アルテーミスの采配

  • 幻冬舎 (2015年9月10日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (400ページ) / ISBN・EAN: 9784344028166

感想・レビュー・書評

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  • 性産業に対する偏見はなぜ生じるのか。

    例えば、誰かの靴を舐める映像にニーズがあり、それを撮影して販売するとする。性産業に対する偏見は、もしかすると、それを演じる役者に対する嫌悪感や偏見と同じようなものかもしれない。ニーズがあったとしても、尊厳を売り渡すという行為が、本能的に蔑まれるのだろう。そして、尊厳を売る方も、それに従事する動機は複雑だ。ニーズがあるのだから、崇められる部分もあるのだろうか。誰かを救うため、という目的も一部では果たせるだろう。しかし、蔑むような価値観は本人にも分かるから、それを代償にしながら、最後は「お金のため」という事になる。行為自体が好きなだけなら商売にする必要はないのだろうし、誰かを救う仕事ならば他にもあるのだから。

    結局、尊厳を換金する行為。そして、そうせざるを得ない状況がある、という事なのかもしれない。社会やお金、権力やスカウトなどに追い詰められた結果。契約自由はあれど、法外な違約金にも吃驚する。

    本書はそうした人たちを巡って巻き起こる事件を描くミステリーである。具体的にはAV女優の人たちだ。こうした関連書籍も参考にしながら、赤裸々に本音を綴るのだが、そんな偏見について考えさせられる内容だ。物語としても、面白い。ただ、表現は18禁という感じで、過激な描写もあるので注意。

  • さすがの真梨先生。

    女の復讐心、嫉妬心書かせたら日本一ではないかなぁ。
    そうなんだ。女は知らないうちに嫉妬され、訳もわからないうちに制裁を受けることもある。

    自分とは全く違う世界、出版社やAV業界の話だった為、いつもほどの感情移入はなかった。
    何処か、外側から事件を眺めているような気持ちで読んでいた。

    しかし真梨先生、流石の筆力。
    それでもしっかり心鷲掴み。
    最後は畳み掛けてきますね!

  • 読書備忘録691号。
    ★★★★。

    怖い怖い!
    ただただ怖い。
    女性ということで一括りにしてはダメですが、恨み、復讐、執念、絶対に忘れない・・・。
    真梨さん!怖すぎ!笑

    AV女優を対象としたインタビュー本の企画が持ち上がった。出版社とAVプロダクションとの共同企画。
    企画は「アルテーミスの采配」。

    出版社の企画者。
    出版社のゴーストライター。
    AVプロダクションの社長。
    AVプロダクションのゴーストライター。
    AV女優達、5人。

    AV女優になるにはそれぞれの物語がある。
    ただ、その物語が恨み、妬みなどが背景にあったら・・・。
    インタビュー対象になったAV女優はインタビューを受けた後、次々に殺されていく・・・。インタビュアーの出版社のライターは殺人事件の容疑者として追われる。

    そこには、インタビュアーを連続殺人事件の犯人とする、裏のシナリオが動いていた・・・。
    なぜAV女優は殺されるのか?AVプロダクションに借金を抱えたAV女優の成れの果て。AV作品に出演するだけでは返済できない、風俗に売られても返済できない、臓器を売っても返済できない・・・。生命保険でしか返済できない悲しい結末。自殺では保険金は下りない。であれば殺人事件として演出する。
    恐ろしいAVプロダクションの女社長の欲望シナリオ。

    さらに、AVの世界に引き摺り込むとんでもないトラップがシナリオとして組み込まれる。ターゲットは有名女子大を卒業し、キー局の女子アナ。超美人をAV界に引き込むこと。

    さらにさらに、AVの世界で成功しているにも関わらず、絶対に忘れない屈辱の復讐劇シナリオも複雑に絡む。
    イヤミスの極地!

    怒涛のクライマックスの種明かしはとんでもない!
    繰り返します!怖すぎ!
    真梨さん!これ物語ですよね!創作ですよね!女性の本性じゃないですよね!!!!!

    真梨さん。ハマります。

  • だ・か・ら 真梨幸子 先生 怖過ぎます。

    自分で選んだ道(選択)と思っていても それが他の人が敷いたレールに乗せられていたら?

