蜜蜂と遠雷

著者 :
  • 幻冬舎
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本棚登録 : 10327
レビュー : 1361
  • Amazon.co.jp ・本 (507ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784344030039

感想・レビュー・書評

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  • 皆さんのレビュー通り、音楽が聴こえてくるから不思議。恩田陸さんの小説は何冊か読んでどれも好きだけど、これはもう圧巻。

  • とある有名な国際ピアノコンクールが舞台。
    そこに集うコンテスタント達が一次予選、二次予選、三次予選を経て、本選に進む様を描く。再起を狙う亜夜。その幼馴染でもあるアメリカ国籍のマサル。そして、伝説のピアニストの弟子として送り込まれた、養蜂家の息子である塵。彼らコンテスタントの他、そのコンクールの審査員、記者、など、そこに関わる様々な立場の登場人物達の目線で物語は進んでいく。
    とにかく、ピアノを弾く描写の表現が豊か!!本当に音色が聴こえてくるかのような。特に塵の演奏のシーンは神秘的で魅力に溢れてる。本当に聴きたくなってくる。
    作中に出てくる多くのクラシック音楽にも惹かれた。今度調べてゆっくり聴いてみよう。
    私もピアノを始めた身なので、こういう音楽小説は大好物。そして、恩田陸さん、こんな作品も描くんだ、と。
    改めて作風の広さに驚く。

  • クラシックのピアノコンクールが舞台。
    芳ヶ江国際ピアノコンクール。パリのオーディション会場に、無名の日本人が参加、弱冠16歳の飾るところの無い少年が、伝説的ピアニスト・ユウジ・フォン=ホフマンの弟子として登場する。
    少年、風間塵の演奏は審査員三枝子の憎悪を搔き立てた。だが、それこそがホフマンからの推薦状に予言されていたことでもあったのだ。──彼はギフト、天から我々への。彼はけして甘い恩寵などではなく、劇薬なのだ。中には彼を嫌悪し、憎悪し、拒絶する者もいるだろう。彼を本物のギフトとするか、災厄にしてしまうのかは、皆さん、いや、我々にかかっている──(途中意訳省略)
    他の二人の審査員は絶賛し、三枝子は恥ずかしさにショックを受け、ふて腐れた。
    現在、クラシック界には楽譜を作曲家の意図を正確に再現するのがいい、という風潮がある。流通がしやすい方に曲の傾向が流れる問題もある。そして権威がものを言う、コネがなければどうにもならない閉塞感。
    コンテスタントの一人、マサルも大阪では実力を発揮したにも拘わらず、日本での音楽会に全く知り合いがいない(審査員やその関係者にコネがない)という理由で、つまらない難癖を付けられて失格扱いをされた。
    物語は、コンクールで勝ち上がり、プロとして成功する難しさと、クラシック界の閉塞感──音楽が一部の権威や商業主義のために決まった型へ押し込められている問題、それでも個性が求められる矛盾とどのように表現してくかという問題を浮き彫りにしながら、沢山の曲を小題としてテンポ良く進んでいく。
    各自のピアノを、情感豊かに様々な風景を思わせる描写で巧みに表現。曲を知らなくても、感じさせてくれる。
    沢山の曲、沢山の演奏者での書き分けが見事すぎて、舌を巻きまくり。
    妻子が居て就職もしていて、仕事の合間に練習をするしかない28歳の高島明石、彼を取材する雅美(と、明石の妻満智子)、天才少女としてプロの舞台活動もしていた栄伝亜夜の本心では望まぬ復帰戦、審査員三枝子の葛藤、マサルの師ナサニエル、亜夜の友である浜崎湊の審美眼(耳?)…多層構造のテーマを、これ以上無いくらいすっきりとしかし充分な描写でまとめ上げている。

    場面転換(主人公転換)が多く、2行空けで、視点を変えて各人の心情を交えて、どんどん語られていくので、とんでもないボリュームでも一日で読めてしまう。
    基本的に3人称だが、うまい具合に、あたしが──とか、僕が──と、地の文で心情の吐露がある。
    音楽用語であるリタルダンド(曲想の変わり目などを強調する手法)トゥッティ(全員が同時に演奏すること)など、余り知られていないだろう単語でも作中では一切解説しないので、むしろ冗長すぎない。
    専門用語を敢えてスッパリ説明しないのは、こんなに心地いいものかと驚いた。この小説の命題は音楽用語の解説ではないのだし、読者が知らなくて気になったのならスマホなどですぐ調べられる時代だから、これでいいのだと思う。

    各キャラの内面描写、過剰すぎない外見描写も心地良い。ラストのページは、読み終わるまでけして捲ってはいけません。これも良かった。スッキリした終わり方。

    久し振りに2段組のこんなに分厚い小説を読んだが、二段組みは精神的に圧がある。読み始めるまで気合いをためてしまった。それだけが難点だったが、一冊に纏めようと思えば、これがベストだっただろう。

