人魚の眠る家

著者 :
  • 幻冬舎
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  • Amazon.co.jp ・本 (392ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784344028500

感想・レビュー・書評

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  • 【天空の蜂】や【虚ろな十字架】の所謂、明確な答えが出せない系の問題を取り扱った作品でした。

    その問題というのは【脳死】です。

    脳死とは何なのかが、この小説を読むと理解できます。

    それと子供の臓器提供の実態についても!


    私にも今度3歳になる子供がいます。
    作品に出てくる瑞穂ちゃんと、重ねると、とても辛いです。

    子供がある日、事故にあい脳死【推定】だろうと言われる。
    臓器提供すべきか?それとも脳死の判定を受けずに、そのまま生かすべきか?

    自分の身体であれば『ハイどうぞ!』でいいのですが、愛おしい我が子であるからこそ【身体の一部でも生きていて欲しい】だったり【奇跡が起きる可能性を考えたり】【動いている心臓を止める事への抵抗】【どんな状態でも一分一秒でも長く生きていてほいし】て考えてしまいます。
    作中で誰かが言ってましたが、その時にならないと判断できないだろうなと本当に思います。

    明確な答えが出た訳ではないですが一定程度のスッキリとした読了感のある作品です!

    因みに、東野圭吾ファンの皆様には第4章の【本を読みにくる人】がオススメです!

  • 考えさせられる場面の多い小説でした。
    どの選択が誰のためになって誰のためにならないのかとか、どう思えば良いのかすら分からなくなる時がありました。
    切なさは残りますが、丸く収まり納得のいく結末になって良かったです。

  • とても面白くスラスラ読めた。
    そしていろいろと考えさせられるお話しでした。私が母親だったらって思いながら読んでたけどすぐに答えなんて出ないよなぁ〜

    瑞穂ちゃんと宗吾くんはここで繋がるんですね。いい終わり方でした。

  • 大事な部分が映画ではカットされていてガッカリしました。映画を観て「面白くないじゃん」と思った方に、是非読んでいただきたい。

  • 脳死の概念について深く考えさせられた。
    薫子はやりすぎだと思ったが、自分も実際にその立場になったらうまく割り切れるか、どう行動するのだろうかと考えると複雑だった。
    進藤先生の誠実さが結構好きだった。

  • 母親が本作の映画版(篠原涼子さんが主演されていますね)を観たらしく勧めてきたので、何となく原作の方が自分は気になり読んでみることに。

    ミステリー小説には少し苦手意識が有り、恥ずかしながら東野圭吾の小説を読むのも本作が初めてだったのですが、読み始めると時間を忘れてあっという間に読み終わっていました。

    意識障害、脳死、植物状態…
    非常に重いテーマで、且つ自分とは遠い世界の話。終始、母親の薫子やその周囲の人々の気持ちや苦労を考えると胸が苦しかったです。
    臓器提供の意思を表明するまで脳死判定が行われない、と言うことも本書で初めて知りました。一体誰の何のための法律なのか、この法律によって誰が守られているのか。考えさせられました。

    本書を読みながら、自分の親とも脳死や臓器提供について意見交換しました。作中の登場人物の様に、そんなこと分からないとひと蹴りされるかと思いきや、意外と真剣に話し合うことができて良かったです。いきなり重いテーマを夕食中にぶっ込んだにも関わらず、です(笑)

    普段中々意識すら出来てないことに問題意識を持つことができると言う点でも、読んで絶対に損はしない名作だと思います。

  • 脳死についてとても考えさせられる小説でした。 自分は今大学生で親の気持ちはわかりません。ただ、もし自分が親になり自分の子供が脳死状態になってしまったら、もし、心臓移植が必要になってしまうということを考えると安易な問題ではなく考える必要があると感じさせてくれる本でした。

  • 謎解き的なお話ではない、東野圭吾さんの小説。
    これまで読んだ東野作品とはぜんぜん違うし、エンタメ的なお話でもない。
    でも、しっかりと読ませてくれるところは流石。

