蜜蜂と遠雷

著者 :
  • 幻冬舎
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  • Amazon.co.jp ・本 (507ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784344030039

感想・レビュー・書評

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  • 評判通り、一気読みしてしまう面白さではあったけど、「漫画みたいな話だなあ」と思ってしまった。読みながら、脳内でアニメの絵で再生されてしまった。
     ピアノを持たず、養蜂家の父と放浪生活を送る天才ピアニストの青年、という漫画チックな設定を、どう納得させるのか?と思いつつ読んだが、とうとう納得できなかった。クラシック・ピアノは(バレエやヴァイオリンもそうだけど)、幼い時からちゃんと練習しないとものにならないわけで(天才とはそれが全く苦にならない人だと思う)、いくら旅先で借りて弾いても、毎日というわけにはいかないだろうし、素人の家で放置されたピアノは音がずれていることが多く、耳にいい環境とは言い難い。教師ともしょっちゅうあえたのではないのだから、やっぱりありえない設定なのだ。ジャズやポップス、作曲なら納得できるのだけど。
     もちろん恩田さんはそんなことは承知の上で、それでもこのテーマで書きたかったのだろう、とは思う。
     青柳いづみことか、ピアニストが書いた本を読むと、曲のどのあたりがテクニック的に難しいとか、アーティキュレーション、アナリーゼについて、素人でもわかるように書いてあって、そこが非常に面白いし、ローゼンの『ピアノ・ノート』なんかを読むと、天才と言われるピアニストでもすべての曲を楽々と弾けるわけではないということがわかるのだが、この本の登場人物たちは、技術的に苦労するということは一切ない天才ばかり。ほとんど星飛雄馬と花形満、左門豊作(は明石?)みたいな。(古いたとえですみません。)
    専門的な記述がない分、ピアノやクラシックに興味のない人にも面白いし、読みやすい。とはいえ、一曲丸丸を物語にしてしまうのはどうか、と思ったし、バッハの平均律1巻の1番のプレリュードなんて、ありとあらゆる弾き方が出尽くしているような気がするので、塵の演奏がどんなものなのか想像もつかない。亜夜は小柄な女性のように書いてあるが、そうすると手の大きさや指の長さに悩むのではないかとか、ベートーヴェンのような重たい曲を弾くのには苦労するんじゃないかとか、思ったけど。
     しかし、面白いのは事実。『羊と鋼の森』なんてのより、ピアノをずっと聞きたくなるところもいい。難しいテーマに挑戦し、勝利したことは間違いない。

  • 音楽には縁遠い生活をしていて、音楽の題名をみても、何一つ思い浮かべることができないけれど、面白かった!音を言葉で文章で表現するって凄い!実際音楽を聴いたり、コンサートに行ったりすると、私は寝ちゃうんだろうなぁ、と思うけれど(笑)

  • 大長編!ボリュームたっぷりでした

    本作では、一大国際コンクールにおいて、予選から優勝者が決まるまでが綴られています。

    まず、物語が始まる前からピアノコンクールの課題曲、主人公のそれぞれのプログラムがびっしり書かれていて、作り込みのすごさに驚き。

    そして、なんといっても、演奏の表現が素晴らしい。
    語彙力がすごいし、とっても美しかったです。美しい音色が聞こえました。
    クラシック音楽には疎いので、調べて演奏を聞きながら読みました。
    たくさんの美しい音楽に美しい表現!幸せでした〜〜!!

    誰が優勝するのかハラハラしながら楽しめたのも良かったです。

  • 音を文字で表現するのは本当に難しい。コンサートに行った後の感動を記録しておきたくて時々ライブレポとして書くことがあるが、聞いて感じたことを言い表すのにピッタリ当てはまる言葉が見つからない、なんてことは日常茶飯事だ。
    音楽の世界を、文字でこんなに豊かに表現していることに驚嘆した。知っている曲も知らない曲もあるけれど、コンサートホールに居るような臨場感で読み進めることができて楽しかった。

  • 目に見えない音を、よく言葉で表現できるなぁと感動。今まで読んだ本の中で、一番言葉が綺麗。

  • ピアノのコンクールを勝ち抜く挑戦者たち。
    4人の主人公達の思いがストレートに伝わってくる。
    音楽の表現を言葉で伝えるのはとても難しいことと思いますが、丁寧に描写していて好感がもてました。
    クラシックの事は全くわかりませんが、最後までピアノの音が響いていたような気がしました。

