鍵の掛かった男

著者 :
  • 幻冬舎
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  • Amazon.co.jp ・本 (540ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784344028333

作品紹介・あらすじ

2015年1月、大阪・中之島の小さなホテル"銀星ホテル"で一人の男・梨田稔(69)が死んだ。警察は自殺による縊死と断定。しかし梨田の自殺を納得しない人間がいた。同ホテルを定宿にする女流作家・影浦浪子だ。梨田は5年ほど、銀星ホテルのスイートに住み続け、ホテルの支配人や従業員、常連客から愛され、しかも2億円以上預金残高があった。影浦は、その死の謎の解明をミステリ作家の有栖川有栖とその友人の犯罪社会学者・火村英生に依頼。が、調査は難航。梨田は身寄りがない上、来歴にかんする手がかりがほとんどなく人物像は闇の中で、その人生は「鍵の掛かった」としか言いようがなかった。生前の彼を知る者たちが認識していた梨田とは誰だったのか?結局、自殺か他殺か。他殺なら誰が犯人なのか?思いもしない悲劇的結末が関係者全員を待ち受けていた。"火村英生シリーズ"13年ぶりの書き下ろし!人間の謎を、人生の真実で射抜いた、傑作長編ミステリ。

感想・レビュー・書評

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  • 「刑事ごっこどころか、お前は本当によくがんばったよ」


    久しぶりに火村とアリスに会いたくなったときに図書館でこの本が目についたので、3年ぶりくらいに再読。
    読んでいてところどころ思い出す箇所はあったけど、結末は完全に忘れていたので新鮮な気持ちで楽しめた。

    5年間もホテルに泊まり続けた謎の客の死の真相解明にアリスと火村が挑む、というお話。

    あとがきにも書かれていたようにシリーズ最長の厚さで、しかも火村が動き出すのは後半からで、半分くらいはアリスがずっと調べものをしているだけ。
    なのに、こんなにも面白いのはなんでなんだろう!

    アリスの地道な頑張りで、まさに扉をひとつずつ開けていくかのように、徐々に客の男の素顔が見えてくる。
    そして、火村が参戦してからのスピード感はさすがだった。
    ついに犯人の名前が出る場面では、早く知りたいのに目が追いつかなくて、すごくもどかしい思いをしながら読んだ。
    長編の推理小説は久しぶりだったから、余計に楽しかったのかもしれない。
    事件の真相はすごく悲しくてやるせないものだったけれど…。

    有栖川作品には、いつも現実世界のいろんな情報が散りばめられているから、アリスたちが本当に存在しているように思えるし、読み終わったあとにすごく物知りになった気持ちにもなる。
    今回は中之島について詳しく書かれていたから、実際に行って歩いてみたくなった。

    あと、いろいろな作品で見かけるたびにいつも少しもやっとする広島弁が、まったく違和感なく書かれていたのも嬉しかった。

    このシリーズは読むたびに、やっぱり好きだなぁ、と思わせてくれる。
    近いうちにまた作家アリスを読みたい。
    そろそろ新作も出ないかなぁと期待している。


    2022.1.3 読了(再読)

  • 中之島の背景描写がくどく、その割に事件の舞台(銀星ホテルや関係者)の魅力が感じられずダラダラっと読んでしまいました。年表を頭に入れるような丁寧な読み方をしていないため、梨田と鷹史の関係もあからさまに思え、なかなかたどり着かないのもモヤモヤ。被害者のドラマよりもあっと驚く真相に期待したいシリーズなので、今作はやや残念でした。

  • 作家・学生ともにアリスシリーズは全部読んでるし、長く頑張ってほしいと思ってる作家なんだけど、会話の不自然さがずっとずっと気になってる。この話に限ったことではなく、特に登場人物が過去の出来事を話すせりふがものすごく説明調で、気が削がれるのでいっそ地の文で書いてくれないかな。文章力がないとはまったく思わないのでもっとこなれてほしい。あと、土地の描写が必要以上に長いのも。ただこれは作者の趣味っぽくて微笑ましいし読み飛ばしてもまったく問題ないのでいいんだけども。内容は、良くも悪くも不変のいつもどおりのミステリ。

  • 大御所作家に頼まれたのは、彼女が贔屓にしているホテルで五年間投宿していた男が死んだ件の再調査だった。警察は自殺と断定しているが、あまりに納得がいかない。そんなときに火村の噂を聞いた彼女はアリスへの懇願に出たのだった。
    はじめは乗り気ではなかったアリスは五年間もホテルに投宿し続けた男の人生に興味を覚え、ホテル側の協力も得られるということで、試験のためにすぐには出てこれない火村に代わって調査を開始する。いったい何故男はこのホテルに五年間も止まり続けたのか。男は何故、誰に殺されたのか。
    男の調査を進めるうちにアリスは彼の秘められた過去を掘り起こしていく。明かされていくそこから、彼の胸に射した死ぬ間際の光に胸が痛んだ。

    火村先生の登場が遅れるなか、アリスの懸命で地道な調査が大部分を割く、珍しい作品。表紙のミステリアスな男のイラスト?も目を引く。

  •  有栖川さんの作品に限らず、久々に長編を読みました。
     1冊に1つの話が収録されているという点で長編というのはあったけど、児童書だったんで、そんなに長い文章を読んだという感じだったから。

