つらいことから書いてみようか名コラムニストが小学校5年生に語った文章の心得
- 幻冬舎 (2014年6月26日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (190ページ)
- / ISBN・EAN: 9784344025967
感想・レビュー・書評
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自分を見失ってしまったとき、開きたい本。
どんな風につらかったのか。
その“場面”を描写することで、自分はどんなことにつらいと感じるのかわかる、伝わる。
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コラムニスト・近藤勝重さんが、小学生に行った「文章教室」の授業をもとに書かれた1冊。
実際の授業で子どもたちに語られた内容だけでなく、著者がどんなことを意図して、伝えたくて行ったのかもわかるため、「なぜつらいことから書いてみようか」と声をかけているのかがよくわかります。
この本を“文章を書く技術を教えてくれる本”として読むと、物足りないと思います。
むしろこの本は、人生に悩んだとき、自分の存在がよくわからなくなった時に開いて読んでほしい本です。
「どんなテレビのドラマや映画を見ても、どんな風景を見ても、A君とB君の思うことや感じ方は違います。(中略)
そうすると、自分のしたことを書けば、たとて友だちと一緒でも自分にしか書けないことが書けるわけです。つまり、体験に基づけば誰にも書けないことが書けるってことになる。」(38ベージ)
「つらかった」「しんどかった」で終わるのではなく、「自分のしたこと」を書くことはとても大事です。
なぜなら、つらかったその場面を具体的に書くことで、「自分がどんなことをつらいと感じたのか」が自覚できるからです。
それは、自分の心がどんなことにどう反応するのかを知ることでもあり、“自分”を自分で知ることになるからです。
そして、他人と自分のつらいと思うできごとやポイントが違うことをも知り、自分と他人は違う人間だということにも気づけるのです。
話した言葉は泡になってすぐ消えてしまっても、書いた言葉は残ります。
思い出して文字に書き起こすことで、自分の思いも客観的に見ることができます。
書いた文章を読むと「わたしってこんなこと考えてたんだ…」と自分で自分にびっくりするでしょう。
わたしもブクログの感想やInstagram、日記で文章を書くようになってから、「あ、わたしってこんなこと考えてたんだ」「このときわたし、嬉しかったんだ(悲しかった又は寂しかったんだ)」などを自覚できるようになりました。
それは自分の中にいた今までみえなかった自分がスルッと出てきたみたいで、とても新鮮な経験でした。
しかしながら、なんということでしょう…
こんなにもしんどかった時に支えになってくれる「つらかったことから書いてみようか」なのに、絶版になってしまいました…(2020/12/12現在)
図書館で見かけた方は、本当にラッキーです。もはや運命です。
新刊書店、古本屋さんで見つけてしまった方は、更にラッキー!
手にとってレジに向かうしかありません。
つらいとき、しんどいとき、そんなあなたに寄りそってくれる1冊、開いてみませんか。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
2017.4.26