もういちど生まれる

著者 :
  • 幻冬舎
3.60
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  • (11)
本棚登録 : 2005
感想 : 329
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  • Amazon.co.jp ・本 (265ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784344021051

作品紹介・あらすじ

彼氏がいるのに、親友に想いを寄せられている。汐梨、平凡な日常と、特徴のない自分に飽き飽きしている。翔多、絵を通して、壊れた家族に向き合おうとする美大生。新、美人で器用な双子の姉にコンプレックスを抱く浪人生。梢、才能の限界を感じつつも、バイトをしながらダンス専門学校に通う。遙。あせりと不安を力に変えた5人が踏み出す"最初の一歩"。

感想・レビュー・書評

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  • 苦手な仕事に疲れ切った帰り道、ふと見つけたケーキ屋さんのショーケースの中で
    煌めきながら、おいでおいで♪ と手招きしているケーキやタルトのように
    (ああ、ちっとも朝井さん風にならないのが悲しい、この表現。。。)
    やっぱり大好きです、朝井リョウさんの比喩。

    青臭い、少女趣味だ、との批判も多いようですが、だって本当に若いんだし♪
    健やかな細胞が分裂するたびに、ぷるんと湧き出るようなみずみずしい比喩を
    保湿化粧品が手放せない私みたいな読者のためにも、生み出し続けてほしいものです。

    大学生、予備校生、専門学校生と、20歳を迎える5人の男女が
    今いる場所に不安を抱え、ましてや予測もつかない未来には怯えすら抱きながら
    イマドキの若者らしいさりげなさを身に纏ってもがく、いとおしい日々。

    自己嫌悪の塊になっている自分を眩しく見つめてくれている人に気付かなかったり、
    天賦の才能で何でもスマートにこなす魔法使いのような先輩の
    今まで見えなかった、見ようとしなかった必死さに背中を押されたり。
    誰かの目からは頼りなさの極致に見えた人物が
    別の物語では、他の誰かの揺るぎない支えになっていたりと、
    矢印やハートマークを駆使して人物相関図を書きたくなってしまう
    複雑に絡み合った青春模様に、胸がしめつけられます。

    美大の独特の空気感の描写がすばらしく、
    まっすぐな瞳で主人公の抱える問題を見抜き、チャーミングな言葉を残す
    女性から見ても魅力的な結実子さんが登場する
    『僕は魔法が使えない』がとても素敵な、連作短編集です。

    • 円軌道の外さん

      おおぉーっ!!!
      なにげに感じたことを書いただけやったけど(笑)、
      ホンマにハチクロテイストでしたか〜(嬉)(*^o^*)

      ...

      おおぉーっ!!!
      なにげに感じたことを書いただけやったけど(笑)、
      ホンマにハチクロテイストでしたか〜(嬉)(*^o^*)


      コレはなんとしてでも
      読まなければ(汗)


      あははは(笑)
      何をおっしゃいますか〜(^O^)

      食べ物に例えても、
      またそれを美味しそうに、
      読む人がイメージできるように
      うまく言葉にできるのは

      まろんさんが
      豊かな感性と
      それを形にできる表現力を
      持ってるがこそだと思いますよ♪


      朝井リョウさん、
      しかと心に
      その名を刻みました!(^_^)v


      2012/12/07
    • koshoujiさん
      朝井君、取っちゃいましたね。
      八時過ぎから、ニコニコ動画で、生会見するようです。必見ですよ。
      朝井君、取っちゃいましたね。
      八時過ぎから、ニコニコ動画で、生会見するようです。必見ですよ。
      2013/01/16
    • まろんさん
      koshoujiさん☆

      お知らせありがとうございます!
      動く朝井リョウさんを、ぜひ見なくては♪
      koshoujiさん☆

      お知らせありがとうございます!
      動く朝井リョウさんを、ぜひ見なくては♪
      2013/01/16
  •  いろいろぐっときた。

     あせり、不安。私も感じてきたこの感情。過去ではなく、今現在、この感情と向き合っている20歳の5人の男女の物語。

     圧倒的な長さの昼間をもてあまし、平凡な日常と特徴のない自分に飽き飽きし、自分以外の誰かになりたいと憎悪するほど願い、才能の限界を感じつつもそこから目を背けて、私はあなたのようにはならない、と強がる。

     ここに出てくる5人の男女は、すべて、私だ。

     20歳の彼らは、まだ何者でもないらしい。「何者でもない」っていうのは、朝井さんの作品のテーマだなあ、とつくづく思う。
     人って、いつ「何者」になれるんだろう。果たして私は、「何者」かになっているんだろうか。

     ぐっときて、いろいろ考える作品でした。

  • 高校生や大学生の青春小説といえば、古くは、庄司薫「赤頭巾ちゃん気をつけて」、さらには三田誠宏「僕って何」などが、芥川賞を受賞した名作だ。
    ともに、その時代の若者の心情や困惑や葛藤を良く描いていると評された。
    朝井リョウ君のこの作品もそれらに匹敵する。
    この短編集が直木賞候補にまで選出されたのも当然という気がする。
    この作品は、彼の他作品同様に、今の若者の心情を見事に鋭く描いている。
    その斬新さは切っ先の鋭いナイフでスパッと切り取ったようだ。
    天賦の才能としか言いようがない。
    このような小説を書けるのは、現在では彼か、綿矢りさぐらいではないか?
    もちろん、表現手法は全く異なるけれど。
    若き天才作家は綿矢りさ、辻村深月だけかと思っていたら、ここにも隠れていたのだ。

    中学や高校時代に、どれほど「すごい」と周りから言われても、大学や専門学校に進めば、ちょっとかっこいいぐらいに変わってしまう。
    社会人になれば、そんな人間は星の数ほどいて、優越感を感じるような物差しにはならなくなる。
    「二十歳過ぎればただの人」になってしまうのだ。

