総理

著者 :
  • 幻冬舎
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  • Amazon.co.jp ・本 (237ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784344029606

作品紹介・あらすじ

そのとき安倍は、麻生は、菅は-。綿密な取材で生々しく再現されるそれぞれの決断。迫真のリアリティで描く、政権中枢の人間ドラマ。

感想・レビュー・書評

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  • 日本の総理である安倍晋三を 密着して取材していた記者だった著者が、
    安倍総理の 1度目の挫折と返り咲きの経緯を レポートする。
    インサイドストリーと言うべきか。
    安倍総理と麻生副総理の背負っている十字架。
    安倍晋三のおじいちゃんが 岸信介。
    麻生太郎のおじいちゃんが 吉田茂。
    吉田茂、岸信介は それぞれ 日本の総理の中でも
    重要な時期に 重要な決断をした総理大臣。
    やはり、背負っているものが違う。

    このレポートを読みながら 麻生太郎の立ち振る舞いが
    実に 清々しく、いうべきことをきちんといいながら、
    安倍総理をよく理解しようとしている。
    麻生太郎は『漢字が読めないヤツ』という評価しかなかった。
    消費税をめぐる財務省の画策をみながら、どうするかを
    麻生の意見を参考に判断する 安倍晋三。
    おもしろい駆け引き。

    1回めの挫折から、再度蘇る時の、安倍晋三の修復過程
    をつぶさにみている。
    とりわけ、東日本大震災における 
    『望美ちゃん』がすばらしく、
    『みんなバラバラになっちゃった。小学校が欲しい』
    というけなげさ。
    そこに 日本の未来をみたような気がした 安倍晋三。
    望美ちゃんの期待に応える。政治家は そうでなくちゃ。

    それにしても、日本を代表する政治家のもつ 
    『正直さ』みたいなものが
    じつにスケールが 小さく見えてしまうのはなぜだろうか。
    それに対して、著者が 実にこまめに 
    日本の未来を見つめようとする姿が
    一番 納得することが できたのは 不思議だ。
    いい仕事をしていると思った。

  • Amazonでは「安倍ヨイショ本」と評価が低いレビューがあるが、そこまで酷いものとは感じない。「アベ政治を許さない」のような感情的・生理的に受けない、脊髄反射的に批判したい人にはそう感じるのだろう。
    一方で確かに客観性は乏しく、ジャーナリストという立場での書き方がされていないのは気になる。むしろジャーナリストという立場の人間が政治家間の潤滑油のような役割を果たしていることに疑問を投げかけるべき内容だった。
    安倍総理や要職にある政治家のニュースでは見られない姿が垣間見えるが、政治家は成果で評価すべきで、人となりは別な切り口として区別すべき。

  • 政権や総理をどう評価するかは、詰まる所、その実務能力や政策が、私個人の利益に如何に繋がるかであり、世の中も同様であろう。そもそも個人の価値観だとて、矜持や哲学は語れど、それを包含した所の損得に由来する。そうした見方で言えば、私個人の政権への利害を論ずるに、他人にとってはあまり意味は無い。そうした公平な尺度で手に取ったのだが、この本は、明らかに安倍首相に好意的な視点である。朝日新聞と安倍晋三の関係を綴った所謂提灯本とも言われた小川榮太郎の約束の日を思い出した。

    記者と総理の距離感が近いゆえの話の面白み。ゆえの贔屓目。色んな見方ができるでしょう。

  • 一読して、よくここまで政権中枢の懐に食い込んだものだと驚嘆しました。
    本書は官邸の内幕を赤裸々に描いたノンフィクション。
    書いたのは、今年5月までTBSの報道マンだったジャーナリストの山口敬之さんです。
    9年前の安倍首相の辞任をスクープし、世間をあっと驚かせたのが山口さんでした。
    宜なるかな、本書を読めば、その理由はたちどころに分かります。
    安倍首相や麻生副総理ら政府首脳とサシで会える関係を築き、そればかりか麻生副総理の人事案を預かって安倍首相に渡したり、安倍首相の衆院解散演説のリハを前日に密室で聞いたりと、権力に限りなく肉薄して取材しています。
    もっとも、従来のジャーナリズムの常識では、「権力と近すぎる」と批判されかねませんし、実際、各方面から批判が寄せられているようです。
    たとえば、米国の報道機関に所属するジャーナリストが、バイデン副大統領の人事案を預かってオバマ大統領に渡したことが知られれば、窮地に立たされることが予想されます。
    しかし、山口さんは意に介しません。
    山口さんは「時に政局の重大局面で私自身が一定の役割を果たすことすらある。こうした政治記者の活動に対して『取材対象に近すぎる』と批判する声があることも知っている。しかし、本編で繰り返し言及したように、政治のど真ん中に突っ込まなければ、権力の中枢で何が起きているか見えないのも事実である」と述べます。
    実際、重要な局面で安倍首相ら政府首脳らが何を考え、どう行動したかが微に入り細に入り説明されています。
    たとえば米国のシリア空爆を巡って、日本政府が支持を表明するに至る過程の安倍首相らの動きは、リアルで臨場感に富んでおり大変にスリリングです。
    少なくとも、安倍首相は対米追従などではなく、独立国家として米国と伍していこうとしていることが分かります。
    恐らく、今まで一度も表に出たことのなかった政権中枢の動向を、余すところなく伝えており、私は一読の価値はあると感じました。
    それに私自身、いろいろと考えを改めたところがありました。
    たとえば、特定秘密保護法。
    国民の知る権利を制限したり、プライバシーを侵害したりする危険性が取りざたされています。
    たしかに問題点の多い法律ですが、本書を読むと、巷間言われているように政権が米国側の要請に応えたというよりは、むしろ米国に対して強気に出るために法制度を整えたことが分かります。
    ただ、ただ、です。
    私はやはり、ここまでジャーナリストが権力と「一体」となって行動することに抵抗感を覚えます。
    それは私の嫌いなイデオロギーなどとは全く関係なく、ジャーナリストの倫理としてどうしても超えてはならない一線があるのではないかと考えてしまうのです。
    山口さんは、「親しくなった政治家の提灯記事を書いたりするのであれば言語道断だし、そういう人物はもはやジャーナリストではない」と断じています。
    要するに、ジャーナリストは権力に限りなく肉薄しつつも、取り込まれないようにしなければいけないという戒めでしょう。
    ただ、本書の広告が新聞に大きく掲載されたのは、まさに参院選の投票日当日でした。
    好むと好まざるとに関わらず、権力は、あらゆるものを利用するのだと思います。

