蜜蜂と遠雷

著者 :
  • 幻冬舎
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本棚登録 : 10337
レビュー : 1364
  • Amazon.co.jp ・本 (507ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784344030039

感想・レビュー・書評

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  • 素晴らしかった。本を開くとおもちゃ箱をひっくり返した様に楽しく美しい音が鳴っていて、音楽のうねりが見える様な、そんな本でした。
    3人の天才と1人の素晴らしい音楽家がコンクールという場で競い合う物語。けれど、それぞれ、闘っているというイメージではなくて、純粋に一生懸命、奏でている。駆け引きなんてなくて、蹴落とすなんてなくて、高め合っている場が、コンクールだという感じ。
    皆、天才なので、失敗なんてしないし、安定している。しかも皆良い人。これだけならとても平坦な物語になりそうなのに、すごい熱量を感じられたのは、恩田陸さんの音楽への憧れと表現力、これを描きたかったのかなぁ。すごかった。
    物語の展開にワクワクするというより、一人ひとりの音楽を文字で素晴らしく表現していて、音が聞こえてきそうで情景が想像出来る。そのオマケでストーリーがあるんじゃないかというくらい。本なのに音楽のうねりに飲まれる様な、そんな作品でした。

  • 本書に登場する曲を聴きながら時間をかけて読みました。
    日本音楽コンクール・ドキュメトのピアノ部門を鑑賞してから読むのもいいと思う。
    音楽は本能。リズムは快感。
    本書では、コンテスタントがライバル達の演奏に素直に感動している姿が清々しい。
    クラシックを聴いていると、テンポ、強弱、わずかな間の取り方の違いなどで好きな演奏が決まる。
    しかし同じ演奏者だから、どの作品も良いと感じるわけではない。
    音楽は正解のない世界。コンクールの審査結果の順位付けはあくまで参考だ。
    甲乙つけがたいものに優劣を付けるから、いろんな物語が生まれるのだけれど、、、
    この物語では、順位は重要視していない。
    優勝者でない亜夜と塵の演奏、どんな風に弾いたのか、どのように感じるのか、無性に聴いてみたい。

  • ピアノの国際コンクールに出場する4人の物語。
    世界的に有名なピアニストを師に持つ不思議な少年・風間塵。母を亡くした日からピアノを辞めてしまった栄伝亜夜。海外で修行を積み、日本で大切な人を探している天才ピアニスト・マサル。家庭を持ちながらピアノを諦めたくない明石。それぞれの物語を追いながら、長期にわたるコンクールが進んでいく。

    冒頭のシーンから引き込まれて、きれいだな、と感覚的に好きだった。映画を見ているように、自然に読めていく。クラシックが一つもわからないのに、こういう感覚なんだろうなーと空気を感じることができた。

    視点が多岐にわたるので、たくさんの人の思いが重なっていき、胸がいっぱいになって、次は?次は?と読むのがやめられなかった。

    演奏者にとどまらず、スタッフ、指導者、家族、審査員などの視点で描かれているので、会場のあらゆる部分を想像し、様々な人の立場になって楽しんだ。

    天才たちにも悩みがあり、その悩みから抜け出す、ベールが取られる瞬間が、なんと言ったら良いのだろう。美しいというか…

    理論ではなく、感覚的に読んで、心地よかった。

  • >本当に本当に、なんて不条理で残酷なイベントなんだろう。
    >なんて残酷で――なんて面白い、なんて魅力的なイベントなんだろう。

    ひとつのコンクールの始まりから終わりまで、ただそれだけの一冊。
    そこに関わる、コンテスタントたちと審査員たち、その他関係者たちの群像劇。
    漫画ではピアノの森とか、四月は君の嘘とか、素晴らしいピアノ演奏表現を見てきたけど、この本もまた素晴らしかった。

    さらに登場人物たちもすっごく魅力的でもう、みんな好きだ!って感じ。
    ページ数多めだったと思うけど、もっと彼らの背景を語ってくれ~という気持ちでいっぱい。それでいて不足するところを補えるだけの材料があるというか、それぞれが薄っぺらくはないという絶妙さ。

    目次がコンクールスケジュールになっていて、物語がコンクール時期のみという構成も好きだなー。
    予選で審査員に衝撃を与えるシーンから始まって、最終頁がアレなんですよ。素敵すぎる。
    二次予選後にコンテスタント主人公たちがつかの間の急速でお散歩にでる章「インターミッション」が挟まるのだけど、すべてにおいて緊張感マックスな本編の中にすごくリラックスした短章が、読んでいて気持ちよかった。
    あそこが一番好きかもしれない。
    ライバルでもある天才たちがふと見せる素顔を切り取った奇跡のような一瞬、を見ている非天才の視点、こんな光景は今だけでもう二度と見られないのではないかと思う気持ち。
    「ハチミツとクローバー」(お、蜜蜂つながり)の「なぜかただの1枚も写真が残っていない僕らには―」というシーンが思い浮かんで、奏が写真を撮ってくれたときは変にうれしかった。


