明日の子供たち

著者 : 有川浩
  • 幻冬舎 (2014年8月8日発売)
4.09
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  • レビュー :591
  • Amazon.co.jp ・本 (407ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784344026148

作品紹介

三田村慎平・やる気は人一倍の新任職員。和泉和恵・愛想はないが涙もろい3年目。猪俣吉行・理論派の熱血ベテラン。谷村奏子・聞き分けのよい"問題のない子供"16歳。平田久志・大人より大人びている17歳。想いがつらなり響く時、昨日と違う明日が待っている!児童養護施設を舞台に繰り広げられるドラマティック長篇。

明日の子供たちの感想・レビュー・書評

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  • 冒頭───
     九十人の子供が住んでいる家がある。
    『あしたの家』───天城市立三日月小学校から程近い場所に存在する児童養護施設だ。
     様々の事情で親と一緒に住めない子供たちが、一つ屋根の下に暮らしている。
     昨今ではより「家らしい」少人数の施設が主流となっているが、『あしたの家』は設立が古く、当分の間は大舎制と呼ばれるこの大規模施設として運営される予定である。
     施設には子供たちから「先生」と呼ばれる児童指導職員が宿直制で二十四時間常駐している。
     そしてその日、三田村慎平は希望に溢れて『あしたの家』に着任した。
     残暑がようやく過ぎた秋晴れの一日だった。
     

    ───有川浩は優しい。

    児童養護施設で生活する職員と子供たち。
    親からの虐待や育児放棄などによって、仕方なく養護施設に預けられ、生きていかねばならない子供たち。
    親の愛にも恵まれず、経済的にも苦しく、将来の道への選択肢も狭められ、自由の少ない子供たち。
    その子供たちを“親と離れて養護施設に入らされてかわいそう”と言うのは誤りだ。
    子供たちは、養護施設に入ったおかげで、夜ぐっすり眠れて、三食きちんと食べられ、本を読んだり、勉強する自由も与えられるのだ。
    つまり、そんな普通の家では当たり前のことができないほど、家庭の環境が過酷だったということだ。
    だから、安易に“養護施設に入ってかわいそう”と思ってほしくないと言う。
    新人指導職員の三田村。
    先輩女性職員の和泉。
    ベテラン職員の猪俣。
    『日だまり』の間山。
    そして、高校生の奏子と久志も。
    それぞれ想いのベクトルは異なるけれど、自らの信念の基に、目の前にある問題に真摯に向き合う姿は似ている。
    人間が、一生懸命に前に向かって歩いていく姿のなんと清々しいことか。
    彼ら、児童養護施設に関わる人たちが、そんな想いをずっと抱いて行動を起こせば、世の中は変わっていくのかもしれない。

    『あしたの家』の“今日の子供たち”が“明日の大人たち”となって、真っ直ぐに懸命に生きて行ってくれること祈らずにはいられない。
    読了後、そんなことを思った。
    久々に本を読んで、涙が零れた。

    この作品は、実際に児童養護施設の子供から届いた手紙を読んで、有川さんが小説に仕上げたらしいが、こういう素敵な作品になって、手紙を送った当人も喜んでいるに違いない。
    願いに応え、こういう作品を創作する有川さんも素晴らしい。
    この作品を日本中の多くの人たちが読んでくれることを願う。

  • 有川さんの本は読む度に自分の価値観が偏っていたことや、今まで知らなかった世界を見せられることがある。
    今回もまさに見せて頂きました先生!と言う感じ。
    児童養護施設に居る子イコール可哀想な子と言う偏りまくった思いしか自分も抱いてなかった。だから冒頭で主人公の三田村同様にあいたたたぁ……とぽっきり気持ちをへし折られ、その後はただただ初めて知る世界を主人公の三田村と一緒に一つ一つ学んでいった。

    知らない世界を知る機会は日常ではあまりなくて、かと言って知ろうとするには労力ときっかけが必要で…
    だからつい素通りしがちだけど、有川さんの本はそんな人達にそっと一つの物語として機会を与えてくれる。

    本が好きで良かった。
    また一つの世界を知ることが出来ました。

  • 児童養護施設が舞台のお話で、ちょっと重めかな?とか思いながら開きましたが、そんな事を迂闊に思ったのを反省させられる内容で、一気に引き込まれてしまいました。ウチの子供の中学の校区にも施設が有り、そこにはたまたま大学生の頃、授業で見学に行ったことがあり、その時にちょっと不思議に感じた事が、あ、なるほど。と腑に落ちてしまいました。それは何かとここに書いちゃうとネタバレになるので書きませんが…それはさて置き、大人としてハッと気付かされることも有りますので、機会があったら、ぜひぜひ。