    もしかしたら【普通に生きる】って 難しいのかも知れませんね……

    最終のあと一つの謎が解らなかった。

  • 真梨幸子らしい作品。
    内容は、ある企画のもと、記者がインタビューしたAV女優が次々と何者かによって殺されていく。そして、その記者もある人物によって監禁されてしまう。
    読んでいる途中までは面白かったが、途中からなんとなく失速。
    あの人がこの人だったのかという驚きはあったものの、小説としては今一つ。
    復讐の物語。

  • 最近続けて読んでいる真梨幸子。
    今作はAV女優にスポットを当てたお話。
    インタビューを通して人となりを知る、その裏では怪しい事件が進行している。
    最後はやっぱり怒涛の展開。
    アナウンサーととばっちりの娘は気の毒だと思ってしまいました。
    登場人物が多く、源氏名と本名があり、よく覚えるのが大変でした。

  • 2回目の読了。

    2015年に出版らしいのだけど、最近出版と言っても信じるくらいにはこの数年間のことを彷彿させる雰囲気があちこちにある。逆に言えば、テクノロジーの発展とは違って、10年くらいでは世の中さほど変わるもんではないと言えなくないのかもしれない。

    こういう作品は誰が誰でってことを混乱させつつ、実は同一人物とかっていう感じが多い気がしてたけど、そう単純ではなかった。隠された過去が1本の線につながっていく感じは、登場人物が多ければ多いほどびっくりするわけだけど、フィールドがアングラすぎたせいなのか、あまりリアルな驚きを感じることなく読み進めてた。

    最後までその驚きはなく、本当は怖いグリム童話を読んでるような淡々さが続いて、イヤミスに振り切らないけど、読後感はそんな良くないみたいな不思議なグラデーション。リアリティはないけど、リアルに感じる人がいるかもしれないファンタジーさがあるからなんでしょうなぁ。

    -----

    1回目の読了:2015/11/25

  • 習慣にしている30分の朝読書。続きが気になって30分でやめられず、毎朝遅刻しかけるくらい面白かったです。朝っぱらから読むような内容じゃなかったけど(笑)。それにしても救いがないというか、後味悪いなぁ。さすがイヤミスの女王。

  • 新イヤミスの女王・・・いや、もう教祖と呼びましょう。
    人間のドロっとした部分を描かせたら当代一の実力者、真梨幸子サマ
    の新作。

    今回のアイテムはAV。もちろんオーディオビジュアルの方ではなく、
    アダルトビデオの方。AV嬢5人にインタビューし、それをエッセイに
    仕上げるプロジェクト。インタビューを受けた女優や関係者が続々と
    死んでいく、というミステリー仕立てなのだが。

    ・・・凄ぇわ、この人。
    ミステリーの部分の組み立てはかなり見事で、そこだけ読んでも相当
    イケてるのだが、ハッキリ言ってそれすらオマケ。いちばんの見所は
    序盤のインタビューで各人が喋る本音。どういう思考回路があれば
    あそこまでの悪意が表現できるのか、というくらい薄ら寒い。
    特に女性が同じ性別である女性をクールに罵る様は、一周して爽快感
    すら感じる。全く以て大きなお世話なのだけど、幸子サマの普段の
    生活が心配になるくらい(^^;)。

    本来は目を背けなければならない世界が矢継ぎ早に登場する。もちろ
    ん不快感は伴うが、だからこそ全く目が離せない。なにより、この
    かなりの長編を読むのにかかった時間はたった半日。これがどれだけ
    凄いのか、ぜひ多種多様・いろいろな人たちに体感して貰いたい。

    ただし、読後感はもちろん読中感すら最悪。
    それをキッチリ覚悟し、ぜひ挑戦を。教祖・幸子サマの妙技、とくと
    味わえ!

  • 「誰もが認める美人となると、そりゃそこらじゅうトラップだらけよ」
    自分は歩いているのか,それとも歩かされているのか.見抜ける賢さ,正直にいきるための賢さ,絵を描く悪賢さ.最後は,得たくはないが,どのように絵を描き始め組み立てていくのか,一度見てみたい欲求に抗えない.この本は,それをほんの少し,抜けられなくならない程度に見せてくれる.

  • 最初はいつものエロおもしろい感じだったけど、だんだん登場人物も増えてきていろいろゴチャゴチャしてきて読むのが苦痛になってきたけど、真梨サンっていつもこんなんだしなーって思いながら最後まで読んだ。

  • 超面白かった。イヤミス極まれり。あんまミステリー感がない感じもするけど。AV女優達の話というか、復讐の話。自主的だとか、強制だとか、ちょっと前も話題になったよな。坂口杏里の話もあるけど、あれはあんまり需要はなさそうだけど。レイプのひどさを男たちには思い知ってほしい。最近の慶応大学のニュースを思い出す。若気の至り、で済ませないでほしい。思いしれって感じ。とにかく、いろいろなことが仕組まれている、というのが恐ろしい。まぁ小説の話とはいえ、ほんとにありそうだもんな。ほんとブスで良かった。やっぱり軽度の知的の子は狙われるんだなぁ。後半の展開が唐突な気もするけど、興味あるテーマだけあってドはまり。監禁とかスカトロとか責任感のある子ほど抜け出せないとか、AVに関する話はほんと怖い。知らないうちに誰かに恨まれているのだ。

