天下一の軽口男

著者 :
  • 幻冬舎
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本棚登録 : 95
レビュー : 20
  • Amazon.co.jp ・本 (401ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784344029262

作品紹介・あらすじ

時は江戸時代中期。大坂の生國魂神社の境内には、芝居小屋や見世物小屋が軒を連ね、多種多様な芸能が行われていた。笑話の道を志した米沢彦八は、役者の身振りや声色を真似る「仕方物真似」、滑稽話の「軽口噺」などが評判となり、天下一の笑話の名人と呼ばれ、笑いを大衆のものとした。彦八は何故、笑いを志し、極めようとしたのか?そこには幼き頃から心に秘めた、ある少女への思いがあった-。

感想・レビュー・書評

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  • 上方落語の祖、米沢彦八の物語。いやあ面白かった!たくさん泣いた。なんの前評判も知らず、たまたまタイトルに惹かれて手に取ったのだけど、期待もなかったぶん大当たりを引き当てた感がある。素晴らしい。ええ話。実在の人物の史実にifを加えての物語だし、ああこうやって、ひとを笑わせるという芸が“生業”“芸能文化”として確立していったんだなあと、感銘を受けた。ひとを笑わせるという能力に、最大の敬意を払っているので。彦八と里乃の関係、ものすごく好きだなあ。鹿野武左衛門と息子梅若の関係も、はじめて武左衛門が登場するシーンから、あああそこからすべてつながっていたんだ、という運命のラインがあるし、弟子の彦蔵もいいなあ。笑いのプロたちの日常会話の粋なかんじもすごく読みごこちがよかった。これは万人に推したい。
    そしてこれって、ちょっとまえに駿河太郎さんが落語家を演じることになって鶴瓶さんには報告済、みたいなネットニュースになってた、あの舞台の原作なんだね。彦八を駿河さんが演じるのならさぞ、見ごたえがありそうだ。大阪で2月かあ。。。機会と余裕に許されるなら観に行きたいけど、いまの立場では無理かなー。きっと舞台も面白そうだけどこの1冊はとにかく大満足!何年たっても忘れない、お気に入りの1冊に出会えた、こういうときの嬉しさはうまく言葉で表現できない。木下さん初読だったのだけれど、ファンになった!

  • あまり期待せずに読み始めたが、これがなかなか面白く、一気に読破。
    ところどころに軽妙な笑いがあり、読者を飽きさせない。
    人間関係もしっかり描写されている。
    出典を見て、実在の人物であったと知り、驚いた。

  • 3作目

  • 今で言う芸人さん、噺家さんのご先祖様のような米沢彦八の物語。読む前は、ネタの笑い話がつまらなかったら、読むのが辛いなと思ってたけど、稀有に終わった。もちろん現代の感覚からすれば、他愛もない素直な笑いなんだけど、それをわざとらしくなく、つまらないと思わせることもなく見せてくれた。

  • 「あー、誰かを笑かしたいなぁ」
    幼い頃から人を笑わせることばかり考えていた、上方落語の始祖とされ大衆に笑いを届けた米沢彦八の一代記。

    お客を笑わせるのって、ほんと難しい。
    江戸、大坂と場所が変わると笑いのツボも全く違うし、才能がある故に出る杭も打たれる。
    それでも身分等構わず皆を笑せたる。
    自分の芸を見てお客が笑う、そのことが何より嬉しい。
    その心意気がカッコいい!

    今でも地元大阪で年に一度「彦八まつり」があり未だに慕われて続けている彦八。
    草葉の陰で自分のゆるキャラを見て「なんやこれ!」と大笑いしながらツッコミを入れてるといいな。

  • 面白かった
    落語家の先祖と言われる
    米沢彦八の話

  • めっちゃ面白い
    2016年、1番面白かった
    テンポよく読めるので
    ページ少なく感じました

  • 上方落語の礎を築いた米沢彦八の物語。
    序盤の田島藤五郎の視点は冗長気味だけど、彦八の時代に入って俄然おもしろくなった。
    若かりし鹿野武左衛門のダメダメぶりが人間臭くて好き! この人の人生も彦八に負けず劣らず波瀾万丈…。息子が芸人になるのを諦めさせるため、自ら舞台に上がる姿がかっこよかったなぁ。
    編み出した芸を次の世代に伝え、大衆の心をつかみ続けること。それがいかに難しいか、ひしひしと伝わってくる作品です。

