サイレント・ブレス

著者 :
  • 幻冬舎
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  • Amazon.co.jp ・本 (325ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784344029996

感想・レビュー・書評

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  • 大学病院から訪問クリニックで終末期の患者を診ることになった倫子。
    5名の「最期」にはそれぞれの生き様が感じられて、人生の終え方って大事だなとつくづく考えさせられた。
    「死ぬ患者を最後まで愛し続ける医療」をしてくれる病院。理想的だけど、近くで思い当たるところがない!どこかにあるかな…

  • (患者が)生から死へ移った瞬間、

    「倫子は、ひと呼吸、待った。魂が抜け出るとされる刹那は、体にむやみに触れてはならないように感じるからだ。非科学的な思い込みだとわかってはいるのだが」(単行本71ページ)

    こんな感性を持つ医師は本当に素晴らしいと思う。

    南杏子さんの作品は、先に「いのちの停車場」を読んだが、テーマは共通。

    治療ができない患者に対して、医師として、人間として、どう向き合うか。

    本作のような「看取り」の経験は自分にはないものの、

    介護、通院、入院などの体験でさえ、介護スタッフ、看護師や医師は、こちらの立場でアドバイスしてくれているのか、そうでないのか、

    専門的知識を持たない自分だからこそ、よく伝わってくる相手の感情がある。

    どんなときも、「相手に対する敬意」を大切にしたい、と感じた。

  • ーサイレント・ブレスー
     静けさに満ちた日常の中で、穏やかな終末期を迎える事をイメージする言葉。

    新宿医大の総合診療科の医師・水戸倫子37歳。
    総診に入局して十年目のタイミングで大河内教授にいきなり異動を言い渡された。
    「むさし訪問クリニック」…これは左遷だ。いや、それ以下だ…。
    そこは在宅で「最期」を迎える患者専門のクリニックだった。
    倫子はそこで死を待つだけの患者と向き合う事で、いくつもの死と、
    そこに秘められた切な過ぎる〝謎〟を通して、人生の最後の日々を
    穏やかに送る手助けをする医療の大切さに気付く。
    そして、脳こうそくの後遺症でもう意志の疎通がはかれない父の最後について
    静かな決断を下す…。

    倫子は左遷されたと思い込んでる女医。
    そこで出会った患者や家族との触れ合いを描いた6篇の連作短編集。
    死を前にした時の医療に対する姿勢を深く考えさせられた。
    出来るだけ延命治療をしてもらうのか、それとも一切の延命治療を拒否するのか?
    そして、どこからが延命治療になるんだろう?
    家族としては、一日でも長く生きて欲しいって願っていたしけれども、
    果たして、それは患者の為になっているのか?
    苦痛を与えているだけではないのか…?患者の気持ちとは…?
    自己満足なんじゃないか…?
    元気な時に軽くじゃなくって深く深く家族で話し合うって大切だと思った。
    でも心が乱れ、冷静な判断が出来ない時にどこまで守れるのだろう。

    一人一人の生き方や生き様が違う様に死も違っていて、死生観も違う。
    しかし、人生の最後であるからこそ生きる事を楽しんで欲しい。
    いつか巡りくる死をどんなものにしたいか考えて欲しい。
    漠然と思う自分の命の最後…。
    もう助からないとわかったら、積極的な延命治療はして欲しくない。
    出来るだけ痛みや苦しみが無く、安らかに眠る様に死にたいなぁ。
    人によって異なると思うけど、多くの人がそう思っているのでは…。
    そんな事を考えさせられました。
    主人公の倫子を始め、大河内教授・コースケ・亀ちゃん…登場人物がとっても良かったです。
    続編が描かれると良いなあ♪
    とっても素晴らしい、考えさせられた本でした(*´∇`*)


  • とても優しく静かで丁寧な文章。
    とかく暗くなりがちな終末期医療。在宅看取りを医師側と患者側からの視点で描かれている。

    「医者には死ぬ患者に関心がない医者とそうでない医者がいる」

    「死は負けじゃない。安らかに看取れないことこそ(医者側)の敗北だからね」

    水戸倫子が医師として悩み、家族として考え、仲間に支えられている日々。

  • 医療は自分も家族もいずれ関わる。だからこそ、共感と関心が強い。

    この本は終末期医療の考え方をわかりやすく短編集として読むことができる小説。
    つまり死ぬ間際の人間はどのようにして過ごすことで本人が満足できるのか をひたすら色々な病気、色々な家族、色々な意見を見ることができます。

