鍵の掛かった男

著者 :
  • 幻冬舎
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  • Amazon.co.jp ・本 (540ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784344028333

感想・レビュー・書評

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  • 大御所作家に頼まれたのは、彼女が贔屓にしているホテルで五年間投宿していた男が死んだ件の再調査だった。警察は自殺と断定しているが、あまりに納得がいかない。そんなときに火村の噂を聞いた彼女はアリスへの懇願に出たのだった。
    はじめは乗り気ではなかったアリスは五年間もホテルに投宿し続けた男の人生に興味を覚え、ホテル側の協力も得られるということで、試験のためにすぐには出てこれない火村に代わって調査を開始する。いったい何故男はこのホテルに五年間も止まり続けたのか。男は何故、誰に殺されたのか。
    男の調査を進めるうちにアリスは彼の秘められた過去を掘り起こしていく。明かされていくそこから、彼の胸に射した死ぬ間際の光に胸が痛んだ。

    火村先生の登場が遅れるなか、アリスの懸命で地道な調査が大部分を割く、珍しい作品。表紙のミステリアスな男のイラスト?も目を引く。

  • 火村シリーズ最長編。今回は殺人が起きてからの捜査ではなく、ホテルで自殺したと思われる男性の死の真相を追っていく形で、物語が進んでいく。いつもは鼻につく、アリスの思い込みの激しい推理もほとんどなく、人間の絆の大切さなども盛り込まれていて、読み応えがあった。久しぶりに本格的なミステリーを読んだ気がする。

  • 作家アリスシリーズの長編。
    珍しく(?)人があまり死なない作品で、一人の男の謎を徹底的に暴いていくのがまるで自伝的で長かったけど楽しめた。中之島の歴史や淀殿の小話なども面白い。よっ有栖川刑事!と拍手を送りたくなるほどアリスが大活躍でファンとしては嬉しいの極み。
    と同時に、警察は普段からこうして足を使って地道に捜査してるんだなと思うと大変な仕事だなとしみじみ。
    正直、犯人(とても意外で驚いた)も被害者も同情しきれない部分がある。しかし贖罪を続けてきた梨田稔が孫を抱くという幸せを叶える前に命を落としたことは残念でならない。
    ラストでのオーナー夫妻の幸せそうな姿が何よりの救いだ。
    影浦浪子のキャラクターがとても素敵だったので、また出てきてくれたら良いな。
    アリスに対して「あなた、人嫌いね?」とズバッと物申したり「私は<鍵の掛かった男>をもう一人知っていますよ」と問いかけたり、大御所の人を見る目は凄いと思う。
    酒が入ったアリスはいつもは聞にくい火村先生の過去に口を挟んでるんだなと少し驚く。酒が入らないと、軽口まじりでないと触れられない部分なのはとてもわかる。その鍵はきっとアリスが持っていると思いたい。
    大路浩実さんの装丁がいつものことながら本当に素敵! 男の後ろにひっそりとこちらを注視する黒猫の意味が最後になってわかるのも良い。

  • 晩年がホテル住まいだった男が亡くなる。依頼はその男が自殺ではなく他殺なのを証明すること。ミステリーなのだが、1人の男の人生の話を読んでいる心境になる。ホテルに滞在した男の謎と、ホテルといういろんな人がやってきては去っていく空間の謎。過去の全てに鍵を掛けてしまった男だったのだが、そこはやはり人間だ。ところどころに鍵を掛け忘れた部分が部分が見つかってくる。鍵を掛け忘れた場所にあった必然や偶然を繋ぎ合わせて男の人生を再構築していく。ジェットコースターのような男の人生に、ミステリーを越えた感情がわいてきた。

  • 昭和の匂いがする推理小説。
    自殺なのか他殺なのか、ききこみをもとに
    調べていきます。
    徐々に死んでいた男の過去が明らかになっていく過程は小説全体で見るととても重要なパートだが、ちょっと長い。

  • 作家アリスシリーズ、というよりこの時期には火村英生シリーズと言うべきなのか、な一冊。

    大御所作家からとある依頼を受けたアリス。
    それは、彼女が愛用していたホテルでの事件の再調査だった。
    単なる自殺で片付けられようとしている事件だったが、事件の主役でもあるその男は自殺するような人間ではなく、さらに彼の素性が謎めいているという。
    大学准教授、という肩書きが災いして(?)、火村の出動が遅れる中、アリスは一人で事件を調べ始める…。

    タイトルでもある「鍵の掛かった男」は、自殺で片付けられようとしていたその男。
    身寄りもなく、静かにホテルで暮らしていた彼は、なぜ死んだのか?一体何者なのか?
    アリスが一人で調べる過程もワクワクしたけど、火村が出てきてからは、読むスピードも一気に加速。
    一番の大きな謎は、彼は誰?なのだろうけど、事件の顛末も回収されて、すっきり。

  • いつもは警察に呼ばれ、殺人と分かっている事件を捜査するのに、今回は自殺と警察が判断を下した件について、依頼を受けて捜査。
    梨田さんの過去を深く掘り下げているので、ただ死んだ人という扱いでなかったのが良かった。この残りページ数でどうなるの?って思うぐらい、最後まで分からず面白かった。

  • 有栖川さんの本初めて読んだ。

  • 良かった、とても良かった。
    図書館待たずに買ってよかったと思える本でした。

    5年ホテルに住み続けて、ホテルで死んだ男の人生をアリスが追う話。
    果たして自殺なのか他殺なのか。
    あ、火村シリーズ。

    少しずつ少しずつ、謎だった男のことがわかっていく過程が面白かった。
    最後の真相も良かった。
    うん、いい本読んだー。

  • 全体の8割は被害者の過去をアリスが洗い出す話でハードボイルド色が強く、シリーズの中ではやや異色な印象。派手さはありませんが、中之島の地理や歴史、近年の時事ネタを挿みながら少しずつ明らかになり、同時に事件の謎が深まっていく展開で飽きさせません。
    また、火村英生が参戦してから展開されるフーダニットのロジックはシンプルながらも良く出来ていますし、伏線の張り方も綺麗。読み応えのある良作だと思います。

著者プロフィール

1959年大阪生まれ。同志社大学法学部卒業。89年「月光ゲーム」でデビュー。「マレー鉄道の謎」で日本推理作家協会賞を受賞。「本格ミステリ作家クラブ」初代会長。著書に「暗い宿」「ジュリエットの悲鳴」「朱色の研究」「絶叫城殺人事件」など多数。

「2023年 『濱地健三郎の幽たる事件簿』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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