  • 表紙の絵は客の足を停めさせるための俄(物真似)で大名の振り~太閤さんにも喜ばれたお伽衆の初代・安楽庵策伝は金山のある飛騨高山藩の藩主の弟であったが,誰に呼ばれても,そのお伽衆と成らず,醒睡笑を著したが,同じ藩から出てきた二代目は腕も立ち物覚えも抜群であるが,咄は巧くない。金山を巡る争いで幕府の介入を防いでいたが,幼い藩主が幕府に丸め込まれそうで,出奔し,大坂の辻に立つ。それを見ていたのが米沢屋という漬物屋の次男である彦八だった。幼馴染みの里乃と子供たちを集めて小屋遊びをし,小石や貝殻を銭に見立てていたが,里乃の家業の米問屋が傾いて,夜逃げした。彦八がいずれは天下一のお伽衆になって里乃を笑わせると誓うと,その時は『真筆・醒睡笑』を呉れてやると,二代目は言い残して,騒動が持ち上がっている飛騨高山に帰っていった。彦八は,難波村の塗り師の跡取りが家出をして江戸で辻咄を生業としていると聞いて,猫の蚤取りの為の狼の毛皮を持って,江戸に下る。江戸では,上手な辻咄は,大名のお伽衆に抱えられるより,大商人の座敷に呼んで貰うことを望んで,辻から消えていく。塗り師・志賀屋の左衛門の咄は巧みなのに売れない。梅若という子を残して女房は同業の伽羅小左衛門の許に行ってしまった。もともと役者を目指していたが,馬の足役をからかわれて逃げ出したが,浮世絵師の石川流宣が,鹿野武左衛門として売り出しに必死だ。弟子になりたい彦八は,絵のモデルとしてポーズをとる姿に目をつけ,咄に身振り手振りを付けることを提案する。見事に受けて咄家としては西の大関に輝き,彦八も弟子として認められ,辻に立つようになるが,彦八の才能を見た石川は伽羅一家の若手に,彦八の作った咄を漏らし,聴衆には彦八が人の咄を盗んだと思わせて,大坂に追っ払われた。家に帰ったものの漬物屋の仕事も満足にこなせず,兄の供として出掛けた京の料理屋で,評判の露の五郎兵衛の咄を聞いて,やる気を奮い立たせた。生國魂神社で様々な小屋を掛けている元締めの竜兵衛に誘われて舞台に立つが,足を停めてくれる客はまばらだ。彦八のじっくり聞かせる咄の好敵手は,次々に笑いを振りまいている。客の足を停めるための作戦として思いついたのが,遊女屋で見た大名の物真似だった。大名俄は評判となり,咄の面白さにも客は気が付いたが,真似される大名の方は,屈強な武士を差し向けて已めさせようとする。彦八が切り捨てられる寸前を救ったのは,二代目の安楽庵策伝であり,贅を尽くした屋敷に住む,その主である藩主の叔父が砂金の山を築いて喋らせようとする,彦八は天下一の軽口男になると言って,取り合わない。実は何も書かれていない『真筆・醒睡笑』を渡す必要もなかった。鹿野武左衛門が書いた本のせいで大島流しにあったのを聞いて,気が気でない彦八は弟子を採るどころの騒ぎでないが,京から来た露の五郎兵衛は江戸から上ってきた若い男を弟子として押し付けた。炊事も片付けもやってくれるので良いのだが,咄は巧くなく,恩赦で江戸へ戻った鹿野武左衛門の悪口を言った咄家仲間と大喧嘩をして,武左衛門の息子の梅若であると気が付いた。謹慎中の塗り師の仕事が見事だったので,その道に進ませるため,武左衛門を江戸から呼んで引導を渡させた。弟子がいなくなって不便を感じた彦八の許に,豆腐屋をしくじった男が付いてから,一門が隆盛を極めた。一番弟子に名を譲って引退することを決意した彦八の許に現れたのは,名古屋の米問屋の嫁となり孫にも恵まれた里乃だった。その夫は,名古屋に常設の小屋を建てるので,そのこけら落としに名古屋に来いと誘うが,彦八の名が必要だと言う。悩んだ末に,弟子に名を譲るのを急遽取り消した彦八は単独で名古屋を目指すが,途中で病に倒れ,舞台に上がることはできなかったが,里乃の孫娘を笑わせることはできた~木下さんは1974年大阪生まれで,直木賞候補作家。近大建築卒でハウスメーカーに勤めた。彼の発想は面白いのだが,その面白さが褪めてしまうような下手の表現が時々出てくるのが残念。江戸と東京の違い。江戸と東京の違い。そして,そのどちらでもない話芸のあり方を名古屋に求めた。座敷芸か,辻芸か,小屋芸か?

  • 上方落語の始祖・米沢彦八の一代記。

    道端で自作の笑い噺を披露するという辻咄のスタイルが、彦八らの手によって徐々に現在の上方落語に近いスタイルになっていく様が興味深く面白かった。面白い噺を作ること自体、容易なことではないが、噺家という商売そのものを一から築き上げていく困難さを垣間見ることが出来たように思う。
    いかにも芸人さんらしい波乱万丈な彦八の生涯であったけれど、最後くらいはもうちょっとハッピーになってほしかったかも。まぁ、これもぼんくら男の彦八らしい彦八の終わり方だったかもしれないが。

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著者プロフィール

1974年奈良県生まれ。2012年『宇喜多の捨て嫁』でオール讀物新人賞を受賞しデビュー。2015年、同作で第152回直木賞候補となり、歴史時代作家クラブ賞、舟橋聖一文学賞、高校生直木賞を受賞。『敵の名は、宮本武蔵』で第157回直木賞候補。他著に『人魚ノ肉』『天下一の軽口男』『秀吉の活』など。

「2018年 『兵』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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