蜜蜂と遠雷

著者 :
  • 幻冬舎
4.35
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本棚登録 : 20426
感想 : 2165
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  • Amazon.co.jp ・本 (507ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784344030039

感想・レビュー・書評

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  • とても良い小説でした。
    直前に読んだ「きたきた捕物帳」「ライオンのおやつ」がかなり面白く、その次に読んだ本が全然楽しめなかったので、自分が読書疲れ状態なのかなと不安になりつつ、この本を読みはじめましたが、面白くて1日で一気読みでした。

    亡くなった世界的ピアニストの推薦状だけでオーディションに参加し、その天才的な演奏で一躍感心を集める風間塵を描いた導入部。この先、世界にどんなインパクトを与えていくのだろうとワクワクさせてくれるので、小説の掴みとしてとても気持ち良い。
    あまりにジンの導入に惹き込まれたので、場面転換して亜夜のシーンになったときに少しがっかりしたけど、その亜夜、その次のマサル、明石のそれぞれのストーリーにもどんどん惹き込まれ、さらには亜夜の友人の奏なども含め、登場人物全員の次の展開が気になるという素晴らしい読書体験。

    皆が葛藤したり努力したりしながらコンクールを勝ち抜いていく様子や、演者や観客が味わう感動を描写してくれる点は、スポーツものの感動に似ている。
    三浦しをん「風が強く吹いている」や漫画「スラムダンク」のように、登場人物を応援しながら、先をどんどん読み進めたくなる。
    特に、音楽の天才側ではない明石は、「風が〜」の王子、「スラムダンク」のメガネくん、「ダイの大冒険」ポップのような、普通の人が天才たちに混じって努力して感動を与えてくれる展開なので、共感して泣いてしまう。より一般人として描かれている明石の奥さん目線で語られる段落も良い。

    ピアノ持ってないのに一番演奏が上手いジンの天才ぶりはファンタジーに近いものがあるが、それが許せてしまう面白さ。
    読んでいて冗長に感じたのは3次予選のマサルのリストのピアノソナタロ短調の描写部分ぐらい。
    ジンが主人公かと思いきや、後半どんどん亜夜が主役になっていく。
    また、各登場人物視点がどんどん切り替わるのに、全然面倒に感じないというのは小説として凄いと思う。

    巻頭に各キャラが演奏した曲名リストがあるので、YouTubeで検索して彼らが演奏した音楽を聴くという楽しみ方もある。できることなら、彼らの演奏に感動させられた小説内の観客のように、自分も演奏を聴いて風景を思い描いたりする体験ができたら最高なのだが、「へぇ〜、こういう曲なんだ〜」しか感じなかった心の擦れた自分がとても残念だ。

    なんとなく読みはじめて500ページを一気読みできたので、自分には相当面白い小説でした。

  • ピアノを弾いたことがある、クラシックの曲を知ってるって人には特にオススメ。
    頭の中で鳴り響く音を楽しんで欲しい。

  • 音楽を文章にして、聞かせてくれているすごい本だった。途中、実際にその曲を聞いたりした。ビアノが弾きたくなった。上手く弾けなくても難しい曲でなくても自分が気持ち良く弾ければ良いな~

  • 直木賞で本屋大賞、読ませる!
    音楽は全く分からずメロディも浮かばないが、それでも文章で素晴らしい世界が展開されていることが伝わってきた。
    基本、あらゆることは人間讃歌だと思うが、あたたかで嬉しくなる。
    丁度日本シリーズオリックスvsヤクルト。1vs0 これから最終回。

  • 本を読みながら音楽の世界に包まれる感じがすごかった。
    クラシックには全く詳しくないし、登場した曲もほとんど分からなかったけど、コンサート会場の緊張感とかピアノの音の響きが伝わってくるようだった。音の説明でなく、世界観の説明でそれを表現するのがすごい。

    ただ個人的に3次予選がピークで、本選らへんはそこまで引き込まれなかった。疲れた状態で読んでたからなのか、単純に自分と合わなかったからなのかはわからない。

    でも、久しぶりに言葉の美しさを感じることができる本を読めたので、だいぶ満足。

  • 読んでるはずなのに音が溢れる。少年との出会いが音の世界を覚醒させる。

  • 国際ピアノコンクールの予選(第一次予選から第三次予選)と本選にかけて、複数人にスポットを当てて展開していく物語。
    とても気になっていた本だけど、ピアノに詳しくないから…と敬遠していたのですが、ピアノ演奏から紡がれる繊細な情景描写に引き込まれました。

