残酷な世界で生き延びるたったひとつの方法

著者 :
  • 幻冬舎
3.66
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本棚登録 : 2018
レビュー : 287
  • Amazon.co.jp ・本 (263ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784344018853

作品紹介・あらすじ

ワーキングプア、無縁社会、孤独死、引きこもり、自殺者年間3万人超など、気がつけば世界はとてつもなく残酷。だが、「やればできる」という自己啓発では、この残酷な世界を生き延びることはできない。必要なのは、「やってもできない」という事実を受け入れ、それでも幸福を手に入れる、新しい成功哲学である。

感想・レビュー・書評

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  •  経済小説作家の著者による、風変わりな“自己啓発書”。「風変わり」というのは、本書が既成の自己啓発書に対する根源的批判を土台に書かれているからだ。
     「あとがき」には、次のようにある。

    《この本は、自己啓発のイデオロギーへの違和感から生まれた。
     能力に恵まれた一部のひとたちが、その能力を活かして成功を目指すのになんの文句もない。でもぼくは自分が落ちこぼれだということをずっと自覚してきたから、「努力によって能力を開発しよう」といわれるとものすごく腹が立つ。その一方で、「能力がなくても生きる権利がある」とナイーヴにいうこともできない。いくら権利があったって、お金が稼げなければ生きていけないのだから。》

     この短い一節の中に、本書の立ち位置が言い尽くされている。

     少し前の「勝間和代対香山リカ」論争の読み解きから始まる本書は、脳科学や進化心理学、遺伝学、動物行動学など、さまざまな学問の知見を自在に駆使して、自己啓発イデオロギー(能力は開発できる・わたしは変われる・他人を操れる・幸福になれる)の「間違い」を完膚なきまでに論破していく。能力は増強できないし、わたしは変えられないという、身も蓋もない話がさまざまな角度から論証されていくのだ。

     といっても、自己啓発書をバッサバッサとやっつけていくような、下品で威勢のよい本ではない。著者の語り口はウイットに富み、すこぶる知的で上品。本書自体が現代社会論として価値をもっている。

     著者は経済の専門家ではあっても科学者ではないから、本書で開陳されるさまざまな科学的知見は、ありていに言ってほかの本からの受け売りだ。
     しかし、地の文に引用を織り込んでいくやり方がすごくうまいので、「人のフンドシで相撲をとっている」感じがしない。積み重ねた受け売りを、著者独自の見識として構築し直しているのだ。そのうまさたるや、凡百の自己啓発書とは別次元にある感じ。
      
     能力は増強できないし、わたしは変えられない。よって、「わたしは変われる」を前提に幸福を約束する自己啓発書の内容も、眉ツバと言わざるを得ない。
     ……と、そこで終わってしまったら夢も希望もない本になってしまうが、本書は最後に“いまの自分のままで幸せをつかむ方途”を教えてくれる。

    《残酷な世界を生き延びるための成功哲学は、たった二行に要約できる。

     伽藍を捨ててバザールに向かえ。
     恐竜の尻尾のなかに頭を探せ。》

     「はじめに」で提示されたそんな言葉の謎解きは、終盤――4章の最後と終章でなされている。意味については、本書を読まれたし。

     既成の自己啓発書のようにやるべきことを具体的に指南してくれる本ではないが、私は十分啓発された。“グローバル時代の幸福論”としても面白く読める。

  • いやはや。おもしろすぎる。
    この橘玲。ただ者ではない。
    沢山の本をベースにして、論理を展開する。
    本の紹介のまとめ方が じつに シャープなのだ。

    「この世界が残酷だと言うことを、ぼくは知っている。
    国家は市場に対してあまりにも無力で、
    希望は永遠に失われたままだ。」

    ①能力は開発できる。→開発できない。
    勝間は言う「やれば出来る」「努力すれば報われる」
    →自己啓発ブーム。
    →無限の能力、無限の可能性。→学習と訓練。
    インディペンデントな生き方が必要。
    「経済的独立がなければ、自由もない」
    Think and Grow Rich
    ②私は変われる。→私は変われない。
    ③他人を操れる。
    ④幸福になれる。
    勝間は言う「努力をすると、より簡単に幸せになれる。」
    →努力しないのは自分の責任である。

