記憶破断者

著者 :
  • 幻冬舎
3.55
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本棚登録 : 420
感想 : 66
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  • Amazon.co.jp ・本 (364ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784344028036

作品紹介・あらすじ

頼りになるのは、ノートだけ。記憶がもたない男は、記憶を書き換える殺人鬼に勝てるのか?見覚えのない部屋で目覚めた二吉。目の前には一冊のノート。そこに記されていたのは、自分が前向性健忘症であることと「今、自分は殺人鬼と戦っている」ということだった。殺人鬼は、人に触れることで記憶を改竄する能力を持っていた。周囲は誰も気がつかない中、その能力に気がついた二吉に、殺人鬼の脅威が迫り来る。絶対絶命の中、記憶がもたない二吉は、いったいどういう方法で、殺人鬼を追いつめるのか?二人の勝負の行方は?

感想・レビュー・書評

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  • 本屋さんで改題された「殺人鬼にまつわる備忘録」をつまみ読み。面白そうだったので図書館で借りた。会話の多さやそのまわりくどさは相変わらずだが、アリス殺しシリーズよりも読みやすかった。

  •  前向性健忘症のために数十分しか記憶が持たない男と、他人の記憶を書き換えることで決して疑われることのない殺人鬼の対決を描いたミステリー。有名な『博士の愛した数式』では、「博士」の背広に貼り付けられたメモには“ぼくの記憶は80分しかもたない”と書かれていたが、本書では、男の持ち歩くノートに“今、自分は殺人鬼と戦っている”と記されているわけだ。
     なんか妙に小物感のある殺人鬼があまりにクズすぎて、読んでいて不快になる。息をするかのように軽いノリで人を痛ぶり、そして殺すが、関係者の記憶を弄っているので捕まらない。ムカムカするので、何度本を閉じようかと思ったことか。
    「あなたの思い描いていたラストは最後の一行で裏切られる」と帯に書いてあったのだが、最後まで読んでも、(テーマ的に多分作者はこういうことをしたいんじゃないかなということは何となく分かるが)どうもピンとこなかった。腑に落ちないので他の方のレビューを読むと、どうやらシリーズもので、本書だけでは完結しないらしい。「思い出せるのは事故があった時より以前のことだけ(男が記憶障害を患うことになった経緯は、普通は「事件」と呼ぶのでは?)」とか、「このノートには決して自分の名前を書き込まない」とか、まぁ一番は「黄色い歯」の女は誰?ということだけど、伏線かなと思う箇所を拾って読んでいたのだが、全然回収されず。

  • '21年6月27日、読了。

    これは、いや、これも、面白かった!夢中で読んでしまいました。小林泰三さんの小説、3冊目。

    前向性健忘症の主人公と殺人鬼のバトルの話で…極悪な殺人鬼に対して、心理戦、論理的思考と推理力で戦う主人公。いやぁ、凄かった!こんなの、よく思いつくなぁ。

    ただ…殺人鬼が、あまりに邪悪で、嫌になりました。軽く、吐き気が…。フィクションだという事は、重々承知してますが…これを小林泰三という「人間」が書いて表現しているという事実に、具合が悪くなります。トホホ…。

    あと、「夏生」という女性がちょっとだけ出てきますが、「???」
    シリーズの他の作品で、活躍する人物?田村ニ吉登場作品は本作と短編を一編、読んでますが…他にもあるのかな?あるなら是非、読んでみたい!

    小林泰三さん、恐るべし!次こそ「アリス」、行ってみます!

  • 最終的に何が事実なのかわからなくなった。
    一番タチが悪いのは雲英よりもあの爺さん。
    伏線回収はこの一冊ではできないので調べてみると、他の作品もあるみたい。
    それをよんでも、確定はされていないようなので今後の作品に出るかもと期待したところ、小林泰三さんは去年なくなったとサイトに書いてあった。
    全作品読んでみます。
    ご冥福をお祈りいたします。

  • 前向性健忘症の田村二吉は特殊能力で記憶を改竄できる怪人と戦う→殺人鬼がゲスすぎて不快。結局、徳さんと夏生の正体がよくわからずラストが謎のまま。どうやら他にも田村二吉シリーズの作品があるらしいので読んでみよう!