  • 脳死、こどもの臓器提供等考えたこともないような内容。
    脳死判定をして、臓器提供をした方が良いとも思えるが、実際に割り切れるものでもない。
    機械で延命は自分自身なら嫌だが、自分のこどもだったら…?どうするのだろう?
    本人が納得しないと決着がつけられない問題だと思う。

  • 脳死や、臓器提供・移植について、とても考えさせられました。
    もし我が子が同じ状況になったら…と考えてみたけど、想像もつかない…。
    きっと、どの道を選んでも正解なんてないのかな…って…。
    とても心に残る1冊です。

  • そうきたか!
    薫子の頭の良さにぞっとする一面あり。最後に救いもあり。
    色々な考えがあって矛盾してたり相容れない立場の意見なのにもかかわらずそれぞれの言葉に共感納得させられる。
    本当、「人の生き方は論理的でなくてもいい」と思う。
    何が正しいとか考えるのはナンセンスで人それぞれ個別の正解があって系統立てて説明できなくても単に気持ち悪いとか感情で判断してもいい、今の世の中は何かひとつの答を求めてそれから外れた考えの人を排除する方向に進んでいるような気がしてならない。


    とりあえず意思表示カードを書こう。

  • 娘の小学校受験が終わったら離婚する。 そう約束した仮面夫婦の和昌と薫子。
    彼等に悲報が届いたのは、面接試験の予行演習の直前。
    娘の瑞穂がプールで溺れた。
    病院に駆けつけた二人を待っていたのは残酷な現実。 そして医師からは、思いもよらない選択を迫られる。

    脳死や臓器提供などをテーマとして扱った作品。だけど医療的な硬質さだけではなくて、人の愛情など情緒に訴えかけるものもある。
    人はどのような状態に陥ったとき、死んだと言えるのか。心臓が止まったときなのか、それとも脳が機能を停止させたときなのか。
    考えれば考えるほど迷ってしまうようなことがテーマで、答えをはっきり出すことは難しい。
    自分には無関係の誰かの話ならば客観的に答えを出せるかも知れないけれど、自分の身近な家族である場合は、尚のこと難しい。

    幼い娘が水の事故によって脳死状態になってしまった1組の夫婦。医師から臓器提供について訊ねられ1度は答えを出したものの、眠っている娘の手が微かに動いた気がしたことからその先の道を変えることになる。
    とくに母の薫子は必死に娘との生活を守ろうとする。介護についてを学習して覚え、実母にも協力を仰ぐ。
    元々不仲になっていた夫の和昌とも離婚するのをとりやめる。
    そして機械の力を借りて娘を“生”に近いところまで持って行こうとする姿は奇異にも写るけれど、子どもを持つ親であればきっと、みんなが薫子のような感情を持つのだろうと思う。
    深い愛情は狂気にも見える。だけどその立場になってみないと実感できないこともたくさんあるのだと思う。

    現実でもしばしば、病気によって臓器提供を待つ幼い子どものことが話題になるけれど、高額のお金をかけてまで海外に行くことを希望したり、その支援者たちが募金をつのる理由がこの小説を読んでよく分かった。
    国内で実現するのなら、みんなそうしたいのは当たり前で、それが簡単には出来ないから、海外にその希望を繋ぐのだということ。

    自分の家族が「脳死のような」状態になったら、果たして自分はどうするだろうと考えた。自分自身の身体なら臓器提供をして死ぬ道を選ぶだろうけど、それが愛する人のことになると簡単には決断できない。
    僅かでも希望があるのならそれに賭けたいと願うのは自然なことだ。それが臓器提供を待つ人の命を縮めることになるのだと責められても、すぐに頷くことはできないと思う。

    どのようにして物語は決着するのだろうと思いながら読んだけれど、現実と幻想が入り混じっていて、切ないながらも良い終わり方だと感じた。
    プロローグとエピローグが綺麗に繋がっているところも良かった。

