心配しないで、モンスター

  • 幻冬舎 (2013年2月25日発売)
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本 ・本 (303ページ) / ISBN・EAN: 9784344023406

感想・レビュー・書評

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  • 年齢性別さまざまな9人の物語。
    どこかで、リンクしていてそれぞれの日常を描いている。

    そして、みんなそれなりに暮らしているのだが、老いに悩み、仕事に悩み、若さゆえに迷い、いろいろなことにぶつかりながら生きている。

    そこには自分だけの音楽が流れている。
    年代ならでは…の音楽もあるけれど
    心の中で鳴り響くテーマソングは、それぞれの応援歌のようでもあった。

    ビートルズから始まりビーチボーイズで締めくくるという、世代を感じたが、良いものは良いのだと改めて思えた。

    個人的には、6話の「UFOに乗ってモンスターが行くぞ」が好きだ。
    ピンクレディの世代ドンピシャで、高校時代はよく振り付けを真似して歌っていた。
    その時は、歌詞の意味まで深く考えもせずに…。
    モンスターが、まわりとうまくやれない人間みんなのための応援歌と考えると、心に沁みた。

    私の応援歌、テーマソングって⁇


  • ビートルズから演歌、オペラ、ピンクレディーやサザン、そしてプリキュアの主題歌まで
    特別な思い入れのある一曲で自分を励ましながら
    思うようにいかない日々と格闘する人たちを描いた、連作短編集。

    9つの物語のうち、最初の3篇あたりまでは、実はちょっと辛かったのです。
    60歳を目前にした女性の自虐的な老醜エピソードや、日陰の恋が大好物の「舟歌女」、
    10歳年下の自称ミュージシャンの卵にずるずるとスネをかじらせる女性、と
    あまりにあけすけでやるせないお話ばかりで。
    でも、ひたすら前向きな「文化的母親」の期待に悩む女子高生を描いた
    『夢路はどこにあるの』あたりから、俄然面白くなってきます。

    癇癪持ちの部長からピンポイントで鬱憤のはけ口にされているOL唯花が
    プリキュアの主題歌に背中を押されて被災地を訪れ
    居酒屋で合コンして仮設住宅に帰る若者や、
    奨学金で進学しようと相談をかわす中学生の淡々とした強さに
    反対に元気をもらう『わたしだって、いつかはプリキュア』や
    突然亡くなった妻の気配をほのかに感じながら生き続ける夫を描いた
    『心配しないでベイビー、やっていけるから』の2篇が素敵。
    前のお話ではひたすら感じ悪かった人物が、
    次のお話では主人公となって意外な一面を見せ、頑張ってくれるのもうれしい。

    ちゃんと女の子が好きなのに、突如として女装に目覚めようが
    老醜と闘う自分を認めたくなくて、みっともなくもがこうが
    誰もが胸の中にこっそり飼っているモンスターを
    「それでもいいわ」と勇気づけてくれる歌や、「心配しないで」と見守ってくれる人はいるよ、と
    にやりと不敵に微笑みながら言ってくれているような一冊です。

    • 円軌道の外さん

      うわぁ〜
      コレ読んでみたいなぁ(^O^)


      東日本大震災が起こってすぐの時、
      音楽を利用して
      自分を売り込む人や、
      プロ...

      うわぁ〜
      コレ読んでみたいなぁ(^O^)


      東日本大震災が起こってすぐの時、
      音楽を利用して
      自分を売り込む人や、
      プロのミュージシャンの中でも
      音楽では何も救えないと
      東京から逃げ出す人や
      音楽が持つチカラを否定する人たちが
      沢山いたけど…

      被災地に行って
      自分が実際に感じたのは、

      どんなツラい状況であっても
      音楽でしか癒されない
      「心の領域」というものが
      人間には確かにあるということでした。


      自分は昼間は
      ガラを運ぶ仕事や
      写真を復元する手伝いをしながら
      夜は被災地のおばあちゃんや子供たちから
      リクエストを受けて
      弾き語りなんかをしてました。


      誰もが持ってる「心の歌」って
      どんな悲しいことが起こった時も
      自分を裏切ることはないし、

      その歌を口ずさむだけで
      歌は自分自身を鼓舞し、
      今日を生きるための
      チカラになることを
      被災地に行って
      被災者の方々の笑顔を見て
      改めて知ったんですよね。


      そんな歌をテーマにした小説で
      まろんさんが惹かれたものなら
      何かしらの力をくれないわけがないし(笑)
      個人的にスゴく気になります!(>_<)


      2013/05/08
    • まろんさん
      kickarmさん☆

      お父さんにプリキュアのCDを作ってもらえる娘さん、なんて幸せなんでしょう!
      前向きで元気を分けてくれるプリキュアの主...
      kickarmさん☆

      お父さんにプリキュアのCDを作ってもらえる娘さん、なんて幸せなんでしょう!
      前向きで元気を分けてくれるプリキュアの主題歌、
      震災の時もリクエストがとても多かったのだそうです。
      歌にしろ、本にしろ、誰かの心に希望を呼び込んでくれる作品が、やっぱりいいですよね(*^_^*)
      2013/05/12
    • まろんさん
      円軌道の外さん☆