    直木賞&本屋大賞に選ばれたのも納得な傑作。
    久しぶりに読むスピードに目が追い付かないという状況に陥った。
    つまり、面白すぎて読む気持ちは先へ先へと進んでいくのに、単語を読み取るのが追い付かずに読み落としながらページをめくってしまって、しぶしぶ戻るという。
    小説読むのに速読術はいらん。


    恩田陸の名前は以前から聞いていたし本屋さんでよく見ていたけど、今回初めて手に取ったけど、いやー、これはいい作家さんだ。

  • 面白かったし、音楽の素養がなくても伝わるものがあるし、キャラクターも魅力的。

    沢山の人が出てきても混乱することなく、興味を惹かれる流れるようなストーリー展開は流石です。
    中盤までは夢中で読んでたんですけど、2次予選辺りから演奏中の描写がくどく感じ始めて、3次予選では演奏の場面を読むのが面倒に…。終わりは良かったです。

    仕方ない事だけど、音楽を言葉で表現するとどうしても幻想的な景色になって、興味が続かない。
    これは自分の状態の問題で、小説としては、その表現力は素晴らしいと思います。
    音楽が聴こえるような文章だと思いました。

  • 図書館で半年待ちわびてやっと順番、一気に読了。直木賞はだてじゃない、噂に違わず面白かった。ピアノコンクールを舞台に登場人物のそれぞれが語られていく。カザマ ジンのサプライズ的な要素には少し目を瞑っても展開がワクワクしていて厭きない。クラシックに疎い我々にも十分楽しめる分かり易さで読み進められる。ピアノコンクールだけのネタでよくもここまで!オススメです。

  • あまりの感動に打ち震えた。この本を読めて本当によかった…
    読む途中途中、栞を挟み閉じる時、あまりの愛おしさに本の表紙を撫でてしまった。


    国際的なピアノコンクールに出場する4人のピアニストそれぞれの物語で、恐らく主役はこの人だろうという人はいるが、
    読む人によって真の「主人公」は異なってくると思う。
    様々な性格、立場、境遇…
    突如現れた「巨匠からのギフト」の鬼才の少年 塵、
    「元天才少女」で音楽に愛し愛される女性 亜夜、
    幾多の風土の雰囲気を併せ持つサラブレットプリンス マサル、
    音楽は天才だけのものではないと「生活者の音楽」を表明する 明石

    もうこの4者の立場の違いだけでも失神しそうになるほど良かった。プロローグともいえるコンクールが始まる前から夢中になった。
    とりわけ私は明石に感情移入をした。私も社会人で、趣味でものを作ったりするのが好きだからだと思う。
    私も学生の頃選べなかった、選ばなかった人生があって、
    それを今選んで生きる人への憧れのようなものがまったく無い訳ではなく
    でも自分の選択を間違っているとも思っていない。そういう、複雑な感情を抱えて生きる中で

    明石の「音楽は天才だけのものではない、生活するなかで音楽は共にあり、音楽を「聞ける」人は普通に暮らす人のなかでもたくさんいる。
    自分はそれを示したい…と、家庭を持ち働きながらもコンクールの準備を睡眠時間を削りながら行った。

    もう本当にわかりみが深い。働いてたら睡眠時間削るしかない。そしてなんと勇気が出る事だろう。
    わかる気がするから。私が「天才が天才として驀進しながら掴み取る世界」を一生理解できないように、
    天才にはこちらがわの「普通の生活をしてるからこその苦楽や感謝」がわからないであろう事が。


    彼が戦いを挑んでくれたことに本当に勇気をもらった。
    第二審査の時の課題曲に含まれるカデンツァは各自の解釈で自由に演奏していたが(クラッシックに詳しくないのでどういうものか正確にわからなかったけど、たぶんこれで良いんだと思う)
    「春と修羅」という日本人作曲家の曲で、詳しくはまぁ原作を読んでくれという感じなのですが
    (説明するのが面倒なのではなく原作が最高なのでいいから読んでほしい)
    明石は解釈を深めるために車で…縁の深いところへ視察にいってて…真面目か…!!!真面目かよ…!!!と本当に胸を打たれたし、
    他の天才達が「宇宙」とか「自然」とかそういった大きなテーマを感覚で表現しているのに対し、
    なんて真面目で平凡で平均で、そして丁寧で真摯なのだろう。
    めちゃくちゃ胸を打たれてしまったし、もう明石がコンクール優勝してスピーチで
    「生活者の音楽をこれからも世界に届けていきます」みたいなことを言うの想像して感極まった。