  • 正直に言えば、今まで読んだ作品のように面白いものではありませんでした
    しかし、作者がこのテーマを選んだことはよく理解できます

    現在、日本における死の定義と、移植医療における判定基準のうむ矛盾、それによって生み出される脳死を受け入れる親の苦しみと、国内で移植を受けられない親の苦しみ

    個人的には脳死は人の死として受け入れられるべきであろうと思います、しかし日本の法律では未だに決着をつけられないでいるというのです

    脳科学での解明が進めば、今よりはっきりとした線引きができるようになるのでしょうが、脳死に対する認識の国民的な議論が随時行われなければならないことを作者は主張したいのではないでしょうか

    心臓死よりむしろ脳死の方が人にとっては重要な死といえるのではないかとも思えます
    極端な例では、機械の身体で人の脳もつ個体は生きた人なのか、逆に人の身体をAIによって操る個体は生きた人と言えるのかと問われれば、前者は人であるが後者は違うように思えます

    医学が進めば脳の機能の一部を器械で補完することも可能になるかもしれません
    そうすればますます脳死の判断基準、その境界線は難しいものとなっていくようにも思います

    などと、いろんな事を考えさせてくれる作品でした

  • みんなが善人でお金持ちで 全てが都合よく..娘の死を受け入れる理由はあまりにも陳腐で使い古されてて びっくりした。一体 この本で何を伝えたかったのだろう。母としての狂気?家族の絆?それなら物足りなさ過ぎるしこれで脳死、延命処置、臓器移植についての問題提起をしようというのなら それも中途半端。東野さんの本はあらすじなどで面白そうと思って読むと内容が薄く ああ これ誰か他の人が書いてみて欲しいなぁと思わされる事が多くてせつない。なんだか本当に読後 残念な気分になってしまった。

  • 久々の東野作品。
    やってくれるなぁ。
    正直言うと、あまり自ら進んで読みたいと思う作家さんではないのですが。

    脳死、臓器提供に纏わる話。

    もし自分の大切な人が限りなく脳死に近い状態となったら、どうするか。
    主人なら、娘なら、と悶々と考え込んでしまいました。
    考えたってわからないよなー。
    答えなんて出せないと思う。

    保険証の裏にも臓器提供をするか否かの選択をする欄がありますね。
    私は悩みに悩んで、まだ選べていないんです。
    いつも手が止まってしまう。

    だけど、家族を苦しめないためにも選ばなければな。

    『この世には狂ってでも守らなければいけないもよがある。子供のために狂えるのは母親だけ。』

    この言葉にグサっとやられました。

  • 人は呼吸が出来なくなれば簡単に死んでしまうんたなと怖さも感じた。親の母親の強い愛情も感じることが出来る作品で引き込まれました。

  • 人の死ってなんだろうって考えた。自分は脳が死んだらそれは死だと思う。

  • 脳死についての小説だが、それだけではなく「救い」を見出す話でもあるのかと考えた。
    脳死状態になった娘の意識を何とか回復させようとする夫婦の努力と、その顛末とは。
    彼らが「道」を見出す事に心を揺さぶられたし、過程がテンポ良く進んでおり目が離せなかった。

  • 脳死や臓器提供に対して深く考えさせられるお話であった。彼らの判断が正しいものだったのか、はたまた、間違っていたのかは正直分からない、それは当事者になってみないと考えることはできないのだと思う。しかし、日本の脳死判定を行う基準に対しては見直すべきところがあるのではないかと思った。

  • もう泣きまくりました。私の中で東野圭吾さんの作品ランキングつけるならベスト3に入るくらい好きです。

  •  まず、僕はこの作品をミステリーだと思って読み始めてしまった。その為、読了後の印象が全く違った形になってしまった。東野圭吾の様に多彩な作家については今作はどんなシリーズかわかる様になればと思う。

     非常に残酷な作品であり、冒頭から衝撃的なストーリー構成である。もし自身の大切な人が同様になってしまったら、どれだけ人生が変わるのか。
     大切なものを失って崩れ去るものと諦めきれないもの。特に今作では、希望の筈の医療に一種の恐怖感も芽生え、とても心を揺さぶられる。
     最後、ようやく解放され止まっていた時が動き出していく様な描写は、本格ミステリーから進化し続けてきた東野圭吾だからこそ描かける表現であり、人物の心情をこれ程明確に記載されているのも今作の魅力だ。

     小説としては完成度も高く、とても好きな作品だ。

  • 久しぶりに現代小説読んだけどめちゃくちゃ読みやすかった。さすが有名作家。
    哲学と法の話、魂と生死の話。
    実体と魂を伴って存在して、両方が機能停止になれば最後まで人間の扱いをされるが、魂だけが欠けると肉体があっても法で死体にされるらしい。
    魂の形はなさそうだけど、あるとしたら実体形は心臓なのか脳なのか。魂が意志なら、脳には臓器の役割と魂の役割が両方あるのか?

