キャロリング

著者 :
  • 幻冬舎
3.61
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  • (13)
本棚登録 : 3736
レビュー : 497
  • Amazon.co.jp ・本 (367ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784344026599

作品紹介・あらすじ

倒産が決まった会社で働く、元恋人たち。両親が離婚しそうな小学生男子。心優しい、チンピラたち。クリスマスにもたらされる、ささやかな奇跡の連鎖。NHK BSプレミアム連続ドラマの原作。『別册文藝春秋』掲載を書籍化。

感想・レビュー・書評

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  • お正月前の年内最後のイベント、クリスマス。仏教が主の日本においては、海外ほどではないにしても、最近では一大イベントとなっている。神道の我が家でもクリスマスには、多少なりとも感化されている。

    イギリスでホームステイをしていた時に(イブではなかった気がするが)、子供たちが戸口で賛美歌を歌っていた。ホストに説明を受けたが、今となってはどんな説明であったのか、思い出せず、ただ残像で『あのことね』という感じの記憶のみだ。読み終えても私の残像と本作の意味繋がっていないような気がして、『ひょっとして、キャロリングって別の意味があるの?』と、不安になり意味を調べてみた。

    「キャロリング」とは、クリスマス・イブにキリストの生誕を賛美歌を歌って知らせること。のようだ。

    意味は間違っていなかった。と、なると作者が本作のタイトルを「キャロリング」とした意味が難しいく感じた。キーワードは、クリスマスなのか、子供なのか、新しい人生の誕生という意味なのであろうかと、思い巡らせる。

    本作は「クリスマスに倒産が決まった子供服メーカーの社員・大和俊介。同僚で元恋人の折原柊子に秘かな思いを残していた。そんな二人を頼ってきたのは、会社に併設された学童に通う小学生の航平。両親の離婚を止めたいという航平の願いを叶えるため、彼らは別居中の航平の父親を訪ねることに――。逆境でもたらされる、ささやかな奇跡の連鎖を描く感動の物語。(Amazon 内容紹介文より)」である。

    主人公・大和俊介は、両親からの愛情を受けることなく、不幸な人生を送っていた。そんな彼の一番の恩人であり理解者は、子供服会社「エンジェル・メーカー」の社長である西山英代だった。父親からの身体的な虐待、母親からの精神的な虐待…不幸の比較はできないが、母親のためにと思って行った行為が、母親から非難される。その時の大和の受けた切なさ、虚しさは想像するだけで、胸が締め付けられる思いがする。そのためか本作での彼には陰(かげ)があり、世の中を悲観的に捉えいるように感じられる。
    それでも、彼が発する言葉の真意、行動には優しさや配慮が感じられ、不幸な過去を経験したにもかかわらず、周りの人間から信頼される言動にはたいしたものだと思った。

    大和の身に起こったDV、倒産に加えて暴力団、誘拐と次々に起こる不幸の連鎖。

    一人の人の人生にこんなにたくさんの不幸が起こること自体が衝撃的であるが、本作においては、それほど深刻な問題には感じなかった。
    それはこんなに不幸が重なるわけはないと思っているからか、小説なのでそれほど深刻にはならないと思っているせいか、はたまた誘拐犯が人間味あるからか、いずれにしてもそれほど威圧感や切迫感を感じないところがいい。
    特にヤクザの赤木守とその子分の糸山光太、石田猛がいい味を出しているためであろう。

    クリスマスまで会社倒産のカウンドダウンで起こる事件。大和の受けたDVも何か意味があるのかもあしれないが、ひとまず、クリスマスを機に新しい人生がスタートするという意味でこのタイトルが付いたとしたい。また、時間をおいて再読した時…わかることがあると思う(ことにした)。

  • クリスマスの夜に倒産する会社もあれば、離婚に揺れる夫婦もある。

    過去に家庭崩壊を経験した大和俊介は、エンジェル・メーカーという子供服メーカーに勤める。幼少の頃から家庭内暴力に悩む大和を、オーナーの英代は影ながら見守り続けてきた。

    経営がうまくいかなくてクリスマス倒産となってしまったので、メーカー兼、託児所も畳むことになった。
    託児所を変わっていく子供が多い中、1人ずっと通ってきている子供、田所航平がいた。

    航平の家は母がバリバリのキャリアウーマンで、今度ハワイに引っ越すことになっていた。しかし父と母が喧嘩になったっきり、離れ離れになろうとしていた。

    航平は父も母もどちらも好きなので、離婚しないでほしいと願っている。
    しかし母と険悪になったきり、簡単には父とは会えなくてなってしまった。
    その思いを聞いたエンジェルメーカーの職員、そして大和はこっそり航平を父親の元へ連れていくのに付き添い、膝を交えて話をすることになったのだ。


