数学の言葉で世界を見たら 父から娘に贈る数学

著者 :
  • 幻冬舎
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感想 : 53
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  • Amazon.co.jp ・本 (263ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784344027404

感想・レビュー・書評

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  • 面白い。恥ずかしながら、少し理解できないが、楽しい。数学に苦手意識あっても良いと思う。理屈 カチッとしたものを敷衍して行くイメージです。

  • Kavli IPMUの機構長である大栗先生が、娘さんにこれからの生き方を数学を通して語った一冊。元々は幻冬舎のサイトの連載コラム記事を本にまとめたものである。このコラムが連載された頃、娘さんは高校受験だったがその後無事に第一志望に合格されたそうだ。
    本書は数学の様々な内容を通して、人生をより良く生きるための指針がいたるところに盛り込まれている。ベイズ推定や金融などで扱う大きな数の話のような、実生活に役立つ話題から、無限集合や方程式の解法などの基礎的な数学の話もあり、数学教育として重要な内容ばかりだと思う。学校の勉強のように単元の寄せ集めではなく、大栗先生の想いというか思想が柱として貫かれており、読んでいて面白かった。ここで語り切れない内容については、カルテクのサイトに補遺としてまとめられており、読後の楽しみもある。
    本書は父から娘に贈る数学という副題が付いているが、娘さんばかりでなく様々な人の生きる指針になるようにも感じた。あとがきで数学と民主主義との関係について述べられた部分は特に印象に残っている。

  • タイトルどおり身近な事象を題材にして、数学という「言語」を使ってそれらを解き明かすという内容です。

    全部で9つのパートから成り立っていますが、各パートが無関係に独立しているのではなくそれぞれが関連している構成になっており、まるで物語を読んでいるかのように読み進められます。
    読了したばかりですが、何度でも読み返したくなりました。

    各パートのタイトルと、扱っている内容は以下のとおりです。

    1.不確実な情報から判断する
    確率、条件付き確率、ベイズの定理

    2.基本原理に立ち戻ってみる
    自然数、負の数、ゼロ、分数、無理数

    3.大きな数だって怖くない
    フェルミ推定、べき乗、指数、対数

    4.素数は不思議
    素数、公開鍵暗号、オイラーの定理

    5.無限世界と不完全性定理
    無限、極限、背理法、ゲーデルの不完全性定理

    6.宇宙のかたちを測る
    ピタゴラスの定理、デカルト座標、ユークリッドの公理

    7.微分は積分から
    微分・積分、

    8.本当にあった「空想の数」
    虚数、複素数、複素平面、オイラーの公式

    9.「難しさ」「美しさ」を測る
    群、解の公式

  • 数学の魅力を存分に伝えてくれる素晴らしい本だった。易しすぎて不正確になることも,難しすぎて読者を置いていくこともなく,本当に良くバランスがとれている。それでいて著者は数学者ではなく(数学も教える)理論物理学者だというのだからすごい。世の中には頭のいい人もいるものだ…。
    扱う内容は,確率,自然数→有理数→実数→複素数,フェルミ推定と対数,素数とRSA暗号,連続体仮説,非ユークリッド幾何,積分微分,そしてガロア理論の入口まで。どの話題にも印象深い挿話が添えられていて,意欲的な中高生なら目を輝かせて一気に読んでしまうはず。著者のサイトには各章の補遺が載せられていて,そこでの補足も勉強になる。

  • 図書館で借りた。
    タイトルだけ見て借りてみた。目次を見ると…、「数学の基礎事項を学べる読み物かな?」と思ったが、瓢箪から駒、名著だった。
    事柄自体は、たしかに中学高校で学んだ分野だったりするが、目新しい視点での解説があったりで、非常に楽しめた。昨今は教科書には書いていないtrivialな話題なんてすぐ簡単に見つけられるが、それを一般の世界につなげるのは難しい。その"つなげる"部分を見せてくれる本と感じた。

  • 数学のいろんな分野の超入門といった感じ。大学数学に興味ある人向けくらい。さすが大栗先生で説明がわかりやすい。興味を持ったらそれぞれをより詳しく解説した本に進む、といった読み方がしやすそう。

  • 1.不確実な情報から判断する、2.基本原理に立ち戻ってみる、3.大きな数だって怖くない、4.素数は不思議、5.無限世界と不完全性定理、6.宇宙の形を測る、7.微積は積分から、8.本当にあった空想の数、9.難しさ美しさを測る。数学の言葉で世界を見る。優しく解説してくれている。