    なんでこんなに胸打たれるんだろうと考えた時、
    自分がプラネタリウムの漫画を描くにあたり、資料集めかねて3箇所くらい都内のプラネタリウムを巡ったりしたことを思い出して、そっかぁと思いなんだか泣けてしまった。

    自己陶酔かよといわれればまぁそうなんだけど、明石という登場人物はそういうポジションなんだと思う。
    異なる才能を持ち合わせた若き3人の天才は、ほんとうに魅力的だし音楽だけでなく人柄も愛らしい。とても好きだ。
    でも一般的な読者が感情移入するには難しい部分もあるかもしれない。
    前述した通り、読む人によって主人公がかわるので言い切るのは乱暴かもしれないし、亜夜は明石と違う種類の人がどうしようもなく惹かれる人かもしれない。
    でも明石という人は「共感」を担ってくれる人で、天才ではない人をこの物語の世界に優しく招きいれてくれている様に思えました。

    明石はそういう意味でも、音楽を愛する人と、音楽を日常に添えるように生きる人、音楽を知らない人全てを繋いでくれると思う。

    明石の話ばかりになってしまったけど、この蜜蜂と遠雷はあまりに出来がよく、完成されていて恩田さんの本をはじめて読む私にとって本当に衝撃的でした。
    最初手にとった時は分厚いし2段組だし読みきれるのか!?と不安になりましたが、不安に思う事などなにもなく、後半は終わりに近づいていくのが寂しかった。

    実写化しないのかな?と調べたところ「映像にしてしまうと音の正解を定めてしまうようで」みたいなこと書いてあってまた痺れた。最高。かっこいい。
    確かに文章だからこその演奏はあると思う。特に風間塵の演奏は読み手一人一人でまったく違いそうだ。

    映像化されないということはこの素晴らしい物語を知る人は読んだ人だけということになる。それは少し寂しい。
    どうにか一人でも多くの人に読んでほしいと思いました。長いけど!!頑張ってほしい!!!音楽は素晴らしい!!!

  • 読み応え十分の素晴らしい作品でした。直木賞、本屋大賞のダブル受賞は伊達ではありません。音楽はこんなにも文章で表現できるものなんですね。公立の学校教育以上の音楽教育を受けなかった私でも、その素晴らしさの片鱗に触れることができました。風間塵が音楽界へのギフトであったように、この作品は恩田さんから読者へのギフトのようです。登場人物すべてが主人公でしたが、個人的には奏の存在に大いに泣かされました。一握りの天才だけでなく、一つの世界に身を投じて突き進むことができる人たちの才能に感服しました。傑作です。

  • 評判通り、一気読みしてしまう面白さではあったけど、「漫画みたいな話だなあ」と思ってしまった。読みながら、脳内でアニメの絵で再生されてしまった。
     ピアノを持たず、養蜂家の父と放浪生活を送る天才ピアニストの青年、という漫画チックな設定を、どう納得させるのか?と思いつつ読んだが、とうとう納得できなかった。クラシック・ピアノは(バレエやヴァイオリンもそうだけど)、幼い時からちゃんと練習しないとものにならないわけで(天才とはそれが全く苦にならない人だと思う)、いくら旅先で借りて弾いても、毎日というわけにはいかないだろうし、素人の家で放置されたピアノは音がずれていることが多く、耳にいい環境とは言い難い。教師ともしょっちゅうあえたのではないのだから、やっぱりありえない設定なのだ。ジャズやポップス、作曲なら納得できるのだけど。
     もちろん恩田さんはそんなことは承知の上で、それでもこのテーマで書きたかったのだろう、とは思う。
     青柳いづみことか、ピアニストが書いた本を読むと、曲のどのあたりがテクニック的に難しいとか、アーティキュレーション、アナリーゼについて、素人でもわかるように書いてあって、そこが非常に面白いし、ローゼンの『ピアノ・ノート』なんかを読むと、天才と言われるピアニストでもすべての曲を楽々と弾けるわけではないということがわかるのだが、この本の登場人物たちは、技術的に苦労するということは一切ない天才ばかり。ほとんど星飛雄馬と花形満、左門豊作(は明石?)みたいな。(古いたとえですみません。)
    専門的な記述がない分、ピアノやクラシックに興味のない人にも面白いし、読みやすい。とはいえ、一曲丸丸を物語にしてしまうのはどうか、と思ったし、バッハの平均律1巻の1番のプレリュードなんて、ありとあらゆる弾き方が出尽くしているような気がするので、塵の演奏がどんなものなのか想像もつかない。亜夜は小柄な女性のように書いてあるが、そうすると手の大きさや指の長さに悩むのではないかとか、ベートーヴェンのような重たい曲を弾くのには苦労するんじゃないかとか、思ったけど。
     しかし、面白いのは事実。『羊と鋼の森』なんてのより、ピアノをずっと聞きたくなるところもいい。難しいテーマに挑戦し、勝利したことは間違いない。

