ワンナイト

著者 :
  • 幻冬舎
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本棚登録 : 447
感想 : 79
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  • Amazon.co.jp ・本 (236ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784344025486

作品紹介・あらすじ

ステーキハウスのオーナー夫妻が、独身でオタクの妹を心配するあまり開いた合コン。そこに集まった、奇妙な縁の男女6名。結婚したかったり、したくなかったり、隠していたり、バツイチだったり…。彼らのさざ波のような思惑はやがて大きなうねりとなり、それぞれの人生をかき回していく-。ままならないけれども愉しい人生を、合コンをモチーフに軽妙な筆致で描く、かつてない読後感を約束する傑作長編!

感想・レビュー・書評

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  • 設定理解まで時間が少しかかるけど、そこを乗り越えたら俄然、おもしろくなった!

    ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

    ステーキ店を営む鏡子とその夫。
    常連客の瀬莉(せり)と話しているうちに、あれよあれよと鏡子たちのステーキ店での合コン話が進んでいく…

    気前よく合コンの会場提供と、リーズナブルな価格でのの料理を約束した鏡子の出した交換条件はただひとつ。

    それは、結婚の“け”の字も、恋愛の“れ”の字もない義妹・歩も、合コンに参加させることだった…

    ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

    主人公は歩、かと思いきや、章ごとに合コンの参加者が一人ずつ主人公になっていく連作短編のような小説でした。
    ただし最初と最後の章は、合コン参加者以外の人物像が主人公になっています。

    てっきり1人の人物が主人公の小説だと思い込んで読みはじめたので、そうではないと気づくまでは「なんだか読みにくい小説だな…」という印象でした。
    しかし、合コン参加者それぞれの思惑が見えてきてからは、とてもおもしろくなり、物語の形式に慣れたこともあってあっという間に読み終えました。
    登場人物それぞれの立場、結婚・恋愛観の違いが堪能できるところが、この小説の醍醐味だと思いました。


    各章はタイトルがなく、番号がふられて区切られています。
    そのため目次もなく、気に入った人物の章を再読するのには不便だなと思いました。
    数字の章タイトルではなく、「○○(登場人物の名前)の章」みたいに章タイトルをつけ、目次をおいてもらえるともっと読みやすかっただろうな、と思いました。

  • 「たかが合コン、されど合コン。」
    軽い世間話から実現した合コンに参加した男女6人のその後のお話。
    合コンの話なんて大島さんの本じゃなかったら手に取らなかったかも。
    でも意外にも面白かった!さすが大島さんです!

    本当に人生どう転ぶか分からない。
    不安もあるけれど、面白いことも起こりうるんだよなぁ。
    世間で行われている合コンにもこんな物語があるのだろうか?
    だとしたら、合コンも侮れませんね。
    いやはや、面白かった。

  • 冒頭───
    「うまくいかないものだわねえ」
     鏡子が言うと、義弘は、しようがあるまい、といくぶん投げやりに応え、翌日の仕込みをするために奥の厨房へと消えていった。
     後片付けの済んだテーブルを拭きながら、鏡子は少しがっかりする。
     合コンって難しいのね。
     義弘の妹の歩に良いお相手でも見つかれば、と鏡子がしゃしゃり出て、常連客の主催する合コンに無理矢理、歩を参加させてみたものの、遠目で観察していたかぎりでは、歩はほとんど蚊帳の外だった。

    恥ずかしながら、これまで一度も合コンをしたことがない。
    そもそも、僕が若かった時代にはそんなものは存在しなかった。
    先輩が後輩の女の子を連れてきての一緒の飲み会とか、そういう出会いはあったけれど、参加者全員が異性の相手探しという同じ目的で開かれる飲み会なんて、いったい誰が最初に考えついたのだろう。
    見合いという古いしきたりに綻びが見え始め、その代わりに生まれた新しい相手探しシステム“合コン”。
    まさに時代に応じて作り出されたものなのかもしれない。
    まあ、今の合コン自体は、結婚に切羽詰った人たちだけが参加しているわけではないけれど。

    三十代半ばになりながら、なかなか結婚の気配が見えない義理の妹を何とかその気にさせようとセッティングしたステーキハウスでの合コン。
    目論見は無駄に思ったように見えたが、その一夜限りの合コンが、参加した六人の男女たちのその後の人生を微妙に狂わせていく。
    一度だけの他愛もない出会いが、これほど人間の将来に影響を及ぼすなんて、誰も想像できなかったろう。
    六人の個性が際立っていて、合コンに参加した理由も人それぞれ。
    だからこそ、彼らのその後は思わぬ展開を見せていく。
    たかが合コン、されど合コン。
    一度の出会いで不思議な未来が生まれるかも知れない。
    微かな希望を胸膨らませ、今日も人々は合コンに出かけていく。

    大島真寿美さんの小説を初めて読んだが、文學界新人賞でデビューした割には、それほど文学ブンガクしていない軽い筆致である。
    ユーモアのセンスも高く、随所で笑わせてもらった。
    その他の作品も人気があるようなので、ちょっと追いかけてみたい作家だ。

  • 「真面目な合コン」で同じテーブルの席に着いた6人。気合が入っていたり義理だったりしぶしぶだったり、彼ら彼女らの思惑は様々。けれど6人ともが、この合コンが人生のターニングポイントのひとつとなったのだった…、
    という男女6人の人生模様が軽妙に描かれた連作短編集ですが、いや楽しく読めました!

