弱いつながり 検索ワードを探す旅

著者 :
  • 幻冬舎
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  • Amazon.co.jp ・本 (164ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784344026070

作品紹介・あらすじ

統制されたネット時代に「かけがえのない生き方」はいかに可能か?著者初の挑発的人生論。

感想・レビュー・書評

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  • 東浩紀氏の柔らかくライトに語られる新作エッセイですが、現代考察に満ちた「思想」書であり、インターネッツ情報環境社会の中での「自由」論であり、そのための道筋を具体的にプラグマチックに語られているところの「指南」書でもあります。

    そのキーワードは「観光」。偶然を必然・運命と期待する「自分探しの旅」ではなく、偶然をそのまま偶然の契機として外へ開いていくところの「観光」。野次馬のまま好奇心の発露そのもののに受け身であるからこそ、肩の力を抜いてオプショナルツアーに参加できる「観光」です。その気軽な観光行程でスポンジのように吸い尽くせる知識を得るための具体的な「知恵」について語られています。

    であるので、著者自らが「自己啓発」書の体裁と言っているようにハック集というかTipsでもありますが、重要なのはこの体裁含めて態度の「軽さ」です。この「軽さ」は軽率さ安易さではなく、本人が気づいていないところで両肩に確かにのしかかってくる重力に囚われないところの「軽さ」であり、その軽さは非常に「運」と近似の何かで、世界に対して開けっぴろげに受け身であるところの「軽さ」です。

    そしてそこで語られる著者の具体的事例が自身を振り返ってみれば、確かに経験則でありながらモヤモヤと言語化出来ていなかった何モノかをちゃんと形してくれているために、いちいち腑に落ち、偶然にやってきた「弱い繋がり」の「その「弱さ」こそが強い絆よりも強いものなのだ」という著者の逆説は「敢えて」多用のポストモダニストの風貌ではもはやなく、40代の家族の中の父であり組織を動かす社会人であるところの、一人のリアリストからの腹の底からの述懐に聞こえます。

    その弱くて「強い」細い線を辿りながら著者が今後どの方向へ向かっていくのか楽しみです。

  • めっちゃ面白かった。自分の想像の範疇を超える知識が載っている一冊で目から鱗の内容多々ありました。

    中でも、「ネットでは見たいものしか見ることができない」ということ。ネットに情報が溢れているのは事実だけれども、けっきょく検索するのが自分の頭の中にあるものだけ。つまり「ネットでは自分が見たいと思っているものしか見るこができない」ということ。その限界をどう超えるかというこが書かれています。

    そして、このタイトル『弱いつながり』もキー。人生において強い絆も必要だが、一方で弱い絆も私たちの人生に大きな影響を与える可能性があるということが新しい発見でした。

  • いかに「私」の向こう側にいくのか、についての本だった。そしてそれは、新たな欲望を手に入れること。村人でなく旅人でもなく、観光者としての旅が、身体と環境を変えることで、検索ワードを変える。検索ワードを変えるということは、欲望と、思考と、行動を変えることだ。それは環境が変わったからであり、それは人間が環境に規定される存在だからだ。
    モノを見に行くことが新たな欲望を作る。偶然として作る。しかし人は新たな環境に行くことに抵抗をもつ、ホメオスタシスによって。だから観光客。無責任な気軽さ。偶然に対する気軽さ。
    言葉とモノの話も面白かった。言葉は脱構築できる、いくらでもメタ的にできる、故に言葉だけでは共通了解を作れない。わかりあえない。モノが、目に見えるものが、そこから感じる生々しい「憐れみ」こそが、すなわち意識の外部性、我々が恣意的に改変不能な、訪れるもの、彼岸のものこそが、我々を分かりあいの可能性に開く。

    結論
    気楽に気軽に、観光客として、旅に出よう、偶然性に身を晒そう。そうして、自分の目で見て、経験して、欲望を変えよう。新たな欲望に出会えることは、新たな自分を作ることであり、分かり合える他者を増やすことであり、人生を豊かにすることだ。