    この作品は、高校時代から普通の大学や美大やダンスススクールや予備校や、階段を一つ上ったところでの
    それまでとの変貌、周りからの視線の違いが、瑞々しい言葉で表現されている。
    そこで生まれる新たな自意識と苦悩。
    この感覚は、直木賞受賞作「何者」までにつながっていく普遍的なテーマだ。
    結局朝井リョウ君が描くところの若者は「僕って何」的な、自己のアイデンティテイの模索。
    彼はこれからもこのことを自らに課せられたテーマとして書き続けていくのかもしれない。
    今度は一般の社会人になった人間として、何が目的で、何のために恋愛をし、何のために生きているのかを考えるために。

    前の入れ物の中では一際光り輝いていたビー玉も、新しい容器に詰め込まれて、新たな別のビー玉も加えられ、シャッフルしてやり直しになれば、もはやほかの玉との見分けがつかなくなる。
    小学校、中学校、高校、大学、社会人と人生はシャッフルの繰り返し。
    だから、若い頃抱いていた夢も、あなたならなれるよとおだてられていた夢も、儚く破れ、否応なしに厳しい現実の世界に引き戻され、その他大勢のひとりとなる。
    でも、たしかに光り輝いていた時期はあったのだ。夢を叶えられると思える時期があったのだ。
    その気持はいつまでも持ち続けなければならない。どんな年齢になっても、どんな立場になっても。
    人間は、そんな微かな望みを抱くことができるから生き続けられるのではないか、と思う。

    いやあ、いいですね、朝井リョウ君。
    これからもずっと追いかけますよ。

  • 大学生や専門学校生5人を主人公にした5つの短編連作。其々繋がりのある5人で、同じシーン、台詞が異なる編に現れるが、編によって話す側と聞く側で思いは異なっていた事が見えてくるあたり流石に上手いなと感じる。
    作者22歳頃の作品と思われますが、さすがに大学生達の生活、感覚が独特な言い回し、表現で活写されており、自分の当時とは全く違うかなという面と、基本同じかなという面と両方感じながら読めました。

  • 大学生の群像劇。
    高校生を書いた作品のときほどの瑞々しさは感じなかったけど、やっぱり瑞々しい。
    大学生という時期の微妙な揺らぎが、なんか脆くて儚くてほろ苦い。

    高校生のときほど世界は狭くなく、社会に出たときほど現実に晒されない。
    モラトリアムを生きてるときって、大げさに悩んだり、くだらないことで嫉妬したり、すぐに前向きになれたり、夢も希望も志もシンプルで、ほんと前途が洋々であり多難であり。
    そういう痛みはちょっと思い出してひりひりする。

    大学のころって、すぐ先の未来の明確な目標を持ってる人と漠然と過ごしている人との差が大きいこともあって、いま思い返せば子どもだったなぁと感じる、じたばたしていた中途半端だった自分を思い出してしまいますな。

    あと、タイトルがいいね。

  • とても好き。泣きそうになる。

    努力してるフリばかりが上手くなって、自分さえも騙されそうになって、でも結果が出ないから、本当はバレてるって怯えてて。

    夢を持つ事は楽しくて苦しい。

    無駄に高いプライド、バカバカしいとわかってるのに手放せない自意識に縛られる、人から見たらくだらない、微笑ましくすらあるモヤモヤを抱えて、必死に生きてる人達の物語を、いつまでもまっすぐに書いていって欲しいな、と思う。

  • 朝井さんの描く若者は、読んでいると"イタい"と感じるようなことが多い気がする。でもその人間くさい、面倒臭いところがまた良いんだろうな。
    人がいるだけ人生があるってことをしみじみと感じたなー。一歩を踏み出すのって大変だよね。

  • 面白かった。

    大学生が主人公の短編集。
    1人だけ大学生になる選択をしなかった子もでてきます。
    お話がどれも繋がっています。

    登場人物が大学生の小説って少なく感じているのですが、
    大学生ほど題材として面白いものはないと思ってます。
    「くだらない」「どうせサークルと酒と安っぽい恋愛と怠惰な毎日」
    みたいなイメージからあまりフィーチャーされることはないのでしょうか。

    でも、大学生ほど
    大人になることと向き合い、悩み、選択を迫られる時期はない気がします。
    あと、本当によって4年間の使い方が違うのも面白い。


    大学に通う選択肢をしなかった人を
    普通じゃないと定義する高校時代の旧友の存在
    までも出てきて味わい深かったです。

    表題作「もういちど生まれる」は
    久々に本でうるっときました。




    以下ネタバレ。
    絵を破いたのは妹本人だった、とのことでした。
    桜じゃなかったんですね。
    態度的に桜かと思いました。


     

  • 図書館で借りてきて一気読み!
    ちゃらいようでいてとても堅実で、どんどん引き込まれる表現。非凡。
    なんだかんだ彼の作品はいくつも読んできたけれど、
    短編集でこれだけ深く入り込めるとなると、
    もう「好きな作家」と言わざるをえない。

  • すごくいいなあと思える作品。5つの短編が繋がり合い、もう一度読み返して、ここがこうなっているのかと再確認できる。それぞれ、過去の出来事があって、それぞれなんだなぁと感じた。

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著者プロフィール

1989年岐阜県生まれ。2009年『桐島、部活やめるってよ』で、「小説すばる新人賞」を受賞し、デビュー。11年『チア男子!!』で、高校生が選ぶ「天竜文学賞」を受賞。13年『何者』で「直木賞」、14年『世界地図の下書き』で「坪田譲治文学賞」を受賞する。その他著書に、『どうしても生きてる』『死にがいを求めて生きているの』『スター』『正欲』等がある。

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