    大規模なコンクールを通じ、互いの演奏を聴くことで影響を受け合い内面的に成長していく若いコンテスタントたち。天才であることに変わりはないが、より一層演奏の表現力が極まったことが伝わってくるし、聴こえてきました。
    一方で、日本人特有の奥ゆかしさや自信のなさを持っているサラリーマン(家庭をもっている)のコンテスタントの心境にとても共感しました。そんな彼が特別な賞を受賞したときは思わず拍手をしてしまいました。
    本選の結果発表が予選の結果発表とは描写が異なり意表を突かれましたが、反対にそれがとても良い締めとなっていて、すっきりまとまった物語でした。

    この本を読み終わったとき、実際に自分がその場でコンクールを聴いていたと錯覚するくらい世界観に没頭できる素晴らしい本でした。

  • 国際ピアノコンクールの予選から本選。コンクールの裏ではコンテスタント同士がこんなに影響し合うし、進むにつれて審査員も聴衆もそれぞれのファンになっていく感じなんだなぁと。一度聴きに行ってみたいなと興味そそられました。

    分量相当あるけどかなりのめり込みました。
    それぞれのコンテスタントが選ぶ曲を聴くと、ちゃんとそれぞれにぴったりに感じて、このプログラムを考えるだけでも相当すごいことだと思う。
    そして曲を聴きながら読むと"書き"で表現された音楽が"聴こえ"とリンクするからすごい。
    著者の方はどれだけこの作品に関わること(コンテスタントや審査員のこと、作曲家、楽曲、曲への解釈、ピアノコンクール、スタッフなどなど)を取材されたのかと圧倒された。クラシック奥深くて楽しい。

  • ピアノのコンクールを勝ち抜く挑戦者たち。
    4人の主人公達の思いがストレートに伝わってくる。
    音楽の表現を言葉で伝えるのはとても難しいことと思いますが、丁寧に描写していて好感がもてました。
    クラシックの事は全くわかりませんが、最後までピアノの音が響いていたような気がしました。

  • 音色の表現、登場人物の心理描写、重厚感ともに抜群で、さすが直木賞・本屋大賞W受賞作だと思いました。
    4人のコンテスタントは、キャラクター・音楽性共に特徴的だったので、1人ずつでも充分一冊の本になりそうなくらいです。
    文字を追っているはずなのに、音楽やそれらが表現する風景がどんどん想像でき、音を通して影響し合う4人が羨ましく感じました。
    天才・秀才だらけの今作ですが、ずば抜けている故の言動だなと思うシーンがある一方、境遇は違えどどこか共感できるところもたくさんありました。
    作中に出てきた曲や、映画で演奏されたピアニストの方の音源を聴きながら読むと、より世界観に入り込めました。
    ここまでピアノの魅力を伝えられると、クラシックのコンサートを聴きたくなります。

  • ずっと読みたかった本。ようやく娘達が大きくなってきて、じっくり腰を据えて読める時間ができたので、念願が叶いました。
    面白かった。クラシックに詳しくはないけど、この時代、いろいろな音源で気軽に聴けるので、出てくる曲を調べて聴きながら読み進めるのもまた楽しかったです。

  • ほとんどコンテストの会場の中だけでの話なのに、なんと壮大な話。自己の中へ中へと広がって、外へ外へ、世界へと広がっている。

    音楽の素養がまるっきりないので、悔しい思いをしつつ読み進める。138ページでもう読めないかなぁと思ったら、急に面白くなってきた!やめないでよかった!
    音楽、音の描写が、風景や絵画、世界そのものであらわされていて目に浮かび包みこまれているような読書体験。特に二次予選のカデンツァの部分。
    気がついたら全然知らない曲の描写部分を一番楽しんで読んでいた。
    キャラクターもそれぞれ魅力的、濃密で大きい群像劇。

