夜また夜の深い夜

著者 :
  • 幻冬舎
3.22
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本棚登録 : 743
レビュー : 119
  • Amazon.co.jp ・本 (373ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784344026506

作品紹介・あらすじ

私は何者?私の居場所は、どこかにあるの?どんな罪を犯したのか。本当の名前は何なのか。整形を繰り返し隠れ暮らす母の秘密を知りたい。魂の疾走を描き切った、苛烈な現代サバイバル小説。

感想・レビュー・書評

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  • やはり桐野さんは正真正銘のストーリーテラーだなぁ。
    常に新しい舞台設定とぐいぐいと読ませるスピード感。
    中には合わない作品もあるけれど今回は面白かった。

    舞台はナポリ。
    ナポリで母と二人だけで貧しい暮らしを送っているマイコ。
    国籍もパスポートも持たずろくな教育も受けていない。
    整形を繰り返す母と様々な国を転々としながら生きてきた。
    一体母親の正体は誰なのか、自分は誰なのか。

    やはり桐野さんは日常と逸脱した物語を書く方が断然面白い。
    今ドラマ化されている「だから荒野」なんかよりこっちの方が好きだ。
    アウトローを描かせたらピカイチだ!
    おまけにこの作品にはマイコが一緒に行動する友達それぞれの祖国の話や生い立ちを描写することによって、普段は意識することのない世界情勢や社会問題をも読者に喚起させる。

    最後にマイコが選んだ彼女の生き方には賛否両論あるにせよ、存分に最後まで楽しめた作品だった。
    桐野さんが国外で評価される理由がなんとなくわかるなぁ。
    言語を超えた普遍的テーマを扱っているから?
    いやむしろ翻訳しやすい文章ってことかな(笑)
    まさにストーリーテラーです!

  • 19歳の主人公が産まれた時からの特異な環境の中で自我に目覚め他者との関わりを経て自分の運命を受け入れるまでー
    と、一括りにするには物足りないし、そんな生易しいストーリーではなかったけれど、読み手のわたしが受け取ったメッセージは、「生きていくこと、それこそが人生。」ということ。
    母も、主人公の舞子も、国は違えど壮絶な経験をして生き抜いてきたエリスやアナも、自分の人生を諦めてはいなかった。世間の掟や常識という枠からはかなりはみ出ていたかもしれないけれどね。善悪を問うてはいない、生きることは何人たりとも裁かれるものではないんだなと。

    後半に行くにつれ話しが加速するように、こちらもぐいぐい物語の中へ引き込まれていった。
    国籍もIDも持たない存在、不法入国者、犯罪者の子どもや家族の世間からの苛めを負い、贖う事実。闇を抱えた幾つものポイントがこのお話には撒かれていて、それこそがタイトルに暗示されているみたいに。
    唯一自身と重ねられるものがあるとしたら それは “ もう一人のわたし ” の存在かな。

    決して良い読後感とは言えなかったけれど必死さがガツンと届く一冊。

  • わけも知らされず名前を変え、引っ越しを繰り返し、友だちも作らない生活をしなければならないなんてかなしい。
    母親から理由さえ教えてもらえていれば少しは納得できるのではないだろうか?
    いやいや、若いと知らないほうが幸せということだってあるな。
    信頼できる人がいれば、少しは救われる気もする。

  • 初出は文芸雑誌GINGER L.、ジンジャーエール。アラサー向け女性雑誌GINGERの姉妹誌に連載された小説は、今を生きるその年代がリアルにホットに感じるだろう事柄が盛沢山。ハラハラドキドキの連続だが重くなり過ぎずに読み終える。スカスカの行間は、読者の知識欲と努力で埋めるためにあるのかも。桐野夏生氏は安定した筆致で最後まで引っ張ってくれるから台風待ちの連休中、ふらふらと揺れる気持ちで読むのに最適でした。

  • 読み終えて、「う~ん・・・。何だったんだろう」というのが正直な感想。
    桐野夏生さんの書く話はリアルな文章が魅力的で、個人的にはストーリーそのものとか結末よりも描写のリアルさに惹かれるものがありますが、この話はイマイチそれがなかった。
    舞台がイタリア-異国だからというのもあるし、あまりに主人公の置かれた状況が非日常的で、それに想像力がついていかなかった、ピンとこなかったというのがあると思います。