    P402~403抜粋
    「──ちっぽけな自尊心、音楽をしている、音楽を分かっているといううぬぼれだけが肥大していただけだったのに。
     なんて馬鹿なんだろう。小さい時のほうがよっぽど賢かったし、きちんと世界を理解していた。
     あたしは、全く成長しないまま、おのれの見たいものだけを見て、おのれの聞きたいものだけを聞いて生きてきた。鏡の中に、自分の都合のいいものだけを映してきたのだ。
     きちんと音楽を聴けてさえもいなかった。
     苦いものが込み上げてくる。
     音楽は素晴しい、あたしは音楽に一生関わっていくのだとうそぶきながらも、実際にやっていることはその逆だった。音楽に甘え、音楽を舐め切り、ぬるま湯のような音楽に浸かっていた。ここにいれば楽だとばかりに、音楽と馴れ合っていたのだ。自分は違うと思いながら、音楽を楽しむことすらしていなかった。──」
    ここが凄く刺さりました。

  • ピアノを弾いたことはないしクラシック好きという訳ではない素人だけど、本当に弾いてるのではないかと思わせるほど情景描写が美しかった
    実際に音がない小説であるからこそ各々が違った捉え方で曲に感情移入できると思います

  • オムニバス形式でそれぞれの登場人物に丁寧に焦点が当てられていて、全員に共感できるポイントがある。
    それぞれの演奏する音楽について、ちゃんとそれぞれの個性が被ることなく描かれている。
    音の文章表現がとても綺麗だと感じた。
    音楽に関する小説は映像や音がないと伝わりづらいと思っていたけど、これは逆に小説でないとそれぞれの音の違いを表現できないと感じた。

  • とても綺麗で純粋な小説。永遠と一瞬。天才とはなにか。自然を相手にするということ。世界を知るということ。こういった主題をこの小説から読み取った。

  • 長い長いピアノの国際コンクールを一緒に観てきた感じです。
    こうした生きた音楽を、文章だけで表現するのは、圧倒的な筆力が必要だろうし、自分も含め、ピアノが弾けない&クラッシックに詳しくない大半の読者に届くものでなければいけないので、本当に難しいことだと思います。それをわかりやすく噛み砕いている表現に感心しました。後半少しくどいところ(上位者の演奏を褒めるハイテンションが続く表現など)や、観客の感動パターンが同じ、音楽表現なのに比喩が突飛なところ(屋敷の掃除をはじめたところなど)が少し残念です。
    ただ、全体的なボリューム感さえも、いい音楽を聴き続けた疲労感のようなものを感じ、読後感はよかったです。
    驚異的な天才だけでなく、高島明石というちょっとだけ身近に感じる存在がいてよかったなと思います。ピアノの森という漫画とかぶるところがあり、途中までずっと風間塵が主役だと思っていたので、いつ爆発するのかと思っていたら、最後まで何から何まで中途半端な存在でビックリしました。

    映画化決定らしいですが、これを映画化するのは俳優さんが大変だなと思います。

  • クラシック音楽に一気に興味が出た。いい言葉もたくさんあったな。読み終えた後に心地よい疲れがあったのは、久しぶり。

  • もともとこの作家さんは苦手なこともあり独断と偏見に満ち満ちた感想になってしまうのだが…
    それでも今回はお得意の音楽小説だからか変に羽目を外したりなどの悪癖もなく丁寧に伸びやかにまさに彼女のいいとこ取りの出来映えになっておりこれならばダブル受賞もごもっとも。
    だがしかしだ、ピアノコンクールの予選までをここまで壮大なファンタジーに仕立てておきながら最大級ドラマチックに描かれるべき本戦をなぜ端折る?
    これでは順位付けも曖昧で銀の衣装のコンテスタントを応援していた読者が納得出来ないじゃないか!…
    嗚呼やっぱりあなたは恩田陸でした

  • めちゃくちゃ面白かった。

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著者プロフィール

恩田陸(おんだ りく)
1964年、青森市生まれ。水戸第一高校を卒業し、早稲田大学進学・卒業。1991年、第3回日本ファンタジーノベル大賞最終候補作となった「六番目の小夜子」でデビュー。2004年刊行『夜のピクニック』で第26回吉川英治文学新人賞及び第2回本屋大賞、2007年『中庭の出来事』で第20回山本周五郎賞をそれぞれ受賞。2017年『蜜蜂と遠雷』で第156回直木三十五賞、第14回本屋大賞、第5回ブクログ大賞などを受賞した。同作品による直木賞・本屋大賞のW受賞、そして同作家2度目の本屋大賞受賞は史上初。大変大きな話題となり、代表作の一つに挙げられるようになった。同作は2019年4月に文庫化され、同年秋に石川慶監督、松岡茉優・松坂桃李らのキャストで映画化される。

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