     まぁそれはいいとして。
     この作品は、そもそもが亡くなった人が自殺なのか他殺なのか、それ自体がはっきりしていなくて、そこを突き止めるというストーリー。
     火村さんが謎解きに係わって来るのもだいぶ後半で、殆ど有栖が1人で動いてます。

     明らかに殺人と分かる事件が起きて、犯人が誰なのかとか、どうやって殺したのかとか、それを探るお話もいいけど、こういうスタイルのお話もいいな。

     それにしても、こんなホテル泊まりたいなぁ。
     ホテル生活、大好き。

  • 火村シリーズ最長編。今回は殺人が起きてからの捜査ではなく、ホテルで自殺したと思われる男性の死の真相を追っていく形で、物語が進んでいく。いつもは鼻につく、アリスの思い込みの激しい推理もほとんどなく、人間の絆の大切さなども盛り込まれていて、読み応えがあった。久しぶりに本格的なミステリーを読んだ気がする。

  • 火村シリーズの最新作。
    ストーリーに関しては何を書いてもネタバレになりそうなので以下はどうでもいい話w
    土地勘がある場所が舞台だと、ストーリー以外にも色々と面白い。舞台となった『銀星ホテル』のある場所には、実際に三井ガーデンホテル大阪プレミアが営業している。田蓑橋を渡って下流に向かうとほたるまち。ここ数年、冬場にアヒルちゃんが浮かぶのがここだw 今年(2015年)の水都大阪フェスでアヒルちゃんが浮かんでいたバラ園は上流側。
    今年もほたるまちにアヒルちゃんが来るなら、作中のホテルとはまるで違うだろうが、三井ガーデンに泊まるとちょっと登場人物になった気分になれる……かも?(しかしホテル阪神の温泉も捨て難い。温泉の営業時間が短いのだけが難点。飲んで帰ったら確実に閉まる……)。

  • 何を言っても、無意識に重要な情報に触れてネタバレを起こしてしまいそうだから、詳細は自制。それだけ、うわべはさりげなく在りながらも精緻にいろいろな想いを織り交ぜて組み立てられた物語。

    振り返ればあっという間の出来事のようでもあり、見えないほど細い、色とりどりの絹糸が何本も何本も縒り合わされて太い組紐になるのをずっと目の前で眺めていたようでもあり…

    本の始まりから終わりまでの経過時間やメイン舞台はきゅっと狭くごく限られているけれど、物語時間の地層は果てしなく深い。人と人とのつながりも。

    もう1度読み始めてしまった。ずっとこの世界に浸っていたくなる。
    探偵火村と助手アリスのいつもながらの軽妙洒脱な会話も、今回さらにパワーアップしていて楽しい。

  • 作家アリスシリーズの長編。
    珍しく(?)人があまり死なない作品で、一人の男の謎を徹底的に暴いていくのがまるで自伝的で長かったけど楽しめた。中之島の歴史や淀殿の小話なども面白い。よっ有栖川刑事!と拍手を送りたくなるほどアリスが大活躍でファンとしては嬉しいの極み。
    と同時に、警察は普段からこうして足を使って地道に捜査してるんだなと思うと大変な仕事だなとしみじみ。
    正直、犯人(とても意外で驚いた)も被害者も同情しきれない部分がある。しかし贖罪を続けてきた梨田稔が孫を抱くという幸せを叶える前に命を落としたことは残念でならない。
    ラストでのオーナー夫妻の幸せそうな姿が何よりの救いだ。
    影浦浪子のキャラクターがとても素敵だったので、また出てきてくれたら良いな。
    アリスに対して「あなた、人嫌いね?」とズバッと物申したり「私は<鍵の掛かった男>をもう一人知っていますよ」と問いかけたり、大御所の人を見る目は凄いと思う。
    酒が入ったアリスはいつもは聞にくい火村先生の過去に口を挟んでるんだなと少し驚く。酒が入らないと、軽口まじりでないと触れられない部分なのはとてもわかる。その鍵はきっとアリスが持っていると思いたい。
    大路浩実さんの装丁がいつものことながら本当に素敵! 男の後ろにひっそりとこちらを注視する黒猫の意味が最後になってわかるのも良い。

  • 大阪にある小さなホテルで死んだ男。ホテルに5年ほど住んており、ホテルスタッフや常連客には有名だった。男の死は、警察によって自殺として断定されたが、常連客である大物小説家に自殺か他殺か調べてほしいと有栖は依頼された。しかし、探偵役の火村は大学の試験で不在。ワトソン役の有栖が調査に乗り出す。


    有栖川有栖と波長が合わないのか、読むのにすごく苦労した。でも、とりあえず死んだ男が自殺なのか他殺なのか気になって仕方なくてなんとか読んだかんじ。
    でも、読んでる間に『もしかして、この人とこの人って…』とか『この人…』って思っていたらほぼ当たってて、えーってなった。


    短編とか読んだことがあって、今回みたいに特に気にならずに読めたはずだった。だけど、今回はダメだったなぁ。たまたま今回の物語が合わなかっただけ?



    2017.8.2 読了

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著者プロフィール

1959年大阪生まれ。同志社大学法学部卒業。89年「月光ゲーム」でデビュー。「マレー鉄道の謎」で日本推理作家協会賞を受賞。「本格ミステリ作家クラブ」初代会長。著書に「暗い宿」「ジュリエットの悲鳴」「朱色の研究」「絶叫城殺人事件」など多数。

「2023年 『濱地健三郎の幽たる事件簿』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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