  • 児童養護施設のお話、ということで、またなんか難しくてヘビーな題材を...と思ってしまいました。
    なんていうかね、人の親になるとこういう話はいろいろ辛い。

    でも、最後まで読んで心から分かりました。
    世界が違うんじゃなくて、知らなかっただけってことが。

    私が小学校のときも、施設が近所にあり、そこから通ってる友達もいました。
    学校では普通に友達ではあったけど、やっぱりどこかで特別視して同情していたかも、かわいそうって気持ちがあったかも。
    想像力に欠けていたな、世間の物事を知らなさすぎた、あの頃は。

    高校生と職員を中心にした物語のなか、厳しい現実や懸命な思いよりもむしろ、何気ない優しさや当たり前の思いやりに目頭が熱くなりました。
    有川さんらしいところも随所にあり、一気に読んでしまいました。

    おそらく手紙がきっかけで書かれたんだろうけど、この本の中の人の人生もたくさん見せてもらえて、色んなことを教えてくれました。
    本を読むのは素敵なことですね。

  • 私は「親」という存在を絶対視したり祀り上げたりする気持ちがないので、親と離れて施設で暮らしている子どもをひとくくりで「かわいそう」とは思わない。「親」をやる能力のない人に従属させられるよりは施設で暮らせる方が安全という場合だってある。
    でも、世間的には、親の存在は絶対で、「親と暮らせない」というだけで「かわいそう」と同情されてしまう。
    「かわいそう」ってすごく傲慢な感情だ。
    テレビドラマでセンセーショナルに扱われたこともあって、最近ようやく少し関心を持つ人も増えてきたようだが、まだまだ知られていないことの多い児童養護施設を舞台にした物語。
    主人公は有川作品らしい一直線な男の子で、彼がぶつかるさまざまな出来事がそのまま、世間に対する啓蒙になっている。
    副施設長の梨田さんの考え方は世間を代表している。だから時に苛立たしく思えるし、腹も立つ。携帯電話の一件や、多目的施設との交流に関しても、「ああ、こうやって都合よく管理したいんだな」と思わされる。こんなふうに考える人はたくさんいるのだ。

    それにしてもやりきれない話である。15才や18才で自力で人生を生き抜け、と放り出されてしまう子どもたち。それが行政の限界だとしても、あまりにも無力だ。
    「そんな底辺はほっておけ」と思われているのだろうが、彼らだってそのうち大人になる。大人になるということは社会を構成する一員になるのだ。そんな大切な存在なのに、親がいないとか、法律がそうなっているから、というだけで放り出されてしまう。
    「こどもフェスティバル」の場面では、有川さんの静かな怒りを感じた。このままでいいのか。こんなふうで本当にいいのか。そう訴えかけてくる。
    かわいそうがって、そのくせ差別して、見ないふりをし続けていて本当にいいのか。
    児童養護施設だけの問題ではないのかもしれない。
    すべての子どもは、明日の大人だ。
    大切にするということを「甘やかすこと」と混同してはいけないと思う。

  • 有川さんの本は久しぶりに読みました。
    1年ぶりくらいかな?
    有川さんも大好きな作家さんのひとり。

    元営業マンの三田村慎平は児童養護施設「あしたの家」に転職。
    情熱にあふれる慎平。
    愛想はないが子供たちへの思いは強い和泉和恵。
    理論派のベテラン猪俣吉行。
    そして子供たち。

    ここで暮らす子供たちにとって、養護施設とは何なのか…?
    義務教育を終えたら、高校に進学しない限り、施設を出なければならない。
    高校に進学してもその先は…
    大学に進学することは経済的にも、とても難しいこと。

    子供たちに寄り添う職員、そして子供たち。
    みんな悩んでいる。
    そんな厳しい状況の置かれていても、みんな前に進んでいく。

    とても良い本に出合いました。

  • 久しぶりに本を読んで泣いちゃったな。
    「昨日を悔やむ」で、まさかの自衛隊での再会シーンは猪股先生に感情移入。本当に良かった。
    施設の先生方も凄く個性的で皆さん素敵な方たち。
    施設を退所しても、「日だまり」のような場所が彼らには必要なんだという事も知る事が出来たし、
    本当にためになる本でした。