    人はいずれ死ぬ。
    私も、家族も、大切な人も。
    もし死ぬことがわかったら、どうしたいですか?
    私自身は大切な人と最期は過ごしたい。意識がない状況の延命措置はしてほしくない。

    家族や、大切な人が死ぬことがわかったら、出来る限り本人の意向を尊重してあげたい。病気と闘うなら支えたい。どうしようもなく、辛いだけの延命措置が嫌であれば、受け入れて側に居てあげたい。

    私は大切な人を亡くした経験がまだ無く、死が怖い。
    失うことが怖い。
    だからこそ、この本を読んで少しでも心の準備は出来た気がする。そして、年齢的に自分より早く死ぬ事になる家族と後悔なく過ごし、事前に家族の意向も確かめておきたいと思う。

    読み易く、リアリティ溢れる秀逸な小説でした。
    脱帽です。
    たまたま本屋で手に取れて幸せでした。有難う御座います。

  • 終末期医療専門病院に内科医として勤務している現役医師のデビュー作。
    6人それぞれの病状の患者さんの最期を看取る話なのだけど読後感はスッキリしていると感じました。
    年老いた親や自分の老後を考える事が現実味を帯び始めた今日この頃、いろんな本を読んで自分なりに考えてた事がこの本を読んでさらに強く心にあります。
    こんなお医者さんに最期をお願いしたいと思った。

    「サイレント・ブレス」とは
    静けさに満ちた日常の中で、穏やかな終末期を迎えることをイメージする言葉です。多くの方の死を見届けてきた私は、患者や家族に寄り添う医療とは何か、自分が受けたい医療とはどんなものかを考え続けてきました。人生の最終末を大切にするための医療は、ひとりひとりのサイレント・ブレスを守る医療だと思うのです。 著者


  • 誰にでも必ず訪れる最期の時について。

    読み始めの頃は自宅で最期を迎えた方達のエピソードが延々と続くのかと思っていたが、途中体は健康な筈なのに話すことが出来ない身元不明の少女の話や、末期の教授が周囲には内緒で色んな人に逢いに行く謎など、ミステリー的な要素もあり、すごい読みやすいけれど、読み応えあった。

    最後の章は、泣きながら読んだ。
    自宅に戻り点滴も止めた倫子のお父さんが亡くなる直前、下顎呼吸という喘ぐような息使いになるが、これは苦しい訳じゃないという事がわかりほっとした。

    死そのものはちっとも怖くなく、悲しいものですらなかった。苦しみから解き放たれた父に、「おめでとう」と言ってあげたいくらいだった。

    このフレーズが聞けて良かった。

  • 穏やかに死なせてあげたい。穏やかに死んでいきたい。

  • 在宅医療、終末期医療のことがわかりやすく、読みやすい短編でつづられている。

    『医者には死ぬ患者に関心がない医者とそうでない医者がいる』
    あたりまえだけど、医者にも担当分野の向き不向きがあって、倫子先生は在宅クリニックへ『左遷』なんかじゃなく、選ばれたんだな、と。
    人間誰しもいつかは死を迎える。
    病気を治す医者がえらい、大学病院にいる医者がいい医者ではなく、患者に寄り添える医者に最期をみてもらいたい。親や自分の終末期について、考えさせられた。

  • 在宅医療を通じて終末期医療の本質を描いている。どのような最期を望んでいるのかは人それぞれ、それを人に伝えることの大切さを本書を読んで感じた。身近な家族でも難しいことがある。

    逝く人、残される人、立場が違えば想いも異なることもあるのだろう。

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著者プロフィール

1961年徳島県生まれ。日本女子大学卒。出版社勤務を経て、東海大学医学部に学士編入。卒業後、慶応大学病院老年内科などで勤務したのち、スイスへ転居。スイス医療福祉互助会顧問医などを務める。帰国後、都内の高齢者向け病院に内科医として勤務するかたわら『サイレント・ブレス』で作家デビュー。『いのちの停車場』は吉永小百合主演で映画化され話題となった。他の著書に『ヴァイタル・サイン』『ディア・ペイシェント』などがある。


「2022年 『アルツ村』 で使われていた紹介文から引用しています。」

南杏子の作品

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