蜜蜂と遠雷

著者 :
  • 幻冬舎
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本棚登録 : 20422
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  • Amazon.co.jp ・本 (507ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784344030039

感想・レビュー・書評

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  • 評判通り、一気読みしてしまう面白さではあったけど、「漫画みたいな話だなあ」と思ってしまった。読みながら、脳内でアニメの絵で再生されてしまった。
     ピアノを持たず、養蜂家の父と放浪生活を送る天才ピアニストの青年、という漫画チックな設定を、どう納得させるのか?と思いつつ読んだが、とうとう納得できなかった。クラシック・ピアノは(バレエやヴァイオリンもそうだけど)、幼い時からちゃんと練習しないとものにならないわけで(天才とはそれが全く苦にならない人だと思う)、いくら旅先で借りて弾いても、毎日というわけにはいかないだろうし、素人の家で放置されたピアノは音がずれていることが多く、耳にいい環境とは言い難い。教師ともしょっちゅうあえたのではないのだから、やっぱりありえない設定なのだ。ジャズやポップス、作曲なら納得できるのだけど。
     もちろん恩田さんはそんなことは承知の上で、それでもこのテーマで書きたかったのだろう、とは思う。
     青柳いづみことか、ピアニストが書いた本を読むと、曲のどのあたりがテクニック的に難しいとか、アーティキュレーション、アナリーゼについて、素人でもわかるように書いてあって、そこが非常に面白いし、ローゼンの『ピアノ・ノート』なんかを読むと、天才と言われるピアニストでもすべての曲を楽々と弾けるわけではないということがわかるのだが、この本の登場人物たちは、技術的に苦労するということは一切ない天才ばかり。ほとんど星飛雄馬と花形満、左門豊作(は明石?)みたいな。(古いたとえですみません。)
    専門的な記述がない分、ピアノやクラシックに興味のない人にも面白いし、読みやすい。とはいえ、一曲丸丸を物語にしてしまうのはどうか、と思ったし、バッハの平均律1巻の1番のプレリュードなんて、ありとあらゆる弾き方が出尽くしているような気がするので、塵の演奏がどんなものなのか想像もつかない。亜夜は小柄な女性のように書いてあるが、そうすると手の大きさや指の長さに悩むのではないかとか、ベートーヴェンのような重たい曲を弾くのには苦労するんじゃないかとか、思ったけど。
     しかし、面白いのは事実。『羊と鋼の森』なんてのより、ピアノをずっと聞きたくなるところもいい。難しいテーマに挑戦し、勝利したことは間違いない。

  • 音楽には縁遠い生活をしていて、音楽の題名をみても、何一つ思い浮かべることができないけれど、面白かった!音を言葉で文章で表現するって凄い!実際音楽を聴いたり、コンサートに行ったりすると、私は寝ちゃうんだろうなぁ、と思うけれど(笑)

  • 大長編!ボリュームたっぷりでした

    本作では、一大国際コンクールにおいて、予選から優勝者が決まるまでが綴られています。

    まず、物語が始まる前からピアノコンクールの課題曲、主人公のそれぞれのプログラムがびっしり書かれていて、作り込みのすごさに驚き。

    そして、なんといっても、演奏の表現が素晴らしい。
    語彙力がすごいし、とっても美しかったです。美しい音色が聞こえました。
    クラシック音楽には疎いので、調べて演奏を聞きながら読みました。
    たくさんの美しい音楽に美しい表現!幸せでした〜〜!!

    誰が優勝するのかハラハラしながら楽しめたのも良かったです。

  • 音を文字で表現するのは本当に難しい。コンサートに行った後の感動を記録しておきたくて時々ライブレポとして書くことがあるが、聞いて感じたことを言い表すのにピッタリ当てはまる言葉が見つからない、なんてことは日常茶飯事だ。
    音楽の世界を、文字でこんなに豊かに表現していることに驚嘆した。知っている曲も知らない曲もあるけれど、コンサートホールに居るような臨場感で読み進めることができて楽しかった。

  • 目に見えない音を、よく言葉で表現できるなぁと感動。今まで読んだ本の中で、一番言葉が綺麗。

  • ピアノのコンクールを勝ち抜く挑戦者たち。
    4人の主人公達の思いがストレートに伝わってくる。
    音楽の表現を言葉で伝えるのはとても難しいことと思いますが、丁寧に描写していて好感がもてました。
    クラシックの事は全くわかりませんが、最後までピアノの音が響いていたような気がしました。

  • 映画を先に観て面白かったので原作も読んでみた。
    こちらも良かった。
    音楽から色々な感情や景色を読み取る描写。自分は曲名から曲が思い浮かべられないので、あらためて実際の曲を聴きたくなる。
    以前ジャズライブで二者のセッションを聴いていたときに、頭の中で自分の過去の口論が浮かんでいた事があったけど、音楽から景色が浮かぶことはおかしくないんだと思った。

    好きな場面
    - 『僕達結婚します』と報告しに来たカップル
    - カザマ・ジンのギフトに関する三枝子の閃き
    - 明石と亜夜が会った時の気づき
    - 明石の携帯電話が鳴るシーン
    - オーケストラとのリハーサルで風間塵が初めて音を出すシーン