  • 数学は宇宙を記述する言葉だ。その言葉の仕組みや考え方を書いてある。事例やエピソードが中心で楽しく読める。また、ちゃんと公式の証明もあり、これがまたわかりやすい。数学が好きになる本だ。

  • 大栗先生が娘に数学を語る本。大栗先生の本はいつもわかりやすくて素晴らしい。よく理解している人は明快に説明できるという典型ですね。どの章もおもしろいですが、締めはガロア理論。やはりこれを数学の美しさの典型と考える方は多いんでしょうね。益川先生も学生の頃はガロアに憧れていた、と語っていました。大栗先生のガロア理論の解説、明快でわかりやすいです。ガロア理論について最初に読む本として本書は一番良いのではないでしょうか。5次方程式が解けない理由を正20面体の回転操作が交換しないということに結び付けて解説しています。こうした幾何学的なイメージを解説してある本、少ないような気がします。

  • 『重力とは何か』、『強い力と弱い力』、『超弦理論入門』など宇宙論の本を書かせると随一の大栗先生が、副題にもあるように自らの娘に語るようにして数学について説明した本。娘を含む後の世代のひとたちに向けた「はじめに」の内容が素晴らしい。高校二年の自分の息子に本当に読んでもらいたいと思った。

    全体を通して、数学の本質を捉え、その本質を工夫して伝えようとしていることがとてもよくわかる。章ごとに見ていくと次のような内容が書かれている。

    第1話: 確率の話。特に統計理論を使うためには理解必須のベイズの定理の説明がわかりやすい。日常生活でも偽陽性や偽陰性はきちんと理解しないとね。
    第2話: 整数からゼロ、負数、有理数、無理数が数に加えられていった話。こういうところが不思議だなあと興味を持ってほしいよね。
    第3話: 指数・対数の話だけれど、ケプラーなど中世の天文学の話と絡めた説明が楽しい。後の章への布石もある。ネイピア数eって不思議。
    第4話: 数学の不思議といえばこれだという素数の話。公開鍵暗号方式という実際の役にも立っているというのもこれもまた不思議。
    第5話: 無限といえばカントール。そして、ゲーデルの不完全性定理まで説明する。不完全性定理は俗な理解をしてはいかんね。
    第6話: 幾何学の話。これはピタゴラスの定理の証明法の説明が白眉。デカルトの代数幾何、非ユークリッド幾何などもわかればよし。
    第7話: 微分積分の話。ここでの説明の仕方は本当に感心する。苦悩する高校生に読ませたい。
    第8話: 虚数の説明で、数学の不思議さを堪能できる。三角関数と指数関数が複素数を通してがっちりとつながるオイラーの公式って本当に感嘆する。
    第9話: 群論。大学に入ってから習うものだけれど、自分は、この辺りでちょっと挫折した感がある。高次方程式の解の存在について議論するためにガロアによって始まった群論は、今では素粒子理論など宇宙論に欠かせない。

    著者は、数学を習うことを新しい言葉を習うことになぞらえる。そしてカール大帝の「別の言葉を習うことは、もうひとつの魂を得ることになる」を引いて、数学を身に付けることがそれが実生活に役に立つかどうかによらず、新しく必要な考え方を学ぶことになるという。「これまで語ることができなかったことを語り、解くことのできなかった問題を解くための、新しい言葉を作る。これは、人間の知的活動の最も素晴らしいもののひとつ」だという。ここで書かれた説明は確かに、数学のツールの説明ではなく、そのツールによってどういった問題が解決できるようになったかという視点で書かれている。

    受験を終えた理系の大学一年生に特におすすめかな。もちろん自分も十分楽しめた。

    なお、この本にはWebサイトに公開された付録がつけれられている。こちらも後でちゃんと読んでおこう。
    http://ooguri.caltech.edu/japanese/mathematics


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    『強い力と弱い力 ヒッグス粒子が宇宙にかけた魔法を解く』
    http://booklog.jp/users/sawataku/archives/1/4344982932
    『重力とは何か アインシュタインから超弦理論へ、宇宙の謎に迫る』のレビュー
    http://booklog.jp/users/sawataku/archives/1/4344982614
    『超弦理論入門』のレビュー
    http://booklog.jp/users/sawataku/archives/1/4062578271

著者プロフィール

カリフォルニア工科大学フレッド・カブリ冠教授/ウォルター・バーク理論物理学研究所所長
東京大学カブリIPMU主任研究員
米国アスペン物理学センター所長

「2018年 『素粒子論のランドスケープ2』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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