    あとこれは子供だから愛でる対象に出来たのだと思う。介護という言葉が何度か出てきたが、自分のまわりには身体障害者がいないので高齢者を指すイメージが強い。自分が親であってもここまで手厚く介護出来ない。親の立場で我が子なら愛らしさのレベルが違うのかも。子供はかわいいかもしれないが、別に自分の親をかわいいとは思わないから。

  • 何をもって「人の死」を認めるか、家族の気持ちはどうなるのか、答えが出せないなと悩みながら読み進めた。頭では回復不能だと分かっていても、目の前に息をしている人を見たら、死の決断を下せるだろうか?私は、"瑞穂は生きている"と思いたかった。なかなか割り切ることはできないのだった。
    そんな思いを否定しないラストだったので内心ホッとした。
    かつ、臓器移植を実行し、未来を生きる人を見捨てない結末になっているのも綺麗にまとまっていてよかった。
    どんな立場の人の気持ちも置き去りにせず、しっかりと考える時間をくれる物語であったと思う。

  • 母親は子供のためなら狂う!
    私も狂うだろうなぁ。

  • 今回も興味深いテーマだった。
    東野さんってミステリーってイメージが強いけど、こーゆー社会的な興味深いテーマを扱った作品も多数あるよなー!さすがやー!


    ストーリーに沿って薫子のやってることに対する自分の意見が変わって行った。
    というより、物語に夢中になって自分がどう思う事ってのはあんまり考えてなかった。

    自分の考え的には、結局は親が決める事でそれを尊重したいなーと。
    やけど生人がかわいそうやと思った。
    まずは普通に生きてる生人を優先してやれよと。


    あとは、なんとなく新章さんが好き!
    クールやけど熱い!


  • 前半は重苦いいだけで途中挫折しかけたが、ちんぷでもご都合主義でもない形で昇華させた。そういう意味ではラストの男の子はいらないかな。あとボランティアのところはつながりがいまいち。

  • 2児の母として…、作品中の母親の気持ちが痛いほど理解できる反面、臓器移植法について、曖昧すぎる基準に気づかされました。
    当事者にならなければ真剣に考えることすらない、難しい問題だなと。

  • 娘を持つ母としては考えさせられる一冊でした。
    主人公の母の感情、倫理、迷いが全て分かる気がしました。

  • これはあかん。切ない。
    自分も小さい子がいるので色々考えさせられる作品だった。

  • 日本における脳死の基準など知らないことばかりだった。
    この話の主人公である母親は異常だとかやってることは母親の自己満足だと受け取れる表現があったけれど、どうもぴんとこなかった。
    恐らくきっと自分の子供が瑞穂と同じ立場に置かれたら私はきっとこの母親と同じことをするかしたいと思うと思う。
    子供のために狂うことができるのは母親だけ。本当にその通り。

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著者プロフィール

1958年、大阪府生まれ。大阪府立大学電気工学科卒業後、生産技術エンジニアとして会社勤めの傍ら、ミステリーを執筆。1985年『放課後』(講談社文庫)で第31回江戸川乱歩賞を受賞、専業作家に。1999年『秘密』(文春文庫)で第52回日本推理作家協会賞、2006年『容疑者χの献身』(文春文庫)で第134回直木賞、第6回本格ミステリ大賞、2012年『ナミヤ雑貨店の奇蹟』(角川書店)で第7回中央公論文芸賞、2013年『夢幻花』(PHP研究所)で第26回柴田錬三郎賞、2014年『祈りの幕が下りる時』で第48回吉川英治文学賞を受賞。

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