往復書簡

著者 :
  • 幻冬舎
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  • Amazon.co.jp ・本 (265ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784344018839

作品紹介・あらすじ

あれは本当に事故だったのだと、私に納得させてください。高校卒業以来十年ぶりに放送部の同級生が集まった地元での結婚式。女子四人のうち一人だけ欠けた千秋は、行方不明だという。そこには五年前の「事故」が影を落としていた。真実を知りたい悦子は、式の後日、事故現場にいたというあずみと静香に手紙を送る-(「十年後の卒業文集」)。書簡形式の連作ミステリ。

感想・レビュー・書評

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  • やはり短編は苦手だ。急に話が落とされるのが苦手なのか、肝心の部分は読者に任せる感じが苦手なのか。
    けれど、どの作品もとても勉強になった。

  • 『告白』で、これ以上ないというくらい秀逸なタイトルを冠した各章の構成の見事さ、
    心理の最深部にまで踏み込んで抉り出すような冴えた筆致に目を瞠ったけれど
    私の脆弱な精神ではついていけないなぁと思ってしまった湊かなえさん。

    この『往復書簡』は他の作品に較べると、心温まるエピソードも救いもあるとの評判に
    「今度こそ好きになれるかも?!」と勇気を振り絞って挑戦したのですが。。。

    どうしてどうして。
    遠くも近くもない絶妙な距離から、人間を残酷なまでに観察する視線も
    登場人物のなにげないひと言からじわじわ滲み出る毒も
    語られるエピソードが一見優しげに見えるだけに、かえって深々と胸を刺します。

    1篇めの『十年後の卒業文集』では、
    「文章の上手さに定評のある湊さんなのに、どうしちゃったの?」と
    どうしようもなくざわざわした違和感を抱かせる、
    冒頭での「~わね」・「~なの」・「~かしら」連発の、
    昭和初期を思わせるような不自然な文体こそが謎解きの要となっていたり

    「楽しい青春時代でしたね」というありきたりなひと言で、
    冷え冷えとした余韻を生んでしまうあたりに凄味を感じたけれど

    2篇めの『二十年後の宿題』では、
    次々明かされる残酷な真実にクラクラしながらも、最後の手紙にほっとして
    「大場くん、梨恵さんと結ばれたのね、よかったよかった」と思った次の瞬間
    「え?これって。。。大場くんの文章じゃないし!」と愕然とし、
    気を抜いた分、冷水(しかも真水ではなく泥水)を浴びせられた気分になって

    3篇めの『十五年後の補習』では
    主人公のふたりにとっては愛に満ちていて美しいけれど
    時効では拭いきれない罪を抱えた結末が、どうにも割り切れなくて

    湊かなえさんは凄くて、達者で、素晴らしいけどやっぱり、
    「同じクラスにいても、きっと友達にはなれないクラスメイト」
    のような作家さんなのよ、と自分に言い聞かせるのでした。

  • 「十年後の卒業文集」 「二十年後の宿題」 「十五年後の補習」
    と3つの独立したお話。

    題名どおり、手紙のやり取りのみで語られている小説。
    読者も返信までの心の動きを推察しながら、淡々と流れ行く時間をページをめくりながら共有できる醍醐味もある。

    また、ひとつの物事・事件を各々がどう言った捉え方をしているかを、手紙が、徐々に外堀から埋めてくれる気がした。

    特に「十五年後の補習」は、手紙の持つタイムラグや味わい深さが伝わり、返信が届くたびに、状況は一転し、心を揺さぶられた。

    大切な人には、手紙で伝える機会も持ってみたい!と思わせてくれた。
    湊かなえさんの本の中では、私はこれが一番!

  • 手紙での会話形式で物語が進んでいくため、回りくどい表現が多くて読みにくかった。手紙という手法をあえて取り入れた展開でも、特に面白みもなかったので。。

  • 『十年後の卒業文集』
    高校で放送部だった男女。十年ぶりの再会。
    大ケガを負って行方不明になったはずの千秋。
    十年前の思い。

    『二十年後の宿題』
    定年を迎えた女教師がかつての教え子に頼み、
    二十年前の事故にかかわった生徒を探らせる。
    世界は狭い。

    『十五年後の補習』
    中学生から付き合っている男女。
    海外ボランティア先にいる男と日本にいる女。
    十五年前の事故の記憶。

    -----------------------------------------------

    湊かなえさんの作品スタイルはひきょうさを感じるほどに読みやすい。

    今作は一人が延々としゃべるスタイルではなく、手紙スタイル。
    往復する手紙のなかで謎が解けていくのは、かゆいところに手が届く感じに似てる。

    3つの作品全てに最終的に明るいオチがついていて、救いがあるというか、ハッピーエンドだと思う。

    でもやっぱり毒もある。小中学生でもいける読みやすさだけど、内容的にまずい部分もあると思う。
    大人の楽しみ。人生甘さ控えめ。

  • 本を開いたときに感じる

    (私以外の多くの読者も共有しているはずである物語)

    そんな意識がフッと透明になった。

    私と、
    差出人と。

    ただ二人きり。

    往復書簡と言う形式で書かれた物語は
    二人の間にある
    (どうしても腑に落ちない)事や
    (真実を知りたい)
    (真意を確かめたい)と言う衝動を、紙面上のみで交わすことにより、
    周囲の雑音をぴたりと消してしまったかの様な静けさを得られた様な気がした。

    自分の中にも、
    手紙を交わす相手の中にも
    確かに有るが、
    まだはっきりと形になって生まれては来難い感情を覆っている謎や不可解を、
    代わる代わる落として行く作業は非常に緊張感があり、
    手にはべっとりと汗!