    「仲間との競争に勝って異性を獲得し、
    自分の遺伝子を残そうと思えば、
    もっと得意なものに資源を集中するのが、最適な戦略なのだ。」

    「伽藍を捨ててバザールに向かえ。」
    「恐竜の尻尾の中にアタマを探せ。」

    適者生存の競争原理。
    敗者は淘汰される運命にあり、社会が不平等なのは、
    当たり前で、努力しない貧者を救済することは有害である。
    努力しない者に生きていく資格はない。
    運動能力が、遺伝的な要因は認めるが、
    知能が、遺伝できまると言うのは不平等を容認する。
    知能(IQ)は、70%は遺伝によって決まる。
    知能は 記憶力と概念理解にわけられる。
    犯罪が 遺伝するのではなく、
    ヒトが犯罪者になるのは、環境のセイである。
    グローバル化では、格差社会の到来が不可避である。

    シンボリックアナリスティックサービス
    (クリエイティブクラス)が20%の富裕層に。
    インパースンサービス
    ルーティンプロダクションサービス

    手持ちの資本を総動員し、市場を活用して
    「利益」を最大化する複雑なゲーム。
    人種や国籍、性別、宗教や思想信条、容姿や家柄、出自で評価しない。
    学歴、資格、職歴(経験)で評価する。
    人的資本を介して教育と富が直結することで「自己啓発」の終わりなき競争。

    マクドナルドは、空腹から満腹に移動するために利用できる最適な方法。
    量と時間が重視される。意外な驚きがどこにもない。
    快適性の秘密がある。合理的なシステムは、快適。
    仕事がマニュアル化されていないと、個々の判断に責任が発生する。
    能力主義と合理化(マクドナルド化)が、合体する。


    好きなことに夢中になれるように遺伝的にプログラムされている。
    好きな事が市場で高く評価されているわけではない。
    好きな事を仕事にすれば成功できるなんて保証はない。

    権力ゲームは、集団の中で一番になること。
    爱(生殖)と友情(仲間)が大事。それから、貨幣が加わった。
    返報性の掟ー何かしてもらったらお返ししなければならない。
    贈与と返報性。そして マイナスの贈与が復讐。
    一貫性がないと信用できないことで、社会的価値をなくす。
    そのために、一貫性の罠に落ちる。
    抗争の目的は、武力によって叩き潰すことではなく、
    抗争しないことである。
    心とは、相手の気持ちを知るためのシミュレーション装置。
    生き延びること。社会秩序を保つこと。楽しむこと。
    「評判を獲得」ゲームには、金銭の介在によって機能しなくなる。
    幸福になるためには、快楽だけでは足りない。
    「幸福とは旅の目的ではない。旅の方法である。」

    ふーむ。おもろいね。
    努力しても、変われないことが 重要なのだ。

  • 分かったような分からないような・・・まー、兎に角悩んでもしようがないので明日も会社に行こう。

  • 1回読んだだけでは、理解しきれないな。

    この人、いろんな分野からのアプローチをしていて、すげーなと単純に思いました。
    カツマーを取り上げたと思ったら、遺伝子の話。
    そこから、伊坂孝太郎の重力ピエロの話まででてきて、幅が広いうえ、その取り上げている内容も深いなーという印象。

    「伽藍を捨ててバザールに向かえ」
    というのが結論らしいのだが、
    イメージでは
    伽藍⇒仏道修行に入っている人
    バザール⇒バーゲンセール

    仏道修行からバーゲンセールに向かえ??
    なんのこっちゃ?と思いながら読んでおりました。

  • 他の本のレビユーを書いた方の本棚で見つけ購入(中古)もの凄く脱線していきむずかしいのだがおもしろい。
    ラスト近くで急に本題にもどってくる。
    終わり方はほっとする感じでよかった。

  • 風呂敷を広げ過ぎなタイトル。今筆者が関心を持っていることをつなげて紹介してみました、という感じの本。それぞれ気になるトピックがあったら紹介されている本を読んでみたらいい。

    頑張れば能力が高まるわけではないという話で始まってこのオチだと、能力がない・うまく立ち回れていないと感じている人は「じゃあ死ねってか」って感想になる気がする。

  • 既存の自己啓発の考え方を否定し、能力が無い人間の成功の方法を説いた本である。

    本書の主張は、
    ・伽藍(がらん)を捨ててバザールに向かえ!
     (会社を辞めて、ネットで商売しろ)
    ・恐竜の尻尾のなかに頭を探せ!
     (ネットは広大だから、ニッチビジネスでもチャンスがある)
    といったところである。

