土漠の花

著者 :
  • 幻冬舎
3.72
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  • (13)
本棚登録 : 1699
感想 : 320
  • Amazon.co.jp ・本 (349ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784344026308

作品紹介・あらすじ

男たちは、命を賭けて女を守ったーー。
なぜここまで激しく攻撃されるのか?
なぜ救援が来ないのか?
自衛官は人を殺せるのか?

ソマリアの国境付近で、墜落ヘリの捜索救助にあたっていた陸上自衛隊第一空挺団の精鋭たち。その野営地に、氏族間抗争で命を狙われている女性が駆け込んだとき、壮絶な撤退戦の幕があがった。圧倒的な数的不利。武器も、土地鑑もない。通信手段も皆無。自然の猛威も牙を向く。最悪の状況のなか、ついには仲間内での疑心暗鬼まで湧き起こる。なぜここまで激しく攻撃されるのか? なぜ救援が来ないのか? 自衛官は人を殺せるのか? 最注目の作家が、日本の眼前に迫りくる危機を活写しつつ謳いあげる壮大な人間讃歌。

感想・レビュー・書評

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  • 凄惨。

    読んでいてツラい。

    「○○殺人事件」といったミステリーは「約束事」、「作り事」と体と心が勝手に分類して楽しく読めるのだが、

    この作品は臨場感がスゴい。

    冒頭から戦地に放り込まれるよう。

    緊張感がずっと持続し、

    好きでもないのに、夢中でページを繰らされて、結局5時間弱で読み切ってしまった。

    サンキューがオススメの、まさに、「ドキドキ」と「テンポ」。

    クセになりそうなイヤな予感。

    完全に、好き嫌いと評価が分離してしまった・・・・。

    • サンキューサンチューさん
      まさに、ドキドキとテンポと臨場感に引き込まれる。土漠の花がきっかけで自衛隊が舞台となる小説を読みたくなり有川浩や神家正成に出会うことができた...
      まさに、ドキドキとテンポと臨場感に引き込まれる。土漠の花がきっかけで自衛隊が舞台となる小説を読みたくなり有川浩や神家正成に出会うことができた。あと月村了衛の作品で機龍警察がお薦めです。
      2022/06/02
    • shukawabestさん
      悪いなあ、コメントさせてしまって。
      しんどかったわ、読むのが。夢中になってしまったけど、途中の数時間。
      昔、映画好きの友達が「映画はそもそも...
      悪いなあ、コメントさせてしまって。
      しんどかったわ、読むのが。夢中になってしまったけど、途中の数時間。
      昔、映画好きの友達が「映画はそもそもかなしいものだ」と言っていたけど、小説の魅力もそうなのかな?
      僕は「県庁おもてなし課」のような温かい小説や、淡々とした小説、映画(例えば、「木漏れ日の中で」や「東京物語」や「日日是好日」など)大好きなものがいっぱいありそうです。
      神家正成はまだ読んだことないわ。
      そして、まだまだオススメありそうですね。たぶんこれから数冊読みそうな、重松清、あさのあつこ、青山美智子、小川糸以外で、あったかなもの、ありましたらよろしくお願いします。
      2022/06/02
  • ソマリアでの海賊対処行動に従事する自衛隊。
    自衛隊に、墜落したCМF(有志連合海上舞台)連絡ヘリの
    捜索救助要請要請が入った。
    自衛隊は、人道上の見地から捜索救助任務に当たる事を決めた。

    ソマリアの国境付近で、墜落ヘリの捜索救助にあたっていた
    陸上自衛隊第一空挺団の精鋭達。
    その野営地に、氏族間抗争で追われているという女性
    アスキラが助けを求め駆け込んできたとき。
    壮絶な撤退戦の幕があがった…。