      震災の地に駆けつけて、身体も気持ちもぜんぶ使って
      被災した方々のお手伝いをし、励ましている円軌道の外さんの姿が目に浮かん...
      円軌道の外さん☆

      震災の地に駆けつけて、身体も気持ちもぜんぶ使って
      被災した方々のお手伝いをし、励ましている円軌道の外さんの姿が目に浮かんで
      なんだかうるうるしてしまいました。

      そうですよね、まさに「心の歌」。
      何かあるたび、口をついて出て、励ましてくれたり慰めてくれたりする歌に
      私もずいぶんと助けてもらってきたなぁ、と思います。

      この本に出てくる9曲、私にはわからない歌もあったのですが
      音楽に造詣の深い円軌道の外さんなら、洋楽も「ああ、あれか!」とすぐにイメージが湧いて
      感動もひとしおかと思います。
      機会があったら、ぜひ(*'-')フフ♪
      2013/05/12
  • 新刊が出ればやっぱり読みたくなる平安寿子さんの本。
    この短編集、それぞれ主人公が自分のテーマソングを持っていたり、大事にしている曲があったりする。

    老若男女さまざまな人物を、程よい距離感で読みました。
    女、59歳となった身の日常を容赦なく描写したり、不倫の恋に生きる女のトキメキがあからさまだったり、年下のミュージシャンとつき合う女を書いたりなどなど…。
    ときに辛辣な物言いもありますが、そんなこんなを読んでいるうちに、人それぞれいろいろあるけれど、それはそれでいいじゃないかと肩の力が抜けてくる感じが意外と良かったのでした。

    好きな話を3つ。どれも温かい気持ちになった作品です。
    ひとつめは「夢路はどこにあるの」母親の何もかもがイヤな女子高校生が主人公。
    才能ないし、夢もない。進路に悩む詩音17歳。
    合唱部で歌うことになったフォスターの曲にからめての話。
    母との葛藤あり、フォスターの晩年を知ったことや、夢について思う。
    ラスト吹っ切れてきた詩音が良かった。

    ふたつめ「わたしだって、いつかはプリキュア」では不動産会社の営業アシスタントをする唯香が主人公。
    新人で、上司からこっぴどく叱られてばかりいる。
    このお話でプリキュア以上に話の中心に据えられているもの。
    それが東日本大震災。
    被災地を訪ねる話やそこを舞台にすることは、軽々しく書けないだけに小説にはほとんど用いられていない印象を持っています。
    この作品ではよくぞこんなにさらっと書いたものだと作者の力量を再認識しました。
    ボランティアに行った唯香が遥かな心の旅をしてきたような変化を見せるこの話。好きです。

    あとひとつは妻を失った67歳の男性の話「心配しないでベイビー、やっていけるから」
    友だちのようであった夫婦の妻があっけなく早世し、ふたりが好きだったビーチボーイズの曲を想いながらの独り語りがいい。
    ちょっとしたことで短く会話しつつ、一緒に歩く。そんな素敵な夫婦の関係がいいなと思った。相手の自由を尊重するというか、頼り切り過ぎなくていいな。
    残された旦那さんが言う。人は死を介して、宇宙を巡る永遠の循環気流とつながるのだ。と…。
    力まず、自然に、おおらかに、そういう風に生きていけたらいいな。
    平安寿子さんにはこれからも優しいお話を期待しています。

  • それぞれ一つの曲をテーマにした軽い短編。
    登場人物が少しずつリンクしていて、最後の話と最初の話が繋がった時、上手いと思った。
    永遠の生命を感じさせる、一番最後の話が好き。

  • 色んな世代の人の日々のなかでの葛藤とか悩みを垣間見れたきがした。共感できる部分もあり、安心した。悩みや葛藤のなかでも生きていかないといけないし、そんななかでもどうやったら自分らしく生きていくことができるのかヒントをもらえたようなきがした。

  • 2013.05.10読了

  • H30/5/2

  • 平安寿子さんの本を続けて読みました。
    なかなか読みやすくて、更年期にしかり迷いながらも生きている感じが共感できる。
    前回読んだ本もそうですが、歌の力を感じさせる本。

  • 一つ目の話!いいわ~こういうの。自虐ネタでw あとは... 落差激しく。若い子目線やオヤジ目線、読み辛い。どうせ他人事だもの。作者さんだってそのはずなのにw

  • 連作短篇集。何編か読んだあと、やっとそれぞれ1つの曲がテーマというか、題材になっていることに気づく。

    平安寿子さんの小説は、図書館の本棚を端からずーっと見ているとき、「あ、これまだ読んでなかった」と見つけ次第借り、ほとんど読んでいると思う。
    いつも元気づけられるから大好きだ。
    年をとるのも悪くないかもと思わせてくれる。

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平安寿子の作品

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