  • 2019.7.6 図書館

    ボリューム!500ページ超えはいいいとして、2段組み!
    これは時間がかかりそうだ・・と思って読み始めたが、一瞬だった。
    長さを感じさせないくらい入り込めたし、読みやすかった。

    直木賞と本屋大賞のダブル受賞の話題作だったので、内容を全く確認せずに予約。
    読む前に調べたら、まさかのピアニスト話!専門性のある本だった。
    さらに調べたら、漫画「ピアノの森」に酷似しているとの噂…。
    それは聞き捨てならん、と、身構えて(否定的に)読み始めた。
    確かに初めは似てるかも…と思ったが、途中からそんなことは一切忘れて没頭した。
    主人公の野生性や才能、既存曲の言語化はかなり似ているが、これはこれでしっかり別の物語として成立していると思った。
    否定から入った後に好感を持てる本はそうない。

    主人公は蜜蜂の養成を手伝いながら、移動した先々で演奏をする天才野生児(風間塵)。
    他、母を亡くして業界から姿を消した、かつての天才女子(栄伝亜夜)、亜夜と感動の再開を果たしたイケメン天才ピアニスト(マサル・カルロス)、家庭と仕事を持ちながらコンクールに臨む一般代表(高島明石)。
    4人を中心に、コンクール予選から本選までを描いた群像劇。

    とにかくそれぞれキャラが立っていて、読んでいて飽きなかった。
    天才多すぎでファンタジー化していたが、そのために重く厳しい世界を軽やかに描いていて、すがすがしい読後になっている。

    一曲一曲を細かく言語化していて、時には物語になっているため、本書の半分は曲の言語化が占める。後半はこの感じいつまで続くの!って思ったけど、実際に曲を聴きながら読むと楽しめた。

    明石を追っていた記者の女の人の存在がよくわからんかった。
    妻目線でもよかったのでは…?明石妻に嫉妬しているところだけやたらリアルで嫌だった。

    あと、目次の次に主要4人のコンサートの全演目が乗っていて、え!みんな本選残ることネタバレしてるじゃん!と思って萎えたけど、ただの予定リストだった。自分の勘違いだけどあれは萎えた!笑

    ラスト、結果発表を本文後に乗せるのも素晴らしかった。
    どうしても明石に肩入れしてしまったので、明石の表彰シーンと喜ぶ姿は見たかったけれど。

    栄伝亜夜のシーンは感動することが多かった。
    けど、さっきも同じことで「そっか…!(これが音楽なんだ!みたいな)」って言ってなかった?とか幼少の振り返りとか、感動へもっていくのがくどいところもあった。

    とにかく、読んでよかった!
    想像以上におもしろかった。ピアニスト題材の中では、これほど読みやすくて読み応えのある本はないと思う。純粋に、好きな分野(ピアノ)だったから入り込めたっていうのはあるかも。(「羊と鋼の森」は微妙だったわ。)
    文量に気後れしている人は、心配せずに読んでほしい。
    ピアノが弾きたくなるし、クラシックが聴きたくなる。

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著者プロフィール

恩田陸(おんだ りく)
1964年、青森市生まれ。水戸第一高校を卒業し、早稲田大学進学・卒業。1991年、第3回日本ファンタジーノベル大賞最終候補作となった「六番目の小夜子」でデビュー。2004年刊行『夜のピクニック』で第26回吉川英治文学新人賞及び第2回本屋大賞、2007年『中庭の出来事』で第20回山本周五郎賞をそれぞれ受賞。2017年『蜜蜂と遠雷』で第156回直木三十五賞、第14回本屋大賞、第5回ブクログ大賞などを受賞した。同作品による直木賞・本屋大賞のW受賞、そして同作家2度目の本屋大賞受賞は史上初。大変大きな話題となり、代表作の一つに挙げられるようになった。同作は2019年4月に文庫化され、同年秋に石川慶監督、松岡茉優・松坂桃李らのキャストで映画化される。

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