  • まさに「書を捨てよ町へ出よう」だ。世界は広いんだよねえ、と思っているよりもきっとずっと。

  • キーメッセージを実感を持って、馴染みがない読者にもできるだけ誤解のないようにするには、この分量が必要なんだ!というのが読後直後の驚き。わかってもらうというのは、手抜きでは成り立たないのね。普段の自分のコミュニケーションを反省。

    必要最低限のフォローも書かれ、北欧家具のようなすっきりした文章も好み。文学的文章ではなくても、文体は書き手を感じる。

    旅に求めるものに大変なシンパシー。非日常の時間に身を置いて考える時間、偶然を選び取ること。観光はしてないし一見無駄にみえる旅行中の移動時間、大好き。偶然の出会いや見たもの感じたことから、自分がバージョンアップした感じになる。本屋さんで色々な本を手にとってみるのも、わたしにとって似た意味合い。

    個人間の理解共感と、国民としての反発、日々感じるところ。

    言葉では解決できない戦いをどうにかして、次のステップに進める方法(経済界では既にやられていると思う) 、この本の内容を試して解決できたらいいなぁと希望の光が見える気がする。
    概念(本文中ではメタ)と現実が乖離していく現象、よくITの仕事でデータを見ていると感じる。データはひとつひとつ、実際の人間の活動の結果なんだけど、サマリーしてデータになるとだんだん現実味が薄くなる。サマリーした話で議論すると解決できないことが、1度一件ずつにフォーカスして実感に訴えかけると解決にむかえる。

    深い人間関係があれば、弱いつながりっているの?と問われたことがあって、思うところをちゃんと説明できなかったことがあるのだけれど、その時言いたかったことはこれだ!

  • 近年のネットワークの環境改善のおかげで私たちはWebを使って容易に膨大な量の情報を閲覧することが出来るようになった。20年程前、パソコンをモデムにつないでジーコジーコとインターネットをしていた頃とは別次元のものになっている。でも、ここで注意が必要だ。私たちがアップロードされている豊富なデータから情報を取得するには「検索」という行為が必要だが、それには「言葉(ワード)」が必要となる。私たちは意識的に検索する言葉(ワード)を増やす努力をしないと、いつも同じような狭い範囲での情報にしか触れなくなってしまい、結果として固定化された視点しか持たなくなってしまう。
    著者は検索する言葉(ワード)を増やすために環境を変えろ、という。そして環境を変える簡単な方法として観光旅行をすすめている。(なんと具体的で実践的!)
    ネットに浸かってばかりいないでたまには外に出て見聞を広めなさい、ってこと。

    おもしろかったのですがKindle版で1,040円かぁ。個人的には780円ってとこかな。

  • ネットは異質なものを排除し、つながりを強化する。自由な意思決定を基本とする世の中は基本的にはこの方向に進むだろう。不自由や制約というものにどう対峙するのか、自分の身体性に囚われて生きることに如何に価値を見出すか。「書を捨てよ、旅に出よう」の慧眼さ。そして、「書も捨てず、旅に出る」ススメ。

  • 旅に出ても新しい検索ワードで検索するほど私に知的体力はないので、東さん羨ましい。

  • うすい,スカスカの本である.ネットにどっぷりつかりながら世界を旅しましょうという話.南極にスマホをもっていって,スマホでいろいろ南極を調べながら,旅しましょう.
    なんとなく納得してしまいそうだけど,いやそうなの と思います.便利さはとっといて 不便なところへ行きましょうというような レトリックで騙しているように感じます.
    ま どうでもいいけど

  • 検索ワードと、そのために旅に出るとか観光するとか。どこから話があっても結果そこにたどり着く展開にちょっとがっかり。面白いのに。

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著者プロフィール

1971年東京生まれ。批評家・作家。東京大学大学院博士課程修了。博士(学術)。株式会社ゲンロン創業者。著書に『存在論的、郵便的』(第21回サントリー学芸賞)、『動物化するポストモダン』、『クォンタム・ファミリーズ』(第23回三島由紀夫賞)、『一般意志2.0』、『弱いつながり』(紀伊國屋じんぶん大賞2015)、『観光客の哲学』(第71回毎日出版文化賞)、『ゲンロン戦記』、『訂正可能性の哲学』など。

「2023年 『ゲンロン15』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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