  • 映画を先に観て面白かったので原作も読んでみた。
    こちらも良かった。
    音楽から色々な感情や景色を読み取る描写。自分は曲名から曲が思い浮かべられないので、あらためて実際の曲を聴きたくなる。
    以前ジャズライブで二者のセッションを聴いていたときに、頭の中で自分の過去の口論が浮かんでいた事があったけど、音楽から景色が浮かぶことはおかしくないんだと思った。

    好きな場面
    - 『僕達結婚します』と報告しに来たカップル
    - カザマ・ジンのギフトに関する三枝子の閃き
    - 明石と亜夜が会った時の気づき
    - 明石の携帯電話が鳴るシーン
    - オーケストラとのリハーサルで風間塵が初めて音を出すシーン

  • 本屋大賞で誉めそやされる小説がことごとく肌に合わないので、いつもはその受賞作は全力で避けているのですが、先日、NHKで浜松国際ピアノコンクールを取材したドキュメンタリーを見て大変感銘を受け、この本はそのコンクールを下敷きにしていると聞いたので、読んでみた。

    亡き著名ピアニストの隠し爆弾、という冒頭の設定ですっかり引き込まれ、一日でイッキ読み。おもしろかった。
    特にクライマックスのひとつ、明石の眼前に桑畑が広がるシーンは素晴らしかった。涙がこぼれた。

    しかし、小説という形を取っているだけで、中身は完全に少女漫画。
    小説を読む時は、小説でしか表現できないものを読みたい人間なので、設定がおもしろかっただけに、うーん、残念、と思ってしまった。
    これ、きっと漫画で表現した方がおもしろくなっただろうなと思う。

    台風の目の風間君の影の薄いことといったら!
    カオナシとはこのことよ。
    養蜂家ってすごいおもしろい設定なのに、全然生かされてないし。
    もうちょっとちゃんと書いてくれよ、と残念でならなかった。

    風間君に限らず、人物描写は極めて薄くぺらぺらで物足りなかったけれど、そのかわりに、コンテストに登場する楽曲についてのイメージ、がたくさん描写されていてそこはとてもおもしろかった。
    こういう「裏付けのない勝手なイメージ」みたいなことを、普通はあまり人は語りたがらないから興味深い。

    こう言っちゃなんだけど、この人、小説家の割には楽曲からの発想はけっこう陳腐。特に、リストのピアノソナタロ短調からイメージした19世紀末くらいのヨーロッパが舞台の物語は、あまりにメロドラマ過ぎて、ちょっとのけぞった。
    なんだこの昼メロはー! しかも長いよー!
    でも、きっと著者が実際に受け取った印象を素直に描写したのだろう、と、思うとそのダサい発想に逆にちょっと好感を覚えたりして。
    まあ、いずれにせよ、私の受けるイメージとは全然違うものが多くて、その違いを楽しんで読んだ。

    しかし著者がラフマニノフ3番が嫌いだということと、ドビュッシーファンだということはよーく分かった。(笑)

    私が見た2018年の浜松国際ピアノコンクールで、二位だった韓国人の男の子が弾いたラフマニノフ3番はすごく良かったけどなぁ。
    明るくてキラキラしていて。ピアニスト本人から受ける印象そのものだった。
    そのあと、思わずラフマニノフ本人が弾く2番と3番のCDを買ってしまったが、よく言われるように、映画音楽みたいだな、とは思う。(映画音楽の方がラフマニノフをマネたんだ、という説をどこかで読んだが、大いに納得した)

  • ずっと読みたいと思ってた作品の一つでした。最近、入り浸ってる近所の図書館でさっと借りられたので思いのほか急に読むことが出来ました。

    ピアノのコンクールを通してそもそも桁外れの才能を持っている人たちが更なる高みに登っていく世界が描かれています。

    ピアノ。音の世界をどうやって文字で表すのか不思議でしたが、まあ、良くこんなに沢山の表現ができるものかと驚きました。それぞれの人物だけでなく、ピアノが奏でる曲そのものも立体的にイメージすることができるくらい。ほんとに耳で聞くほうが素人の私には違いが分からないんでは無いかと思うくらい。