    自衛隊の精鋭達は、後方任務とはいえ様々な危険の対処法に
    ついても日々訓練はしているが、勿論実戦の経験はない。
    突然の襲撃に、途轍もない恐怖と混乱…。
    抵抗する間もなく武装解除され、物であるかのようにあっけなく殺されてゆく。
    瞬く間に、窮地に追い込まれて行きます。
    何とか最初の危機を脱しても、車も無い。武器も土地勘も無い。
    通信手段も皆無。圧倒的な数的不利。自然の猛威も牙を向く。
    何人もの人を撃って殺してしまった事に震える者。
    銃の腕がとても優れているのに撃てない者。
    仲間内での疑心暗鬼まで沸き起こる。
    どんどん状況は悪化し、追い詰められてゆく彼ら。
    初めての実戦に引きずり込まれた自衛官の悲哀や、
    次々と襲って来る困難に立ち向かっていく苦悩と勇気に敬服しました。

    最初から最後までノンストップで戦闘シーンや危機が続く
    戦闘の描写は迫力があり読んでいて苦しい。
    特に、廃墟の街での死闘は苦しくて苦しくて胸が締め付けられた。

    戦闘場面だけでなく、何度かニュースで耳にした自衛隊内の
    いじめ問題もの取り上げられていた。
    そして、なぜ救援が来なかったのか…。
    常に上から目線で、自国の利益優先の米軍の姿。
    不本意ながらも、国民に伏せなければならない無念。

    国際貢献の為の自衛隊の海外派遣という耳触りの良い言葉の裏に
    いくら人道的・後方支援と言っても、紛争地帯に行くっていう事は、
    望まなくても実戦に引きずり込まれてしまう、こんなリスクがある。
    集団的自衛権や憲法九条が論じられている中
    問題提起をした作品だと思いました。
    やはり、私は自衛隊に戦っては欲しくない!

    ほんの数時間前まで確かに存在した楽園が、
    一瞬にして消滅する。アフリカの現実にも思いを馳せました。

  • 月村了衛作『土漠の花』  私のお気に入りベスト3

    2014年10月、新聞広告にこの本の紹介があって有名人のコメントが載せられていた。
    “読み始めたら止まらない” “一気に読み上げた” “最後は号泣した” とありこれは読まないかんとゲットした。

    2~3ページ読んだとき、思わず『違う!』と声を上げてしまったように、いつものとは違っていた。
    20~30ページ読んで『これは凄いぜ!』と言ったきり続け、一気に読み終えてしまった。

    今まで読み応えのある本には数々出くわしているが、読んでいて『これはフィクションの世界である』と無意識的に区切りが出来ているもの。
    しかし、今回は『これもフィクション?!』と目の前に現実の世界が展開されているような錯覚に引き込まれていく。

    『殺らなければ、殺られる』という戦場で、敵が銃を向けて近づいてきた、この極限状態、さあ、どうするか!
    登場人物が、日本人である自衛隊員であるが故に、身内の者を見ているかのように力が入り引き摺り込まれていく。
    冒頭の場面、3人の女性が逃げこんでくる殺戮シーンで、いきなり戦慄を覚えてしまった。
    『この小説はいつもと違う!凄い!』 と。

    しばらくして、さすがこの作品、本屋大賞にノミネートされた。
    大賞は、上橋さんには悪いが今少し迫力にかける『鹿の王』に持っていかれ、5位に終わった。

  • 初読みの作家さんだったけど、壮絶な内容に信じられないほどの一気読み。
    胸をかきむしられるほどに悲しくて切ない場面も目的を遂行するために突き進んでいく男たちにエールを送りつつ人としての誇りとはなんだろうと考えられずにはいられなかった。
    自衛官という立場で仕事を全うする彼らがとても熱く感動しっぱなしだった。
    他の作品も読んでみたい。

  • 読み終わって、ぐったり。。。
    途中で何度も息を止めて読んでいたことに気付く。
    とにかく「生きて!」「死なないで!」どうか無事に日本に帰ってきて!って…。

    今、まさに論争中のテーマ。
    戦後の平和な日本に生まれて、世界中で戦争がおきていることを知ってはいても、恥ずかしながらそれはあくまで”よその国”のことでしかなかった私。