    施設長の言葉にも感謝だわ。
    本を読み続ける意味を見つけ出せました。

  • 待望の有川浩新刊!図書館で予約してやっと借りることができました。
    児童養護施設のドキュメンタリーを見て、会社を辞め、職員になることを決めた三田村慎平。彼を指導する立場にある3年目の和泉和恵。陰気な感じで冷静で理論的だけど、実は熱いところもあるベテランの猪俣吉行。問題のないと言われる奏子と久志。
    それぞれの視点で描かれた作品。

    和泉と渡会のお話、アッコと猪俣のお話、感動しました。アッコが無事で本当に良かったです。

    児童養護施設が舞台と聞いて、あぁ重そうだな…と思いましたが、読み始めてみると、有川浩さんらしい文章でスラスラと読むことができました。
    大切に描かれているのは、児童養護施設に入る前ではなく、児童養護施設「あしたの家」に入っている子供たちが、どう生きるか、どう成長していくのか…を描かれていました。過去の入るきっかけとかは、過去のエピソードとして取り入れられていましたが、つらい描写は少なかったです。
    私の周りには、施設育ちの子がいないので、あまりよく知りませんでしたが、よくドラマなどの映像化の舞台として取り上げられやすいですよね。施設育ちっていうと、三田村先生のように、やっぱり「かわいそう」というイメージが強くなってしまう自分がいたので、三田村先生と一緒に進んでいく感じがしました。施設に入る理由は、一人一人様々で、必ずしも親が亡くなったからとかではない。親が育てられないからという理由もあるということを改めて再認識させられました。
    奏子のように、施設に入ったことで普通の生活を送れるようになった子供も沢山いる。
    施設育ちだから、かわいそうな訳じゃない。ただ、不便なことはもちろんあり、独り立ちした時に頼れる大人がいない。普通の家庭なら、親に聞けることでも、聞くことができない環境にある。
    私も三田村先生のように思っていたので、とても勉強になりました。
    また、施設長の言葉、いいです。
    ご本を読むのは素敵なことよ。みんな自分の人生は一回だけなのに、本を読んだら、本の中にいる人の人生もたくさん見せてもらえるでしょ。先生たちだけじゃなくて、本の中の人もヒサちゃんにいろんなことを教えてくれるのよ。
    踏み外しそうなときに、本で読んだ言葉が助けてくれたりとか…
    私も本はとても大切なものだと思っています。小学生時代、つらいことがあっても本を読んだらすごく明るい気持ちになれました。今でも本をたくさん読む習慣はなくならず、本が大好きです。

    どこまでが実話なのか、わからないし、有川浩さんのあとがきもなかったのが少し残念でした。でも、有川浩さんが、すごく取材をして、心から言いたいことを綴った物語だということはよくわかりました。
    とても心に響いた物語でした。もっといろんな人達に読んでもらいたいです。

  • 三田村慎平・やる気は人一倍の新任職員。和泉和恵・愛想はないが涙もろい3年目。猪俣吉行・理論派の熱血ベテラン。谷村奏子・聞き分けのよい“問題のない子供”16歳。平田久志・大人より大人びている17歳。想いがつらなり響く時、昨日と違う明日が待っている!児童養護施設を舞台に繰り広げられるドラマティック長篇。
    「BOOKデータベース」より

    「かわいそうだと思われたくない」というのは、そうだろうな、と思う.三田村先生のようだけど、自分だったら、やっぱりそう思ってほしくないと思うだろうな.
    この話を読んで思い出したこと.
    海外で支援活動をしていたことがあるけれど、同じような話がある.海外の子どもたちは3食満足に食べられなくてかわいそう、学校にも行けなくてかわいそう.まぁ、できないことが多くて、足りないものが多いので、そうなんだけど…なんでもかわいそう、とくくるのも違う気がするなぁと思っている.実際に関わってみると、足りないからかわいそうかと言われると、そうじゃないことが多い.
    なんでも思い込みで何かを決めつけるのは、自分がその立場だったらイヤだから、世の中はいろんな立場の人がいる、いろんな境遇の人がいる、と登場人物たちが悟っていくのは、すごく共感がもてる.
    子どもたちは、明日の大人たち.日本でも海外でも同じだな.

  • 感動した
    やぁ~
    出来すぎた話しだけど
    こうきたかって
    (ノ_・、)グスン
    としてしまった。

    ドラマとか観たことなかったけど
    この本から児童養護施設って
    どんな物なのかを知る事ができたよ。

    この本を読んで改めて本を読むという事が
    素敵な事だなと感じました。

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