  • 世界の美しさを再発見する小説だった。

  • 人気なのは知っていましたが、なかなか読む機会がなく…今回、ようやく読みました。

    一気読みでした。

    音楽にあまり詳しくない私でも、すごくわかりやすく、コンテスト出場者の人たちと共に、ドキドキしながら、まるで私もステージに上がるような思いで読んでいました。

    こんなピアノ演奏を、実際に聞いてみたいと思いました。

  • 臨場感も凄く実際にホールで演奏を聞いてる気分になれる、最高に引き込まれる作品でした。

    審査結果の発表のときは鳥肌が立つほどドキドキした。

    ただ、音楽は全くやらないので登場人物たちの感想に共感できなかったのは残念だった。

    そうは言うけど是非一度読んで欲しい作品
    ☆3.8

  • 220910〜221005

  • 昔の自分が読み返したいと言っているくらい良かったんだよなあ。(笑)2016年ってもう6年前…。

    どんな言葉で言い表せばいいのかわからないけれど、どんどん読み進めたい気持ちがあるのに、残りのページが減っていく哀しさ。
    まるで自分がコンクール会場にいるような気持ちになるような、
    それぞれが観ている世界を覗かせてもらっているような、
    本を読んでいるっていうよりも、楽譜を辿っているような、
    本から溢れ出してくる音符を追っていっているような、そんな気分。
    こんな音楽を聴いてみたいと思ったし、やっぱり音楽って素晴らしいって思ったし、こんな音楽をしている人たちが羨ましい。
    きっと彼らの世界は私がみてる世界よりも遥かにたくさんの音が溢れていて、音楽することで違う世界と繋がるんだろうなあ。
    音楽を齧っていた身として、自分もそんな体験をしてみたかった。
    500ページを少しも長いとも思わせない、そんなお話。
    ずっと読み続けたくなるような魅力があって、
    1文字でも読み落とすことなんか許されない。
    亜夜、塵、マサル、明石、1人1人の音楽に対する想いや考え方が浮き彫りになって現れているその音楽を聴いてみたい。
    こんなに目頭が熱くなるような場面が
    散りばめられているお話は初めてだろうな。
    この本に出会えて良かった!また歳を重ねたら読み返したいなあ。

  • 素晴らしかった。
    かなりの長編だが、気づけば引き込まれてあっという間に時間が過ぎた。
    音楽を言葉や文章で表現するのはとても難しいと思います。音楽を少しだけ齧った身としては、言葉にできないことを音で表現するということを味わったつもりなので、逆に言葉でここまで表せるのかと。
    特殊な世界なので想像するのが難しいように感じるが、その場にいるかのように入ることができた。
    たくさんの読者に支持されている一冊だということがよくわかります。

  • ピアノコンクールを聴きに行きたくなる一冊

  • 紙の媒体で音楽を伝えるのは難しいというのが通説だろうけど、この本は、音楽から受ける感動を雄弁に表現している。音楽に明るくない自分でも(だからこそかもしれない)演奏シーンでは何度も鳥肌が立った。作中で語られる音楽に乗せられて色んな感情を体感できて不思議な感覚になった

    読んでよかった

  • ようやく読みました。音楽は好きなのでそういう視点で楽しめるかなと思ってましたが、クラシック音楽は全く聴かないので別世界の、囲碁・将棋やスポーツものと同じような感覚で読みました。極める人もしくは天才たちの内宇宙は面白い。

  • 1週間で読みきるつもりが思いの外かかってしまいました。
    ピアノコンクールのコンテスタントを追っかけた話ですが、個性的なピアニスト何人かが出て来て面白いです。実際の演奏も聴いてみたいけど、架空だからこんなに個性的なピアニストがいるんですよね〜
    塵くんのイスラメイと、明石くんの課題曲と、亜夜ちゃんの曲が聴きたい♪
    こんなコンクール、ずっと観てみたいですね。浜松に泊まり込みしてみた〜い!
    それにしても知らないピアノ曲ばかり。わかるのはバッハの平均律くらいでした(~_~;)ま、知っててもわたしには無理だろうけど。

  • いつか読みたいと思っていたこの作品、手に取るとその文書量に辟易(汗)…読み切れるのか、不安になるほどでした。でも読み始めると、止まらなくて賞味2日で読了できました(笑)!ピアノコンクールのコンテスタント主には4人のピアノに打ち込む姿勢とかそのひたむきな姿とか…音楽を世界に連れ出す…こんな気持ちになれる4人に共感しました。ピアノの知識や経験は全くないけれど、それでもピアニストになった気分になれました!