  • 久しぶりに小説を読んで声を出して笑った。設定もぶっ飛んでるし、先が全然読めない。終わり方が、ちょっと残念だったけど、ブラックユーモア最後まで、突き進んでくれました。

  • 前向性健忘症を患っていて記憶が長時間保持できない主人公が記憶を改竄できる殺人鬼と戦うお話。

    とにかく殺人鬼がクズ野郎なので、序盤がかなり不快でこのまま読み続けようか考えながら読んでいた。(特に最初3人の被害者は可哀想…)
    結局、決着がつくまでは楽しく読めたけどラストがよく分からなくて疑問が残った。他作品に続いてるそうですが、続き読むかどうかはわからない

    1番怖いのは徳さんと夏生。主人公が可哀想になる。この2人は他に出ているらしいけど、途中の冷蔵庫の描写は一体なんだったのだろうか…

  • 別々の物語の主人公による異種格闘もの、とも言えるかもしれない。 そういうの好きです。 貞子vs伽倻子みたいな、ね。それは違うかもしれないけど。 読み終わっても幾つかモヤつきが残って(黄色い歯の女は誰だったんだ? 北川先生は何を書き加えたんだ? 冷蔵庫の中の肉はなんだったんだ? 話は数日遡る?) 調べてみたらこの話だけでは完結していなくてスピンオフがあるらしい。 そっちも読まなきゃ。

  • 普段は古典的な推理小説しか読まないのですが,前向性健忘症の主人公が手続き記憶を頼りに,記憶を操るサイキックといかにして対峙するか・退治するかという話でした。この「いかに」というところを知るために読者は読み進めるという側面もある作品ですね。前向性健忘症に理解のある人が,自分で考えたことすら思い出せない健忘症者の過去の意図を汲み取り,結果解決(ドラマ「アバランチ」的なやり方)に至ります。
     感想ですが,「デス・ノート」のオマージュなのではないかという気がしました。ノート(もちろん殺傷能力はない)は健忘症者が持ち,サイキックとのやり取りの中で「第2の僕,第3の僕が出てきて,お前を追い詰める」的なことを言うのですが,この言い回しがデス・ノートっぽいですよね。健忘症の人が自然に発する言葉とは考えにくいので,デス・ノートのいろんな要素を役割を変えたもののように感じました。
     健忘症に関する知見を,生活のしにくさという負の側面で描いていく小説とは違ったスリリングな作品になっていると感じます。

  • 個人的に小林泰三ブームが来ていて、「アリス殺し」「クララ殺し」に続いてあっという間に読了。
    主人公の記憶が短時間しか持たないという設定、「メメント」や「博士の愛した数式」がハマった私としては読まないわけにはいかない。

    度々記憶を失って同じような記述が繰り返されるが、主人公がキレ者ぶりを発揮して段々と素早く状況把握してくれるのが楽しくなってくる。
    敵役となるキラのクズっぷりも容赦ない。
    たまたま目に留まった他人の記憶を操って、知らぬうちに闇金で借金させたり、痴漢に仕立てあげたり、ホテルに連れ込んで不貞させたりとやりたい放題。自分が被害者だったら、と想像するとゾッとさせられる。下手なグロ描写よりも余程怖かった。
    キラがやや頭悪げではあったけど、主人公との頭脳戦というか心理戦は楽しめた。
    アリス殺しなどを読んだ後だったので、何か大きなどんでん返しが待っているはず、とかなり警戒して読んでいたが、最後の展開は少しモヤモヤ。
    結局どういうこと?
    読了後に色々調べて、この作品は「二吉シリーズ」の中の一作と知った。二吉、徳さん、夏生については他作品を読まないと深く理解できないと。
    そんなん分かりませんわ…
    本のタイトルも改題してたりして、結局どれがシリーズなのか分かりにくいし、「なんだかな!」と感じた。
    この作品内でもうちょっとスッキリさせて欲しかった。
    個人的に残った謎。
    「最近の人命救助では、素人は人工呼吸はしない」というセリフを北川先生と、別荘の管理人の2人が言っていたけど、この2人は同一人物なのかな?考えすぎか…

  • また読みたい。

  • 見知らぬ部屋で目覚めた二吉は目の前の一冊のノートにより、自分の記憶は数十分しか持たないと知ります。しかもノートによると自分は今、殺人鬼と戦っているらしい…。何度も記憶をなくしてはノートに立ち返りながら彼はひとり殺人鬼と戦います。先が気になって目が離せず一気にラストまで。ラストの展開もよくラスト一行で落とす、好みの話でとても面白かったです。いくつか中途半端に伏線が残った気がしたのですが、どうやら他の作品とリンクしているようですね。「忌憶」「モザイク事件帳」が登場人物が重なっているらしいので読んでみます。

