- Amazon.co.jp ・本 (253ページ)
- / ISBN・EAN: 9784344024397
作品紹介・あらすじ
唯一の人と添い遂げる、幸福と倦怠。ときめきを追い求める、快楽とリスク。女性の幸福を鋭く探る、極辛・恋愛小説。
感想・レビュー・書評
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結婚を意識した恋人・宗介と同棲し、ピアノ講師をしながらふわふわと生きる「ぶらりぶらこ」こと野中るり子。優しい彼との暮らしが幸せなはずなのに、年下のピアノ教室の生徒・暁生にこっそり懸想する。
簡単なあらすじだけなら、それほど新鮮味は感じないのかもしれないけど、ストーリーの「飾り付け」方がトリコさんらしく、飽きずにページを繰ることが出来た。特に印象的なのは「ピアノ」と「食」。ぶらこが大好きなピアノの描写。(私もピアノ習ってたんで、旋律が頭を駆け巡るようなシーンに興奮させられた)秀逸なフード描写。農家の出である宗介と囲む「和」な食卓(ぬか床が重要な位置を占めます)、対して、鮮魚市場で働く暁生が調理する新鮮な魚料理と、お供の酒。出てくる料理が全ておいしそうで、読みながら聴覚と味覚をこんなに刺激してくるとは~と身悶え。そして、愛知県が舞台であるからして効果的に使われる名古屋弁、名古屋の名所。訪れたことはないけど、いつも憧れる。
ぶらこと宗介に絡む脇役もなかなかにキャラ立ちしている。気ままな自由人で、行方をくらました父、厳格でぶらこと反りの合わない母。そして、宗介の兄の結婚式で顔を合わせた、宗介の父母・弟家族、濃~い親せきのおっさん。家族との関わりが、このストーリーをただの恋愛ものに終わらせず、地に足付いたものにしている。後半から物語は意外な急展開を見せるため、そこでの家族・親戚との絡みがひとつひとつ印象的かな。
デビュー作「しゃぼん」をどこか彷彿とさせる内容だったが、そこからぐっと進化し、厄介で矛盾した想いを抱える複雑な女心を見事に描いたトリコさんに感服。いい意味で、思った方向に進まないストーリーが新鮮でした。
本当に奔放な肉食女子って、もっと己の欲望に忠実に大胆に動いちゃってるよね。その点ぶらこは多少ブレーキかかってるんだけど、そのブレーキのかけ方が下手で、自爆しちゃって…。でも、悪い女になり切れない、ある意味そんな中途半端さがリアルで憎み切れないわ、ぶらこ。
全体的に甘く辛く苦く、しかも濃いめではあるが、おいしく味わえる濃さ。そんな一冊でした。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
そこはかとなく漂う田辺聖子臭。ちなみに私は田辺聖子の小説が好きです。
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ピアノを愛し、勝手気ままに生きているるり子は同居している宗介から「ぶらりぶらこ」と呼ばれている。
宗介を愛しながらも彼が死ぬことを夢想し、ピアノを習いに来る5つ年下の暁生にも惹かれる身勝手なるり子は、傍から見ると鼻持ちならない身勝手な女なのだけれど、この、自分の居場所を定めたくなくて定められない甘えや子どもっぽさ、地に足をつけ切れない弱さが身につまされるように分かる気がした。
まだ「おばさん」にはなれない、でも決して若くはないと知っているかんじ。女性が色とりどりの風船を持っている、という比喩は言いえて妙だなと思った。
るり子は自分の甘さゆえに手ひどい痛手を受ける。
誰かを愛すること、生活を共にすること、責任をもつこと、地に足をつけること、当たり前でありながら現実にそれをできている私たちの世代の人間はどれくらいいるんだろうか。そんなことを思った。 -
所詮、男と女なんてそんなものだ。
壊れたテレビを
叩いて直すみたいな、原始的なやり方をしてしまうのがいちばんいい。
ふらふらと根なし草のように生きられたらいいのに、と願うことはそんなにおかしなことなんだろうか。
どうしてみんな、大地に根を張り、自由にどこにも行けない生き方を選択していくのだろう。
そんなの、窮屈で退屈なだけなのに。
好きだからいっしょにいる。
どうしてそれだけじゃいけないんだろう。
私は自分を自分のためだけに使いたかったし、のしかかってくる重みを支えることも、他人に自分を切り渡すことも、ほとんど恐怖だと思っていた。
だれかと生きていくということは、そのだれかの温かみや重さでこのこころもとなさを落ち着かせることだ。重しを外したとたん、風船女は空に放たれるが、高くあがればあがるほど気温は下がるし孤独は極まる。
言葉の1つ1つが重たく響いた... -
トリコさんらしい作品だ。
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持っている間はほかのものがほしくなるのに
失うとそれが一番大事だったってわかる。
日常のこまごました繰り返しこそが大事。
うんうん。 -
2014/8/11 読了
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去年の8月の終わりごろ、不快で泣きたくなるような出来事があったので、フラフラと行きつけの本屋さんに向かった。何もしなくていいけれど何かしていないと心がもたない、そんな状態のときに出来るのはいつもの行動しかなくて、ほぼ無意識に足が向いていた。で、何を買うとはなしにボンヤリと棚を見つめていたら、不意に目に飛び込んできたのが面出しされた表紙いっぱいの笹井一個さんの絵。作者は?と見ると大好きな作家さんの吉川トリコさんだったので、迷わず手に取りレジへ。
その後、これまた本屋さんの近くの行きつけのカフェに行き、3時間ほどを掛けて一気に、というか気がついたら読了していた。
全くの偶然で選んだ一冊ですが、その時の私の気持ちに寄り添ってくれるお話でありがたかったです。
でも、その時の感情の揺れを、小説を読む事で一緒に記憶したような気がして、表紙を見ると顔が熱くなります。 -
名古屋弁が印象的。起承転結のメリハリが効いていて、ピアノをうまく使いながら最後まで読ませるのはなかなかでした。
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前半は、好きな話だと思った
でも、後半は、ちょっとわからない
名古屋弁が良い雰囲気