ツノゼミ ありえない虫

著者 :
  • 幻冬舎
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本棚登録 : 214
感想 : 25
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  • Amazon.co.jp ・本 (80ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784344020115

作品紹介・あらすじ

とんがって、ふくらんで、透き通って、三日月形…奇想天外、ユニークすぎる形を特殊撮影法で克明に再現。世界中の奇っ怪な138種がオールカラーで楽しめる。日本初、へんなイキモノの写真集。

感想・レビュー・書評

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  • ツノゼミの一般向け入門書です。数多くの写真と簡単な解説がつきます。
    不思議な生きもの・ツノゼミの世界へいざ。

    ツノゼミはツノゼミ科(Membracidae)に属する昆虫で、一般的にいうセミとは異なる生きものです。セミとは下目まで同じ分類ですが、ヨコバイがさらに近縁となります。
    セミのように大きな鳴き声は立てず、2mm~25mm程度と相当小型です。
    この虫のすごいところはなんと言ってもその形態です。本書の副題は「ありえない虫」ですが、本当にありえないほどの奇妙な形と多様さです。
    全体の形として、体の上に長目で半透明の羽が付くところはセミにも似ていますが、セミと違うのはさまざまな形の突起物が付くところ。
    植物の棘や枯れ葉によく似たものもいますし、ハチやアリなどにそっくりなものもいますし、イモムシの糞や昆虫が脱皮した抜け殻の擬態をしているものもいます。要は自分を目立たなくする、または危険な存在だと思わせるのがツノゼミの「ツノ」なのです。そうはいっても、やりすぎて、もはや何の擬態かわからないような珍妙な形もちらほら。いやまぁ、あんた、それどういうつもりなの・・・?と聞いてみたくなります。
    こんな大きな突起物がついていても、すべての種が「飛べる」というのもすごいところ。但し、大きい突起物を持つものは「不器用」に飛ぶようです。
    さらに、このやたらと複雑な形、脱皮で困らないのか?と疑問に思うわけですが、幼虫期にはこの突起物はないのだそうです。最後の脱皮(羽化)の際、しわくちゃに畳み込まれた状態で突起物が出てきます。そして徐々に、翅が伸びるのと同時に突起物もふくらんでいきます。中身は空洞であることが多く、風船がふくらむようにして完成形ができあがります。

    ツノゼミは昆虫には珍しく、卵を守ることが知られています。母ツノゼミは産んだ卵の上に覆い被さるようにして、外敵から卵を守ります。なかには幼虫になってからも保護し続ける種もいます。
    ツノゼミの寿命は2~3ヶ月で、次世代を守り育てつつ、短い生涯を終えることになります。
    ツノゼミの餌は植物の汁。アミノ酸が乏しい一方、糖分が多く含まれるため、必要なだけのアミノ酸を取ろうと思うと、糖分の取りすぎになってしまいます。そのため、余った糖分は排出されます。甘露と呼ばれるこの排出物に寄ってくるのがアリです。同様に甘露を出すアブラムシを保護するように、アリはツノゼミを保護しています。成虫だけでなく幼虫も甘露を分泌します。アリがとんとんと背中を叩くと、幼虫は腹の先から甘い汁が出し、こうしてアリとツノゼミは仲良く共生しています。

    ツノゼミが多く存在するのは、中南米やアジアの熱帯地域です。日本にも十数種存在しますが、熱帯のものに比べ、地味なものが多いというのもおもしろいところ。
    奇抜な配色で文字通り「とんがった」デザインのものはやはり熱帯のものに多いようです。

    本書には、数多くの美しい写真が収録されていますが、撮影の際、小さいがゆえの苦労があるそうです。ツノゼミの特徴はこの凹凸ある体。その全体にピントを合わせるのは非常に難しいことです。そこで著者が取った策は、標本を上下に動かしながら、多数の写真を層状に撮影し、ピントの合った部分を最後にコンピュータ上で合成するというもの。名付けて、深度合成撮影法。聞くからに手間の掛かりそうな方法です。さらには、標本にホコリが付いていると台無しになるため、1つ1つ丁寧にホコリを取って撮影に臨むのだそうです。この準備の方が、撮影よりさらに手間暇が掛かるのだとか。
    そう思って改めて写真を見るとまた一段と味わい深いです。