  • ぷはーーーっっ!!!と最後の最後で天を仰ぎましたよ。振出しに戻るしかないじゃん!と。
    いくつかのひっかかりと、いくつかの疑問を乗り越えてようやく最後までたどり着いて、ほっとしつつ最後のページを読んでいたというのに。真梨幸子、あまりにも容赦のない仕打ち。
    ものすごく軽く読んでいけば、この物語の上澄みだけでも充分「おもしろかった」と言えるだろう。
    けれど、一旦、真剣に対峙し始めたが最後、山のような付箋と真っ黒になるほど書き込んだ相関図が手放せない。これだけやってもまだまだありそうで怖い。あ、そうか。怖いのか。うっかりなにか見落としていそうで、怖いのだ。誰かと答え合わせをするまで、このコワ面白さは終わらない

  • 読んでいてちょっと初期の桐野夏生さんの作品(ミロシリーズの初め)に似てるかな、と思った。人間の暗い欲望について鋭い描写もあり期待していましたが、全体的に登場人物が多すぎ、展開もあまり現実味がなく、物語が散漫な気も(すみません)そこが残念でした。

  • AV業界を舞台に、そこで起こる魑魅魍魎
    の世界。
    行きつく先は何処なのか?
    何処までも堕ちて行く女達の裏の顔
    には、隠された過去の怨念が渦巻く。
    周到に準備された罠にはまり
    苦界に足を踏み入れる女性達。
    それを影で操る女も、一度は底無しの
    沼に沈められ何とか生きながらえ
    復讐と言うこの時を待っていたのだ。

  • AV業界を扱った作品。本人たちが自分で選んだ道だと思っていても、用意周到に張り巡らされた罠にかかって堕ちていく。人の堕落がお金になるビジネスは本当に怖いです。救いようのない読後感で真梨さんらしい1冊。面白かったです。

  • 最初はどうなっていくんだろうな〜
    て思ってたけど読んでたら
    「えっ?!」てなって一気に読めた!!

    いつも最後の最後で驚く結末、、。

    人から恨みを買われるようなことは
    しないようにしなきゃと思った、、。

  • 少しは楽しめたかな
    嫌なあと味を残すミステリー:イヤミスとして人気がある作家なので読んでみた
    AV女優連続殺人事件の物語り
    仮想現実が好みの人には時間潰しに良いのではないかと感じた

    男性記者目線の文章はがんばって上手に書いたと思う
    主眼になるのは、堕落させられた女の恨みの執念深さを描きたかったんだろう
    女性作家だからそれで良いだろうとは感じている

    AV女優に仕立て上げて儲けるにはという、手練手管がご披露される
    少女ユニットでタレントとして売れてからのAV女優転向
    現役女子アナのAV女優転向
    東大卒のAV女優登場
    母親を先に裏ビデオ撮ってその娘をAVに引き摺り込むとか
    使い古せば保険金目当てで死んでもらう
    殺害幇助の闇サイトも機能させてみている
    スタートは女友達の部屋に呼ばれて男連中に撮影された女から復習が始まるわけだ
    一度入り込んだら、家族や社会から呪われて、とても元には戻れない女達の話し
    岸田秀の精神分析の考え方も参照しているのはとても興味深かった
    平和の中で渦巻いている社会の歪みをミステリー仕立てで描いた物語にはなっていると思う
    もしかしたら、また同じようなの読みたくなるのかなー

  • 真梨作品らしく様々な登場人物がいて、その都度視点もかわるので整理しながら読むのに一苦労する。
    AV業界に渦巻く人の闇がしっかりと書かれており、過去の恨みが家族を巻き込んでいく過程に悍ましい気持ちになる。
    後半一気にそれぞれの関係性が明確になり事件の全貌が明らかになるところは一気読みであった。
    イヤミス感が半端ない作品

  • 内容を良く知らずに借りてきてAV女優の話?そして登場人物が多過ぎ!と途中まで全く読み進められず挫折するかと思いましたが半分辺りから一気に面白くなりました。
    でもやっぱり真梨さん、後味悪いー笑

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著者プロフィール

1964年宮崎県生まれ。1987年多摩芸術学園映画科卒業。2005年『孤中症』で第32回メフィスト賞を受賞し、デビュー。2011年に文庫化された『殺人鬼フジコの衝動』がベストセラーとなり、”イヤミス”の急先鋒として話題に。2015年『人生相談。』が山本周五郎賞の候補となる。そのほかの著書に、『5人のジュンコ』『私が失敗した理由は』『カウントダウン』『一九六一東京ハウス』『シェア』など多数。

「2023年 『まりも日記』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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