    メインの3人(マサル、亜夜、塵)は、凄すぎて遥か彼方、遠くの人という感じですが、高島明石がいることで、自分との距離を近付けてくれています。とは言っても明石も凄いんですが。

    個人的には明石が菱沼賞を取ったことが一番感動的でした。

    普通、小説はお終いに向かってスピード感も出て盛り上がっていきますが、この本は序盤の方が荒々しく胸をザワザワさせて、後半、最後はゆったり幸せに終わる。そんな感じも不思議でした。

  • あまり現代舞台の小説は読まないのですが、昨年映画のCMを観て興味を持ったのと、音を小説で表すことに興味を持ち(「零號琴」は凄かった)図書館で予約して約9ヶ月、やっと読めました(300人近い待ち。。)。
    舞台は日本で開催される国際格式のピアノコンクールの約10日間。それぞれまったく違った環境に置かれた3人の天才ピアニストを中心に繰り広げられる、覚醒、成長、そして再生の過程は、スリリングであり、コンクールという冷酷な環境で様々な感情を体験しつつ、成長する様は、読んでいて心地よい高揚感を感じられる。
    後半どうしても演奏中の脳内描写が増えてきて、少し食傷気味になってはくるものの、深夜までかかって一気に読み上げてしまえた。やっぱり食わず嫌いはよくない。

  • いつ読んでも誰の章読んでもわくわくする! 

  • 世界に散らばっている音楽のかけらと
    音楽は神様からのギフトということの
    幸せに満たされました。

  • とってもよかった。
    音楽って素晴らしいものだなあと改めて実感。
    久々にピアノを弾きたくなった。
    作中に出てくる曲はわからないものばかりだったけど、表現がとても豊かで知らなくても充分に楽しめた。
    登場人物がみんな魅力的で、メインの演奏者の4人はもちろん、ステマネ、調律師、指揮者、演奏者を支える人などいろんな視点から語られてるいるのが面白かった。視点がコロコロ変わっているのにもかかわらず、ややこしくならないで物語がより立体的に感じられた。
    天才3人の感覚は自分には到底味わいようもないけれど、天才なりの苦悩が丁寧に描写されてるのも良かった。明石の考えには共感できる部分も多くて1番好きなキャラクターだったなあ。
    メインの4人の背景も丁寧に描かれてた。
    音楽に全てを捧げている人たちは本当にかっこいい。自分に音楽の才能がなくても、音楽を好きでいていいんだ、と思わせてくれる作品だった。何回でも読み返したい。

  • まず、自分の中に音楽が確実に届いていた事に驚いた。 それは作中で演奏されたクラシック音楽の楽曲は大半は詳しく知らないにもかかわらず、頭の中で確実にメロディとして鳴り響いていた。 さらに作曲当時の景色までも感じていた自分がいた事に作者の執筆力に驚いてしまった。 ピアノコンクールが題材だけあり楽曲を知らなければ読み進めても理解が半減するのでは?と当初中々手にするのを躊躇していたが、演奏シーンの描写力はもちろん、コンテスタント(出場者)達のサブストーリー、また審査員たちの葛藤の姿など読み応えのある内容だった。

  • こんなストーリーの紡ぎかたがあるんだ。多幸感に包まれつつ、前に踏み出すチカラを与えてくれる。
    好きな本をヒトに勧めることはタブーと思いつつ勧めてしまった。

  • 圧倒的な物量で読むのを躊躇していましたが、読み始めたらあっという間だった。はじまりは、スポーツものの漫画を読んでいるみたいな読み口で夢中になり、やがて、語り手の気持ちにリンクしながら自分も聴衆になっていく感覚が心地よくて新しかった。ライバルでありながらも友人という気持ちのほうが強いあたりも大物の風格を感じる。爽やかで素敵な作品でした。素晴らしかった。