  • 本屋大賞で誉めそやされる小説がことごとく肌に合わないので、いつもはその受賞作は全力で避けているのですが、先日、NHKで浜松国際ピアノコンクールを取材したドキュメンタリーを見て大変感銘を受け、この本はそのコンクールを下敷きにしていると聞いたので、読んでみた。

    亡き著名ピアニストの隠し爆弾、という冒頭の設定ですっかり引き込まれ、一日でイッキ読み。おもしろかった。
    特にクライマックスのひとつ、明石の眼前に桑畑が広がるシーンは素晴らしかった。涙がこぼれた。

    しかし、小説という形を取っているだけで、中身は完全に少女漫画。
    小説を読む時は、小説でしか表現できないものを読みたい人間なので、設定がおもしろかっただけに、うーん、残念、と思ってしまった。
    これ、きっと漫画で表現した方がおもしろくなっただろうなと思う。

    台風の目の風間君の影の薄いことといったら!
    カオナシとはこのことよ。
    養蜂家ってすごいおもしろい設定なのに、全然生かされてないし。
    もうちょっとちゃんと書いてくれよ、と残念でならなかった。

    風間君に限らず、人物描写は極めて薄くぺらぺらで物足りなかったけれど、そのかわりに、コンテストに登場する楽曲についてのイメージ、がたくさん描写されていてそこはとてもおもしろかった。
    こういう「裏付けのない勝手なイメージ」みたいなことを、普通はあまり人は語りたがらないから興味深い。

    こう言っちゃなんだけど、この人、小説家の割には楽曲からの発想はけっこう陳腐。特に、リストのピアノソナタロ短調からイメージした19世紀末くらいのヨーロッパが舞台の物語は、あまりにメロドラマ過ぎて、ちょっとのけぞった。
    なんだこの昼メロはー! しかも長いよー!
    でも、きっと著者が実際に受け取った印象を素直に描写したのだろう、と、思うとそのダサい発想に逆にちょっと好感を覚えたりして。
    まあ、いずれにせよ、私の受けるイメージとは全然違うものが多くて、その違いを楽しんで読んだ。

    しかし著者がラフマニノフ3番が嫌いだということと、ドビュッシーファンだということはよーく分かった。(笑)

    私が見た2018年の浜松国際ピアノコンクールで、二位だった韓国人の男の子が弾いたラフマニノフ3番はすごく良かったけどなぁ。
    明るくてキラキラしていて。ピアニスト本人から受ける印象そのものだった。
    そのあと、思わずラフマニノフ本人が弾く2番と3番のCDを買ってしまったが、よく言われるように、映画音楽みたいだな、とは思う。(映画音楽の方がラフマニノフをマネたんだ、という説をどこかで読んだが、大いに納得した)

  • ずっと読みたいと思ってた作品の一つでした。最近、入り浸ってる近所の図書館でさっと借りられたので思いのほか急に読むことが出来ました。

    ピアノのコンクールを通してそもそも桁外れの才能を持っている人たちが更なる高みに登っていく世界が描かれています。

    ピアノ。音の世界をどうやって文字で表すのか不思議でしたが、まあ、良くこんなに沢山の表現ができるものかと驚きました。それぞれの人物だけでなく、ピアノが奏でる曲そのものも立体的にイメージすることができるくらい。ほんとに耳で聞くほうが素人の私には違いが分からないんでは無いかと思うくらい。

    メインの3人(マサル、亜夜、塵)は、凄すぎて遥か彼方、遠くの人という感じですが、高島明石がいることで、自分との距離を近付けてくれています。とは言っても明石も凄いんですが。

    個人的には明石が菱沼賞を取ったことが一番感動的でした。

    普通、小説はお終いに向かってスピード感も出て盛り上がっていきますが、この本は序盤の方が荒々しく胸をザワザワさせて、後半、最後はゆったり幸せに終わる。そんな感じも不思議でした。

  • あまり現代舞台の小説は読まないのですが、昨年映画のCMを観て興味を持ったのと、音を小説で表すことに興味を持ち(「零號琴」は凄かった)図書館で予約して約9ヶ月、やっと読めました(300人近い待ち。。)。
    舞台は日本で開催される国際格式のピアノコンクールの約10日間。それぞれまったく違った環境に置かれた3人の天才ピアニストを中心に繰り広げられる、覚醒、成長、そして再生の過程は、スリリングであり、コンクールという冷酷な環境で様々な感情を体験しつつ、成長する様は、読んでいて心地よい高揚感を感じられる。
    後半どうしても演奏中の脳内描写が増えてきて、少し食傷気味になってはくるものの、深夜までかかって一気に読み上げてしまえた。やっぱり食わず嫌いはよくない。

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著者プロフィール

1964年宮城県生まれ。92年『六番目の小夜子』で、「日本ファンタジーノベル大賞」の最終候補作となり、デビュー。2005年『夜のピクニック』で「吉川英治文学新人賞」および「本屋大賞」、06年『ユージニア』で「日本推理作家協会賞」、07年『中庭の出来事』で「山本周五郎賞」、17年『蜜蜂と遠雷』で「直木賞」「本屋大賞」を受賞する。その他著書に、『ブラック・ベルベット』『なんとかしなくちゃ。青雲編』『鈍色幻視行』等がある。

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