    • かなさん
      TAKAHIROさん、こんにちは!コメントありがとうございます(^^)
      そして、中山七里さんの「さよならドビッシー」ですね!
      前から読み...
      TAKAHIROさん、こんにちは!コメントありがとうございます(^^)
      そして、中山七里さんの「さよならドビッシー」ですね!
      前から読みたいなぁ~と実は思っていて、
      本棚に非公開で忍ばせてあります!
      ブクログでこうやって、読書家さんとこの本がおすすめですとか、
      話せるのっていいですよね♪
      読書もブクログもますます楽しくなります(^^)/
      2022/09/19
    • 辛4さん
      おはようございます!
      かなさんも朝早いんですね~
      私は雪かきおえたところですよ~

      フォローありがとうございます。また、コメントいた...
      おはようございます!
      かなさんも朝早いんですね~
      私は雪かきおえたところですよ~

      フォローありがとうございます。また、コメントいただき、恐縮です。
      あとでレスしますね~

      かなさんのレビューにありましたが、買って手元にあると「後で読もう・・・」となって後回しになる←まさしくそう!

      この本、すごくよかったです。もちろん読みました。で、続編が手の出ないお値段だったのです。セールで買えたら安心してしまって、いまでも積読状態。いつ読めることやら(前編の内容をすっかり忘れてしまっていますしね)。

      私は図書館率はほとんどゼロ。
      最近は本も高くなっているので、それもいいかもしれないですね
      うーん、うーん・・・

      かなさんの本棚で、おっ。。。っていうのもみつけました。
      いい本たくさん読まれていますね。
      これからもよろしくお願いいたします。

      (私は自炊率高いです。こんなの読みたい、ってことでしたら。。。です。)
      2022/12/12
    • かなさん
      辛4さん、おはようございます。
      朝早かったのは、ご飯を炊きそびれていたことに気づいて…
      で慌てて起きて、スイッチを入れてまた少し横になっ...
      辛4さん、おはようございます。
      朝早かったのは、ご飯を炊きそびれていたことに気づいて…
      で慌てて起きて、スイッチを入れてまた少し横になって(^-^;
      辛4さんは北海道なんですねぇ(プロフィールで確認しました)
      今年は雪が多いですか??
      こっちも、雪が降って雪かきが必要になる時期がありますが
      今シーズンはまだ大丈夫、
      でも今週水木くらいで降るかもしれないと気が重いです…。

      私は最初は手元に読んだ本を置いておきたいし
      借りたり帰したりが手間なので、
      読みたい本は買っていた時期もあるんだけれど
      でも、ブクログ始めてからキリがなくほしい本ばかりになって
      図書館でも結構読みたい本ってあるもんです!
      図書館を利用すれば、費用もかからないし、
      本の置き場にも困らず、どうしても気に入ったものとか
      図書館では借りられない本を購入するようにしています。

      図書館の本って予約もできるので
      あらかじめ借りたい本を予約しておけば時間の節約にもなるし
      コロナ禍でもかるので、本当に助かっています。
      でも雪が積もるようになると図書館に行くにも大変かな…
      その時は手元に積んでいる本を読むつもりです。

      あ…この作品も図書館で借りました♪
      私が借りたのは上下巻に分かれている文庫本でなく
      分厚い単行本でした。しかもページの中で上下段に分かれてて
      印字も細かいので読み切れるか、不安になりましたが
      あっという間に完読できましたよ!
      夢中になって読めました(^^)

      辛4さんの本棚にも私がこれから読もうと思っている作品が
      結構ありましたので、これから楽しみです!
      コメントありがとうございます。
      こちらこそこれからよろしくお願いします。
      2022/12/12
  •  題名からなんとなく蜂蜜とクローバーみたいなのかな?と思い、読まずに長く放置していた。が、読み始めると、学生の時以来、夜寝る時間も惜しく、読み耽った。可能ならば星10個付けたいくらい。