    こういう合コンがきっかけで云々…となると男女のドロっとした関係とか駆け引きとかそういう話っぽいですが、そしてそれもなくはないのですが、あまりにもあっけらかんとしたふわふわな文体で描かれているので、さっぱりと彼らの人生模様を楽しめるのです。もともと作者さんの文章はどことなくふわりとしたとらえどころないところがあると感じてるのですが、「ピエタ」ではかなり抑えていたそのふんわりさがこの作品では全開になっていて、幅広いベクトルの物語を紡げる人だなと思えたのでした。
    オタク女子のキテレツな展開もかなり「ありえん…」というレベルで面白くはありましたが、個人的は「結婚願望バリバリ」な彼女の鮮やかなオチのついたエピソードが素敵です。その後の彼女の人生のどっしりさ加減もあいまって、いいキャラしてるなあとへらりと思いました。男の人には、まあ、気の毒に、という言葉しか出ませんが。
    合コンというだけで軽薄な男女の物語ぽいイメージがあるのかもしれませんが、ぜんぜん違い、斬新な切り口の物語だと思うので、個人的にはとてもオススメしたい本です。

  • ステーキハウスでの合コンに集った6名の男女。それぞれの思惑や願望を抱えながら語られる連作短編集。ドタバタ劇風に描かれていて楽しく読めた。

  • ステーキハウスを経営している夫婦の妹の歩は、35歳にもなってひとり気ままなオタク生活を満喫。その干物っぷりを心配して、夫婦は歩の為に合コンを計画する。

    本気で結婚したい人が集まった合コンのはずが、結婚に興味ない人や実は既婚者などもいてその場はなんとなく食事して終わり。そんな簡単にうまくいくもんじゃないよね~と傍観していた夫婦。

    しかし、思わぬ進展が6人それぞれに起こっていく。

    同世代の話なので、共感できるものも多く楽しく読めました。特に男と女の駆け引きする姿がおもしろくて^m^
    あ~あ、男ってバカだね~なんて思ってしまいました。
    大人になってからの恋愛ってやっぱり若い時とは違うし、好きだ!愛してる!というだけじゃない何かを求めてるんでしょうね。

    人の繋がりや縁ってほんと不思議、私も大切にしたいなと思いました。

  • ある晩の合コンから生まれた様々な人間関係が描かれた連作短編。30代半ばの男女って結婚してたり離婚してたり結婚に焦ってたりと様々。私の5年後もいろいろ状況変わってるのかも。

  • 一気読み、面白かった。
    大人の真面目な合コンってのがまたいい。
    ほとんどが、自ら積極的にではなく
    半ば無理やりに仕向けられてなのだが。
    それはそれで、何かが始まってしまう
    タイミングや縁というものを考える。
    歩と祐一郎のパートが笑えた。
    なんとなく共感できてしまう
    自分ってヤバイのか?

  • 男っ気のまるでないオタクでちょっと変人な妹のために代々木上原のステーキハウスで合コンが開催された。
    男女3対3の「真面目」な合コンは不首尾に終わったかに見えたが、参加者それぞれに変化を与える。
    合コンを開催したステーキハウスの女将的存在のやきもき+プチのろけの章から始まり、参加者それぞれの視点でぐるっと「合コン、その後」が描かれる。
    主役となるキャラが変わるたびに視点や立場もころころ変わり、それぞれの計算高さやへたれさ、心境やら事情などがわかるのがなんともおかしい。
    最近の大島真寿美の物語ってどちらかというとしっとりして重いものが多く感じていたけれど、いい意味でライトで楽しい一冊だった。

  • 今までの小説の中に少しずつかもされている、ほのかでかすかだけど絶妙な匙加減でそこに存在した「可笑しさ」がたっぷりとたんまりとあふれんばかりに描かれていて、もう、ホント、たまりませんでした。
    オトナになってからの合コンって、シリアスになりがちだと思うのだけど、そのシチュエーションをここまで明るくからりと、だけどくだけ過ぎず前向きに描き出すなんて、やっぱり大島さんはすごいです。
    三十路半ばで未婚、今では全然珍しくもないけど、やはり「結婚」という言葉にどうしても敏感にならざるを得ない、そんな男女の悲喜こもごも(あ、悲、はほとんどないか)が登場人物の語りで少しずつ重なり少しずつ時が流れて行く、この展開もすごくいい。知らないうちに自分もその輪に入り込んでる気になる。一緒にあの夜の合コンに参加してたような気になる。そして、恋愛にしろ結婚にしろ「人」とつながることの「楽しみ」を再確認させてくれる一冊でした。
    読み終わった後、きっと思うはず。「恋より結婚より合コンしたい!」

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著者プロフィール

1962年名古屋市生まれ。92年「春の手品師」で文学界新人賞を受賞し同年『宙の家』で単行本デビュー。『三人姉妹』は2009年上半期本の雑誌ベスト2、2011年10月より『ビターシュガー』がNHKにて連続ドラマ化、2012年『ピエタ』で本屋大賞第3位。主な著作に『水の繭』『チョコリエッタ』『やがて目覚めない朝が来る』『戦友の恋』『空に牡丹』『ツタよ、ツタ』など。2019年『妹背山婦女庭 魂結び』で直木賞を受賞。

「2021年 『モモコとうさぎ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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