    ————-


    途中で出てくるヤクザも悪いやつなんだけど、いいやつ感がにじみ出ていてなんとも嫌いになれない。

    最後はハッピーエンドとはいえなかったけど、後に尾を引かない結果になっただけでも良かったのかなと思う。

  • クリスマスにもたらされるささやかな奇跡の連鎖―。有川浩が贈るハートフル・クリスマス。
    「BOOKデータベース」より

    ドラマ化もされているようだが、こちらは見てない.
    のっけから、何!?と思う不穏な状況描写から始まる.家庭内暴力、離婚、倒産、、心に傷を負いながらも周囲に支えられて立ちあがれる者、そうでなかった者、両方が出てくるが、一連の事件で誰も死なないところや、最後は「情」によって解決されるところが有川さんの小説のよいところだなぁと思う.
    悪いことをする人も、パンドラの箱のように底には希望のかけらが残っていてほしいと思っているのだが、まさしくそんな感じかな.

    • koshoujiさん
      どこにコメントしようか迷いましたが、
      直近に書かれて私も読んだこの作品のレビュー欄にコメントさせて頂きます。
      初めまして。ですよね?
      ...
      どこにコメントしようか迷いましたが、
      直近に書かれて私も読んだこの作品のレビュー欄にコメントさせて頂きます。
      初めまして。ですよね?
      突然、花丸が大量に付けられて驚いていらっしゃるかもしれません。
      「朝方書いた『ぼくの大好きな青髭』」のレビューに花丸が付いていたので、どなただろうと思って興味を持ち、
      レビューをざっとですが、350件ほど、全て拝見しました。
      それらの中で、私が読んで共感できたものに花丸を付けさせて頂きました。
      簡単なコメントもいくつか入れました。

      以前からフォロー頂いていたようで失礼しました。
      こちらからも早速フォローさせて頂きました。

      さて『青髭』は、ブログに書いたものを、
      最近きちんとしたレビューを書いてないので、ブクログにも載せちゃおう
      と思い、レビュー投稿したものです。
      ブログには、敢えて当時購入した初版本を撮影して画像もアップしました。
      http://blogs.yahoo.co.jp/koshouji
      遥か遠くなってしまった青春時代の一コマを綴ったものです。
      最近、仕事とブログが忙しく(笑)ブクログのレビューがおろそかになっています。
      ecottさんのレビューはなかなか興味深いので、これからも注目しています。

      庄司薫作品は新潮社から文庫で最近復刊されたようなので、
      お暇があれば、是非読んでみてください。
      半世紀近くの経た今でも、色褪せない青春小説の傑作だと思います。

      では、突然でしたが、今後ともよろしくお願いいたします。<(_ _)>
      2015/08/23
    • ecottさん
      たぶん、はじめまして、です.いつフォローさせていただいたかは覚えていないのですが、koshoujiさんのレビューは読んでみたいなと思うものが...
      たぶん、はじめまして、です.いつフォローさせていただいたかは覚えていないのですが、koshoujiさんのレビューは読んでみたいなと思うものが多く、本選びの参考にさせていただいています.
      350件のレビュー全部読まれたのですか!?すごい…ありがとうございます.興味深いと言っていただけると書きがいがあります.最近読む時間がなかなかとれなくて停滞気味ですが…
      オススメの『青髭』、今後是非読ませていただきたいと思います.
      こちらこそ、今後もどうぞよろしくお願いします!
      2015/08/23
  • クリスマスを前に、何処かあきらめ顔の人々。その中にどうにかなるかも!と少年がひとり行動をおこします。
    彼の行動が周りの大人たちの心を少しずつ動かし…
    さて、クリスマスにはどんな奇跡がおきるのでしょうか?

    自分の境遇を恨んだり、他人の幸せを妬んだり、そんな暇があったら、少しでも顔を上げて前を向かないと、小さな幸せ見過ごしちゃいますよ。

  • 大号泣。読んでる端から泣き続けて読み終わったかんじ。
    大和はいいひとにめぐりあった。航平もいいひとにめぐりあった。みんな恩返ししてた。
    その輪に加われないひともいた。来た道を戻って遠く世界の果てに。
    思いやることは知ったかぶることでなくて、察することで、でも後ろにいるからね、って伝えることなのかなあ。
    かわいそう、を利用するのは卑怯者のすることなんだ
    でもかわいそうを使わないと生きていけない人はどうしたらよかったの?
    愛していると伝えて、愛していると言ってもらえたならよかった
    誰かのせいにしても楽にならないんだ、自分がよどんでいくだけなんだ
    わたしから始まることなんだ
    変わることがあって、取り返しのつかないこともたくさんあって、でも踏み出せるなにかがあるから、きっと、どこにも希望があるんだろう

  • クリスマス倒産を控えた子供服デザイン会社に併設された学童保育に最後まで残った小学生の航平は子供ながらに悩んでいた。
    そして長年この会社と学童保育を支えてきた大和は幼い頃に両親から受けた傷を引きずって生きてきた。