     残りページが少なくなるにつれ、この3人のコンテスタントと離れるのがものすがく寂しく思った。
    スピンオフの短編集が出ているらしいが、そうではなく、この3人が音楽家とし世界で羽ばたいている様をすごく見たい。

  • 何度も、読んでいる。この本のすごいところは、本なのに、音楽なところ。読んでいると、音が聴こえてくる。表現力が、すごい。

  • ピアノが好きだけど、合わなかった。
    音が全然聞こえない。
    演奏を聞いて泣いた事もあるし、ピアノで弾いた曲もいっぱい課題曲にも章題にも出てきたのに。
    自分と曲の解釈が合わなかったんだと思う。
    「ここ軽いから楽しい」「ここの音聞いた瞬間目が覚めちゃう」とか、そんな自分の大好きなピアノの要素がなかった。
    「曲のイメージ」ばっかりで、一瞬一瞬の音がない。

    描写を音楽に絞っているから、音楽が合わなければ合わない本だと思う。物語はまあ大体分かってる通りに進む。
    音楽も「天才!凄い!」みたいな繰り返し。
    主人公最強のライトノベルみたいな軽さ。

  • 音楽のことをもっと知っておけば、もっと楽しめたのに!と思った

    本の分厚さ、題材から買ってはいたけど、読むのを躊躇っていた一冊

    でも、読み始めると、ぐんぐんと物語に入り込んでいった

    全く音楽は知らなくて、曲名をきいても全く音楽は脳内再生されないはずなのに、なぜかその場面を読んでいると、曲を聴いている気持ちになる不思議な体験

    個人的には1番奏者のアレクセイ・ザーカエフの三次予選の描写が1番好きだった

  • やっっと読み終わった!

    最初の読みづらい印象から一転、するする引き込まれる文体に感動。

    自分もコンクールを聴いているかのように、読んでいるとイメージが頭の中に湧いて、曲を聴きたくなり、どっと疲労感も。笑
    でもその疲労感に負けないほど、続きを読みたくてたまらなくなった。

    この本、すきだなぁ。映画も観たい。

  • ようやく読めた。直木賞&本屋大賞のダブル受賞も納得の素晴らしい作品だった。ビアノやクラシックに造詣の深い人ならばなお感動するのだろう。それが羨ましい。

  • 頭をガツンとやられ、私に文筆家になる道はまったくないなと悟らされた作品。
    読むことも書くことも好きで、0.1%くらいは小説家になりたいなぁという思いが頭の中にあった私だが、「あぁ、こんなに圧倒的な物語を書く人がいるなら私には無理だ」と前向きに諦めがついた。

    本当に圧倒的という言葉がふさわしい筆力で描かれており、キャラクター造形、ストーリーテリング、音楽描写、予測不能な結末、全てにおいて優れた一気読み必至の傑作に間違いない。

    各キャラクターがとても魅力的で、そのキャラクターたちが織りなす人間模様にはすっかり心をもっていかれる。
    個人的に大好きなのは、社会人ピアニストとして奮闘する明石さん。

    そして何よりも、とても豊かな言葉で音楽というものを表現していて、文字と文字の間から音が聞こえてくるかのようである。
    自身の耳で彼らのピアノの音が聴きたいとも思わされ、私は実際にCDを購入してしまった。
    (本当は明石さんの「春と修羅」も聞きたくて仕方がないが、それは叶わぬ夢・・・。)

    奔放な塵と心に傷を負っている亜夜とが一緒に弾く「月の光」の”音”が、耳から離れない。

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著者プロフィール

1964年宮城県生まれ。92年『六番目の小夜子』で、「日本ファンタジーノベル大賞」の最終候補作となり、デビュー。2005年『夜のピクニック』で「吉川英治文学新人賞」および「本屋大賞」、06年『ユージニア』で「日本推理作家協会賞」、07年『中庭の出来事』で「山本周五郎賞」、17年『蜜蜂と遠雷』で「直木賞」「本屋大賞」を受賞する。その他著書に、『ブラック・ベルベット』『なんとかしなくちゃ。青雲編』『鈍色幻視行』等がある。

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