    この世界のどこかにおかしな形の小さいツノゼミたちがけなげに生きている。
    そう思うとちょっと楽しいです。


    *ツノゼミの存在自体は以前から知ってはいたのですが、今回、本を読む気になったのは、先日、たまたまツノゼミの研究をしている人に会ったため。台湾出身の彼は"treehopper"を研究していると言い、それは何だろうか・・・?と思ったら漢字で「角蟬」と書いてくれました。おぉぉ、ツノゼミですか・・・。
    フィリピンの森に何度も採集に行ったことがあるのだとか。ふーん、どんだけおもしろい虫なのかと思って探したのがこの本(この著者も知っているとのことでした)。
    袖すり合うも多生の縁。おかげでおもしろい奥深い生きものを1つ知りました。
    ツノゼミも珍しいかもしれないけど、ツノゼミの研究者も結構珍しい、ような気もします。

  • 「え、こんな生き物がいるの!?」と思わず言ってしまいそうな写真集です。ここに掲載されているのはツノゼミという虫たちで、まだまだ自分が知らないことはたくさんあるんだということを教えてくれました。

    僕も東京にいたころはずっと野外で仕事をしていたので暇を見つけては夏になると木に止まって気忙しくないているセミを素手で捕まえては放すという何の生産性もないことを業務の合間合間にしていたことを思い出しました。少し、話は脱線してしまいましたが、この本は世界中にいるとされる珍妙な『ツノゼミ』の各種を特殊な撮影技法を駆使して、克明なまでに再現したものをオールカラーで掲載したものでございます。

    ページを読み進めていると、これがまた日本では決して見ることのできないような模様や特徴のあるツノゼミたちがこれでもかといわんばかりに陳列されてあって、世界はまだまだ僕の知らないことがたくさんあるもんだなぁ、などと、妙に感慨深い気持ちにさせられました。中には『それはいったいなんの役に立つのですか?』と聞きたくなるようなプロペラのようなコブを持ったツノゼミや、中にはアリが戦うときの構えを模した形をしているツノゼミ。

    そして、『自分には毒がありますよ』という警告をド派手な模様で示しているツノゼミなどがあって、見ているだけでも楽しくなってくる一冊でした。こういう本がきっかけで、少しでも外の世界に興味を持ってくれれば。そんなことをふっと、この記事を書きながら考えてしまいました。

  • ツノゼミの、ほぼ図鑑です。
    わ〜すごい!どうしてこんな風になるの?!
    飛んでいる実物を見つけてみたい!と思いました。

    が、実物サイズがページの端に載っているのですが
    小さい!!
    こんなに小さな虫を集めたり研究したり...
    研究者ってすごいなぁと改めて思いました。

  • 毎週、丸山氏の本を読んでいる感じ。やはり面白かった。

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  • 写真集のように美しい図鑑。
    拡大写真と原寸大の写真が、同ページにあるのも嬉しい。

    ヘルメットツノゼミやハチマガイツノゼミのデザインセンスに痺れる。

  • この図鑑を見るまでツノゼミなるものを知りませんでした.いや,正確には,丸山氏のTweetにてその存在は知ってましたが,だからこそ読んだわけですが.
    とてもヨコバイに顔が似ている,カメムシ目らしくストローにて樹液をチューチュー吸うあたりは,名前こそ入っているもののあまり近くはないセミや肉食もいるカメムシや先程挙げたヨコバイ同様だ,ただ小さいのもあって硬い木はもちろん茎からでも難しく柔らかい先っちょなどで吸うて生活しているそうな.
    しかし,何と言ってもその奇抜なのは前胸より生えたるその名の由来にもなっている“ツノ”それもシャア専用ザクについてるようなのやカブトムシのようなのではなく,何とも奇妙珍妙な邪魔にしかならなさそうな何の役目を果たしているかさっぱりなツノ,それこそがこの虫の最高に面白いところなのだ.
    日本にもツノゼミはおり,探せば割と普通に見つけられるそうなので一度見てみたい.

  • NHKの番組で見て以来、俺の心を鷲掴みにしているツノゼミを紹介している本。

    ぱっと見無駄としか思えないような装飾的なツノを載せたツノゼミたちの魅力がここには詰まっている。

  • ほんとに居るの?って感じです。ページの下にメモリがついていて、実際の大きさが載っています。
    こんな形をしている虫が動いているなんて、ほんとに不思議。

  • 深度合成写真撮影方(標本を上下に動かして多数の写真を層状に撮影し、ピントの合った部分だけを最後にコンピューター上で合成する方法)で撮影されたツノゼミの写真。
    ツノゼミの大きさは種類により2〜25ミリほど、大部分が1センチに満たないんだそう。ページの端に実寸写真付きで分かりやすいです。

    本当にいるんですね。
    芸術家の作ったSF的造形物みたい、と思ってしまうんです。俄かには信じがたい。それくらいの奇抜さ。私の知らないところにまだまだたくさんの「ありえない」が存在しているんでしょうね。

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著者プロフィール

1972年 静岡県藤枝市に生まれる

「2006年 『バッタ・コオロギ・キリギリス大図鑑』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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