    内容は、
    ・天才は勝手に稼いで資本主義の勝者になる
    ・しかし凡人は自己啓発をしてもできない
    ・自分の性格は変えられない
    ・他人を動かすこともできない
    ・組織に属していても幸せになれない

    ・会社を辞めて、好きを仕事にして、ニッチビジネスを広大なネットで売れ。

    といった内容であった。

    身も蓋もない内容であり、やもすると「資本主義の勝者になる」といった
    モチベーションを大きく減退させる内容となっているが、
    極めて現実的であり、他の自己啓発本より説得力がある気がする。

    しかし、結論の部分は他の自己啓発本とほぼ変わらない内容であり、
    どのようなロジックで掘っていっても同じ結論にたどり着く点が
    興味深かった。

  • 趣旨不明確、根拠薄弱で読む価値はない。
    『「やってもできない」人のための成功哲学』とか、何をもって「成功」といっているのか。
    本書では、
    ・そもそも自己啓発をしても、能力は向上しないし、自分は変えられないし、他人は支配できないし、幸福にはなれない
    ・だから、自分が自分のままでいられるニッチな場所に逃げるしかない
    という身も蓋もない結論に至る本です。

    ただ、まったくもって根拠が弱い。
    例えば、「知能は遺伝による影響が大きく努力による変化はない」というが、では知能の高い両親の子どもは何の学習をしなくても三ヶ国語が話せたり相対性理論が理解できるのかというと必ずしもそうではないのであって、では知能と学習と努力とどう切り分け、どのように判断するのかという一番大切なことが書いていない。
    しかも、根拠について自分は専門家ではないからわからないと逃げている。
    これはもう論外で、そんな人はこんな本を書いてはいけない。

    そんな感じで、はっきり言って意味不明な本。
    古本で108円で購入したけど、読むだけ時間の無駄でした。

  • 知能や心も遺伝要素高く、また、人格形成には親の子育ては無関係。この説は、ジュディスリッチハリスによる「子育ての大誤解」からの引用だ。これを引く事で勝間和代の「やればできる」に反論する。努力では変わらない。その事が不都合な真実だと。あまりにも、説が浅い。というか、文献を無批判に受容しており、説ですら無い。人間の努力の結果は表層に現れるもので、心は変わらずとも、表現は変わる。知能は変わらずとも、知識は増えるのだから、努力とはそもそも、その表層を改善するためにあるのだ。双子の性格や癖が類似しているからと、遺伝子の限界を説く文献をそのまま引用し、「やってもできない」など言ってはならない。著者の言う、残酷な世界とは、そのような一論文の視点でしかない。

    しかし、本著の魅力は、このスタートからの展開にある。努力が無駄、という受け入れ難い切り口ではあるが、そこから巧みに論文を引き、野生動物とさほど変わらぬ人間の真理を解く。そこから導かれる、人生の攻略方法は、これまた万人が納得するものではないかもしれないのだが。岡田尊司という精神科医兼作家がいるが、著者である橘玲の手法と語り口はそれに似ている。岡田尊司好きにも、楽しめる一冊ではないだろうか。

  • 能力は開発できる、私は変化できる、他人を操れる、幸福になれる。
    好きなことを仕事にすれば成功できる。
    人は自分に似た人に引き寄せられる。
    グローバルな市場経済ではお金持ちは人種や宗教、国籍、性別、政治的な主義にかかわらず、だれとでも積極的に付き合い、ビジネスを拡大しようとする。
    高度化した知識社会のスペシャリストやクリエィティブクラスは市場で高い評価を獲得することによって報酬を得るというゲームを楽しんでいる。夢中になるのは、それが楽しいからだ。

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著者プロフィール

作家。2002年、金融小説『マネーロンダリング』(幻冬舎文庫)でデビュー。『お金持ちになれる黄金の羽根の拾い方』(幻冬舎)が30万部の大ベストセラーに。著書に『日本の国家破産に備える資産防衛マニュアル』『橘玲の中国私論』 (以上ダイヤモンド社)など多数。『言ってはいけない ~残酷すぎる真実』(新潮新書)が50万部超のベストセラーに。

「2019年 『1億円貯める方法をお金持ち1371人に聞きました』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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