  • 数十分しか記憶の持たない男と、他人の記憶を改竄する超能力を持った怪人との戦いを描くミステリ。文章は硬質的で無駄がなく、実話系ホラーにありがちな乾いた文体であるため、脳に染みやすく無機質な恐怖感が行間から漂ってくる。ストーリーも面白く、過去の記憶を持たない男が、失われた過去ではなく現在進行形の恐怖と戦う構図なのは中々斬新である。著者の他作品のキャラであるため、本作単体ではやや説明のつかない箇所(冷蔵庫の謎の肉や突如現れる老人と謎の女、主人公の常人離れした知性、そのバックボーン等)があり、世界観を掴みにくい面もあるものの、基本は単独で完結している話であるためこれから読んでも恐らく問題はないだろう。記憶破断者というタイトルも秀逸で、記憶が失われていく主人公だけでなく、記憶を改竄する能力を持つ怪人と合わせて二人セットでこの名なのは上手いと思った。少し現実離れしているものの、怪人の能力を行使し続けてきたが故の人間味の抜け落ちた感じや、おぞましい悪としか形容できない存在感は本作の魅力の一つであろう。クライマックスの怒涛の展開は面白く、記憶を巡った仕掛けも素晴らしいが、オチに関しては少々ホラーよりでやや悪趣味が過ぎる気もする。好きな人はこのオチは好きだろうが、清々しいエンタメ的な爽快さを求める読者は好みが分かれるかもしれない。ただこれは実話系ホラーにありがちな落とし所で、この悪趣味さは味でもあるので僕は好きです。

  • 記憶が数分しか持たない探偵役。
    何処からどこまでが彼の本当の実体験で、どれが彼の手により改竄されたのか最後まで分からなかったな…。
    結局殺人鬼は捕まったからいいのだろうけど、これからの彼がどう生きるのかも気になるな。

  • 1ページ目、『警告!』の太字に、読む前から既にワクワクしてしまった。その期待は、最後の1行まで裏切らなかった。
    健忘症患者と、他人の記憶を改竄できる殺人鬼の対決。一見勝ち目のない対決に思えるが、もしかしたら…と逆転ホームランを待ってしまう。
    死闘の末、感動のクライマックスを迎えたと思いきや、そこからも更なる真相に、驚きはとまらない。思わず、「ちょっと待って!」と読み返してしまう。
    推理小説たくさん読んだし、展開みえてきたなーと途中で思った自分が恥ずかしい。
    推理小説が好きな々に、是非お勧めしたい。

  • 「記憶破断者」
    小説です。
    記憶障害もの映画の金字塔「メメント」とほぼ同じ ”忘れちゃう” 症状の主人公の一人称による物語。
    さすがにメメントに勝るとは言えないが、こちらもかなりの秀作。短時間しか記憶がもたない状況で、いかに事態を打開するのか。ハラハラドキドキです。

  • 前向性健忘症(記憶が数十分しかもたない)を患う田村二吉。記憶の代わりにすべくノートを持ち歩き,大事なことを書き込んでいる。彼の前に《他人の記憶を書き換えることができる》という超能力を使って好き放題をやり,人を殺すのもためらわない雲英光男が立ちはだかる。田村が雲英のことを犯罪者だと見抜くことが出来た顛末がおもしろい。この殺人鬼雲英が非常にゲスな野郎で,数々の悪行のくだりを読んでいると反吐が出そうになる。果たして田村はその限られた記憶力で雲英に勝つことができるのか?

  • 一気読みしないといけない系の一冊。
    相変わらず、暴力シーンはウェッティで、ミステリ要素は繊細です。一行でも見落とすと「?」に陥りがち。小林泰三さんの醍醐味がギュッと詰まった書きおろしでした。
    記憶を操る事が出来る男と、数十分しか記憶が持たない男の闘い。若干、アレとソレを足したような設定じゃないかと思うなかれ。最後の一行まで刮目せよ。

  • イジイジしつつ、まあ楽しめた。
    最後の一行にああっ!
    と思いつつ。
    生きるの大変だよな〜。
    HMもこんな感じだったのかしらん。
    記憶は簡単に作られるから、
    タイムリー。

  • 数十分しか記憶が持たない人の話。あれ?どんな話だったっけ。忘れないようにここに書いておこう。

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著者プロフィール

1962年京都府生まれ。大阪大学大学院修了。95年「玩具修理者」で第2回日本ホラー小説大賞短編賞を受賞し、デビュー。98年「海を見る人」で第10回SFマガジン読者賞国内部門、2014年『アリス殺し』で啓文堂文芸書大賞受賞。その他、『大きな森の小さな密室』『密室・殺人』『肉食屋敷』『ウルトラマンF』『失われた過去と未来の犯罪』『人外サーカス』など著書多数。

「2023年 『人獣細工』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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