龍馬デザイン。

著者 :
  • 幻冬舎
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本棚登録 : 40
レビュー : 2
  • Amazon.co.jp ・本 (381ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784344019065

作品紹介・あらすじ

NHK大河ドラマの歴史上、初めて誕生した「人物デザイン監修」という仕事を一手に引き受けた男の、苦悩と歓喜の日々-。「龍馬伝」を支える仕事人たちの、情熱とエネルギーのぶつかり合いが胸を打つ、感動の記録。

感想・レビュー・書評

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  • 文章量や内容的にもかなり重量級だった。とにかく濃密。

  • (2011.01.07読了)(2010.12.07借入)【12月のテーマ(龍馬伝を読む)その④】
    2010年のNHK大河ドラマは、今までの大河ドラマと比べて、まじめさが減ったという印象がありました。今の若者に観てもらうための工夫なのかと思って見ていました。
    特に岩崎弥太郎と後藤象二郎が出てくる場面は、演技が大げさで、滑稽でさえありました。呆れながらも楽しく見ていたので、試みとしては、悪くないと思います。
    徳川慶喜も実に異様な顔立ちにしてあり、強がりを言ってばかりいる割には、どんどん落ちぶれて行くさまは、見事だったかもしれません。
    主役の坂本龍馬をはじめとする、上記の方々の扮装全体を監修していたのが、この本の著者、柘植伊佐夫さんだったのです。
    ヘアデザイナーだったのが、ヘアメイクだけではなく、映画のキャラクターデザインを担当するようになり、今回、「龍馬伝」の人物デザインとして、参加したのだということです。この本は、「龍馬伝」にかかわった範囲での日録です。二段組みで、370頁ほどありますので、読み切るのにかなり苦戦しました。
    書いてある内容は結構興味深いのですが、日録なので、話題があれこれ飛ぶし、ときには意味不明(業界用語のため?)だったりするためか、なかなか頁ははかどらないのが、しんどかったです。

    ●アバン(20頁)
    アバンというのはいわゆる作品のオープニングタイトルの前に、ちょっとした話の始まりやきっかけを伝えるためのエピソードである。
    ●釣り人の許可(63頁)
    海岸での撮影の際に、釣り人がおり、6時間かけてやって来たという。撮影の際には、釣りを遠慮してもらわないといけないので、釣り人にお願いしたら、「君たちは誰の許可を受けてここで撮影しているのか?」と尋ねたという。「市の許可と全面的な協力を得ている」と伝えると、「しかし私の許可は得ていない」という。制作担当は、ご迷惑を謝罪し、彼から許可を得たという。(屋外でのロケも大変なんですね。)
    ●情と理(64頁)
    理が立つ人は意味や筋に転びやすく、情に立つ人は感覚を重んじる。どちらにも価値はあるように思うが、創作というのは理が勝ち過ぎるとつまらなくなると自分は思っている。
    ●仕事の基本(103頁)
    「自主的に疑問を持ち、積極的に解決に動く」ということがよい仕事をする基本なのだろう。
    ●山岳救助隊(124頁)
    「遭難する人に共通することってありますか?」
    「準備不足ですよ、全部」
    ●無敵(136頁)
    本当に無敵というのは「そもそも敵を作らない」ということである
    ●人物デザイナー(180頁)
    人物デザインは作品を理解し、登場する人物を通じて新しい秩序を見つける仕事である。人物デザイナーはオーケストラの指揮者に似ている。人物を生み出すための各パートが奏者である。衣装、メイク、和かつら、洋かつら、小道具、特殊メイク、特殊造形などが音色を奏でる。
    ●柘植伊佐夫さん(204頁)
    「僕、もともとヘアメイクなんですよ。で、最初はファッションやモードの仕事してて、そのうちに映画に入って。で、ビューティー全体を見るようになったんですね。で、そうしているうちにこのヘアメイクなのにこの衣装とか靴とか小道具とか、微妙にずれてないかな?とか思い始めちゃって、それで、ならいっそキャラクターデザイン全体を見たほうがいいのかなって。たまたまその方法でやれる機会も与えられて。で、現在にいたってるんですよ」
    ●ゲルハルト・リヒター(282頁)
    ゲルハルト・リヒター著「写真論/絵画論」。この中に「絵画の論理は、あとになって言語化されうるものであって、それをあらかじめ構成することはできないのです」という発言があった。納得だ。(リヒターの絵画は、川村記念美術館で見たことがあります。ハイパーリアリズムのものと抽象に近い具象のものがあります。割と好みです。)
    ●8時間ルール(292頁)
    NHKには「八時間ルール」というものがあり、終了時間から八時間経過しなければ翌撮影を開始できない。昨日は朝四時に終了したらしく、正午までが待機義務だ。
    (撮影現場というのは、撮影を予定したものは、朝の4時とかまでかかってしまっても撮影をしてしまうことがあるようで、大変な仕事ですね。野外ロケの場合は、天気の回復をひたすら待つ場合もあるようですし。)
    ●ジョン万次郎(298頁)
    貧しく寺子屋に通えず、読み書きもできない若い漁師の彼が、遭難し、無人島に流れ着き、捕鯨船に拾われて渡米し生活した後、ゴールドラッシュで稼いだ金でハワイへ渡り、遭難時にそこへ降ろされた土佐の漁師と合流して、日本へ帰国する。この運命的なアドベンチャーを、一貫した無垢さと正義感で乗り切っている逞しさにある。帰国後もペリー来航を背景に幕府に抱えられ軍艦教授所教授に任じられたり、遣米使節団の一員として咸臨丸に乗る。維新後、開成学校の教授に就き1898年に没した。
    ●よりどころ(355頁)
    小さな個人が溺れずに生きて行くことができるコンセプトは何か。それは個人が抱く思想や宗教の強度に負うところが大きいのかもしれない。戦前までの日本が連続して天皇にその役を負っていただいていたことは疑問の余地がない。

    著者 柘植 伊佐夫
    1960年、東京に生まれる
    少年期を長野県で過ごす
    1990年、第1回日本ヘアデザイナー大賞受賞
    1999年、手塚眞監督「白痴」で映画全体のヘアメイクを監督
    2008年、ビューティーディレクション担当の滝田洋二郎監督「おくりびと」が第81回米国アカデミー賞外国語映画賞を受賞
    2010年、NHK大河ドラマ「龍馬伝」で人物デザイン監修を担当
    (2011年1月9日・記)

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