。

「2022年 『氏真、寂たり』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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