    「不幸の比べっこしても仕方ない」
    自分の今の生き方への言い訳でしかない不幸の比べっこ。
    自分だけ不幸だなんて思ってはダメだ。

    両親の離婚が迫っている中、航平は自分の望みを物語にして訴える。
    親は子供のためという言葉を使いがちだが、自分のことを理由にして物事を決められてしまうのは辛い。
    子供は親の提示する方法に従うほかないのだ。
    大和は航平の中に自分を見る。

    それにしてもこの航平、ランドセルを背負っているのだから小学生という設定なのだろうけれどそれにしては言動が成熟しすぎだ。
    著者の筆に文句をつけるわけではないけれど、チョット違和感ありでした。

    *キャロリングってどんな意味かと調べたら、聖歌を歌ってキリストの誕生を知らせる事だって。

  • 大和俊介が勤める『エンジェル・メーカー』は、わずか5名の
    小規模子供服メーカー。
    厳しい業界を生き抜いて来たが、年越しを待たずに倒産する事になった。
    クリスマス倒産。
    『エンジェル・メーカー』は、3年前から学童保育もやっていた。
    倒産に向けて預かる数を減らして行き、
    最後に6年生の田所航平が残った。
    航平は別居している父親と母親に仲直りさせたい為、
    父親の暮らす横浜迄連れて行って欲しいと柊子に頼む…。
    大和と柊子が巻き込まれる事に…。
    大和と柊子は以前付き合っていたが、大和の過去の為別れていた…。


    大和と赤井の生い立ちは悲惨過ぎたなぁ。
    家庭内暴力・ギャンブル依存症・借金・離婚・別居…。
    子供は親を選べないとは言いますが、
    それに巻き込まれる子供達、その子供達の心情が
    丁寧に描かれていて、心に響きました。
    『不幸の比べっこをしてどうするの』
    という言葉に救われた大和
    英代さんがいて良かったね。本当に良かった。

    航平の父親の身勝手さ、浅はかさ…本当に子供みたい。
    子供の航平の方がずっとずっと大人の様だった。
    大人なのに子供、子供だけど大人…居るんだろうな。

    酷い家庭環境で育たざるを得なかった人が何人も登場し
    重いテーマも含んでいますが、決して重くならず
    グイグイ読み進んでいきました。
    『エンジェル・メーカー』での会話には和めました。
    笑えました。個性的な人々だけど、とっても仲良し
    特にぺんさんが良い味出してた~。
    とっても、良い会社だったなぁ

    最後には、それぞれが幸せになりそうな予感を抱く事が
    でき、心が温まりました。
    大和と柊子のシーンでは、少し涙が溢れました。

  • 好きな物語だった。

    有川浩さん初期の自衛隊三部作に感じた、鋭利な心と純粋な心が交じり合った物語だった。

    人を傷つけるってなんて簡単なんだろう。
    人を、自分を許すってなんて難しいのだろう。

    素敵な大人がいないと難しい。
    現実もそう。

    とてもステキな物語でした。

  • 大和っていい奴。引っ張っていってくれる感じで惹かれるな~
    航平君、まだ子供なのにしっかりしてる。
    お話しまで書けちゃうし、ちゃんと人に伝えるという事ができるなんて偉い。
    急にゆる~い流れが誘拐事件勃発でビックリ。
    倒産とか離婚とか誘拐とか、いっぺんにいろんな事が起こった冬の出来事。

  • クリスマスにまつわる物語。もっとファンタジーチックな物を想像していたらいい意味で違っていた。
    有川作品にはいつも、自分の琴線に触れる言葉がある。
    「それでも自分の胸には自分の不幸が一番痛い。だから比べたって仕方ないのだ、他人にも自分にも。」
    「子供はいつだってまともに受け取るんです。親に与えられたものは何でも。」
    前の作品を読んでても思ったけど、有川さんは人の心にとても敏感で、子どもの頃からいっぱい言葉で傷ついてきたことがあるのかもしれない。そしてそれをストレートに表現できる人。だから私はいつも有川作品に心をえぐられるのかもしれない。
    航平の家族は元には戻れなかったけど、前には進めた。
    大和も柊子も、赤木も手下もみんな。
    現実はこんなにうまくいかないし、こんな出来た人たちばかりじゃないけど、そこは物語なので。
    希望があって良かったと素直に思いました。
    私にとっては有川作品の中でも上位に入る、お勧めの小説です。

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著者プロフィール

有川浩(ありかわ・ひろ)
高知県生まれ。二〇〇四年『塩の街』で電撃小説大賞大賞を受賞しデビュー。同作と『空の中』『海の底』の「自衛隊三部作」、「図書館戦争」シリーズをはじめ、『阪急電車』『旅猫リポート』『明日の子供たち』『アンマーとぼくら』など著書多数。

「2017年 『ニャンニャンにゃんそろじー』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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