  • 現役の政治家本は初めて読んだんじゃないか?と思うけど、面白かったです。
    安倍総理付きの記者が書いた本なので、少し割り引いて読んだ方がいいだろうけど、これ読むと安倍さんへの評価が上がるんじゃないかと。
    でも、安倍さん頑張ってると思う(と読後には思えます)

  • 誰しもが何かしらの主観に縛られ、完全に客観的な意見など存在しない、ルポであろうがドキュメンタリーであろうが物語は必要であり、それは与党でも野党でも総理でも、まして本書の著者でも変わらない。そのことを差し引いても心動かされる一冊。政治の舞台の駆け引き、登場人物それぞれの人間性が生き生きと描かれているルポの名作ではないでしょうか?本書をいわいるアベ政治のPR本とこき下ろすのはあまりにもったいないとオモイマスよ僕は。

  • やはり、というか、他のメディアが伝えてこなかった(伝えられなかった?)安倍総理の考えやその周りの人々の関係、考えなどが垣間見れ、安倍内閣の見方が少しは軌道修正されたかな。
    これまでの安倍内閣の決断、決定してきた事にはよくやってくれた、と思うこと半分、何故?と疑問や不安がよぎる事もある。
    だからこそ尚更、野党にもっとまともに議論出来る人がいればと悔やまれる。

    この本は読みやすくて、一つの物語としてもハラハラドキドキ、あっという間に読み終わり楽しめた。これがノンヒィクションなのだから凄い!

  •  著者はTV局の記者だったとき、安倍晋三、麻生太郎、菅義偉、中川昭一など自民党の中枢の人たちに相談を持ちかけられるほど信用を得て、第一次安倍政権の辞任をスクープした経歴を持つ。そのころから傷心の野党時代、再立候補、オバマ米大統領との交渉までの安倍総理の内実を描いたノンフィクションである。
     自民党の誰よりも総理の考えや動向を知っているのである。このような人物が本来の新聞記者であり、それがまだ存在していることに安堵するものの、それなのになんでマスコミの報道が底の浅いスキャンダル誌のようになるのかが理解に苦しむところである。と思ったら、著者はすでにそれとは別の局の報道姿勢、報道方針に反発して辞めていた。
     長期政権になった安倍総理が何を考えているか、どのように考えているかを知るには本書しかないのではないか。ベストセラーも当然だし、ぜひ読むべき本である。

  • 裏側が見れて面白い。しかし、政界に記者が口出してよいのか?

  • TBSの政治記者として足掛け16年総理を追って来た山口氏の力作である。
    政治家との距離が「近すぎる」と批判を浴びながらも「現状の新安部勢力も反安部勢力も安部氏がどのように国家運営に向かい合い、何を悩み何を目標にしてきた殆ど知らず知ろうともしない。事実に基づかない論表は批判も称賛も説得力を持たない」と切って捨てる。

    確かにその通りかもしれない。
    そういった意味ではここに書かれている事に関しては説得力を持ち安部氏と麻生氏という人間性がリアリティを持って描かれている。

    一つ思ったのは企業でも国家でもトップに上り詰めるにつれ孤独になっていく。相談する人、気を許せる人が大事になってくる。だからこそ政局記者に過ぎないといったら失礼かもしれないがここまで総理の懐に飛び込めたのだろう。
    「信頼を置ける」「絶対裏切らない」こんな形であらゆる人事が決まっていくんだろうな。だからこそ人事というのは一見理不尽に見える。

    安部総理は確かに政局や立ち回りだけで総理になった人物とは違い、好まざると好むに関わらず「国家観」を有している。構造が多極化、複雑化するにつれ個々の問題に「Yes or No」ではなく「How」が問われる時代になるというのは鋭いと感じた。その安部総理が描いた絵に対し「国民が納得する絵」を描いたものだけが対抗馬となりうるのであり、今のところ誰も匹敵する人物がいないのが問題なのである。

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