    主人公は無国籍の女性、舞子。
    彼女は母親とイタリア、ナポリのスラムで暮らしている。
    母親は何の仕事をしているのかはっきりしないが、どうやら日本から逃げてきたらしく、整形手術を繰り返し、舞子が幼い頃は1ケ月以上も幼い子供を置いてどこかに行ってしまう事もあった。
    近くの菓子店で働き、若者らしい楽しみや女性らしい楽しみを何も知らないまま生きてきた舞子だったが、シュンという日本人の青年と知り合った事で彼女の人生は一変する。
    シュンはマンガ喫茶を開き、舞子はその店に入りびたり、マンガから日本の文化や様々な情報を知る事となる。
    やがて家を飛び出した舞子は自分と同世代の2人の女性と出会い、共同生活を送る事となる。

    一部は舞子が日本人の七海という女性にあてた手紙の内容がそのまま本文となっている。
    読んでいる内に、自然に「七海とは何者?」と思う。
    日本に行った事もない、ほとんど他人と接点のない舞子が何故日本人の七海という女性と知り合い、手紙のやりとりをするようになったのか。
    そして、舞子の母親は何をして日本からいられなくなったのか-。

    母親の事はお話の後半で分かりますが、七海のことは分からないまま。
    不完全燃焼でお話が終わってしまいます。
    それもありますが、この話を通して作者が言いたかったことは何なんだろう?
    とか、モヤモヤした読後感になってしまいました。

  • 桐野夏生最新作。

    だいぶ作品を読んできたけど、
    この人の描きたいテーマ、みたいなのが見えてきた。

    ここではないどこかへ、行こうとする魂。

    『グロテスク』の、ヒロインも。
    『東京島』のヒロインも。
    『ナニカアル』のヒロインも。

    皆、どこか、どこかへ行こうとしている。

    今回の作品は、あからさまに「冒険」する魂。

    冒頭、ナポリという異国で、
    ヒロインがみたこともない祖国のマンガに夢中になる、
    という設定に、
    今の自分の環境を重ねた。

    あたしもどこか行きたい。
    どこか、遠く、遠くへ。

  • 小さいときから、いろんな国の貧困な移民が住む下町を転々とし、
    教育もろくに受けさてもらえず、国籍もない少女が、
    マンガを通じて外の世界を知る辺りまでは面白かった。
    その後家出をして、エリスとアナという貧しい国から来た難民と
    暮らし始めてから、物語はどんどん暗闇へ潜って行く。

    彼女らが自らの生い立ちを告白する場面は、
    あまりにも残酷な運命に、惨憺たる気持ちになり、
    過激な表現に、最悪な気分になった。
    もちろんこれは小説であり、虚構だと分かってはいるものの、
    これに似たことが現実にあるのだろう。
    虚構の世界でいきなり現実を見せつけられたような、嫌な感じ。
    想像力を広げ過ぎる私には、正直キツかった。
    いえ、そんな現実から目を背けたい訳ではなくて、
    そういう話を読むときは、心の準備が必要なのです。

  • 最近私が読む本には、無戸籍無国籍の主人公が多い。これもそう。母が、何かから逃げ回って生きなきゃならないためと。しかも海外を転々とするし、登場人物がグローバルで、話が多岐にわたる。いったいそうまでして何から逃げているのか。ずーっと引っぱられてきたけど、「ああそうかぅーん・・・」と思った。

  • 整形や改名を繰り返す母と暮らす、18歳のマイコ。母の秘密とは、そして生きるとは。

  • 一気読み。桐野さんの作品にしては救いようのない真っ暗なストーリーではなかった。登場人物の育ってきた環境や今現在は過酷で普通じゃないけど。ナポリが舞台で主人公が住むスラムの狭い家、仲間と家に住んだ地下にある部屋などナポリの街が目に浮かぶようで主人公と一緒にハードな体験をしたような気持ちになれた。こういう作品、桐野さんってほんと上手。

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プロフィール

1951年金沢市生まれ。成蹊大学卒業。1993年『顔に降りかかる雨』で江戸川乱歩賞、1998年『OUT』で日本推理作家協会賞、1999年『柔らかな頬』で直木賞、2003年『グロテスク』で泉鏡花文学賞、2004年『残虐記』で柴田錬三郎賞、2005年『魂萌え!』で婦人公論文芸賞、2008年『東京島』で谷崎潤一郎賞、2009年『女神記』で紫式部文学賞、2010年『ナニカアル』で島清恋愛文学賞、2011年同作で読売文学賞を受賞。2015年、紫綬褒章を受章した。近著に』『奴隷小説』『抱く女』『バラカ』など。

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