    著者の筆力のものすごさも然る事ながら、
    雑音の無い世界で
    打てば(書けば)
    響く。(返事が届く。)

    単純なるその繰り返しのなかで
    少しずつ現れ始める真実の卵は果たして、

    すでに死んでいるのか?
    それとも
    脈を打っているのか?

    とにかく手紙が届いたら、
    すぐにでも読みたくなるスピーディな展開は、病み付きになる。

    >十年後の卒業文集

    >二十年後の宿題

    >十五年後の補習  3編収録。

  • 往復書簡3パターン.
    ①高校時代の記憶ってそんなに曖昧なものか?という疑問は若干残る.青春時代の思い込み、すれ違い、悩み、楽しさ・・・いろんなものがつまった記憶を掘り起こす.
    ②一つの事件は、見る人によってこんなにも捉え方が違うのかと思うと同時に、その捉え方によって心の捕らえ方自体が変わるということがよく分かる作品.物語の流れは輪になって、一つになる.
    ③一つの事件は、その人の様々な心の葛藤によって引き起こされる.事実を確認するということを通して、自分の中にあるものを確認し、その先にある未来を託す.

  • すべてが手紙で語られるストーリー。三編からなる一冊だけど
    一話目と二話目はつながっているのに、二話目と三話目はつながっていない。つながっていて欲しかった。

    1話目の「十年後の卒業文集」の女同士の手紙の文章が
    とても剣があるようにかんじてザラザラな感じだった。常にケンカ売ってる感じ。
    2話目の「二十年後の宿題」は、こんな悲しい事故、
    真相なんて知らずでいいじゃん、と思ったけれど
    何故そうしたか、というのはどの視点やどの時点でも
    大切なことなのかもしれない、と感じた。
    3話目は「十五年後の補習」んー、これってどうなんだ。
    いい話、、みたいにまとめられてる気がするんだけど
    いやいや、二人殺してますから・・
    この後にどんでん返しがあってほしい。

    言葉が突き刺す感じだな、全体的に。
    それが、湊かなえなんでしょう。

  • 3話収録。

    「十年後の卒業文集」
    同窓生の中からカップルが生まれ、めでたく結婚。
    披露宴の写真を送りがてら、一人だけ来なかったかってのメンバーについて、手紙が飛び交う。
    高校の放送部で一番人気のあった部長の浩一が新郎だが、相手は高校の時付き合っていた千秋ではなく、副部長だった静香なのだ。
    いつの間に、こうなったの?
    あの時みんなで好きな人を打ち明け合った、本当の気持ちは…?
    最初から本気だった?
    みんなで願掛けをしようという話があったときの気持ちは…
    大学時代に何があったのか。そして、千秋が怪我をして行方が知れなくなったというのは…

    誰が誰に送った手紙なのか、というのも一捻りしてあって、飽きずに読めます。
    お互いがどう思っていたか、自分はどう思いこんでいたかというあたりのずれは、ちょっと意地悪で、いかにも。
    後味はこれまでに比べると、ずっとマシ。

    「二十年後の宿題」は、教師がかっての生徒に、20年前に川で起きた事故に関わった子供達が現在幸せにしているかどうか見てきてくれと頼む。
    何があったのか。
    そして、教師が頼んだ理由とは?
    幸福を祈る思いへ向かっているのですね。

    最後の一編「十五年後の補習」
    はこれまでより一歩進んで前向きな覚悟が感じられます。
    15年来付き合っている二人。
    万里子は中学2年の時に起きた事件当時の記憶をなくしていた。
    素直で真っ直ぐな彼女を守っているつもりだったが、いざというときの彼女の勇気にはかなわないという気持ちも抱いていた純一。
    突然、彼が国際ボランティア隊に参加してアフリカへ2年間赴任することになり、半年間の準備期間中も何も聞かされていなかったことにショックを受ける彼女。
    手紙のやりとりが始まります。

    過去の事件は深刻なのだが‥
    誤解を解きつつ、しっかり向かい合っていく二人のやりとりなので。
    こんなに後味良くて、良いの?ってぐらい。

  • 手紙のやり取りの中で進むミステリー。最後の「十五年後の補習」は切ない気持ちで読みました。
    幼い時、道ゆく人がそれぞれ自分の視点と思考を持って存在していることが妙に奇妙に思えていました。そんな一人一人がそれぞれの視点とストーリーを交錯させていくお話。楽しかったです。

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著者プロフィール

1973年広島県生まれ。2007年『聖職者』で「小説推理新人賞」を受賞。翌年、同作を収録した『告白』でデビューする。2012年『望郷、海の星』(『望郷』に収録)で、「日本推理作家協会賞」短編部門を受賞する。主な著書は、『ユートピア』『贖罪』『Nのために』『母性』『落日』『カケラ』等。23年、デビュー15周年書き下ろし作『人間標本』を発表する。

湊かなえの作品

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