  • 「一瞬も、一生も、美しく。一瞬というのは永遠なんだ。」

    音楽への愛、才能への言及、文章からピアノの音が聴こえてくるような表現力、登場人物の奥行き。ただただ凄いなぁ。栄伝亜夜 3次予選の演奏中の心境で思わず涙が溢れた。

    カバーを外したら光沢のある黒一色でピアノをイメージしていて、本当に愛せる一冊になりました。

  • あまりの感動に打ち震えた。この本を読めて本当によかった…
    読む途中途中、栞を挟み閉じる時、あまりの愛おしさに本の表紙を撫でてしまった。


    国際的なピアノコンクールに出場する4人のピアニストそれぞれの物語で、恐らく主役はこの人だろうという人はいるが、
    読む人によって真の「主人公」は異なってくると思う。
    様々な性格、立場、境遇…
    突如現れた「巨匠からのギフト」の鬼才の少年 塵、
    「元天才少女」で音楽に愛し愛される女性 亜夜、
    幾多の風土の雰囲気を併せ持つサラブレットプリンス マサル、
    音楽は天才だけのものではないと「生活者の音楽」を表明する 明石

    もうこの4者の立場の違いだけでも失神しそうになるほど良かった。プロローグともいえるコンクールが始まる前から夢中になった。
    とりわけ私は明石に感情移入をした。私も社会人で、趣味でものを作ったりするのが好きだからだと思う。
    私も学生の頃選べなかった、選ばなかった人生があって、
    それを今選んで生きる人への憧れのようなものがまったく無い訳ではなく
    でも自分の選択を間違っているとも思っていない。そういう、複雑な感情を抱えて生きる中で

    明石の「音楽は天才だけのものではない、生活するなかで音楽は共にあり、音楽を「聞ける」人は普通に暮らす人のなかでもたくさんいる。
    自分はそれを示したい…と、家庭を持ち働きながらもコンクールの準備を睡眠時間を削りながら行った。

    もう本当にわかりみが深い。働いてたら睡眠時間削るしかない。そしてなんと勇気が出る事だろう。
    わかる気がするから。私が「天才が天才として驀進しながら掴み取る世界」を一生理解できないように、
    天才にはこちらがわの「普通の生活をしてるからこその苦楽や感謝」がわからないであろう事が。


    彼が戦いを挑んでくれたことに本当に勇気をもらった。
    第二審査の時の課題曲に含まれるカデンツァは各自の解釈で自由に演奏していたが(クラッシックに詳しくないのでどういうものか正確にわからなかったけど、たぶんこれで良いんだと思う)
    「春と修羅」という日本人作曲家の曲で、詳しくはまぁ原作を読んでくれという感じなのですが
    (説明するのが面倒なのではなく原作が最高なのでいいから読んでほしい)
    明石は解釈を深めるために車で…縁の深いところへ視察にいってて…真面目か…!!!真面目かよ…!!!と本当に胸を打たれたし、
    他の天才達が「宇宙」とか「自然」とかそういった大きなテーマを感覚で表現しているのに対し、
    なんて真面目で平凡で平均で、そして丁寧で真摯なのだろう。
    めちゃくちゃ胸を打たれてしまったし、もう明石がコンクール優勝してスピーチで
    「生活者の音楽をこれからも世界に届けていきます」みたいなことを言うの想像して感極まった。

    なんでこんなに胸打たれるんだろうと考えた時、
    自分がプラネタリウムの漫画を描くにあたり、資料集めかねて3箇所くらい都内のプラネタリウムを巡ったりしたことを思い出して、そっかぁと思いなんだか泣けてしまった。

    自己陶酔かよといわれればまぁそうなんだけど、明石という登場人物はそういうポジションなんだと思う。
    異なる才能を持ち合わせた若き3人の天才は、ほんとうに魅力的だし音楽だけでなく人柄も愛らしい。とても好きだ。
    でも一般的な読者が感情移入するには難しい部分もあるかもしれない。
    前述した通り、読む人によって主人公がかわるので言い切るのは乱暴かもしれないし、亜夜は明石と違う種類の人がどうしようもなく惹かれる人かもしれない。
    でも明石という人は「共感」を担ってくれる人で、天才ではない人をこの物語の世界に優しく招きいれてくれている様に思えました。

    明石はそういう意味でも、音楽を愛する人と、音楽を日常に添えるように生きる人、音楽を知らない人全てを繋いでくれると思う。

    明石の話ばかりになってしまったけど、この蜜蜂と遠雷はあまりに出来がよく、完成されていて恩田さんの本をはじめて読む私にとって本当に衝撃的でした。
    最初手にとった時は分厚いし2段組だし読みきれるのか!?と不安になりましたが、不安に思う事などなにもなく、後半は終わりに近づいていくのが寂しかった。

    実写化しないのかな?と調べたところ「映像にしてしまうと音の正解を定めてしまうようで」みたいなこと書いてあってまた痺れた。最高。かっこいい。
    確かに文章だからこその演奏はあると思う。特に風間塵の演奏は読み手一人一人でまったく違いそうだ。

    映像化されないということはこの素晴らしい物語を知る人は読んだ人だけということになる。それは少し寂しい。
    どうにか一人でも多くの人に読んでほしいと思いました。長いけど!!頑張ってほしい!!!音楽は素晴らしい!!!

