LONESOME隼人 獄中からの手紙

  • 幻冬舎 (2014年2月17日発売)
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本 ・本 (232ページ) / ISBN・EAN: 9784344025332

感想・レビュー・書評

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  • 真夜【まよ】独り歌詠む時に人間としての尊厳【ディグニティ】戻る独房
     郷 隼人

    「独房」を歌う作者は、米国カリフォルニア州の刑務所で28年余服役している終身服役囚。朝日歌壇の常連投稿者であり、この度、2冊目の歌文集が刊行された。
     前著「LONESOME【ローンサム】隼人」では、罪を償い、さまざまな作業に従事しながら、仲間や看守らと交流する姿が記されていた。今回は、一歩踏み込み、米国の巨大な〈塀の中〉の諸問題が明かされている。
     文字通り肌で感じる問題は、多文化社会の米国が、やはり根強い白人優位社会であること。また、少数派であるアジア系の服役囚との間に、近年、微妙な風が吹いていたということ。

      韓国人【コリアン】の日頃おとなしい囚友【フレンド】が怒り露【あらわ】に説く〈竹島〉を

    「ニホンゴに箸の持ち方、文化など囚徒に教え〈草の根外交〉」と、草の根外交官を意識することもある作者にとって、胸を痛める報道も少なくなかったのだ。
     そんな中、所内のケーブルテレビで、太平洋戦争末期の日本軍を描いた映画「硫黄島からの手紙」が放映され、風向きが変わった。戦争の悲惨さを見事に描き出したその映画は、人種を超えて仲間たちの琴線にふれたのだ。登場した日本兵スタイルを模し、野球帽の後部に布を足らして日除けにするスタイルが所内のブームに。それを描いた自筆の絵も巧みである。
     巻末には、故郷鹿児島で再会を待ち侘び、84歳で没した母への挽歌を収録。

      老いし母が独力で書きし封筒のゆがんだ英字に感極まりぬ

    (2014年3月23日掲載)

  • 「ホームレス歌人のいた冬」の中で出てきた郷隼人さんの本を読んでみた。

    郷隼人さんは若くして渡米し、殺人を犯してしまい、アメリカの刑務所にいる終身服役囚です。そして、日本の朝日新聞の短歌投稿(ものすごくレベルが高いことで有名だそう)で何度も入選している歌人でもある。

    この本は郷さんの2冊目の本で、1冊目は、アメリカの刑務所のわりといい面や良い人たちのことを書いたらしいんだけど(読んでないのですが)、こちらの本は、そうではない場面や人(^^; のことを書いたそう。

    ”信じられないだろうが、米国のプリズンではなんでもありだ。”

    (^^;
    私の生きてる世界とはまるで違う世界の話で、非常に興味深く読ませていただきました。

    服役中に郷さんのご両親は亡くなってしまったそうで、ご両親を思って詠んだ短歌は、心を打ちました。

    母さんに「直ぐ帰るから待ってて」と告げて渡米し三十六年経ちぬ

    獄に読む母の文子そ悲しけれ 父の介護に疲れ果てしと

    そのほかにも、獄中でこっそりどぶろくを醸造する話とか、禅ガーデンと呼ぶ素敵な花壇を作る話とか、猫の話とか。

    日本の過去の戦争の問題とか、差別の問題とかが、アメリカの獄中にもしっかりあるそう。

    この本は、2014年の本なので、もう7年前。ホームレス歌人の公田さんのときも思ったけど、いまどうしてらっしゃるんでしょうね。

  • 詩歌

  • 罪を償い、生きて日本へ帰り、父母の墓に手を合わせたい――。
    カリフォルニアの刑務所に終身刑として収監されて28年。
    「朝日歌壇」の常連として知られる歌人・郷隼人が刑務所での日々、父母への思慕、故郷への憧憬を綴る書籍第2弾。(アマゾン紹介文)

    本人のご意向からすれば、タグは随筆とすべきなんでしょうね。
    アメリカで終身刑を受刑中の著者による、短歌と刑務所での生活を綴るエッセイ集。
    「模倣的な受刑者」の監獄生活が淡々と記されていて、とても興味深く読めました。
    イギリスの終身刑と違って、アメリカでは仮釈放もないんでしょうか。

  • アメリカの獄中事情のお話が中心でした。同じ歌壇に登場した「ホームレス歌人」に関する文章は、郷さんならではのものでした。

  • 毎月曜日の朝日新聞に掲載される「朝日歌壇」。そのコーナーで注目を
    集めたふたりの投稿者がいた。

    ひとりはホームレス歌人・公田耕一。彼に関しては三橋喬『ホームレス歌人
    がいた冬』で、その足跡を追う挑戦をしている。

    そして、もうひとりが本書の著者である郷隼人。殺人と殺人未遂で刑務所
    に収監されている獄中歌人である。しかも、そこはアメリカの刑務所だ。

    本書の前に歌集が出ているのだが、そちらは未読。本書はアメリカの
    刑務所での獄中記なのだが、「これ、本当に刑務所か」と思うくらいに
    自由である。

    いや、確かに刑務所なんだよな。でも、全編に流れる軽さはなんだろう。
    アルカトラズやシン・シンのような最重要警備の刑務所ではないから
    かもしれないが、庭に歌壇を作ったり、房内で料理したり。

    アメリカの囚人には日本のインスタント・ラーメンが人気だとか、その
    調理法なんかは面白かったけど、日本の刑務所に比べると結構、
    自由そうなんだよな。

    殺人と殺人未遂で終身刑という重い罪を背負いながら、自身の犯した
    罪に関しての言及はほとんどない。だから、内省や懺悔の言葉もない。

    タイトルに比して内容が薄っぺらいんだな。短歌もいくつか掲載されて
    いるが、これも心に響かなかった。歌のいい・悪いは分からないけれど、
    ホームレス歌人・公田耕一氏の歌には心を鷲掴みにさえたのだけどな。

    娑婆ではメキシコ人を使っていたのに、刑務所で歳若いメキシコ系の
    職員に命令されることに我慢ならないとか、少々差別的な部分も
    見受けられる。

    センセーショナルで売る幻冬舎だから、内容が充実してなくても
    仕方ないのかもな。それにしても残念過ぎる内容だった。

    「いつか釈放になって国外追放で帰国できるかもしれない」。夢を見る
    のはいいのかもしれないが、自身の罪について向き合っているのか
    疑問が残った。

  • 朝日歌壇で常連の郷隼人。
    この本を読むかぎり冷静で起用そうな(花壇を作ったりお寿司を握ったり)人がなぜ終身刑を言い渡される殺人、および殺人未遂の事件を起こしたのか…そこが語られないまま、
    望郷や母を思う短歌、刑務所暮らしの短歌が綴られている。

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