    でも近い将来、この本のようなことが現実になってしまうのかもしれない…。
    どんなに法整備をしようが、戦地に赴けばいくらでも不測の事態は起こる。
    そこで「日本の自衛隊は云々…」なんて言ってられないのでは?と…。
    そして「そんな事実はなかった」って隠蔽されてしまったりするの?と…。

    戦闘の場面が多くて、まるで映画のような展開でしたが、
    自衛隊と国際貢献について考える機会を与えてくれた一冊でした。

  • 途中までは面白かったが、最後はB級ハリウッド映画になってしない残念。しかもラストだけ「耐え忍べ」的な典型的日本風エンドでがっかり。主人公が自衛隊じゃなくてもいいじゃん。

  • 大満足の一冊。立て続けに読んできた月村さんの、決定版な一冊に感じた。ソマリア、自衛隊、紛争地域、戦闘地域。深刻なテーマを扱いながらも、まさに息をもつかせぬエンターテイメントに仕上げているこの力量はものすごい。
    月村さんは機龍警察でも一貫してテロの時代を描いている。イデオロギー云々ではなく、溢れる武器と憎悪、奸智を描いている。これを読んだ僕たちは、しょせんそれが世界の在り方だ、とあきらめてはいけないのではないか。

  • ソマリアの乾いた大地。どこまでも青い空。子どもたちの頭の上では、竹とんぼが自由に空を飛ぶ。そう、竹とんぼが自由に空を飛ぶ景色を、ずっと守って行きたいものだ。超ド級のエンターテイメント。この使い古された言葉がバチっとはまる。序盤から一気に引き込まれ、そのテンションのまま読了。この感覚は久しぶり。

  • 終始銃撃戦。ソマリアで日本の自衛隊が孤立してしまい、戦闘に巻き込まれたらというテーマ設定。高野和明氏の「ジェノサイド」を彷彿させる内容だった。
    最後の話のまとめ方が、理不尽であり、非常に現実的。日本人が日常生活していく上で縁のないソマリア、そこで起きていることを知ることができた。
    ただ、絶えず戦闘シーンであり、話の展開自体はわりと単調であることと、本の表紙に著名人?のコメントがつらつらと書かれているデザインはうけつけなかった。
    本の厚さの割には意外とサクサク読めたのは行間の広さなのか、戦闘シーンばかりで流し読みとなってしまったところが多少なりともあったからなのか…
    色々もう少し作りようがあったんじゃないかと思うような本でもあった。

  • 紛争地帯にあるソマリア国境付近で、一人のソマリア女性の駆け込みにより、海賊対処・捜索救助の目的で配置されていた陸上自衛隊が現地武装勢力に襲われた。圧倒的に不利な状況で決死の撤退劇が始まる。

    ついつい目を背けたくなる戦争モノだけれど、読んでみたら一気読みだった。途中、苦しくなりながらも読み進めずにはいられない。現状で自衛隊が紛争地帯に派遣される危うさをひしひしと感じてしまった。平和維持活動に日本も参加する、せざるを得ないのも理解できるが、ならば現行法のままではあまりにもリスクが大き過ぎる。現実として、この本で描かれたような事態は十分に起こり得るだろうから。最後のアメリカの思惑もリアル。平和日本にいながらとやかく言える立場ではないが、先進国から食い物にされているアフリカの現状を見た気がする。安保法案に対し、絶対賛成・絶対反対というわけではないが、せめて日本国民の命を守るためにある自衛隊方々の誇りある活動を、どこぞの思惑によって隠蔽せざるを得ない状況にはなってほしくない。

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著者プロフィール

1963年、大阪府生まれ。早稲田大学第一文学部文芸学科卒。2010年『機龍警察』で小説家デビュー。12年『機龍警察 自爆条項』で第33回日本SF大賞、13年『機龍警察 暗黒市場』で第34回吉川英治文学新人賞、15年『コルトM1851残月』で第17回大藪春彦賞、『土漠の花』で第68回日本推理作家協会賞、19年『欺す衆生』で第10回山田風太郎賞を受賞。近著に『暗鬼夜行』『奈落で踊れ』『白日』『非弁護人』『機龍警察 白骨街道』などがある。

「2021年 『ビタートラップ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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