  • 我が区の図書館でもまだまだ1,000近くの予約が入っている人気本。まとまった時間がとれぬまま返却期限が明日と迫り、横浜までの約1時間で残り半分一気読みしました。さすが人気本だけあって、音楽がわからなくても楽しめますが、わかったほうが無論おもしろいだろうし、イメージもわくのでしょう。しかしわからなくても、コンテスタントひとりひとりの、さらにそれぞれの曲を表現することば遣いには、作家としての力量に驚かされました。かなりとぱし読みしてしまったのも事実ではありますが…

  • 感動しました!
    全く縁のないクラシックの世界でしたが、小説から音楽が流れてくるような感覚で読み進められました。
    そして、いつまでも読んでいたいと思いました。
    それぞれの才能が、それぞれの想いを抱えてコンクールを戦いますが、皆んなを応援してしまいました(笑)
    舞台となったのが、浜松国際ピアノコンクールとのことで、来年開催される際にはぜひ見に行きたいと思います。

  • 音楽を文章にする表現力が素晴らしい!

    はじめは登場人物も多くてなかなか読み進められなかったけど、中盤から一気読み。
    なぜだかわからないけど、涙が溢れてくるシーンもあり。

    クラシックはほとんど聞いたことがないけど、モデルがいるならぜひ演奏を聴いてみたくなった。

  • 【彼らの音楽が、終始、鳴り迫ってくる。】
     皆さんと、それを共有できる素晴らしさ!
     
    "ミュージック。その語源は、神々の技だという。
    ミューズの豊穣。"
    まさに、コンテスタント達の「神々の技」ともいうべき音楽が、私を会場に、そして舞台に連れて行ってくれた。
    彼らのピアノは、音楽は、「鳴っている」のだ。
    ただ「響く」でも「届く」だけでも足りない。
    終始、全身に鳴り迫ってくる感じを、持っていかれないように読み進めた。

    演奏する時の緊張、興奮、静寂、共有、光景…。

    音楽の喜びを感じることができて、幸せ!

    私もずっと弾いていこう♪
    鳴らすことはできなくても、私なりの音楽を。

    "幸福だ。世界はこんなにも音楽に溢れている。"

  • 文字から音楽が鳴る。脳内は音でいっぱいになる。本なのに、音楽を聴いているような不思議な感覚。
    恩田陸さんの言葉の並べ方に脱帽する。
    恩田陸さんと同じ言語の元に生まれて良かったと思う。

    この文章を直接理解できることに感謝する。

  • 恩田さんに圧倒されました。素晴らしかった。

    世界的なピアノコンクールが舞台。沢山の“天才”が居て、それぞれの音楽性が描かれていました。コンクールの結果は予想通り(あくまで私の考えです)でしたがどうしてもドキドキして、結果に一喜一憂してしまいました。
    素直に音楽っていいな、って思います。
    ピアノを習っていたこともあり、知っている曲が多くて楽しかったです。もちろん、知らない人でも豊かな表現で楽しめます(スポーツ系の話で感動する運動嫌いな私が言っています)。気になった曲を調べるのも楽しそう…!
    私はちょっと弾くくらいですが、自分の信じる音楽があって、恩田さんみたいに言葉に表せないけど、こだわりがあります。恩田さんみたいなすごい人と考え方が違かったとき、私の音楽が見失いそうで怖い気持ちもありました。でも、否定されることはなく、ちゃんと読めました。
    やっぱり恩田さんみたいにうまく表現できないや(笑)

    この本を読んで、恩田さんの本にはやっぱり中毒性があるように感じます。読み終わったときの幸福感。早くラストが読みたいけれど、いつまでも終わらないでほしくなるような、どうしようもない気持ち。
    めっちゃハマる。

    最後にこれからこの本を読む皆さんへ!!この本の一番後ろのページに、結果が書いてあります。私もこの本を教えてくれた人にそう言われて、読みながら早く最後のページを見たいという葛藤とたたかっていました(笑)気をつけてね!

  • 読了しました。

    全く新しい読書体験。
    本当に素晴らしかった。

    幼い頃におざなりにピアノを習っていたような私のようなクラシックど素人でも、
    いや、ど素人だからこそ、音の波に圧倒され、魅了され、魂を揺さぶられました。

    作品の冒頭にある、雨粒の音をギャロップに見る表現だけで、映像が、音楽が見えた。
    (かろうじてギャロップ習うくらいまでは続けててよかった)

    私は幸運なことに、この小説が映像化された後に読むことが出来たので、
    iTunesで全ての曲を聴きながら読むことができたのですが、
    もう、それが至福の時間すぎて。
    恐ろしく気持ちの良い時間でした。
    クラシックの心地の良さは分かっていたつもりでしたが、
    ここまで五感に訴えかけるような音楽の聴き方ができたのは初めて。
    恩田陸さんの文章が、読み手を果てしない音楽の彼方へと連れて行ってくれるような。

    音楽が身体中に行き渡り、弾け、波打ち、心の奥深くのキラキラしたものを掬い上げ、解き放ってくれるような。
    なんなんだろう、あの感覚。
    自分の何がこんなに刺激されているのか、
    なぜ、こんなにも込み上げてくるものがあるのか。
    またそれは何なのか。
    思考するのだけど、結局心地よい音楽の波に身を委ね、その快感に溶け入ってしまう。

    読み進めれば読み進める度に、
    『なんだこの小説はーーー!!』と。

    人物像も素晴らしく魅力的で。
    マサル、塵、亜矢、それぞれが弾いているんだと想像するだけで、不思議と音が違って聞こえて。

    音楽はアートなんだと。
    音楽家はアーティストなんだと改めて思った。

    クラシックが無性に聴きに行きたくなった。

  • こんなにも世界は音楽で溢れている。

    4人の音楽家の話。自分が弾きたい曲と観客が求める曲が違う事についての葛藤。どんどん音楽は窮屈な閉じ込められたものになっていく。自分はこんな音楽が好きだという思いを封じていることに気付いた主人公を見ていると、音楽に限った世界だけではないなと気付かされる。私たちは大人になるにつれて、自分がしたい事を心のどこかに封じ、求められるものに応じてしまっている部分があるのではないだろうか。『音楽を外に連れ出す』ように、自分の気持ちを見つめなおすことができた。
    音楽に関する描写もまるで本当にピアノの音が鳴っているように創造出来た。表現力の高さに何度も音の波に溺れそうになり、自然と涙が溢れる場面もあった。

  • ピアノコンクールが舞台のお話。長いが読み応えのある作品でした。音楽の知識が豊富な方はより楽しめそうです。

  • 読んでるはずなのに音が溢れる。少年との出会いが音の世界を覚醒させる。

  • 紙の媒体で音楽を伝えるのは難しいというのが通説だろうけど、この本は、音楽から受ける感動を雄弁に表現している。音楽に明るくない自分でも(だからこそかもしれない)演奏シーンでは何度も鳥肌が立った。作中で語られる音楽に乗せられて色んな感情を体感できて不思議な感覚になった

    読んでよかった

  • ようやく読めた。直木賞&本屋大賞のダブル受賞も納得の素晴らしい作品だった。ビアノやクラシックに造詣の深い人ならばなお感動するのだろう。それが羨ましい。

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著者プロフィール

1964年宮城県生まれ。92年『六番目の小夜子』で、「日本ファンタジーノベル大賞」の最終候補作となり、デビュー。2005年『夜のピクニック』で「吉川英治文学新人賞」および「本屋大賞」、06年『ユージニア』で「日本推理作家協会賞」、07年『中庭の出来事』で「山本周五郎賞」、17年『蜜蜂と遠雷』で「直木賞」「本屋大賞」を受賞する。その他著書に、『ブラック・ベルベット』『なんとかしなくちゃ。青雲編』『鈍色幻視行』等がある。

恩田陸の作品

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